《管理区》に転移した僕たちは、モグモグと朝食中のフィリアと目が合う。
驚いたフィリアは口の中を詰まらせ、慌てながら飲み水で流し込む。
「~~~っ!! …き、来てくれたんだ。」
「…食べてからで大丈夫だよ。丁度僕らもご飯にしてから探索しようと思ってたし。
…お互い自己紹介しなきゃいけないから。」
「えっと、わたしはフィリア。…キリヤの仲間なんだよね、よろしく。」
「…よろしく、シノンよ。…キリヤ、無茶はしてない?」
「あ、それは大丈夫。わたしの見てる限りじゃそんな素振りはなかったし。
…キリヤとは出会って長いの?」
「ええ、記憶喪失の私を助けてくれて、そこからは九ヶ月くらい一緒。
…優しくて強くって、でも目を離したらすぐ迷子になって、しっかり見てないとダメなひと。
それでも、寄り添ってくれるって言ってくれた。命が危ないとき、自分が壊れかけているのに助けてくれた。
キリヤと一緒なら、私はちゃんと前を向いて進んで行ける気がするんだ。」
「………。」
フィリアは沈黙している。なんか困ったような、でも少しうらやましそうな顔でシノンを見ている。
小声でこちらに質問してきた。顔が林檎のように真っ赤だ。
「…こ、恋人同士だったりするの?」
誤魔化すとひどい目にあいそうだ、正直に言おう。
「………実はそうなんだ。最近手料理をご馳走になったんだけど、これがむっちゃ美味くて。
友達と一緒に修業したとか言ってたなー。」
「へーーー。…幸せそうで何より。…い、いいもん!わたしの恋人はダンジョン内のお宝ちゃんだし…!」
「……まあ、その、なんだ。そのうちいい人見つかるさ。
でも僕の双子の兄はやめてくれ、競争率高すぎてガチ勢にやられる。」
「余計なお世話ですー!!………で、これからどうするの?
《ホロウ・エリア》冒険する?」
「そうだな。フィリア、どこか気になる所はある?」
フィリアは少し考えていたが、すぐ僕らに顔を向けた。
「あのね、キリヤと別れた後あの樹海の中にある教会で、宝箱を守っているゴーレム型ボスを見つけたの。
一人で戦うのは厳しい感じだから、手伝ってほしい。」
「……ご、ゴーレム型かあ…。あいつら硬いよな。特に突き主体の細剣や短剣には厳しい敵だ。
とりあえずちょっかい出してみて、ダメそうなら撤退して対策を考えよう。
…で、なんてとこ?」
「えーっと、《二人が邂逅した教会》っていうんだって。」
「…ふふっ、ロマンチックなエリア名ね。なんだか
シノンってファンタジー好きなのかな。ちょっと気になったので質問してみよう。
「まあ待ってるのはどっかの誰かが造った人形だけどな。…そういう騎士の話とか好き?」
「結構好き。…でもテレビだと銃が出た時酷いことになるから、本の方がいい。」
「……今度本屋探してみようか」
管理区から出た僕たちは、何事もなく《二人が邂逅した教会》に辿り着いた。
途中でシノンが弓を引っ張り出したが、フィリアは興味が湧かなかったらしい。
まあ、後で説明すればいいか。
内部で待っていたのは《テンプル・スケルトン》というガイコツの騎士たち。
「ヒーローっぽくないけど騎士はいたわね…。どっちかというと悪役に殺されるタイプの脇役みたい。」
シノンのひでえ言葉にツッコミをする。
「身も蓋もない!で、どこにゴーレムいるんだろう…?一通り見たと思うんだけどな?」
「……ここだよ?」
フィリアが壁を指さす。そして僕らをよそに壁を触り始めた。
「ほら、ここをこうしてー、こーして、こう動かすと仕掛けが動いて隠し部屋にいけるの。」
「おお、壁が動いてる。……あいつか、ゴーレムって」
部屋の中央に鎮座していたのは、苔むした石でできた戦闘兵器、名は《サンクチュアリ》。
それが守る宝物は、製作者の思い出の品なのかもしれないが…。
「悪いが、ぶっ壊させてもらうぜ。行くぞ、二人とも!」
《サンクチュアリ》の一撃を《カタラクト》で弾く。
隙ができたゴーレムにシノンの矢が刺さるが、あんまり効いてない。
「…ええい、決定打にならないのってイライラするわ!」
「やっぱり頭部のコア狙わないと、わたしたちの攻撃通りにくいみたい…。
…どうしよう。」
一番ダメージを稼いでいるのはどうも僕らしいが、これは…。
二人にはデバフ中心にソードスキルを撃ってもらった方がよさそうかな。
「とにかく、ダメージよりデバフ中心にソードスキルをお願い!」
「わかった、任せて!」「頑張れキリヤ!サポートはするから!」
泥仕合と化した《サンクチュアリ》戦は、三十分以上もかかった。
ゴーレムが爆散した瞬間ガッツポーズで喜んでしまったのも無理はないと思う。
精神的疲労がでかいが、達成感がすごい。でもここ圏外だし、油断は禁物。
「ん、んん~!よし、宝箱の中身を確認しよう!」
フィリアは大きく伸びをして、宝箱の方へ向かうとなにやらカチャカチャし始めた。
「なにしてるの?鍵かかってた?」
シノンの疑問にフィリアは
「なんか罠がかかってたみたいだから解除しなきゃ。だいじょーぶだいじょーぶ、
このぐらいなら疲れててもポカはしないよ」
と笑顔で言う。
「…まさかここに来る前はソロでダンジョンに行ってたのか?」
「ん?まあね。宝箱の中身って基本的に早い者勝ちでしょ?
最前線よりちょっと下のサブダンジョンとかはいい感じに人もいなくていいものが入ってることが多いの。
そのおかげかレベルもそれなりに上がったし、トレジャーハンターとして大きく成長できたから。
……よし、トラップ解除!」
こ、こいつよくソロで生き残ってるな!?ソロで死ぬやつの三割くらいは宝箱の罠のせいで死んでるのに…。
…なるほど、たしかに才能はあるみたいだ。
「お宝ちゃん出ておいで~♪えへへへ、何が出るかなぁ♪」
よだれたらしながらそういうフィリアは、どう見ても変人だった。
でもなんかかわいいぞ、美人って得だな。
宝箱の中には、なにやら妙な形をしたネックレスが入っていた。
フィリアはじーっとしばらくそれを観察していたが、
「んー…、これけっこうレアものかも。…いる?」
とこちらへネックレスを見せてきた。
「……いいのか?僕がもらっても。もともときみが見つけたものだろう?」
「いいの!手伝ってもらったお礼。…わたしが物を送るなんてめったにないんだから、
大事にしてね?」
彼女からもらったネックレス《虚光の燈る首飾り》は、性能面でもかなりいいものだった。
ただ、なんか独特な形で気になったのか、
「ちょっと調べてみる」
とフィリアが言ったので、今日はいったん帰ろう。
「じゃあ、またね、フィリア。」
「うん、なにかあったらメッセージを送ると思うから。」
「あー、疲れた。フィリアも今日は早めに休んだほうがいいわ。
じゃ、また来るね」
その日はご飯を食べて早めにベッドに入った。
明日はシノンと本を探してみようかなと思いながら、僕は意識を手放した。
《サンクチュアリ》
《二人が邂逅した教会》にて、宝箱を守るゴーレムボス。
ホロウフラグメントのゴーレムは、硬くてしぶとい強敵という印象が強い。
打撃武器がよく効くので、メイスとかを担いでおいたほうがいいかも。
ちなみに両手剣は打撃属性のスキルがあるぞ、片手剣マスターしなきゃでてこないから引継ぎなしとかPS4版じゃ現実的じゃないけどな!