ソードアート・オンライン 暗黒剣の使い手   作:シャザ

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第四十三話 DUEL!!

 僕とシノンは最前線七十四層へ転移すると、なにやら騒がしい民衆を発見する。

 

「…なにがあったのかしら…」

 

「聞いてみるか。なあ、なんでこんな人が集まってるんだ?」

 

 僕は集まっていたプレイヤーの一人に声をかけると、彼は楽しそうに言った。

 

「情報屋!ソロのキリトとKOBメンバーがデュエルやるってよ!あんたも見ていったらどうだ?」

 

「……。…な、何やってんだあいつ…。」

 

 人だかりの中心には、確かにキリトがいた。…相手は、クラディール!

 どういう経緯でこうなったかは知らないが、これは兄を応援するべきだろう。僕はクラディールが大っ嫌いだ。

 

「やれー!キリトー!!そんな奴ぼこぼこにへこませてやれええええ!!」

 

 

<SIDE:キリト>

 

 俺はなにをしてるんだろう…。ふと、そんな考えが頭をよぎった。

 デュエル開始まであと三十秒ほど、相手はあのアスナの護衛であるクラディール。

 

 

 今から十分前、俺はゲーム内でゲームをやりたいという救いがたい思考になりかけながらもアスナの事を待っていた。

 ハプニングこそあったものの彼女はちゃんとここに来た。…が、アスナはあのクラディールという男に追われていたのだ。

 …所詮、ストーカーというやつなのだろう。…彼の目は血走っており、正気とは思えない…。

 

「ア、アスナ様…!勝手なことをされては困ります…!!ささ、ギルドまで戻りましょう…」

 

「…今日は活動日じゃないはずよ!それに、どうしてわたしの家の前にいたの…!?」

 

「ええ、常にあなたの護衛をしているのですよ。一ヶ月はこの任務を続けているでしょうか…」

 

「…ひぃっ…!それじゃ、たまに感じていたあの粘つく視線…アンタだったの…!!?」

 

 ドン引きするアスナに、ストーカーは苛立った様子で彼女の腕を掴む。

 

「聞き分けのないことを…。さあ、本部に戻りましょう!」

 

「い、いや……助けて、キリト君っ!」

 

 ……彼女の助けを求める声を聞いた瞬間、俺の思考は逃げるという選択肢を捨て去った。

 クラディールの腕を犯罪防止コードが出るギリギリの力で握る。

 

「…な、てめぇ…。その手はなんだ!?」

 

「……彼女は俺の相棒だ。嫌がる女の子を無理やり連れていくようなヤツが…アスナの仲間面するんじゃない!!」

 

「……ンだと貴様ああああ!!貴様のような雑魚にアスナ様の護衛なんぞ務まるかアアア!!

わ、私は誇り高き血盟騎士団の…」

 

「ストーカーしてるアンタよりはまともに護衛できるけどな!」

 

 軽口で応戦したこちらを、クラディールは凄い顔で睨んできた。…やべ、余計なこと言ったかも…。

 

「…このガキィ…!そこまで自信があるんなら、それを証明する覚悟はあるんだろうなぁ!!」

 

 キレたクラディールがデュエル申請をこちらに送り付けてくる。

 アスナに小声でどうするか聞いてみようかな…。

 

「…どうしよう、アスナ…」

 

「…やってヨシ!団長にはわたしが報告するから!」

 

 その言葉を聞いて、俺はデュエルを受諾する。初撃決着なら、誤って殺してしまうこともないだろう。

 クラディールがなにやらわめきながら両手剣を抜いた。その内容がどうでもよくて聞き流していた俺も剣を抜く。

 

 

 回想を終えた時、残り十秒ほどだった。相手の構えはどうも突進系のスキルのようだが、ブラフの可能性もある。

 …こればかりは勘でいくしかない、相手も俺と同じ人間なのだから。

 

【DUEL!!】

 

 相手の放ったソードスキルは、キリヤもよく使う《アバランシュ》だ。

 対モンスターならばそこそこ強い技だが、対人において一直線に突っ込む技はカウンターをくらいやすく、やみくもに撃てば勝てるわけではない。

 対して、それを読んでいた俺が選択したのも、突進系の《ソニックリープ》。真正面からぶつかればあちらの方が有利だ…が。

 

 俺の狙いは、敵そのものではなく…ヤツの振るう武器にあった。

 クラディールの両手剣の横腹に剣を叩きつけると、それは真っ二つにへし折れた。…《武器破壊》だ。

 

「な、ァ…!!?」

 

「……そんな過度な装飾をしてるんだ、耐久力はあまりないだろうと思ってたよ。

…さあ、どうする?…続けるか?」

 

「…死ねえええ!!」

 

 ヤツは隠し持っていた短剣でこちらの心臓を貫こうとするが、俺はクラディールの腕を斬り落とす。

 

「があああ!!…ちく、しょお…」

 

 デュエルに勝った俺を、ヤツは凄い表情で睨みつけてくる。

 大歓声をあげたギャラリーにクラディールはわめき散らした。

 

「見世物じゃねえぞ!散れ、散れ!!…殺す、絶対に殺してやるゥ…!!」

 

 呪詛をまき散らすクラディールに、アスナは冷たい目で言い放った。

 

「クラディール、血盟騎士団の副団長として命じます。

…今この瞬間をもって護衛役を解任。別命が下るまでギルド内で待機、以上」

 

「………んだと、この、アマァ……!!!」

 

 ヤツがキレ散らかした顔でグランザムに転移するのを見て、アスナはほっと息を吐いた。

 その後小さくガッツポーズしてたのは見なかったことにしておこう。

 

「…ありがとう、キリト君。おかげでスッキリしたわ」

 

「アー…、気にするなって。俺は好きにやっただけだからさ…」

 

「責任は、ゲーム攻略に躍起になって規律を押し付けた自分にあるのに…酷い女でしょ?

本当は、あのデュエルはわたしがしなくちゃいけなかったのに…」

 

「アスナみたいなしっかりしたのがいなかったら二十五層あたりでもっと被害が出てたはずだ。

…自分のことを下げないでもいいだろ、きみはよくやってるよ。俺を見てみろ、だらだら攻略してるソロだぞ、ソロ!」

 

「もう、自分のことを棚に上げないの!」

 

 顔がこわばっていたアスナに、笑顔が戻ってきた。…俺は、アスナの怖い顔よりも笑顔の方が好きだなと改めて実感する。

 楽しく会話をしていると、俺は声をかけられた。

 

「キリト、ナイスバトル!」

 

「おお、キリヤ、シノン!」

 

「あ、シノのん!」

 

 そこにいたのはキリヤとその恋人のシノンだ。

 

「今日はキリトと一緒なのね、アスナ。」

 

「ええ、コンビを組んだから。…キリヤ君、このことは…」

 

「貸し一つでどうです?困った時に頼らせてもらいますよ、アスナさん」

 

「……まあいいわ。あなたたちも攻略に出るんでしょ?」

 

 キリヤは頷く。俺は別れ際にニヤリと笑ってキリヤを指さす。

 

「キリヤ、またなんかあったら情報頼むぜ。ボス攻略の情報なんかは攻略に必須だからな!」

 

「任せろ!じゃあまたな」

 

「ああ、また!」

 

 

 その後は、下層を牛耳る《軍》とニアミスしたりしながらも順調に攻略を進めた。

 

「…一段と速くなったな、アスナ。目で追うのがやっとだ。」

 

 ガイコツを細剣で倒した彼女は、驚いた顔をする。

 

「み、見えてるの!?けっこう速さには自信あるんだけどなぁ…。」

 

「反応速度には自信があるぜ。…たまにないか、こう…全部が遅くなるようなそんな感覚。」

 

「……ない、かなぁ…?」

 

「…そっか、変なこと言って悪い。…さて、もうちょい先に進もうぜ。そろそろボス部屋までいけそうだし」

 

 

<SIDE:アスナ>

 先を促したキリト君の顔は、どこか寂しそうに見えた。…けれど、それを気にする余裕はわたしにはなかった。

…なぜなら。

 

『グオオオオオオオオオ!!!』

 

「わああああああ!!!」

 

「きゃあああ!?」

 

 この七十四層のフロアボス、《ザ・グリームアイズ》に追いかけられていたから…。

 青い山羊の頭を持った悪魔という、いかにも恐怖を煽るデザインで迫ってくる怪物に、思わずわたし達はボス部屋から脱出した。

 安全エリアに飛び込み、二人で息を整えながら…それでも笑顔がこぼれた。

 

「ぷっ!あはは!やー、逃げたねぇ…!こんな全力で走ったのは久しぶりだよー」

 

「このレベルになると全力疾走しなくても別にいいしなぁ…。…どう思う?」

 

 キリト君の声が、緊張を含んだものに変わる。

 

「…強そうだったね。武装は剣一本だけど、他の攻撃もしてきそう…」

 

「盾持ちが十人は欲しいところだな…。まあ、二日くらい時間をかけるべきだろう」

 

 そういう彼は、最前線ではほぼいない盾無しの片手剣使いだ。…キリト君は、このデスゲームが始まってからずっとこのスタイルで戦い続けている。

 

「…ねえ、キリト君。…隠してることない?」

 

「いや、特には…」

 

「キリト君って、盾使わないよね。…最初はそういうものだと思ってたけど、片手剣って盾を使った方が強いわ。

わたしはスピード重視だから持ってないだけだけど、キリト君はそういうわけでもなさそう…。」

 

 そう言ったわたしの顔を、キリト君は困ったように見つめていた。

 

「それ、は…………。」

 

「…やっぱりいいや。キリト君だって、言いたくないことだってあるだろうし、マナー違反だし」

 

 そう言ったわたしを、キリト君は安心したような、それでいて残念そうな絶妙な表情で笑う。

 

「…だ、だよな…!」

 

「あ、もう三時だよキリト君!…そろそろご飯にしよ、ね?」

 

「え、いいのか?」

 

「うん!昨日はごめんね、嫌な思いさせちゃって…」

 

 キリト君はぶんぶんと首を振って否定する。

 

「いやいや、悪いのはこっちだし…!………て、手作りっすか」

 

「もちろん!はい、どーぞ!」

 

 自信作のサンドイッチを、キリト君は一口ほおばる。

 

「………う、うまい。これ、ハンバーガーだ…!!」

 

 涙を流しながらサンドイッチを完食したキリト君は、ほっと息を吐いた。

 

「これ、どうやって…!」

 

「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!アインクラッドの調味料百種が味覚エンジンに与えるパラメータをぜーーーーんぶ解析すること一年!

その成果がこちら!ちょっと味見してみる?」

 

「い、いちねん…!?…無茶苦茶気になるな!」

 

「まずは、グログワの種とシュブルの葉、カリム水を混ぜたヤツ!」

 

 わたしは特製調味料その一をキリト君の口内に射出する。

 キリト君は物凄く驚いた顔をした。

 

「ま、マヨネーズじゃん!!?」

 

「で、こっちはアビルパ豆とサグの葉とウーラフィッシュの骨!」

 

「最後の調味料じゃなくて解毒ポーションの原料じゃ…むぐ」

 

 彼の口にもう一発、と。

 

「な、ななな……。醤油うううう!?」

 

「さっきのサンドイッチのソースはこれを使ったのよ」

 

「………これ、金とれるレベルだぞ…。……いややっぱダメ、俺の分がなくなったらこまる」

 

「もー、食い意地張ってるんだからぁ」

 

 和やかな雰囲気が辺りを包む。ここが迷宮区であることを忘れそうなほどに、わたしは幸せだ。

 キリト君の心が、少しでも癒えてくれたらいいなぁ…。

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