ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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第2話 チュートリアル

 恐らくはゲームマスターであろうそれは、自身のことを茅場晶彦と名乗った。それがかつて弱小企業だったアーガスをシンデレラの魔女のようにトップ企業に変身させた天才ゲームデザイナー兼量子物理学者であることに気が付いた者はかなりいるだろう。何故なら、このゲーム《ソードアート・オンライン》と《ナーヴギア》を生み出したのは茅場なのだから。 

 

 兄にとって憧れのそいつは、とんでもないことを口走った。

 

『プレイヤー諸君は、既にメニューからログアウトボタンが無いことに気が付いていると思う。…しかしそれはソードアート・オンライン本来の仕様であり、決して不具合ではない』

 

『諸君らがログアウトするためには、この城の頂を極めなくてはならず…外部の人間がナーヴギアを停止もしくは外そうと試みた場合ナーヴギアから高出力マイクロウェーブが発生して諸君の脳を焼くのだ』

 

 

 

 なにいってんだこいつ。ようするにぶっ殺すと言っているわけだ。しかし前に兄がこんなことを言ってなかったか?

 

『ナーヴギアってヘルメット内の信号素子から弱い電磁波だして脳細胞に働きかけるわけだけど、実は原理的には()()()()()の仲間なんだぜ。』

 

 はじめてそう聞いた時は爆笑したが、もはや笑い事ではない。しかもナーヴギアには無茶苦茶でかいバッテリーがついているはずだ。電源ケーブル引っこ抜いても動く。

 

 茅場は具体的なデストラップの作動条件を告げると、それをハッタリだと思った家族や友人が外そうとした結果、二百十三人がレンチンされたと言った。…実感が薄い。頭の傷が痛む感じがする。

 

 

 

『諸君らの肉体の心配はない。既にあらゆるメディアがこの状況を報道し、諸君らの肉体を病院などで介護するはずだ。安心してゲーム攻略に励んでほしい』

 

 誰かがこう叫んだ。

 

 「ふざけんな!こんな状況で吞気に遊べってか!もうこんなのゲームじゃないだろ!」

 

 茅場は残酷なことを告げる。

 

『しかし、十分に留意してもらいたい。もはやこのゲームは諸君らにとってもう一つの現実、今後蘇生手段は機能せずHPが尽きた者は…ナーヴギアによって脳を破壊される』

 

『諸君らが解放される条件はただ一つ。この世界《アインクラッド》の百層に待つ最終ボスを打倒し、ゲームをクリアすること。その時の生存者全てをログアウトすることを約束しよう』

 

 …は? まって、まってくれ。明日は妹と、直葉と稽古の約束があるんだ。すっぽかせば彼女は悲しむだろう。いや、そもそも家にすら戻ってこれない?…体は家にあるのに?

 

「そんな、そんなバカな話があるか…」

 

 

 

  気分は最悪だ。混乱するプレイヤーたちを無視して、茅場は最後に、

 

『それでは最後に諸君らへのプレゼントを用意している。アイテムストレージ内を確認してくれたまえ。』

 

…ストレージを開きそれをオブジェクト化する。なんの変哲もない()()だ。本来の自分とは違う顔が写っている。そう思った瞬間白い光に体が包まれ、次に鏡を見た瞬間やつの意図を悟る。

 

 

 

 …()()()()()()()()()()()。少し伸びた黒髪、双子の兄と同じく中性的な顔立ち。唯一兄と違うところは右のおでこ辺りの()()だ。

 

母さん曰く僕が物心つく前についたそれは、なんとなく普段は前髪で隠している。

 

 パニックでやつが話していることが頭に入ってこない。目的がどうのこうの言って、やつのアバターはどろりと溶けるように消えた。

 

 

 

 チュートリアルが終わった後のプレイヤーたちは、様々な反応を見せる。ここから出せと騒ぐ者、絶望で泣きながら座り込む者、状況が理解できていないのかずっとゲームができると喜んでいる(あるいは狂ったのかもしれないが)者。そんな酷い状況で、逆に落ち着きを取り戻した僕はキリトと合流するために移動しながら周りを見渡す。今なら彼の見分けがつくはずだ。

 

「あ、いた! キーリートー!」

 

 その声に気が付いたキリトは後悔しているようなかおで僕に振り向く。

 

「……よう、キリヤ。…ごめん、こんなことになるんだったら…」

 

「うん?なんか言った?」  「………いや、何でもない。なぁキリヤ、()()()()()()()。今なら次の町まで早く行けば経験値の奪い合いが始まる前にレベリングできるはずだ。」

 

「…僕は」

 その提案に答えるために、口を開いた。

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