ポケモン世界に転生したら悪の女幹部になった   作:すごいぞ!すえはら

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第3話 チャンピオンの兄を持つ者

「あら、貴方達……面白いポケモンを連れているのね?」

 

「ん? お姉さんは誰だ?」

 

「私の名前はレイコ。世界中のポケモンとアイテムの関係を研究しているの」

 

 はじめての接触。

 後ろから呼び止めて話しかけるのも気が引けたので、暫くのあいだストーキングして少年がポケモンバトルに夢中になっている間に、先回りしてナックルシティの前で話しかけた。

 

「レイコさんって言うのか。オレの名前はホップ! チャンピオンになるために、ジムチャレンジの真っ最中なんだ!」

 

 快活そうな笑顔でそう自己紹介してくれたホップ君に、余裕のある大人の優しげな表情を作ってから頷く。

 快活な研究者キャラ、純真無垢な女の子キャラなど様々な比較検討を行った結果、クールで知的なお姉さんキャラが、年下の男の子には胸キュンするのではとの考えに至った次第である。

 

「それとこいつらは、友達のユウリとソニア」

 

「はじめまして、レイコ博士」

 

「ええ、はじめましてソニアちゃんに、ユウリちゃん」

 

 頭の軽そうなケバケバしい髪型の女の子がソニアちゃんで、後ろで帽子被ったままペコリと頭を下げたメスガキがユウリちゃんね。

 

 そう心のなかで自分に言い聞かせる。

 

 ホップくんの目の前で、メスガキのことをメスガキ呼ばわりすると、幻滅されてしまいそうなので気をつけないといけない。

 メスガキが2人いたのは予想外だったが、なんとか本名を覚えられそうである。

 

「レイコ博士はどんな研究で博士になられたんですか?」

 

「ん? そうね、私はアイテムの研究が専門だから、モンスターボールに搭載されるポケモンの収縮誘導回路に関する研究とプラスパワーの固定化に関する研究が学術誌に掲載されて博士になったわ」

 

「収縮誘導……ですか?」

 

「どんなポケモンにも収縮したり、転送を行う機能は備わっているのだけれど……それを任意のタイミングで行うための研究」

 

「論文は検索すれば出てくるから、興味があるなら読んでみてね」

 

「はい! ありがとうございます」

 

 ケバ子はハキハキとそうお礼を言った。研究者志望なのだろう。

 研究内容が有用なら、ケロケロ団の研究室に引き入れて研究をさせてやってもいい。一応念のために、アジトに帰ったらケバ子の家族関係を調べておくように指示しておこう。

 大抵の人間は、家族さえ抑えればなんとかなる。

 

 ホップ君とメスガキの連れているポケモンを一瞥してから、ポケモン図鑑を向ける。

 

バチンキー

ビートポケモン くさ

はげしい ビートを かなでる あまり

がっきを こわして しまう ので

ツインペダル を あいよう している

 

ラビフット

うさぎポケモン ほのお

いつも ボールと いっしょ に

せいかつ している ひきょうな プレー

には むなもとに ずつき を くりだす

 

 ホップ君のバチンキーもよく手入れがされているが、なによりメスガキのラビフットの毛並みがやばい。

 トレーナーとの信頼関係に結ばれて、まるで光輝いているように見える。

 

「2人ともポケモンから、よく懐かれているのね。素晴らしいわ」

 

「へへっ、チャンピオンになるにはポケモンから信頼されなくちゃいけないって兄貴も言ってたんだ。なあ、ユウリ?」

 

「うん、そうだね。ダンデさんとリザードン、すっごく仲良しそうだった」

 

「ダンデ?」

 

 ダンデというのは、たしかこの地方のチャンピオンだったはずだ。カントーと比べれば所詮地方のチャンピオンだと、あまり興味はなかったがローズ会長がご執心だったこと、そして、それなりにイケメンだったことは記憶している。

 たしかに言われてみれば、チャンピオンはホップ君と似ている。

 ホップ君の可愛い顔がああいう精悍な顔立ちに変わっていくのだと思うと、ゾクゾクするような快感が背筋に走った。

 

「オレの兄貴はチャンピオンなんだ! だから、オレも兄貴を超えられるようなチャンピオンになるんだ!」

 

「そう、なれるといいわね」

 

 お兄さんを超えるために、チャンピオンを目指す。

 

 やっぱり青春はこういう感じ。

 ホップ君と一緒にチャンピオンを目指すのがメスガキというのが気に入らないが、子供はそういう爽やかな目標に向かって邁進するべきなのだ。

 ホップ君の頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。顔を赤くしたホップ君の反応を楽しみながら私は言葉を続ける。

 

「ねがいぼしを研究するためにカントー地方からわざわざガラル地方まで、足を運んできたのだけれど……なかなか集まらなくてね」

 

「もし、あなたたちが見つけたら私に渡してくれると嬉しいな。もちろんお礼はするから」

 

「はい、わかりました」

 

 人を疑うことを知らないメスガキとケバ子が元気よく返事をしてくれた。

 

「これはお礼の手付け金ね」

 

 そう言って私はホップ君のロトム図鑑にディスクを入れて、全国図鑑へとアップデートしてあげた。

 

「す、すごい量のポケモンデータが追加されたぞ」

 

「全国には色々なポケモンがいるから、ガラル地方以外のポケモンにも目を向けてみると世界が広がるわ」

 

「ありがとう! レイコさん」

 

 ホップ君に喜んでもらえてよかった。

 それから特に意味はないが、メスガキとケバ子も図鑑を欲しがったので、一応入れてあげることにした。

 ガキの手助けをするのは気に触るところもあるが、データディスクは減るものでもない。

 

 ホップ君達とたわいのない雑談をしながら街へと入る。

 中世の城壁を活かした巨大都市ナックルシティは、歴史ある威厳と現代技術を感じさせる不思議な作りをしていた。

 

 そんな洗練された街並みにそぐわない水玉の短パン姿のローズ会長が、城門を入ってすぐのメインストリートでクソブスの副社長と一緒に話していた。

 

「おや? レイコ君じゃないか。それにユウリ君たちも」

 

「お久しぶりです、ローズ会長」

 

「うんうん、懐かしいなあ」

 

 毎日のように打ち合わせをしている間柄だか、そう挨拶するとローズ会長は話をあわせてくれた。

 ローズ会長は私の方からホップ君たちの方へと向き直って声をかける。

 

「ユウリ君にホップ君、ジムチャレンジは順調かい?」

 

「もちろん! もう3つもジムバッジを集めたぜ!」

 

「はっはっは、それはなにより!」

 

 気のいいおじさんといった風体でローズ会長がそう笑うと、青空に浮かぶ雲の隙間から炎の流星が走った。

 さっとモンスターボールに手をかける。

 

「レッツ! チャンピオン タイム!」

 

 空から落ちてきたリザードンの背中から降りると、男は意味不明な掛け声と共に決めポーズをとった。

 ナックルシティ中の視線が、こちらの方へと集まった。

 

「ローズ委員長、待たせてしまい申し訳ない」

 

「いいんだよ、呼びつけたのは私だしチャンピオンも多忙だろうからね」

 

 この男が、ホップ君のお兄さん。

 ガラル地方のチャンピオン、ダンデ。

 

「ホップ、ユウリもいたのか! 順調に旅を続けているようで嬉しいぞ!」

 

 ダンデから声をかけれて嬉しそうにするホップ君と、キラキラとした目でうなずくメスガキ。

 どうやらこのチャンピオンは、本当に周りから愛されているらしい。

 

「奢ってやるからメシでも……といきたいところだが今日は予定がある! 2人がチャレンジャーとなってオレの前に立ちはだかるのを待ってるぜ!」

 

「ん?」

 

 ホップ君たちから、踵を返したチャンピオンと私の目があう。

 嫌な予感がしたので、さっとケバ子の後ろに隠れたが、どうやら無駄だったらしくクソダサマントをたなびかせたチャンピオンは、ズンズンと私の方に近づいてきた。

 

「オレの名前はダンデ! ガラル地方のチャンピオン、無敗のダンデだ。博士は、相当のトレーナーだとお見受けした。ポケモンバトルといこうぜ!」

 

「…………ローズ会長と予定があるのでは、なかったのですか?」

 

「私はかまいませんよ。レイコ君がチャンピオンにどこまで通用するか。わたくしも興味がありますから」

 

 微笑むローズ会長からジトッとした観察するような目線を向けられて、私は心の中で舌打ちする。

 これだけの大観衆の前でポケモンバトルをしてしまったら、否が応でも目立ってしまう。どこに行っても注目されてしまうようになると、計画の進行が大幅に制限される。

 ローズ会長はそこまでわかった上で、ポケモンバトルを勧めているのだからタチが悪い。

 

 しかし、ポケモンバトルを挑まれた以上は戦わないという選択をすることは出来ない。

 

「チャンピオンであるあなたのポケモンの手持ちを、私は知っていますよ?」

 

「心配にはおよばない。みんなの目標とされ研究されてこそチャンピオンというもの」

 

 不敵なダンデの発言に、私は右の口角がぐーッと上がっていくのを感じた。

 

「3匹勝負でいいわね?」

 

「もちろん。いい勝負にしよう」

 

「でも、いいのかしら?」

 

「ん?」

 

「無敗でいられるのは、今日までになってしまっても?」

 

「言ってくれる。だが、そんなチャレンジャーを叩き潰してこそチャンピオンの強さが際立つ」

 

「チャンピオンタイムを楽しめ」

 

 ダンデは薄く笑ってマントを脱ぎ捨てると、ハイパーボールを肩の後ろまで振りかぶる。

 

 チャンピオンの動きにあわせて、私も腰に左手を当てたままモンスターボールを下から手首だけを使って軽く放り投げた。

 

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