ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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 だいぶ遅くなってしまいましたが、
 楽しんでもらえると幸いです。


第二十四話  追憶

 《バステアゲートの浮遊遺跡》エリアは、無数の浮島で構成された奇妙な場所だ。

「………これ、足を踏み外したらどうなるとおもう??」

 興味がわいたので、今飲み干したポーションの空き瓶を一度ストレージに入れてアイテム化、

空き瓶をもう一度出してから浮島の外に放り込む。……空き瓶はすぐに見えなくなった。

 

 二人の方を向く。曖昧な顔で首を横に振られ、一言。

「「…死ぬんじゃないかなあ?」」

「………はー、だよなぁ…。どう見てもアインクラッドの外側と同じ判定で落下死するよな…。」

 

 二人の無慈悲なツッコミにため息をつく。

つまり、転移結晶で何時でも転移できるようにしとかなければいけないわけで。転移結晶はかなり高く、経済的にも心理的にも買いだめしにくい(回廊結晶よりはましだが)。

…出費が痛いなー、マイホームが遠ざかる…。

「転移結晶はちゃんと持ってるよね?」

 フィリアとストレアはブンブンと縦に首を振った。

 

「…見たところ下の浮島には宝箱が設置されてるのがあるみたい。……降りるのは…」

 フィリアは目をキラキラさせているが、珍しくストレアが制止する。

「ダーメ。お宝に目が眩んで落下死なんてマヌケだし、ものすごく後悔するよ?

…アタシ、フィリアに死んでほしくないよ。」

 

 その曇りのない瞳で見つめられたフィリアは、ひとまず諦めたようだった。

「………わかった、わかったから!まだいける、が一番危険だからね。

とりあえずこの辺りを探索してみようよ」

 

 少し移動すると、また封鎖された場所を見つけた。…ネックレスをかざしても反応はない。

「…うーん。まだなにか必要なのか…?」

 その時、とんでもない轟音が響き渡る。上空には巨大なドラゴン。

 

『ココヲ通ルモノ、竜王ノ証ヲ掲ゲヨ』

「しゃ、しゃべった!?」

『我ハ空の王ナリ。我ガ領域ニ挑ムコトヲ望ムナラバ、白キ竜王ヲ討チ証ヲ奪イ取ルノダ』

 ドラゴンはそう言って封鎖された先の塔へ飛んで行った。

 

「…あのドラゴン性格悪くない?ようするに白キ竜王ぶっ殺して証とかいうのを奪ってこいってことでしょ?

どんな関係かは知らないけれど厄介払いさせて、誘い込んで襲う気だよね。」

「ん?いや、まだましじゃないかな多分。ヤバいやつは言葉巧みにその気にさせるからさ。

…ラフコフのリーダーはただのゲーマーを()()()()で殺人鬼に仕立て上げた。」

 フィリアは身震いすると、

「…絶対会いたくないね。」とつぶやいた。

 

 封印近くを探索しているとダンジョンを発見した。

中に入るとワイバーンが多く生息していたが苦戦することなく突破する。

 …が、今度はあかない扉である。扉には文字が刻まれており、竜の秘宝なるもので開くことがわかった。

「………またかよもー!!防犯しっかりしやがって!」

「でも、多分ここにいると思うなー。一番守りが厚いところに大切なものって隠すよね」

とストレアは言う。

 

 どうしようもないのでダンジョンから出た僕たちは、少し移動した場所で妙な連中を発見した。

フードを被り没個性なそいつらを観察していると、ふと思い出す。

「…ん?そういえばこいつら、この前のPKに格好が似てるな…。

ちょっと尾行してみようぜ」

 

 フィリアは呆れた顔でこちらを見ていたが、最終的にはついてきた。

…なんだかんだいって気にはなるんだろうな。日常的に殺人(PK)をするやつらが新たな仲間をスカウトする時に必ず言う口説き文句がある。

()()()()()()()()()()()()()()()()()」…だ。

 

 洞窟へ入っていったやつらを尾行すると、先日出くわした片手斧使いのPKがいた。…誰かと話しているようだ。

「ヘッドォ、ターゲット()っときましたよー。」

「なんだ、随分遅ぇから返り討ちにあったかと思ったぜ。」

「いやァ、割とマジで手ごわくて。もうちょい強い毒ないんすか?」

 

 笑いながらおぞましい話をする連中に斬りかかりたいのを必死に抑える。

……我慢してやつらの話を聞くうちに、なにかが引っかかった。片手斧使いと話す《ヘッド》とやらに、見覚えがある気がしたのだ。

 

「次は上手く()れ、《モルテ》!」

「……!!!!」

 その名前は、かつてキリト達とパーティーを組んでいたときに何度も何度もあの手この手で襲撃をかけてきた……あれ??

「モルテって死んだ、よな?」

 

 ヤツの最期の襲撃はよく覚えている。あの時外壁から落ちていったのを見たし、《黒鉄宮》にも行ってモルテの名前に横線が引かれているのも見た。

 それに、あいつの手口は後に現れたPK集団のラフコフと酷似していたため、

アルゴとの会話でやつが幹部クラスに収まってもおかしくないほどラフコフに近しいプレイヤーだったのではないかという結論になったのだ。

 そんなやつが《ヘッド》と呼ぶプレイヤーなんて、一人しか思い浮かばなかった。

 

 《ヘッド》の顔が少しだけ見える。……『オレ』は、そいつを知っていた。

あのクソ野郎の名前は、《PoH》。あいつがいなければ、少なくとも殺人ギルドなんてものが出てくることはなかったはずだ…!!

 キリトやアスナ、そしてシノンを苦しませる原因を一つ無駄に作りやがったクズを、

許 す と 思 っ て い る の か ! !

 

 『オレ』は剣を抜こうとして、そこではじめて空いた手を誰かが握っていることに気が付いた。

…フィリアだ。彼女は涙を流しながら、必死に『オレ』を引き留めている。

 むかし、妹に似たことをされたことをおもいだした。

 

 …こどものころ、妹を剣道で負けた腹いせにいじめていたクソガキをボコって、二度とこんな気を起こさないように歯を折ってやろうとした時だ。

 後ろから自分の胴体にしがみつき、

「もういいよ、やめてよ」

と涙を流す妹を見て少しだけ冷静になって…ボコボコにしたいじめっ子に二度とするなとくぎを刺した記憶がある。

 

 …そうだ、ここで暴れてもやつらは簡単に逃げてしまうだろう。

それよりもここでやつらの情報を抜き取った方がいいはずだ。

 斬りかかりたいのを必死に抑え、やつらの言葉を聞き逃さないように集中する。

 

「それで、NEXT TARGETは…ん?………。」

(…気づかれたか…!?)

 こちら側、というかモルテが来た方向を見ているが、こちらに気付いたというよりも、なんか気になった程度のようだ。

「おい、場所を変えるぞ。つけられてるかもしれん」

「へーい」

 

 やつらはすぐにその場から去っていった。

 あいつらが《ラフィン・コフィン》だったとしても、『オレ』にとってPKは倒すべき敵だ。

仲間を守るためならなんだってしてやると気分を新たにした。

「……さて、あいつらもいなくなったんだ、先に進もう。」

 

 洞窟の奥にはたくさんの宝箱が置かれた大部屋があった。

「ワーイ、お宝つかみほうだいだ~♪………なんて言うと思ったかァ!!

知ってるぞ、どうせ半分以上の宝箱がミミックとかトラップだろ、だまされんぞ!!」

「でも、全部調べてみようよ。ミミックや罠だったらほっとけばいいしさ。

ちょっとまっててねー」

 

 フィリアは時間をかけて、確実にトラップを解除していく。

部屋の入り口と仕掛けの解除をしているフィリアを視界にいれながらストレアと話していると、

「…お?これって…。おーい!見つけたよ、竜の秘宝!」

フィリアがそんなことを言いながら宝石を掲げていた。

 

 竜の秘宝、正式名称は《飛竜の王玉》を手に入れた僕たちは、ダンジョンの封じられた扉を開け、

そこにいたドラゴンをボコって竜王の証をゲットした。

 なんかネームドボスっぽかったけど、苦戦せず倒せたのはよかった。

「これであそこも通れるようになるな。またお使いやらされることにならない限り…。」

 

「こ、怖いこと言わないでよ~!そんなことになったらいったん帰るからねアタシ!」

 割とガチトーンでストレアは言うが、そんなことになったらいったん管理区に戻ってあのクソドラゴンを射落とせるシノンを呼んでトンボとりなんだよなぁ…。

羽根をズタズタにして叩き落としてからフルボッコにしてやるんだ。

 

 …ラッキーなことに、竜王の証を封鎖された場所に持っていくと通れるようになったのはよかった。

ただ、その先は道らしきものは浮島くらいで、安全に渡るための橋とかは見当たらない。

「………落下したらどう「死ぬね。」…デスヨネー。これをジャンプで渡れってこと…なんだろうな」

 

 鎧を比較的軽いものに変え、機動力を確保する。数値上の防御力は下がるが、ジャンプ力が足りなくなることはないだろう…多分。

「それじゃ、先に行ってみるねキリヤ。乗ったら砕けそうなのは無視して、一人ずつ渡ろう!」

「おー、わかった。一応転移結晶で管理区に戻れるようにしとくんだぞー」

 

「…本当に大丈夫かな…。キリヤは心配じゃないの?」

 ストレアは前に進む僕にそう聞いてきた。

「………。今日のフィリアが率先して危ないことをしていることか?

それとも《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の奴らがここにいたことか?」

 

「…どっちも。」

 …ストレアはフィリアのことをものすごく気に入ったらしい。

 まあ、わからなくもない。僕もフィリアと友達でありたい、本人にはまだ言えてないけど。

 

「僕は、フィリアを信じたい。助けてほしい時はきっと言ってくれる、といいなぁ。」

 僕の希望的観測に苦笑しながらも、ストレアは優しい声で肯定してくれた。

「…そうだね。その時は全力で力になってあげてね、キリヤ。アタシも頑張ってみるからさ」

 その言葉にうれしくなった僕は、鼻歌を歌いながらフィリアの後を追う。

「…ありがと。そんときはよろしく!」

 

 浮島エリアを超えてたどり着いたのは、巨大な塔だった。

「そういえば、この辺りに飛んでったよね、あのドラゴン。

やっぱりあいつがエリアボスなのかな」

 

 フィリアはあのドラゴンが気になったらしい。たしかにこの辺にいそうだなあのトカゲ。

「あんな自信満々に出てきたのに中ボスだったら爆笑なんだけどな。」

「さすがに固有グラフィックもらっといて中ボスは………ないと思うけど。」

 

 中にいるモンスターを倒しながら塔をマッピングしていく。

…なんとなく武器を持ったのが多い気がするな。

「てっきりドラゴン系が住んでるのかなと思ってたんだけどさ、割と武器で武装してるね、ここの敵」

 

 ストレアの言葉にうなづく。…一体どういうことだろうか。

 ドラゴンが統治しているのなら、サイズが小さい同種がうろついていてもおかしくないんだけどな。

「………。同種がいない、とか?」

 

 フィリアの予想は、なんとなく当たっているような気がする。

 そうしてたどり着いたボス部屋の入り口と転移石がある部屋は、

美しい剣が何本も壁に飾られておりいかにも凝っている。

 

「ところで、今何時くらいかな。十九時には戻ってきて夕食って言われてたんだけど」

 フィリアはアイテム整理をしている手をいったん止め、時間を確認する。

「…もう六時過ぎてるよ。」

「………。帰ろうか!」

 

 

 一度解散することになった僕たちは、ホロウ・エリアを後にした。

 ストレアと別れ、赤羽亭に戻った僕はシノンと夕食を食べると、速攻で寝てしまった。

…PoH達とニアミスしたことで、精神的に疲れていたのかもしれない。

 

 明日は、誰を誘おう、かな……。

 




《モルテ》
 初登場作品:プログレッシブ
 WEPON:片手剣、片手斧
 SAOPにおいて暗躍する、ベータテスターのオレンジプレイヤー。
 かなり飄々とした性格だが、同時に殺人に一切抵抗がない狂人。
 《クイックチェンジ》によるメイン武器の変更でキリトを苦しめた強敵で、
おそらく《ラフィン・コフィン》に関係する人物。

 この物語では既に本人は故人で、死因は落下死。
 ホロウ・エリアでPoHとともに暗躍しているが目的は不明。
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