ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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第二十七話 リベンジマッチ

 扉を開けた僕たちの前に、見覚えのある怪物が現れる。

 コボルド族の王であり、この入り江エリアを略奪している海賊王。

 その名は《デトネイター・ザ・コボルドロード》!!

 

 そのプレッシャーは一年以上前に戦った時よりも重く感じるが…。

「…いくわよ、キリヤ君、フィリア、ディアベルさん!

何度だって、倒してみせる!」

 今回は戦乙女(アスナさん)のやる気バリバリだぞ、負けるわけにはいかないっての!!

 

『グルラアアアアアア!!』

 コボルドロードが咆哮を挙げると、どこからか鎧で守りを固めたコボルドたちが現れた。

「行くぞフィリア、合わせろ!!」

「ええ、任せてキリヤ!」

 僕は《サイクロン》で一体のコボルドをかちあげると、フィリアが僕を足場代わりにしながらジャンプし、追撃のソードスキルを撃つ。

「く、らえええ!!」

 フィリアの放った《ラピッド・バイト》が隙をさらしたコボルドの首を刈り取った。

 

 とにかくコボルドロードにはできるだけ離れて、取り巻きの数を減らす。

 数が同じなら能力の高いボスがいる方が圧倒的に有利なのは小学生でも分かることだ。

 ボスに気を取られて後ろから殴られるのはごめんだ。

 

 アスナさんの《スター・スプラッシュ》が最後に残った取り巻きを串刺しにする。

「次っ!」

 ディアベルと交代しながらコボルドロードの足止めをしていた僕は、わざと奴の攻撃で後ろに下がる。

「「スイッチ!」」

 アスナさんが入れ替わり《カドラブル・ペイン》が海賊に叩き込まれる。

『ガッ!?』

 

 コボルドロードは急所を突かれ怯むが、数拍遅れながらもアスナさんに斧を振り下ろそうとする。

 

 ガキンッ!!

 

 その一撃をディアベルのバックラーが阻んだ。

「ぐ、くうッ! 大丈夫かい、アスナさん!」

「ええ、ありがとう! でもあまり無理はしないで!」

「もちろん、さ!!」

 パリングで斧を弾き、ディアベルの放った《シャープネイル》がボスにクリティカルヒットする。

 

『グルルド…!!』

 忌々しそうに唸るコボルドロードに笑みを浮かべる。

「…どんな気分だ、エリアボス。 こっちはまだ余裕があるぞ。」

 その言葉を理解している…のかは定かではないが、ボスは斧を放り投げると腰に着けた副武装(サブウェポン)に手を伸ばす。

 

 フィリアがそれを見て叫んだ。

副武装(サブウェポン)に切り替わるわ!」

 コボルドロードが構えた武器は…七支刀!?

 現実世界では実践的な武器ではないが、このSAOではボスなどの強敵がドロップすることもある強力な武器だ。

 基本的には刀の上位武器と考えていいだろう。

 

 どうするべきか思考を巡らせる…まさにその時。

「おおおおお!!!」

 ()()()()()()()()()()()()

「ディ、ディアベル!!?」

 

 ……最悪に近い展開だ。

 このままでは第一層ボス戦の再現が起こってしまう。

 あの時は、たしかディアベルがボスにとどめを刺そうとして…刀スキルの《幻月》がスキルモーションを起こした直後のディアベルを両断したのだ。

 

 ディアベルはHPがわりと残っていたはずなので、運悪く真クリティカルが発生し事故死した…というのが僕の考察。

 でもアレはまともに喰らうと三連撃技の《緋扇》が飛んでくるからどの道殺されてしまう。

 技後硬直が比較的短い刀系のスキルコンボは、全身鎧を纏った僕では間に合わない!!

 

「アスナさん!!!」

 ……()()()()()()

 アスナさんの速さなら一撃目でスタンしたディアベルを二撃目のスキルから守れる。

 

「ちょっとごめんなさい!」

 アスナさんはディアベルをお姫様抱っこで抱え上げると、安全圏まで走り抜けた。

「!!?」

 ディアベルは数秒ほど目を白黒させると、泣きそうな顔で文句ありげにこちらを見る。

 

「……なぜ、助けたんだ。…オレは、君たちを利用したんだぞ。最後の一撃をかすめ取ろうとしたんだ」 

「ラストアタックボーナスなんか別にいらん。」

 僕は彼の言葉を切り捨てた。そんなもんより全員生き延びて勝つ方が何倍も価値がある。

「……それでも。オレは君たちの信頼を裏切った。」

「ここでボス部屋から情けなく逃げるよりマシだよ。」

 フィリアの言葉にディアベルは目を見開き、少しだけ笑った。

 

「………。ああ、そうだな。ここで逃げるほうが余程格好悪いじゃないか。

…すまない。こんなオレでもいいんなら、一緒に戦ってくれ!」

 その言葉に反対する者はいなかった。

 

「これで、どう!?」

「いくわよ!!」

 フィリアの《ファッド・エッジ》とアスナさんの《アクセル・スタブ》にコボルドロードが怯む。

「キリヤ!!」 「ディアベルさん!!」

 

 その呼びかけに僕とディアベルは走り出した。ボスのHPバーはもはや残り少なくここを逃せばボスの硬直が解けてしまう。

 このチャンス、無駄にはしない!

「「「「 ス イ ッ チ ! 」」」」

 

「おおおおおお!!!」

「はあッ!!」

 《ファイトブレイド》と《ホリゾンタル・スクエア》が、海賊王の体を切り裂いた!!

 

『グラアアアアアアアアアア!!!!!』

 断末魔の叫びを挙げたコボルドロードが爆散する。

 ディアベルの方を見ると、どこか少年らしい笑みを浮かべながら拳を突き出していた。

 ポカンと口を開けるが、ふと僕はその拳に第一層ボス戦後のことを思い出した。

 

 キリトとグータッチをやろうとしたらキバオウに糾弾されて、結局できなかったのは少しだけ心残りではあった。

 あの時のやり直し、というわけでもないけれどグータッチに応じる。

 それを見ていたフィリアがふくれっ面でこっちを見ていた。

 

「むう…いいなあ。」

 いじける少女に苦笑いしながら手を高く上げる。

「フィリアもおつかれさま、ほら!」

「!! いぇーい!」

 パンッ!といい音でハイタッチする。…フィリアともだいぶ仲良くなったよな、初めは呉越同舟みたいなもんだったけど、今はもうフィリアとの冒険が楽しい。

 

「…ところで、ラストアタックボーナスどっちが取ったの?」

 アスナさんの一言でハッと我に返る。そういや僕のとこには出てねーな!

「おめでとう、ディアベル!」

 ディアベルは何かを考えると、ストレージを操作し始めた。僕の目の前にトレード用のウィンドウが現れる。

 

「…あげるよ」

 トレード場面に出てきたのは装備品らしきアイテム。ディアベルが手に入れたラストアタックボーナスだということはすぐにわかった。

「……せっかく手に入れたのにいいのか?」

「いいんだよ。…もし、オレの目論見がバレずにこれを手に入れたとして…きっとこいつを装備するたびに仲間をだましたことを思い出すんだろうな。

…騎士がそれじゃあカッコ悪いだろ?」

 

 少し照れながら笑みを浮かべるディアベルにそこまで言われたら、こちらとしても断る理由はない。

 装備してみると赤みの強いオレンジ色のマントが僕の背に現れた。

 名前は《黄昏の外套(マント・オブ・トワイライト)》というらしい。

「なるほど、夕焼けの色だな。…どうかな?にあってる?」

 

「カッコイイよ!いいじゃん、なんか騎士っぽい!」

「太陽の模様はベタすぎな気もするけど。それ白い鎧のほうが似合うんじゃない?」

 フィリアは褒めてくれたがアスナさんの評価は微妙。…まあ、紫色の鎧じゃ無理もないか。

 

「さて、キリヤたちはこれからどうするんだ?」

 ディアベルが尋ねる。

「うーん。…とりあえず今日は帰ろうかな。ディアベルは?」

「……先に帰っていい、オレはまだやることがあるからな。……()()()()()、キリヤ。」

「………?? ああ、またな。」

 

 

<SIDE:ディアベル>

 キリヤ達と別れ、オレは一人ダンジョンを歩いていた。鼻歌を歌いながら歩くオレの気分は逆に落ち込んでいく。

 ……どろりとした殺意が死角からまとわりついてくることを喜ぶやつはいない。

「………気づいてるよ。どうせバレてるんなら出てきてもいいだろう?」

 

 ジジッという音とともに、四人の人間が虚空から現れる。

 《隠蔽(ハイディング)》を解除して現れた彼らのカーソルは予想通り犯罪(オレンジ)に染まっていた。

「よォ、今日は良い夜だな騎士サマよォ…死ぬにはなァ!!!」

 

 オレは剣を抜いた。死ぬためではなく生きる為に。

「悪いが、ここで死ぬわけにはいかないな!」

 ニヤリと笑う。生き残る可能性が1%でもあるのなら、抗ってみせる!

「おおおおおお!!!」

 

「 イッツ ショウタイム 」

 

 

<SIDE:フィリア>

 深夜になってもわたしは眠ることができなかった。

 この管理区は圏内だが犯罪(オレンジ)プレイヤーも入ることができる。

 ……今までは、それでもよかった。犯罪(オレンジ)のわたしでもモンスターに襲われることなく休むことができたからだ。

 

 今はちがう。ここは安全地帯ではなく人殺しを日常的に楽しむ連中が入ってこれる。

「よォ、いつまであのイカれた狂犬とつるんでるつもりだ?」

犯罪(オレンジ)ギルドのアンタに教えるとでも思ってるの!?」

 

 そいつは肩をすくめながらわたしを嘲笑ってきた。

「いや、マジで心配してんだぜ?言っただろ、このままじゃ死ぬって。

()()()()()()()()()()()。」

「………え?」

 

 意味が、わからない。 わかりたく、ない。

「あいつの正体を知ってたらそんなのんきにできるわけがねェ、知りてェか?……知りてェよなァ!」

「しょう、たい?」

「あいつの二つ名さ。…聞いたことねェか?犯罪(オレンジ)ギルドをたった一人で壊滅させるバケモンのことをよォ!!

あいつの名は、<暗黒騎士>だ!!!」

 

「え、え…?」

 それは、犯罪(オレンジ)ギルドを壊滅させる事のみに力を使う正体不明の剣士。

 それは正義の味方というより、悪の敵というのが正しい。

 …キリヤの優しい笑顔と、まったく結びつかない。

「『あいつがそんなことをするはずない』…とでも思ってんのか?

そう思わせてから後ろからザクッとやるのがあの野郎だ。それに、暗黒騎士のやつを止めなきゃ全員死ぬんだぜェ?」

 

「アンタに何がわかるっていうの!!?」

「あの狂犬はおまえの事なんざな~んとも思ってねェよ!あいつは強くなりてェだけだ!!」

 この男の言うことは、絶対でたらめだ! ……でたらめで、あってほしい。

「…それより全員死ぬとはどうゆうこと、キリヤがなにかしたらホロウ・エリアが爆散でもするの!?」

 

「…勘がいいじゃねェか。あいつをほっとけばまず間違いなくこの世界はクリアされちまうだろうな。

そうなればどうなると思う?」

「…現実世界に帰れる。」

「違うねェ!!なァフィリア、薄々わかってんだろ?自分が何者なのか!!

…《ホロウ》だよ、おまえは。」

「………ほ、ろう?」

 

 男は嗤う。

「《ホロウ》ってのはプレイヤーのコピーだ。このホロウ・エリアでしか存在できねェ、NPCの亜種さ。

おまえは、人間じゃねェんだよ、わかるか?」

「……………うそ、だ。そんな、わけ…」

「全部知ってんだよ。取り繕う必要はないぜェ?」

 

 このままじゃこいつの思うつぼだ、なにか、なにか情報を…!

「アンタ、何が言いたいのさっきから!!どうせ本題はまだ言ってないでしょう!?」

「ああ、ちょっとあいつを裏切れ。あいつがこのゲームをクリアしちまえば、おれらは消されるからなァ。

なに、ちょーっとだけ誘導するだけさ、死ぬわけじゃァない。それどころかおまえは手を汚さねェんだ、断る理由はねェだろう?」

 

「………。」

「…次会うときに返事を頼むぜェ。なに、悪い話でもねェさ。おれの計画が全部うまくいけば、あいつはこのホロウ・エリアに永遠に留まることになる。

それはおまえの望みのはずだ」

 …やつは管理区から出ていったが、仮想の心臓は早鐘を打ち続ける。

「………きり、や。」

 

 

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