ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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第三十四話 最後の休息

 《アメディスター・ザ・クイーン》は度重なる襲撃で返り討ちにあった影響か、動き(モーション)が鈍い。

 このまま押し込むぞ、いきなりブレスを吐いたりしない限りは問題なく勝てるはずだ。

 

「キリヤ、スイッチ!!とぉりゃあああ!!」

 

「おう、任せたぞストレア!!」

 

 ストレアの放った《アバランシュ》が硬直しているボスに直撃し少なくないダメージを与える。

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()()…?

 雑魚と戦ってる時とボス戦の時で、DPSが違う気がする…。フロアボスのラストアタックボーナスとかでもおかしくないユニークな性能だ。

 

(………ストレア、きみは…誰なんだ…?)

 

 

 ズタボロになったボスに、ストレアはとどめを刺そうと近づく。

 ストレアは、笑っていた。我が子を祝福する聖母のように、もしくは哀れな命を狩り取ろうとする死神のように。

 《アメディスター・ザ・クイーン》は、怯えていた。自身の目の前に立つ得体の知れない存在に…。

 

「じゃ、おやすみ。」

 

 女王の頭がかち割られた。ラストアタックを取った、というには一方的な処刑。

 犯罪者(オレンジ)ギルドとの戦いでも久しく感じていなかった、得体の知れない何かへの恐れが僕の中にあった。

 彼女が記憶を取り戻したら、僕とストレアは…友達のままでいられるのだろうか。

 

「……………。かえろう、二人とも。」

 

 ストレアはにぱーっと笑った。…さっきの人外じみた美しい笑みよりも、僕はこっちのほうが好きだな。

 

「えっへっへ、うん!これで全部のエリアボスをやっつけたんだよね?

で、アップデートを阻止するには管理区内にある隠しエリアに行かないといけなくて…。」

 

 フィリアは頷きながらそれでも希望に満ちた顔をしている。

 うまくいけばアップデート阻止と同時に彼女をこの世界から縛り上げるものはなくなる。

 

「キリヤ。…そっかぁ、あとちょっと、なんだね…。…仕方ないけど、もうすぐおわりなんだ…。」

 

 その言葉の意味に気づいたのか、少女は少しだけ名残惜しそうな表情を見せる。

 あたまをおもむろに撫でると、恥ずかしいのか数秒撫でられたあとすぐに手の届く範囲外に逃げてしまった。

 

「お、ッとと…。フィリア、大丈夫。僕は君と一緒に帰るんだ、絶対に!!

アインクラッドに戻ったら忙しくなるぞぉ?」

 

「………うん!ああ、そーいえばアスナからスカウトされてたっけ?

今のうちに考えておいた方がいいよね?」

 

「ハハ、そうだな!アスナさんってそういうの覚えてるタイプだし断るにしても伝えに行かなくちゃ。

ソロプレイヤーのままだとしても怒りはしないだろうけど。」

 

(その時が来るのが楽しみで仕方がないな。アインクラッドだって牢獄には違いないけれど…この世界(ホロウ・エリア)よりはマシだ)

 

 ホロウ・エリアはセーフティエリアが極端に少ない、理由はきっと必要がないからだ。

 だってここにいるプレイヤーはコピーされたものなので替えが効いてしまう。

…ホロウが知っていい情報ではないよね、これ。POHと同じ立場になったら、僕もきっと抵抗する。

 

 

「キリヤ、ちょっといい?」

 

 《赤羽亭》に帰ろうとする僕に、ストレアが声をかけてくる。

 

「ん?どうしたのストレア?」

 

「今日は楽しかったよ。実はね、ボス戦って初めてだったんだ。」

 

「…え?」

 

 そんな馬鹿なと言おうとして、彼女が記憶喪失なのを思い出す。

 記憶喪失になる前からあの剣を手に入れていたということか…?

 いや、とりあえず聞いてみるか。

 

「その両手剣さ、ボス特攻とかついてないか?」

 

「うん、もしかして珍しいの?」

 

「フロアボスのラストアタックボーナス並みに…。」

 

「はえー、すっごい。」

 

 とぼけたことを言いながらストレアは自身の剣をじろじろと見ている。

 泣き出しそうなのを我慢している顔を見て、僕のこころはざわつく。

 

「…コレさ、気づいたときにはもう持ってたんだよね。デザインが凝ってるから店売りの市販品じゃないなとは思ってたんだけど…。

そっか、ボスドロップかもしれないんだ…。……………やっぱり、アタシ思い出したいよキリヤ!!

()()()()()()()()!!?」

 

 涙を流しながらストレアは叫んだ。

 

「ストレア…。」

 

「…………ごめん、もう帰る…!」

 

 そう言いながら彼女はかなりのスピードで走り去る。

 僕は追いかけようとしたもののすぐに路地裏に入られてしまい、追うのを諦めた。

 《隠蔽(ハイディング)》の熟練度が高いストレアをこの状況で見つけるのはムリだ。

 

「………クソッ!あんなに思い詰めてたのか、あいつ……。

ダメだなぁ、『オレ』…。」

 

 気分が落ち込んでいるのに、ぽつぽつ雨が降り始めたのをみてため息をつきそうになる。

 

「…帰るか…。さすがに雨降ってるんならあいつも雨宿りするよな?」

 

 

 《赤羽亭》に戻った僕は、消費アイテムの類がかなり減ってしまっていることに気づいた。

 明日一日で買い揃えなくちゃ…。

 

「…シノン、明日は一緒に買い物に行こうよ。」

 

 僕はベッドの上でゴロゴロしている彼女に声をかける。

 

「前に買いたいのがあるって言ってたけど、いいの?」

 

「もう目標額まで貯まったし、いつ買いに行こうかなって段階だよ。」

 

 彼女はすこし考えると、楽しそうに微笑んだ。

 

「先にそっちを買ってからでいいんじゃないかしら?次に消耗品とか食材を買って…。

そのあとはどうしようかしら。……久しぶりにデートする?」

 

「…そういえば最近ホロウ・エリア攻略で忙しかったしいいかもしれないなぁ。

あー、でも何買ったか今は秘密にしときたいしなー。どーしよ………」

 

「なら先に目当てのものを買ってきたら?私もいろいろ準備したいし」

 

 頭を抱えて悩む僕にシノンが助け舟をだす。あ、ありがたい…!

 

「ほんとゴメン…、ホロウ・エリアのアップデートをなんとかしたらちゃんと見せるから…!」

 

「…約束よ?ちゃんと勝って戻ってきなさい。死んだら許さないからね!?」

 

「もちろん!死なないように頑張ってくるよ。…それじゃ寝ようか」

 

 ベッドの中に潜り込みシノンの瞳をじっと見つめる。

 

「おやすみ、キリヤ。朝ごはんどうする?」 

 

「んー…食べる前に行くー。すぐに戻るか、ら…」

 

 ダメだな、眠気が強くて…いしき、が…。

 

<SIDE:シノン>

「……寝ちゃったみたいね…。」

 

 なんとも幼い寝顔を晒す恋人になんだか心が癒される。

 最近ホロウ・エリアの探索をぶっ続けでやって疲労が溜まっているからか、最近の彼はベッドに入るとすぐに寝ている。

 起きてるときは全くそんな素振りを見せないのに…。

 

(自分と同じくらいの年なのにこうしてみると年下にも見えるなぁ…。

アバターの年齢は十代前半くらい…?二年ここにいることを考えても二十歳(ハタチ)は超えてないと思うけど…)

 

 

 キリヤの頬をつっついて遊ぼうか悩んでいると私もなんだか眠くなってきた。

 ………もういいや、眠気に抗う理由もないし寝てしまおう。

 彼のからだをぎゅっと抱きしめながら、幸せな気分で眠りに落ちていく。

 

「ふふ…明日はなに着ていこうかな……………」

 

 翌日、アラームで起きた私はキリヤの姿を五秒ほど探し、もう外出していることを確認する。

 とにかく朝食なにがいいか、メッセージを送信して…。

 

『おはよう、朝ご飯なにがいい?』

 

『サンドイッチ、ハムとレタスがいいな。あと三十分で戻るから!』

 

『オッケー、またあとで!』

 

 …よし、とりあえず着替えよう。久しぶりのデート、楽しみだな。 

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