ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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第三十五話 水遊びのち決闘、その後釣り

<SIDE:シノン>

 朝食のサンドイッチと牛乳(主街区近くの牧場で100コルで買える)に舌鼓を打ちながら、私は新聞を見るキリヤを見ていた。

 アルゴとの縁から《ウィークリー・アルゴ》を定期購読しているものの、エンタメ重視で良くも悪くも値段相応のため情報の精度としては低い。

 …しかし、いつもはパラパラ流し読みする彼の手があるページで止まった。

 

「…なにか面白いニュースでもあった?」

 

「…………見る?」

 

 困った顔をしたキリヤから新聞を受け取り、そのニュースを見る。

 

「……なになに…。<六十一層主街区《セルムブルグ》のNPCが新クエストの予告か?>

………六十一層…たしか、主街区と迷宮区以外海じゃなかったっけ…?」

 

「そうだよ?今さっき買い物のために行ってきたんだけどさ、()()()()()()!!

町の漁師が、殺人クジラがでたってわめいてたからな!嫌な予感しかしねぇ!!」

 

「さ、殺人クジラぁ?…え?いきなりそんな話が沸いてきたの…??」

 

「この前ガ●ラ擬きが出てくるクエストが発見されたらしいからな…。

妙なクエストが増え始めてるんだ、この世界に…。茅場め、なに考えてやがる!?」

 

 忌々しそうに牛乳を一気飲みしながら開発者に恨み言を吐き出すキリヤ。

 なんだかすごく珍しいものを見た気がする。

 ……まあ、キリヤが言うには自分の箱庭を創りたいが為に一万人をデスゲームに参加させたクレイジーGMらしいので擁護は不可能だけど…。

 

「ま、まあ茅場が何してようが今は手出しできないから放っておくとして…。

今日はどこに行こう?七層のカジノ…は駄目だな、昔元締めのコルロイ家にケンカ売って出禁になったし…。」

 

「なんかさらっととんでもないこと言わなかった??」

 

「~~~~♪」

 

「口笛でごまかさない!」

 

 聞きたい、その話すごく聞きたい。なにがどうなったらカジノの元締めにケンカなんて売ることになるの?

 

「じゃあどこがいいかな…。……………。そうだ、散歩しよう。」

 

「さんぽ?おすすめの場所でもあるの?」

 

 にっこりとキリヤは笑みを浮かべた。 

 

「少なくとも、ゆっくりはできるよ。なんてったって、フィールドにMOBすら出てこないからな!」

 

 

 主街区で消費アイテムと食材を買い込んでから、転移門で私たちは二十二層へやってきた。

 広大な面積を常緑樹の森林と無数の湖で構成された、のどかな階層だ。

 …ようするに攻略組の面々が来るわけもないド田舎ということでもある。

 

「モンスターが出てこないっていいわね…。余分な装備で体が重くないのって久しぶりだし、人も少ないし………」

 

 それに、貴方を独占できる。後ろ暗い歓喜を感じながらも、それをできるだけ隠そうと冷静に振る舞う。

 軽蔑されたくないなぁと思いながら、私は湖の中に素足を入れてみた。

 

 水の中はひんやり冷たくて心地いい。けど、もうすぐ九月も終わるし十月になったらキンキンに冷えて足を入れるどころではなくなるよね。

 そう考えるといい時期に来たんじゃないかな。

 

「ふふ、気持ちがいいわね♪ キリヤもどうかしら?」

 

「残暑もそろそろ薄れてきて今を逃したら水遊びじゃなくて寒中水泳になるから。

…おお、冷たっ!」

 

 しばらくパシャパシャ音を立てながら涼んでいると、後ろから誰かの足音が聞こえてくる。

 振り向くとそこには釣り竿とバケツを持った少女の姿があった。

 俗にいう釣り人スタイルだ。たしかにここは釣りをするには静かで最適かもしれない。

 

「……………。」

 

 おしゃれな麦わら帽子を被り薄紫の髪を一つにまとめた彼女を見て、私は挨拶をしようと声をかける。

 

「こんにちは!」

 

「あ、えーっと………」

 

 言葉に詰まった少女の顔を見たキリヤが突然大声を上げた。

 

「ああ!!み、ミトじゃないか!?え、こんな田舎でなにしてんのおまえ!!?」

 

「え、ミト…!?だいぶ雰囲気が違って気づかなかった…。」

 

「……………なんでこんな場所で知り合いと会っちゃうのよぉ…。

せっかくの休日なのにぃ!」

 

 帽子を外したミトは、観念したのかキリヤの隣に座る。

 

「運悪いわね。…ところで釣りスキルなんて、珍しいのを取ってるのね?」

 

「…………ここで魚釣ってご飯の一品を増やしたいのよ。」

 

「せ、切実ぅ!!攻略ギルドの一軍なのに貧乏学生みてぇなこと言ってて悲しくならないのか…?」

 

「このやろぉ!!最前線で見かけないなと思ってたら下層で遊んでたのかー!?

ふざけんな、攻略しろ!!」

 

「こっちはこっちで忙しかったんだよぉーーー!!

てめぇ、表出ろ!!女の子だからってニート扱いするのは許さねーぞ!!!」

 

 キリヤが外出用の薄着からいつもの装備に戻し、トトンッと軽やかに比較的広い場所に移動する。

 ミトの方を見ると、にやりと笑いながら釣り竿をデスサイズに持ち替え黒騎士を見つめていた。

 

「…イイね、《決闘(デュエル)》なんていつ以来だろ?

熱いバトルにしよう、キリヤ!」

 

 白と赤を基調にした少女騎士が、紫色の鎧に身を包んだ少年騎士と向かい合う。

 …これが煽り合いから始まったケンカじゃなければな…。

 

 キリヤがメニューを操作すると、15m先にいるミトの前にシステムメッセージが現れる。

 ……じつは、《決闘(デュエル)》を見るのはこれが初めてだ。

 前にアルゴからシステム的なことは教えてもらったから基本知識はバッチリあるけど…。

 

「ふたりとも、やりすぎないでねー!?」

 

 《決闘(デュエル)》のカウントダウンを見ながらふたりの構えを観察する。

 ミトは下段、キリヤは中段に構えているように見えるけど…。

 

 3 2 1

 

 カウントダウンが残り一秒になった瞬間。

 騎士たちは相手に向かって走り出した!!

 

「「おおおおおお!!!」」

 

 【D U E L !!】

 

 キリヤは地面をこするような軌道で剣を切り上げ、ミトは大鎌をクルリと回しながら迎撃し、刃がぶつかり合ってライトエフェクトを生み出した。

 つばぜり合いに持ち込むのかと思ったその時、ミトがキリヤの喉を柄で突いた。

 

「ガッッ!?」

 

「よし、隙ありぃ!!」

 

 喉元を抑え咳をするキリヤに追撃を加えようとミトは武器を振り下ろす。

 大鎌が肩に当たる寸前、キリヤがニヤリと笑った…気がした。

 

 ガキン。

 

「…………ん??」

 

 ……()()()?なに今の音、ダメージの音じゃなくない?

 

「……ひりひりへーふ(ギリギリセーフ)!!」

 

「は?…………はぁーーーー!!!???」

 

 …………信じられないものを見た。

 キリヤは、歯でデスサイズの刃を受け止めたのだ。

 

「ちょっと!?それあご大丈夫!?」

 

 思わずキリヤにツッコミをする。サラッと心臓に悪いことしないでよ、もう!!

 

「こっわ!!こいつこっわ!?一体なに考えてんのアンタァ!!?」

 

 ミトは明らかに引いていた。

 

「ふぁふぁひゃふはい(まだやるかい)? ほれはふぁふぁいふぇふほー(『オレ』はまだいけるぞー)。」

 

「…………降参よ。なんかもう…アンタと戦うの怖いわ…。あとそろそろ口を離せ、きたない。」

 

「ぺっ! いやぁ、できるもんだなぁ…。」

 

 反省した様子もなく笑うキリヤ。腹が立ってきたので少し灸を据えるために怒ろう、そのくらいは許されるはずだ。

 

「もう、二度とこんなことしないでよ!?失敗したら死んでもおかしくないんだから!!

まちがっても命を賭ける場面じゃなかったよね?」

 

「…………ごめん。さすがにあれは自分でも頭おかしいとおもう。」

 

「反省してる?」

 

「してます。」

 

「……………ひとまず信じるからね?」

 

 この人《犯罪者(オレンジ)》との戦いでもこういうことしてたのかなと思うと頭が痛い。

 離れ離れになるのはもう嫌だなぁ、いつ死んでもおかしくないことを知ってしまったし。

 

 

 その後キリヤとミトは《決闘(デュエル)》の代わりに釣りスキルで勝負を続け、キリヤが五匹、ミトが六匹釣り上げた。

 ミトはどや顔で釣果を自慢して、キリヤは悔しがっていた。

 

「…こんな日々がずっと続けばいいのに。現実世界は…しがらみが多すぎるから。」

 

「…シノン、『オレ』は後悔してることがあるんだ。妹と稽古の約束してたのにずっとすっぽかしちゃって。

あっちでやり残したこととかやりたいことないの?」

 

 キリヤの言葉が私に突き刺さる。それもそうね、二年以上アインクラッドにいたら家族のこと気にするのは当然だと思う。

 やりたいこと、やりたいことか……。

 

「ミトはSAOクリアしたらやりたいこと、ある?」

 

「格ゲー。格 ゲ ー が し た い 。 」

 

「か、格ゲー?」

 

「最近レバガチャが恋しくなってきたのよ、困ったことに!

ゲームの中でゲームやりたいとかだいぶキテるわ!!」

 

 ゲームセンターなんてほとんど行ったことがない。

 だいたいガンシューティングが置いてあるため近づくのが怖いからだ。

 

「キリヤはそういうところ行ったりする?」

 

「いや、ゲームは家でじっくり派。やってもクレーンゲームくらいかな。」

 

「へぇ、そーなんだ。…………。やりたいこと、か…。」

 

 帰ったら一度考えてみよう、自分のやりたいことを。

 

<SIDE:キリヤ>

 そうして最後の休日は静かに過ぎていき、未来を掛けた一日が始まろうとしていた。

 SAOが始まってから長きにわたり続いた因縁が、ひとまずの決着を迎えようとしている。

 僕らが負ければ大惨事、勝ってもほとんどの人にとって日常が続くだけだ。

 

 横で眠るシノンの頭を撫でながら、僕はこれから始まるであろう死闘に思いを馳せる。

 仲間たちを、好きな女の子を死地かもしれない場所に連れていきたくないと思った僕は、そっと出ていくことに決めた。

 書き置きを残した後ホロウ・エリアに向かう。

 

「…行ってきます。」

 

 

 さあ、決戦だ。《黒の剣士》や《閃光》と違ってこっちは目立たない影みたいなもんだけど、僕だってやるときはやるぞ!!

 暗黒騎士なんて大層な二つ名ついてるのは伊達じゃないんだ!




 

 ミトとキリヤの釣った魚はシノンが料理しました。
 ミトはニシダさんの大物釣りイベントにも参加する予定です。
 アスナの結婚バレが楽しみですね!

 次回も楽しんでもらえたら幸いです。そろそろホロウ・エリア編終わらせなきゃ…。



※六十一層の主街区ってアスナの家があるセルムブルグじゃん!!追記修正しました。
てことはアスナもホロウ・エリア編終わった後予定してるアレに参加しますね。
アレがなんなのか…はお楽しみに。
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