そして黒猫団のケイタファンの人ごめんなさい。
<SIDE:キリト>
六月中旬のある日、俺はリーダーのケイタを除いたギルドメンバー四人と一緒に二十七層の迷宮区で狩りをしていた。
ケイタはギルドホーム購入のために売り手と交渉に行っていた。
最前線でなくなって一ヶ月以上が経つものの、ギルドのみんなにとって歯応えのある敵が出てくるので緊張感がある。
狩りも終わって帰路につく途中で、仲間の一人ダッカーが
俺は罠の可能性があるからやめておこうと反対したが、それに同意したのは俺と特に仲の良かったサチという女の子だけだった。
…結論から言おう。この宝箱には二重の罠が仕掛けられていた。
モンスターハウスを引き起こすアラームトラップと結晶無効化空間。脱出するために必要な転移結晶は発動しなかった。
この最悪のダブルトラップで俺以外は全員死んだ。…もちろん、サチも。
…彼女が最期に残そうとした言葉は、なんだったのか。
俺は、守れなかった。迷宮区から脱出し、主街区に近いフィールドで待っていたケイタに、なんて言うべきだろう。
「おかえりキリト。…他のみんなは、一緒じゃないのか?」
誤魔化すわけにはいかない。俺の油断がみんなを殺したんだから。
「……死んだ」
「………え?」
俺は全てを話した。みんながアラームトラップによって俺以外全滅したこと。
俺はレベルが高かったので生き残ったこと、自身があの悪名高い《ビーター》であるということも。
ケイタの顔が怒りで染まった。
俺がそれを認識した瞬間、視界が地面に叩きつけられる。
…ケイタが俺を自身の
「…死ね、死ね、死んでしまええぇぇぇ!!!」
さらに一撃。
「お前みたいな薄汚いビーターが、僕らの仲間だってぇ!?」
「お前の自己顕示欲で僕らに近づきやがって…死ねクソ野郎おぉぉ!!!」
そのまま何度も、何度もソードスキルで俺の体に殺意のこもった一撃を叩き込まれる。
…これで死んだとしても当然のことを俺はしてしまったのだ、俺は自身のHPが全てなくなるのを待った。
…が、自分のHPバーは残酷な事実を俺に伝えてきた。
俺は、自身と仲間との間の実力差がどうしようもなく離れていたというその事実に絶望する。
「ごめん。…ごめんなさい。俺なんかが仲間のフリして、ごめんなさい…!」
その言葉はケイタの逆鱗に触れたのか、彼は獣のような叫び声をあげて俺の頭部を砕こうとした。
その瞬間ケイタと目が合った。その怒りを通り越して狂気に満ちた目が恐ろしくて。
俺は気付かないうちに剣を抜いていた。
次に気付いたときには、俺の剣はケイタの体を簡単に貫いていた。
呆然とする俺を嘲笑うようにケイタのHPがあっという間に消え去り、彼はこの
吐き気がした。俺が彼らを皆殺しにしてしまったという事実に。
もしかしたら、今現在生き残ったプレイヤーの中で一番罪深いかもしれない。
胃の中のものを全て吐こうとするがSAOのアバターにそんな器用なことはできないらしく、なにも出てはこなかった。
…それからの数ヶ月を、俺は死体のように過ごした。
今まで馬鹿のように頑張っていた攻略にも出ず、時々死にたい時に迷宮区に潜りマージンもくそもない戦いを繰り返す。
死ねなかった。死にたいのに、何故か生き残って自分の宿屋に戻ってきてしまう。
そんな毎日を繰り返していたある日、キリヤが俺にある情報をよこしてきた。
<SIDE:キリヤ>
十二月のある日、目玉をぎょろりとさせたNPCのじじいが、僕にこんなことをほざいた。
「十二月の聖夜に現れるボス《背教者ニコラス》の大袋の中には、命が尽きたものの蘇生ができる神器さえも隠されている」…と。
怪しい。このNPC死ぬほど怪しい。
つまりこのじじいは蘇生アイテムがこのデスゲームにあるとほざいてやがるのだ。
普通のMMORPGならあってもおかしくはないが、多分思わぬ落とし穴やらがあるんじゃなかろうか。それかガセネタ。
だが、僕はこの情報をもみ消さずにアルゴに百コルで売りつけた。その後、自殺しかねないキリトにも教えた。
例えそれが偽りの希望だとわかっていても、言わない選択肢はなかった。キリトに生きてほしいと思ったから。
それから聖夜までの
たしかに経験値を効率的に稼ぐことはできるが、間違ってもソロで挑むような場所ではない。
キリトには何度も休めと警告したが聞き流された。
…僕にだって死別した友達はいる。
でもそれ言い訳にして死のうとしてないか?
僕らは兄弟だ。悩んでいるのなら相談してほしいし、お前は自分が思っているほどどうしようもなくはない。
お前を嫌っているやつばかりじゃないことを、忘れないでほしかった。
十二月二十四日、クリスマスイブの夜。僕は三十五層の森の中を歩いていた。
この森に生えたモミの木にボスが出てくるらしいが、既に先客がいるらしい。
かつて《
現在のこいつらはオレンジに、犯罪者カラーになろうがこちらの邪魔をしてくるだろう。
つまり、《
幸い、アルゴに鍛えられたそれは
ただ、見つからないように進んだことで、少し時間が掛かってしまった。
モミの木のあるエリアに着いたとき、僕の目の前にあったのは。
…
「…キリト…」
僕はキリトに近づこうとして、鋭い殺意に思わずバックステップした。…キリトが僕に斬りかかったのだ!
HPが少量削られ、キリトのカーソルが緑からオレンジに変わる。
「…っ! なにすんだよキリト!?」
「……もう、どうでもいい。蘇生アイテムはゴミだった。…はは、皆殺しにしてやる!!クラインも、聖竜連合の奴らも、アスナも!!まずはおまえからだ、キリヤああぁ!!!」
…明らかに正気を失っている。このまま放置したら大変なことになる、とにかく戦わなければ!
<SIDE:キリト>
蘇生アイテムはゴミだった。
…サチが生き返ることはないと知った瞬間、俺の中のなにかが
少し先を見ると、俺と同じ顔の兄弟がいた。ああ、もうそんなこと
俺が生きてきた十五年は無駄だったと知った。自分の中にまともな心なんて存在していなかったのだ。
ただただ目の前のそれが煩わしく感じ、目の前から消し去ってしまいたい。
こうして、僕の(俺の)命を掛けた兄弟喧嘩が始まった。