ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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 まさかの人物が再登場します。
 


第二十六話 予期せぬ出会い

 ゾ―ディアスを討伐した翌日、僕はアスナさんから呼び出されていた。

『キリヤ君、明日お休みが取れたからホロウ・エリアに行くんだったら誘ってほしいな! 

というかそのために休みとりました、護衛は適当に撒くから、そっちにむかうねー』

 …朝からメッセージを送ってくるなと言いたいけど、文面がすごく楽しみにしてそうなので怒る気になれない…。

 

 かといって文句くらいは許されていいと思う。

「………あの、今六時半…。」

「そうね、今日はよろしくねキリヤ君! さっそくだけどホロウ・エリアへ行ってみましょう!」

「なんか楽しそうですね? いいことでもありました?」

 

 その言葉にニッコニコのアスナさんは軽やかにステップしながら理由を語る。

「だって、護衛が近くにいないのって久しぶりなんだもん。

…活動日ならともかく、休みの日にまでついてこようとするなんてサイテーだと思わない??」

「それはもはやストーカーなのでは? …あ、いや同性の可能性もあるかぁ…。」

「男よ、その護衛」

 

「追放するべきでは??」

 少なくともそいつは護衛を辞めさせるべきでは?

「やっぱり? 団長に言ってみたけどどこ吹く風というか。

………この話もうやめようか。 わいてきたら困るし」

 

 よほど問題のある護衛なのかため息をついたアスナさんに、かける言葉が見つからない。

 …部外者が首を突っ込むのはリスクを伴う。

 それでもいつかお人好しの誰かが彼女の助けになると、僕は信じることにした。

 

「」

 フィリアはフリーズしている。

 …無理もないか、今回の相棒(パートナー)《閃光》のアスナだもんなぁ。

 ある意味ではアルゴ以上の有名人、その細剣使いの容姿を誰もが直接にせよウィークリー・アルゴの記事の写真越しにせよ見たことがあるんじゃないかと思う。

 

「………。本当に《犯罪(オレンジ)》なのね。」

 アスナさんはなにかぼそりとつぶやくが、良く聞こえなかった。 

「……え?」

「……なんでもないわ。 よろしくね、フィリアさん。」

 

「あ…はい。 ………。」

 あのフィリアが緊張している。 …これはちょっとよくないな。

 《犯罪(オレンジ)》嫌いのアスナさんと《犯罪(オレンジ)》のフィリア。

 二人とも仲良くなりたいとは思いにくいんじゃないだろうか。

 僕だって嫌いではあるけどなんでかフィリアは身内認定なんだよなぁ。

 

「………知ってると思うけど、私はアスナ。血盟騎士団の副団長よ。」

「…フィリア。わたしはトレジャーハンターのフィリア。…今日はよろしく、副団長さん」

 …ほんの少し不思議そうな顔のアスナさんにひそひそと説明する。

 

「けっこうやりてなんですよ、この子。宝箱のことは任せてあげてくださいね。」

「そうなの?ならいいんだけど。」

「…大丈夫ですよ、悪い奴ではないです。」

 フィリアの顔を見る。 退屈そうに足をプラプラさせている様子は、どことなく子どもらしい。

 

「…おはなしはもう終わった? そろそろいこう、キリヤ」

 不機嫌そうなフィリアに苦笑しながら、僕らは新しいエリアへと向かった。

 

 ペンダントで新たなエリアを開放すると、潮の匂いが鼻に届く。

 そのまま歩いて行った僕らを待っていたのは、砂浜だった。

「…おお? …う、海かこれ!?」

「アインクラッドにも、一応海水で満ちた階層はあるけれど…海そのものは初めて見たわね。」

 せっかくだし後で釣りをしてもいいかもしれない。

 

 カニの甲殻にヒビを入れると、二人がそこに正確な一撃を叩き込んでカニを仕留めた。

「…よし、いいかんじ! ………。 ねえ、フィリアさん。」

「……なに?」

「最前線でもやっていけるわよ、あなた。 個人的にギルドにスカウトしたいくらいにはね」

 

 アスナさんの笑みに変な顔をしながらも、フィリアは質問する。

「わたし犯罪(オレンジ)だけど。 …そういう脛に傷がある人間を攻略ギルドに入れていいの?」

「なんとなくだけど、あなた殺しを進んでやるタイプじゃないでしょ?

罪をちゃんと償ってからということになるけど、血盟騎士団はあなたを歓迎するわ。」

「人を、殺したのに?」

 

「殺したいから殺したの?」

 ふるふると首を振るフィリアに、アスナさんはこう言った。

「考え続けることが大切なんじゃないかしら。殺した相手のことで悪夢を見るかもしれない。

殺したことで、自分の命の価値が大暴落して死にたくなるかもしれない。

…それでもお腹は減るのよね。おいしいものを食べて、それから考えるのがいいと思うよ」

「………。 おぼえとく。」

 

 しばらく海辺を進んでいくと、一人の剣士がコボルド相手に戦っているところに出くわした。

 …ホロウ・エリアでも珍しくない光景だが、その髪色に僕は呆然とする。

 鮮やかな青色のそれは、同じ色を聖竜連合のリンドもやっていた……。

 

………()()。あいつは元々あの髪色じゃなかった。

 あいつが染めた原因は、ディアベルが死んで代わりになろうと…。

「………は?」

 

 ぼくは、彼を知っていた。

 もう、一年以上前第一層のボス攻略においてリーダーを担当し、唯一の死者になってしまった彼の名前は、《ディアベル》。

 

 コボルドを《バーチカル・スクエア》で倒したディアベルは、呆然とする僕とアスナさんに気付く。

「おや、こんにちは! 今日はいい狩り日和だね、順調かい?」

「あ、えーと…まあボチボチ、かな」

 当たり障りのない返事に苦笑する。

 

「オレはディアベル、よろしく!」

 知ってるよ。なんであんたここにいるんだよ!

 いやモルテもいるからあんたがいてもおかしくないんだが…!

「こんにちわ、ディアベルさん。私はアスナ、こっちは情報屋のキリヤ君で、この子はフィリアよ」

「アスナに、キリヤにフィリアか。君たち、このあたりには海賊が出るって話だから気をつけてね」

 

 …海賊?

「えっと、具体的には?」

 ディアベルは先ほどまで戦っていた場所をちらりと横目で見る。

「さっき戦っていたのは海賊の一味さ。…オレはここを牛耳っている海賊のカシラを倒したいと思ってる。

もし戦うつもりなら、オレも連れて行ってほしいんだ。………勿論、できる限りで礼はしたい。」

 

「…ちょっと作戦タイムいいですか?」

「ああ、もちろん。強制というわけじゃないからね」

 ディアベルから少し離れた場所で僕たちは話し合いをすることにしたが…。

「ディアベルとコボルドってまんま死亡フラグじゃない?」

「それよりも死んだはずの彼がどうしてこんなところにいるの?」

 

 アスナさんの疑問に答えたのはフィリア。

「たぶんだけど、ホロウ・エリアでうろついているプレイヤーは…()()()()()()()()

プレイヤーのキャラデータとAIで何かしらの実験をしてるんじゃないかな?」

「……何かしら、とは…?」

「そこまではちょっとわかんない」

 

 まあ、あのディアベルがコピーだろうとそこまで問題ではない…かな。問題ではないといいなぁ。

 くたばったはずのモルテが元気にPKしてるし誤差だよ。

「でもさ、海賊ってたぶんコボルドだよな?…ディアベルの死因じゃん!!」

「…ほっといたらまた真っ二つになるわね。もう二度とあんな酷い突然死は見たくないわ。」

 

 ポカンとしていたフィリアは疑問に思ったらしい。

「えっと、知り合い?」

 僕が簡単に説明すると、フィリアは困った顔をする。

「…第一層で一人だけ死んだっていうのは、聞いたことがあるけれど…。

あの人、わりといい人みたい…。」

「死んだのが惜しいくらいだよ、あの男。…死んでなかったら巨大ギルドを作ってたかもな。」

 

 …もちろん本心だ。でも、ラフコフの事を考えるとどこかで大惨事になってそうでもあるんだよな…。

「……僕としては一緒にこのエリアを攻略するのはアリ、だと思う」

「ディアベルは片手剣と盾の壁役(タンク)だからキリヤ君とローテーションできるし。

コピーだとしたら死因と同じ状況になったらやらかすかも。」

「そうなったら目覚めが悪くなるよ。目に見えるとこで監視しとくのがいいんじゃないかな?」

 

 フィリアの言葉に僕らは頷いた。

壁役(タンク)が一人増えるだけでパーティーの安定性は格段に増す。そういった意味でも手放すには惜しい人材がこちらから入ってくるのを止める理由はなかったからだ。

 ディアベルのところに戻り、彼を歓迎することを伝えると、ディアベルは礼をする。

「ありがとう、三人とも!オレが生きてるうちは、誰も死なせないつもりで戦わせてもらうよ!」

「やめいそんな不吉なこと言うの!! せっかく出会えたんだ。…全員で勝って、笑顔で帰ろう!!」

 

 守りが厚くなった僕らのパーティーは、破竹の勢いで入り江エリアを攻略していった。

 灯台の宝箱から出てきたハンマー《岩砕きのマトック》で坑道を防ぐクソ硬い岩を粉砕しながら、僕は考え続けていた。

 …フィリアとの冒険をいつまで続けることができるだろう、と。

 

 いずれ僕は最前線に戻らなければならなくなる時期がくる。

 …始めは攻略の助けになればいいなと思っていただけだった。でも、フィリアとの冒険もすごく楽しかった。

 ラフコフ討伐戦で疲労して壊れかけていた心は、シノンとフィリアとの交流で少しずつ癒されていったのだ。

 この恩返しをしたいと常に考えているが、どうすればいいのかがわからない。

 

 

 ボス部屋の扉に手を掛けながら、僕は仲間たちの方を見た。

みんなのやる気に満ちた表情にこちらの気持ちも引き締まる。

 …難しいことは後でいいか! 気持ちを切り替えたぼくは目の前の扉を開けて、ボスに挑む。

 

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