楽しんでもらえると幸いです。
「…相談したいことがあるんだ。頼むよ、僕を助けるとおもって!」
六月も終わりに近いある日、僕は知り合いの少女に相談を持ち掛けていた。
「……あのさあ、なんで
彼女の名前は《ミト》。血盟騎士団サブリーダーを務めるアスナの親友であり、彼女自身も身の丈程の大鎌を振るうパワーファイターだ。
その実力と美貌により、アスナと同程度、もしくはそれより少し少ないファンがいる人気者である。
「だって当てになんないし」
「み、身も蓋もないっ!!アルゴとか《
「アルゴにしたら一万コル程度で売れるネタでしかないし、キリトがまともに答えるわけないじゃん、
絶対はぐらかすよ十万賭けていい」
「そんな相談持ってこないでほしい…。仲良くないならなに言ってもいいなんて思うな!」
「普通の女の子ですぐに都合着くのなんてミトくらいじゃ…。」
「
…。こいつからかうの楽しいな、打てば打つほど返ってくる。
「まー戯れるのはこのくらいにして、だ。例えばの話をしよう。
…君が異性からプレゼントをもらうとして、なにがもらえたらうれしい?」
ミトは三十秒ほど悩んだ。
「……し、新作ゲーム、とか?」
ダーメだこりゃ!
異性からのプレゼントの選出がサンタに頼む子どものクリスマスプレゼントと同レベルじゃないか!!
「クソォ!これじゃ第一プランでいく羽目になるじゃないかぁ!」
「人が真剣に考えた結果がこれか!!今度飯おごれこの馬鹿!…第一プランってなに?」
「プレゼントの候補はあったんだけれど…はい。」
メモ代わりにしたメッセージをミトに見せる。
「なになに?…第一候補指輪、第二候補花束、第三候補レアなネックレス…。
お も い ん だ よ バ ー カ ! !」
メッセージが地面に叩きつけられ割れてしまった。
「そんなに!?」
「重いよ、具体的にはホール、いやウェディングケーキソロチャレンジくらい重いよ!!
あんたこれ普通の友達にいきなり婚姻届渡されるくらい衝撃的過ぎるって!」
「そりゃひでー!…。経験がおありで?」
「あるわけないじゃない!!」
話が全く進まねえ!相性が良すぎるのもめんどくさいな!
「好きな女の子に渡すには重いのか、指輪って」
「…やっぱり。
そういうものか。難しいなあ…。
「先に作っとくのは?」
「…好きにすれば?もう、あんたの相談には、絶対乗らないわ…。」
「…今度漫才でもやってみる?」
「ヤダよ、一人でやってろ」
<SIDE:リズベット>
ここは、あたしが店を構える四十八層主街区《リンダース》。
そして、あたしの拠点にして鍛冶屋の《リズベット武具店》は、今日も繫盛していた。
キリトとの楽しい冒険から早一日。あいつが今も戦ってると思うと、あたしも負けるかと元気が出てくる。
…うん、心がすっごく軽い、今ならどんな無茶な注文だろうができる気がする!わっはっはっ!(フラグ)
「こんにちわー。マスタースミスがいるって聞いたんですが、留守ですか?」
「いらっしゃー…キリト?」
いや違う!似ているが別人だ。
「ああすいません!こ、ここに来るのは初めてですよね?
良い武器揃ってますよ?」
「いや、作ってほしいものがあって」
「オーダーメイドですね?とりあえず武器種は…」
そこでお客さんは首を横に振った。
「作ってほしいのは指輪なんです」
そのニュアンスで完全に理解した。…よりによって失恋した翌日にくるか。
しかもそいつは好きな人と同じ顔してるときた。いじめか?
「……それより武器、見てみます?」
「…話をそらすなよ。ま、こいつよりやばいのあったら教えて」
背中の両手剣を指差し、基準としてそれを渡された瞬間悪寒が走る。
銘は《ウロヴォロス》、恐らく意味は輪廻転生の蛇という感じだろうか。
製作者の名前がない、ということはドロップ品(ボスクラス)だ。
蛇が模られた剣は、
しかし、悪寒の理由は造形ではなく剣の能力そのものだ。
「強化試行回数ゼロ、使用者の自傷ダメージが多くなればなるほど攻撃力が上昇する魔剣…!?
なんて危険物使ってんのよあんた!しかも、これ
その耐久値は半分になっていた。つまり昨日今日入手したものではないことは明白だ。
「うん、強くなるためならこのくらいしないと、
そう言って笑う彼の目には、強い決意が見える。
…ああ、そっかあ。こいつも、誰かに追いつきたいのか。
でも、彼は気付いていない。それは守りたい人を無茶苦茶心配させてしまうんだ。
憧れという奴はやっかいで、自分では駄目だとわかっていたとしても、目指さずにはいられなくなる。
アスナなんかは、現実へ帰るために非情な手すら使いかけたとこの前苦笑交じりで話してくれた。
「あんたさ。自分のこと心配してくれる人、一人くらいはいるでしょ?
…指輪、作ってあげる。でも、お代だけじゃだめ。
…指輪あげる
「ど、努力します。」
「幸せになるってことはさ、一人じゃきっとだめだとおもうんだ、あたし。どんなおっきな器ですごく見えても友達とか家族とか、好きな人が近くにいないと、空っぽになっちゃう」
「……空っぽ?」
「うん、スポーツ選手が速く走るために減量するのとおんなじで、一人でやってもダメってこと。」
…なんか言ってて恥ずかしくなってきた。
「で、約束するの、しないの?」
もちろん彼は約束した。…それにしてもとんでもない魔剣だった。
「あいつ、絶対攻略組だよね…あんなヤバい効果初めて見たわ…。
あたしもあれくらい強力なの頑張らなくちゃ」
時計を見るともう十時を過ぎている。
さすがに店じまいして寝ようかと入口を
…しょうがないなぁ、もう一仕事するか!
やってきたのは珍しいことに黒髪の女の子。武装から見るに短剣使いかな?
「ごめんなさい、こんな夜遅くに来てしまって…また明日来るわ。」
「いらっしゃい!大丈夫ですよ、もうちょっと店開けときます!
ご注文どうぞ!武器だろうが指輪だろうがドーンとこいです」
「……作ってほしい武器があるんです」
「大丈夫、アタシはマスタースミス、任せてください!武器種と素材の指定は?」
「…素材は持ち込みで、武器の種類は、…みです。」
武器種が聞こえなかったので、もう一度確認する。
「…すいませんもう一回武器種言ってもらえます?」
「…
「……。え??」
六月二十六日、アタシはとんでもないモノを初めて作ったプレイヤーになった。
今まで存在していなかった、射撃武器の弓。突然あらわれたそれはこの世界をどう変えてしまうんだろうか。
…アタシはまだ、それを知らない。
《ウロヴォロス》
種別:両手剣
六十層のフロアボス《ヨルムンガンドザグランドスネーク》のラストアタックボーナス。キリヤにとってはボス部屋でえらそうにしてたでかい蛇という印象。
強化試行回数ゼロだが、特殊な強化方法が存在している。
所持者自身の体を傷つけることで攻撃力が上昇するサディスティックな魔剣。
攻撃力アップのために自傷すると、その攻撃力のせいで死にかねない。
一応暗黒剣の自傷ダメージで少量ずつだが上がるのは救いか。
上限は一応ある。