ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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 先日SAOの映画観ました。映画限定ヒロインとアスナの交流が良かったです。


第4話 一閃

 コボルドロードが骨斧を振り下ろす。その攻撃を盾持ちのタンクが弾き(パリィ)、攻撃後の隙を付いたプレイヤーたちの反撃が、ボスのHPを削った。

かなり順調にボス戦は進んでいると言えるだろう。おまけパーティーで取り巻きコボルドをボコボコにしながら僕はそう思った。

 昨日練習したスイッチを使ってのヘイト管理を上手く行い、キリトの連撃が、アーちゃんさんのクリティカル狙いの突きが、僕の剛撃がかみ合ったコンビネーションがコボルドたちを面白いように倒していく。

 その様子をチラ見していたキバオウが、キリトを睨み付けながらこう切り出す。

「どんな気分や、ボスが自分の手が届かんとこで倒されるんは?」

「…何の話だキバオウ」

「いや?これやったらおまえの狙いは無理っちゅうことや」

「狙いぃ?いや、俺の目的はボスを倒すことだ、お前は違うのか?」

「開き直んなや、わいは知っとるで。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 キリトは信じられないような顔でキバオウを見た。…何故ならば、その情報をビギナーであるキバオウが、知りえないからだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………。キバオウ、誰がそれを教えたんだ?おまえベータテスターが嫌いじゃなかったのか」

「えろう大金積んで《鼠》から情報を買ったっちゅうとったで!ハイエナ割り出すためにな」

 …噓だ。アルゴという情報屋は、一見どんな情報も売る女と思っている人間は多いが、()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()。恐らくそれが彼女の琴線なのだ。それを売ってしまえば自分が畜生以下の外道に堕ちてしまうと気付いているから。

 

 ボスのひときわ大きな咆哮で、思考が中断される。そういやボス戦だった。

 コボルドロードは骨斧と申し訳程度の丸盾(バックラー)を投げ捨て、腰に付けたサブウェポンに手を伸ばす。

 事前情報ではたしか、曲刀カテゴリの武器湾刀(タルワール)を使うらしいが…

 …タルワールって、あんなに細かったっけ、あんなぎらついた武器だったか? 

 イスラム圏によくある、粗雑な鉄の武器のようには見えない。どっちかというと、鍛えられた鋼のような…鋼!?

あれの正体に気づいた時には、既に遅かった。やつは、もうスキルを放つ寸前だった。

 キリトが後ろに下がれと叫ぶが、コボルドロードがスキルで跳んだ衝撃的な光景にみんなフリーズしている。

 

 落下したコボルドロードから紅い衝撃波が発生して周りにいた奴らが吹っ飛ばされる。

 見たこともないソードスキルだ。攻撃範囲が自分の周り全てというのは、

避けようがないじゃないか!! しかもこれ一時的行動不能(スタン)付きじゃん、バランス考えろバーカ!

 放っておけば間違いなく死人が出る、全力で走ってスタンした味方からタゲをとらなければ!

 そして、ボスの刃から味方の男を護ったのはディアベルだった。

 ディアベルはそのまま反撃のソードスキルをボスに撃とうとする…が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ディアベルがこちらを向き、少し口角を上げこう言った。

「あとは、頼むよ」

 彼を守っていた盾もアーマーも、ボスのサブウェポンの()()()の前には紙切れも同然で。

 ディアベルは文字通り両断され、体がガラスのように散った。

 

 それを見たプレイヤーの絶望の悲鳴がボス部屋を満たす。

 コボルドロードは敵将を討ち取ったことを理解し、ニヤリと嗤ったように見えた。

 ただただまずい状況だ、未知のソードスキルによってリーダーが殺られることで士気は最悪、みんな逃げ腰だ。

 撤退するにもこの混乱ではまともに指示が出せない…というか出すリーダーが死んだ。

 …逃げるべきだと理性は叫んでいる。だが…それは、()()()()()()()()()()

 ディアベルの仇を討ちたい。彼は()()()()()()()だったが、だからといってあんな無残にやられていい男ではなかった。

 

 

 先日深夜のことだ。僕はアルゴと共に依頼の報告に来ていた。

依頼内容は()()()()()()()()()()()()調()()()()()。依頼したのは、()()()()()

 ビギナーは、多数のベータ経験者が生き残っていると考えている。しかし、それは幻想だ。

 アルゴが言うにはベータテスト末期のログイン状況などを考えると、正式サービスに移行したのは七百から八百人前後、死者は三百人。

 …死亡率が高い理由は、正式サービス移行からの変更点。

このアインクラッドをよく知っているつもりでも、時々自身の知らない差異が現れた時、ベータテスターは()()()()()()()()()()()()()

 慎重に情報を過信せず、調べることを彼女の下で学んだ。でもこれは、割り切れるものじゃない。

 

 ディアベルはこの報告にため息をつく。

 会議であった時よりどこか影のあるその顔は、もしかしたらナイトの仮面を取った彼の素なのかもしれない。

「だが、ビギナーはその事情を知りようがない。もしボスの装備やステータスが変更されていたら。

もし対応が遅れ死人が出たら、もはやベータテスターとビギナーの協力は不可能になってしまう」

「…その時は非難の矛先をオレっちに向けてくレ。噓と真実を織り交ぜた情報操作で人々を転がす、

ベータ上がりの利己的でクズの情報屋アルゴ様の誕生サ」

「…っダメだそんなこと!僕は、アルゴにもっと教えてほしいんだ!それに、アルゴは攻略に必要な人だ、自分を大切にしてくれ!」

「オ、オウ!?…あ、ありがとナ、キリヤ」

 ディアベルはそれを見て、眩しいものを見たかのように目を細める。

「彼の言う通りだ。ベータテスターとビギナーの橋渡しを平然とできるのはアンタぐらいさ」

 そういいながら依頼料を渡す彼は最後に、

「…ところで、今回の依頼のことだが、他に同じことを聞いたやつはいるか?」

と質問する。

「…一人いるヨ」

 ディアベルはニヤリと笑うとすぐ真顔に戻って

「……そうか。良かった、つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…リーダーなんてやりたがるやつじゃないゼ?」

「いや、多分その時に与えられる役は…生贄(スケープゴート)だ」

 

 

 剣を強く握る。僕は、彼に頼まれたのだ。このボス戦だけではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

人に言わせたら気のせいだといわれるかも知れないけれど、それだけできっと、今の僕は立ち向かうことができる!

 キリトの一撃が、ボスの刀をはじき返す。

跳ね返したソードスキルも硬直時間が発生して隙ができるので、僕とアーちゃんさんが全力で追撃のソードスキルを放った。

 細剣用ソードスキル《リニアー》と両手剣用ソードスキル《ブラスト》がコボルドロードのHPをほんの少し減らす。

 

 混乱していたプレイヤーたちがこちらを見ているが、一つのパーティーを除いて戦意を喪失してしまっている。

 このままでは先に僕らが潰れてしまうだろう。 そうこうしているとキリトと僕が吹っ飛ばされ、アーちゃんさんが孤立してしまった。

 ディアベルのようにソードスキルを撃ち込まれてしまうその寸前、巨漢の持つ両手斧がソードスキルを受け止める。たしかエギルさんだ。

「くそ、ダメージディーラーにこれ以上(タンク)なんてさせないぜ!今のうちに回復しろ!」

「すまん!そいつを絶対に包囲しちゃダメだ、無理にスキルで相殺せず、防御に専念するんだ!」

「おう、任せろ!」

 

 キバオウが仲間を連れて逃げようとしている。このままではボスを倒せないが彼らの闘志を再び燃え上がらせるには、どうすれば…?

 悩む僕をよそにキリトとコソコソ話していたアーちゃんさんは、突然フードを取った。…とんでもない美人だ。

「聞 き な さ い!! 今から騎士ディアベルの、()()()()()()()()()()!『ボスを、倒せ』!」

 少女の叫びに男たちはポカンとしている。その可憐さに、あるいは騎士の遺志に。

 だが、次の瞬間諦めムードは霧散した。レイド隊は口々に叫ぶ。

「そうだ、ここで諦めて帰ったらディアベルさんは犬死にだ!」

「あんなかわいい女の子にばかり戦わせるなんて男じゃねえ!」

「「「クソ犬(コボルド)どもに目にもの見せてやれえええ!!」」」

 

 ボスのHPが面白いように減っていく。

 キリトがスキルタイミングをよく知っているから回避は可能だ。

「っ! キバオウ、パーティーを下げるんだ、すぐに!!」

「!!? あかん!範囲攻撃が来る、みんなこっちくるんや!」

 このままではスキル発動してしまうと思ったが、キリトがぎりぎりのところで妨害に成功する。

コボルドロードがバランスを崩して転んだ。キリトが叫ぶ。

「今だ、全員、ぶん殴れええ!!!」

 範囲攻撃に入る前に削り切ろうと全方位からソードスキルを叩き込む。

が、ほんの少しだけ残ってしまった! 

()()()!!合わせろ!」

「ええ、いくわよ!」

 少女の《リニアー》がボスの脇腹を抉り、キリトの《バーチカル》が相手を切り裂くも、一ドット残して耐えられた。

 コボルドロードが嗤う。

…がキリトも獣のように獰猛に笑みを返し、ライトエフェクトがまだ消えていない剣で切り上げる!!

 片手剣二連撃《バーチカル・アーク》を受け、コボルドロードは膝をつき爆散した。

 

 コボルドロードは倒された。一ヶ月もの間プレイヤーたちを一層に縛り付けていた怪物はもういない。

 僕の目の前にリザルトが表示される。きっと他のみんなもそうだろう。

「勝ったんだな、僕ら。お疲れさん、キリト」

「おう、ギリギリセーフだったな!」

 グータッチをしようとして、その視線に気付く。キバオウが、()()()()()()()()()()()()()()()

「なんでや。…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!!」

 …なんだって?キバオウは震える声で続ける。

「だって…そうやろ。おまえ、ボスのスキルを見たことあるから対処できたんや。なんで伝えんかった、何処で知ったんや!」

 それに答えたのは、()()()()()()()()()()()

「オレ知ってるぜ!こいつはベエエエタテスターだ!知ってて当然なんだよォ!だあから隠したんだろお?」

 耳障りな声で喚くそいつからは、何か()()()()()()気がする。

 だが、エギルのパーティーメンバーの一人が反論した。

「それなら、攻略本に書いてた情報はベータ時代のものだ。彼がテスターなら攻略本との差異はないんじゃないか?」

 それに反論したのは、ディアベルが護ったシミター使いの男。その目には憎悪の炎が揺らめいている。

「…噓だったのさ。ベータテスターのあの女が噓を売りつけやがったんだ。あの女…殺してやる!!」

 

 …真綿で首を締められる感覚とは、こういう事をいうのか。知りたくなかったよ。

 このままでは魔女狩りならぬベータテスター狩りが起きるだろう。それに真っ先に巻き込まれるのは、間違いなくアルゴだ。

 ベータテスターとビギナーの確執なんか知ったことか!僕はそう言おうとして、キリトに肩を掴まれた。

「…キリト?なにを…?」

 その目には決意の色が見える。経験上キリトがその目してる時はろくでもないことをやらかすので止めたかったが、もはや手遅れだ。

 

「ハハハ!俺をそこらのベータテスターと同じに扱うなよ、反吐が出るぜ!あんなシロート連中よりお前らのほうがまだマシだ!」

「な、なにィ!?」

「あそこにいたのはMMOのモの字も知らない連中だった。そんな状況でまともに経験値稼げたと思うか!?だが、俺は()()だ。誰もたどり着けなかった所まで到達した。

そこで馬鹿みたいに刀持ちの敵と戦ったから、あんな攻撃もう見飽きてるんだよ!」

「…な、なんだよそれ。もう、ベータテスターとかそんな領域超えてるじゃないか!」

「チートや。そんなんもうベータテスターのチーターや!」

「ながくね?もうちょっと短くできねーか。……《ビーター》?」

 誰かが言ったビーターなる造語に、キリトがニヤリと笑う。

「へえ?いいなそれ、オレは、()()()()()》だ!」

 キリトは漆黒のコートを装備すると二層へ続く扉に歩いて行く。

「二層の転移門はオレが有効化(アクティベート)しといてやるよ!ついてくるなら初見の雑魚に襲われてくたばる覚悟でもしとくんだな!!はっはっは!」

 

 ひたすらかっこつけて悪役(ヒール)ぶっていたが、僕を勘違いしているなあのバカ。

 その程度で見捨てるんならガキの頃お前が剣道辞めたときにもう見捨ててたはずだ。

隣を見ると、今回のMVPのアーちゃんさん、アスナが一緒に階段を登っていた。

「アーちゃんさん!…いい啖呵でしたよ」

「ありがとう、ところでアーちゃんさんって、私のことかしら。アルゴさんも似たような呼び方だったし」

「いやあ、自己紹介してないけどかわいい呼び名ですよね!」

「たしかにね。お互い名前も知らないのに、あんなに一緒になって頑張ったって、変な気分」

「MMOはそういう一面もあります。でも全てじゃない。顔も名前も知らないやつと友達にだってなれる。オフ会であってリアルで知り合うことも不可能じゃない」

「…きっと今のSAOでも、そういうことなのかも。…私は《アスナ》、君は?」

「僕は《キリヤ》です。行きましょう、あいつきっと待ってますよ」

 

 僕たちはキリトの待つ第二層に足を踏み入れた。

彼女との交流はSAO内にとどまらず、長い付き合いになることを、きっと僕らは考えもしなかっただろう。

 

 

 




ソードスキル解説

《ブラスト》
出典:SAOHF SAOHR 
種別:両手剣
ホロウリアリゼーションのモーションを参考
悪役御用達の《アバランシュ》と同じく突進技だが、こっちは飛距離が短い。
この小説では《レイジスパイク》と同じく基本的なスキルとして扱われるが、
《アバランシュ》を覚えるとほぼ使われなくなる悲しい技でもある。
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