ポケモン世界に転生したら悪の女幹部になった   作:すごいぞ!すえはら

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第5話 死闘

 ニョロトノの残した雨雲がガマゲロゲとギルガルドの頭上を覆っている。

 

 特性、すいすい。

 

 天気が あめのとき 素早さを あげる。

 

 私のガマゲロゲは雨が降っている場合に限ってはダンデのどのポケモンよりも速く、そして強く行動することが出来る。

 

「ガマゲロゲ! 格の違いを教えてやりなさい!!!」

 

「ふせげ! ギルガルド!!!」

 

 ガマゲロゲの発生させたじしんをギルガルドは、大きな盾のフォルムになって完全に防ぎ切る。

 はがねタイプのギルガルドとじめんタイプのガマゲロゲ。相性が悪いにも関わらずチャンピオンが交代をさせないのは、交代先にガマゲロゲを止められるポケモンがいないから。

 

 ドラパルトもリザードンも、雨が降っている時のガマゲロゲを止められない。

 

 彼は雨の切れ間を待っている。だから、ギルガルドが防御を固めてくるのは想定出来ていた。

 防がれても何度でも攻め続ければ良い。

 

 執拗に攻撃を繰り返すガマゲロゲのじしんが決まって、ギルガルドの鋼の身体がひび割れる。

 しかし、持ち前の防御を活かして耐えたギルガルドは、ブレードフォルムに変形させてシャドーボールを打ち出した。

 

 漆黒の球形に当たったガマゲロゲが大きく弾き飛ばされる。しかし、綺麗に受け身をとったガマゲロゲは、攻撃後ブレードフォルムに変形し隙を晒したままのギルガルドに向かって、水の刃を突き立てようと一直線に向かっていく。

 

「ガマゲロゲ!!! ステルスロック!」

 

 ギルガルドがシールドフォルムになるのに合わせて、ガマゲロゲは水の刃をさっとしまってステルスロックを空中へとばら撒いた。

 

 ふわふわと浮かぶ岩の破片。

 

 ひとたびポケモンを交換すれば、交代先のポケモンは破片が刺さり傷を受ける。けっして大きなダメージを与えられる訳ではないが、ダンデに交換を躊躇させるには十分だ。

 

「くっ……ギルガルド! 耐えろ!」

 

 目にも止まらぬガマゲロゲの連撃に、ギルガルドは防戦一方。

 ガマゲロゲは大きく振りかぶってから、一拍置いて腰元に刃を持っていった。反射的に防御行動をとっていたギルガルドに隙が生まれたその刹那、ガマゲロゲは居合の要領で刃を扱ってギルガルドを一刀両断した。

 

 真っ二つになった鋼の盾の断面がきらりと光る。

 

 ギルガルドが、ずしんと大きな音をたてて地面へと崩れ落ちると同時に雨があがった。

 

「よくやった、ギルガルド」

 

 ダンデはハイパーボールにギルガルドを戻すと、ドラパルトを繰り出した。ふわふわと浮かぶ岩の破片がドラパルトの肌を切り裂いた。

 

 ギルガルドにはかなり粘られてしまった。雨が降っていない現状では、ガマゲロゲはドラパルトよりもずっと遅い。

 傷ついたガマゲロゲではドラパルトのドラゴンアローを耐えることは出来ないので、勝つためは先に攻撃を当てる必要がある。

 ニョロトノでもう一度雨を降らせて仕切り直し。食べ残しを持たせているニョロトノなら、ドラパルトの攻撃を凌ぐことができる。

 

「戻れ! ガマゲロゲ!!!」

 

「ドラパルト、りゅうのまいだ! 力を溜めろ!」

 

 ガマゲロゲをモンスターボールへと戻して、ニョロトノを繰り出す。

 ダンデのドラパルトが力強く神秘的な黒い稲妻に包まれていく様子を見て、さあっと血の気がひいていく。

 

——ま、まずい……強化されるとガマゲロゲよりもドラパルトのほうが速い。

 

 りゅうのまい。

 自身のこうげきとすばやさを一段階あげる技。

 

 ポケモンのなかでも最高峰のすばやさと高いこうげき力を持つドラパルトの能力がアップしてしまうと、私のポケモンでは耐えようがない。

 

「これまではこちらの行動が読まれていたがっ!!! ここからはオレが主導権を握らせてもらうぜ! レッツ! チャンピオンタイム!!!」

 

 私に考える暇を与えずにドラパルトは物凄い速さでニョロトノとの間を詰める。

 

「ニョロトノ!!! ほろびのうた!!!」

 

 私は反射でそう叫ぶと、至近距離のドラパルトから射出されたドラゴンアローがニョロトノの腹部と肩口に突き刺さる。

 大きく弾き飛ばされ地面を何度も転がってから、ニョロトノはほろびのうたを歌いはじめた。

 

 近い将来、ドラパルトとニョロトノに訪れる滅び。

 しかし、それよりもはやくに私の2匹のポケモンがドラパルトに蹂躙される未来が見える。

 

 れいとうビームで少しでもダメージを与えるべきだっただろうか?

 

 一瞬、生じた後悔を私は頭を小さく横に振って振り払う。

 時間を過去へは巻き戻せない。未来を見据えて、今ある現状で最高の選択をするしかない。

 

「守って!!! ニョロトノ!」

 

 ドラパルトの追撃をニョロトノは必死に回避行動をとって防いだ。

 

ゲコ…………  ゲコ…………

 

 ほろびの声は、だんだんと近づいてきているが遅すぎる。次のドラゴンアローでニョロトノは倒れ、交代した先のガマゲロゲもドラゴンアローで倒されて……それから、やっとほろびのうたの効果が現れる。

 

 ロケット団最強の私が負けるわけにはいかない。誰よりも強くあらなくちゃいけないのに。

 

「お願い! ニョロトノ! 守りきって!!!!!!」

 

「とどめを刺すんだ! ドラパルト!!!」

 

 ドラパルトから二匹のドラメシヤが射出され、ニョロトノへと向かっていく。ニョロトノは一匹目のドラメシヤを手で払い除けて上手く軌道を変えさせると、それから地面に水鉄砲を吹きつけて、自分の体を大きく後方に弾けさせた。

 追尾能力の限界を超えたドラメシヤが地面へと突き刺さる。  

 

「防がれたかっ! それでこそオレのライバル! だが、オレが勝つ!!!」

 

 ニョロトノの俊敏な回避行動に思わず息を呑んでしまったが、それでもまだピースは足りていない。敗北を先延ばしにしただけ。

 

 ほろびの声が近づいてきて、ニョロトノとドラパルトはもう持ちそうにない。

 

 ダンデはポケモンを交換してくるだろう、交代したリザードンに、リスクをとってガマゲロゲをあわせて、ニョロトノにバックして再度雨を降らせても間に合わない。

 あらゆる可能性を考えてもなお届かない。頭の中でバトルの行く末をシュミレーションすればするほど、勝ち筋が残っていないことがわかっていく。

 どうせ負けるにしても、見苦しく足掻くよりかは、エースのリザードンだけでも倒してから負ける方がいい。

 

「戻れ! ドラパルト!」

 

「ニョロトノ! ねっとう!」

 

 ドラパルトがハイパーボールへと戻り、リザードンが繰り出される。

 大きな翼と尻尾の炎にステルスロックが突き刺さり浮力を失いバランスを崩した炎龍に、ニョロトノのねっとうが容赦なく打ち据える。

 すさまじい咆哮と落下音とともにリザードンは地面に叩きつけられて動かなくなった。

 

 その最期を満足そうに見届けてから、ニョロトノもほろびのうたの効果で命脈を使い果たしたかのように、パタリと動かなくなった。

 雨はぴたりと止んで、雲の切れ間からは青空が覗いていた。

 

「よくやったリザードン。見事だったぞ」

 

「…………戻りなさい、ニョロトノ」

 

 手早くニョロトノをモンスターボールの中に戻して、それから私は手負いのガマゲロゲを繰り出した。

 お互いに残されたポケモンは残り一匹。しかし、勝敗はもう決していた。

 ニョロトノの残した雨雲が溶けていく。空からは雨粒ひとつ落ちてこない。

 

 ダンデのドラパルトと対峙する。

 

「ドラパルト!!! 勝負を決めろ! ドラゴンアローだ!!!!」

 

 チャンピオンの大きな指示が飛んで、ドラパルトはドラメシヤを射出する。これから、その二匹のミサイルにガマゲロゲは貫かれることになる。

 

 私は思わずガマゲロゲから目を背けた。ガマゲロゲが負ける姿は見たくなかった。

 

 真っ暗な視界。二匹のドラゴンが着弾した音が聞こえて、ガマゲロゲの轢き潰したような絶叫が聞こえた。

 

 モンスターボールに戻してあげようと恐る恐る目を開けると、ガマゲロゲの冷気を纏った拳が、ドラパルトのお腹に深々と突き刺さっていた。

 

 全てがスローモーションになったよう。

 

 ゆっくりとドラパルトは崩れ落ちて、地面へそっと音を立てて動かなくなった。

 

 ゲゴゴゴゴ!!! ゲロッゲロッwwwwww

 

 ガマゲロゲは自身に突き刺さった二匹のドラメシヤを引き抜いて、それから勝利の雄叫びをあげた。

 ダンデの表情が驚愕から、悔しさへと変わっていき帽子のつばをもって深く被り直し表情を伺えないようにした。

 それからニヤッと笑って、チャンピオンは帽子を空へと投げ捨てると言った。

 

「チャンピオン タイム イズ オーバー 最高の試合にありがとうだ!」

 

 張り詰めていた集中が一気にとけて、周囲のギャラリーの歓声と悲鳴が耳に入る。

 晴れやかな表情でダンデはゆっくりと私に近づくと、肩にそっと手を乗せた。

 

「これでオレはもう無敗のダンデじゃない! 一人のトレーナーとして、もっと強くなれる! そうしたら、また対戦してくれ!」

 

「ええ……気が向いたらね。でも、いいの? あなたがドラパルトがガマゲロゲに勝つと確信した瞬間、私も同じ確信を抱いていたのよ?」

 

 私がそういうとチャンピオンはニヤッと笑って言った。

 

「それが、ポケモンバトルってもんだぞ」

 

「…………そうかもね。ありがとう」

 

 手を握ってお互いの健闘を讃えあう。

 その様子を無数のシャッター音が包み込むのと同時に、私は我にかえった。

 

 いつのまにか周囲には1000人近い観客が集まって、後ろにはキラキラとした目で私のことを見つめるホップ君とメスガキの姿があった。

 

「レイコさん、すごい試合だったぞ! 兄貴もすごかった! オレもこんなバトルができるようになりたいぞ!」

 

「そ、そう……ありがとう」

 

 ホップ君に褒められて嬉しかったが、今はそれどころではない。どうにかして知らない人のふりをして、この場から逃げ出すかだけを考えていた。

 まだ驚きが抜けきれていない表情で、ローズ会長は高らかに宣言した。

 

「驚いた、本当に驚いた。チャンピオンに勝つトレーナーがいるなんて、レイコ博士とチャンピオンの素晴らしい一戦に、盛大な拍手を!!!」

 

 熱狂した観衆の拍手と歓声が、私とダンデを包み込む。正体を忍んで目立たないように変装したりして、ガラル地方の征服を目論んでいたのに。

 

 どうして、こうなった?

 

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