ソードアート・オンライン アナザーゲート・プログレッシブ 作:たかてつ
新生アインクラッド編です。
二〇二五年七月頃のお話。
いつの間にか 《毎日》 になってしまった早朝散歩。
シャワーを浴びたら、軽い朝食。ちゃちゃっと化粧、いつもの事務服。
キスをして、 「行って来ます」 と 「行ってらっしゃい」 で、ぱたんとドアが閉まる。
俺は溜息をひとつ――
すたすたと寝室に向かい、ぱたっとベッドに倒れこむ……うん、めんどくさいけど、行くしかない。
ちょっと、ごろごろしてみる。駄目だ、寝てしまう。
「わあい。久々のソロだあ……冒険だぜえ……」
何となく言葉に出してみたが、全くテンションは上がらなかった――よけいに寂しくなっただけだった。
……じゃあ、レッツ、五層。
ぼそぼそと 《魔法の呪文》 を唱える。
「おお、凄いな……」
「うん、こっちもいいね」
《ウォルプータ・グランドカジノ》 の三階、高級パーティールームは素晴らしい部屋だった。
街と海が見渡せる造りになっている――装飾品も派手過ぎず、見事に美しいものばかり。
この部屋を一晩借りたら……それは考えないことにした。
とはいえ、この部屋にいる全員で割り勘だったら、それほど、でもないかもしれない。
《いつものメンバー》 に風林火山の方々と角田さん、シンカー、ユリエール夫妻。エギルのお友達にリーファの彼氏風の少年。
「シュウさん、ナナミさん、お久しぶりです!」
久々のリッちゃんにシヴァタさん。
……で、何故か、皆様、お洒落さんだ。少年はいつもどおりの、真っ黒だけど。
事務服風のナナミ、ダークグレーのロングTシャツにブラックのカーゴパンツ。挙句の果てに足元がスポサンの俺。
「コンビ二感覚で来ちゃったね」
「そうだね……」
俺たちふたりはお互いの服装を確認して……苦笑いを浮かべて。
「はいはーい! 主役が到着しましたので、はじめまーす!」
仕切りたがりの 《桃色不良鍛冶屋》 が俺の背中をぐいぐい押す。
ぽつんと立たされた俺は、ぽかーんとしていると、
「えー、それでは皆さん、ご唱和ください。……せーのぉ!」
「シュウ、GEOキックオフゲーム、お疲れさまー!!」
全員の唱和、盛大なクラッカーぽい音、拍手。
目の前の光景に、俺は高校時代のユースチームで行った 《卒業パーティー》 を思い出していた。
「ではではー、乾杯の挨拶を、クライン! は、長くなるからコム君、お願いしまーす!」
ぴょこんと耳が立って首を傾げると、グラス片手にひょこひょこしながらこちらに近づいてくる。
――それやめて、マジで。
くすくす笑っている俺の肩をぽんぽん叩いて、
「じゃ、シュウおつかれー、かんぱーい!」
「乾杯ー!!」
短すぎるし、いつものテンションすぎるその挨拶に、みんなが笑う。
しばらく、わちゃわちゃしていたら、どこからともなく、 「主役、なんか言えー」 の声……余計なことを。
そんなわけで、また、ぽつんと立たされた。
「えー、本日はこのような素晴らしい宴にお招きいただき、まことにありがとうございます」
……適当に考えながらしゃべってみる。
「スタジアムにお越しいただいたサポーターの皆様、またテレビやモニターの前で応援してくださったみなさん、ありがとうございました。次の試合も頑張りますので、また応援お願いします」
……うん、テンプレ。ちゃんとすらすら出てくるな。というか、次の試合って……あるのか?
「で、せっかくだからここでみんなに話したいことがありまして……」
当然みんな、はてなに、なった。
「えーっと、アスナやキリト、リーテンから聞いているかもしれないけど、前の 《アインクラッド》 で攻略を目指していた俺は、ちょっとみんなとは違う方向……違う出口を探していた」
――おっ、静まったぞ。面白い。
「そんなわけで、俺とコム、それにナナミはみんなの気持ちを踏みにじるような……騙すようなことも、手段として、実行してしまった……」
――なんか神妙に。面白い。笑うな、俺。
「だから……みなさんに謝ります。ごめんなさい――」
俺は深く頭を下げる。
みんな無言――静寂。
「ってことで、ちゃんと謝ったし、水に流してくださいね!」
失笑……皆様、何とも言えない表情をしていらっしゃる。
「ちょっとナナミ、こっち来て……」
リーファの横で無表情の瑞希は首を傾げる。
グラスを置くとすたすた歩いて俺の横に立つ。 「何?」 と、再び首を傾げた。
「瑞希、ウインドウ開いて……心の準備、しといてね」
そう言いながらウインドウを操作する。
意味が分からない様子の瑞希はウインドウを……指先が止まった。
「嘘…………」
無表情のまま、その美しく輝く漆黒の瞳から、すっと流れる涙。
俺は瑞希のそれをそっと拭うと、細く柔らかな左手に触れて、
「嘘じゃないよ…………瑞希、結婚しよう……」
すっと薬指に指輪をはめた。
「うん……はい…………」
瑞希は微笑むと、そのまま俺の胸に顔を埋めて声を上げて泣きだした。
その瞬間、大歓声……というか悲鳴のような……もう、めちゃくちゃ。
ようやく俺の薬指に指輪がはめられると、部屋の隅のほうから、まるで 《小学生》 のようなコールが上がる。
そして、それはあっという間に全員に……コールに合わせて鳴り響く手拍子。
――ほんとにこいつら、めんどくさい。もうやるしかなくなったし。
「瑞希、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
瞳を閉じる瑞希――俺たちは唇を合わせる。
揺れる様な大歓声、悲鳴、奇声……お前ら、ほんとに小学生か。
俺と瑞希はそちらをむくと、
「じゃあ、結婚するんで、 《攻略集団》 辞めます。みんな、頑張ってね!」
そういって俺がピースサインをすると、瑞希も小さくピース。
瞬間、 「おめでとう!」 涙で笑顔なアスナが瑞希に突進。それにリズも続く。
急に抱きしめられて、 「わっ」 と声を上げる。
横でにやにやしていたら、俺には……化け猫が飛び掛ってきた。
その後は――もう、すごかった。
「ただいま」 「ただいま」
「すごかったね」 「すごかったな」
顔を見合わせて笑う。
そっと瑞希を抱きしめると、耳元で 「ちょっと、そのまま」 俺はアミュスフィアをふたつ外して、身体を起こした。
ベットサイドのデスクの引き出しからスポーツメーカーのロゴが入った小箱を取り出す。
瑞希は身体を起こして首を傾げた。
「一応、カモフラージュしといた……」
その小箱の蓋を開いて小さな箱を取り出す。
「やっぱり、卑怯。秀、大っ……好きだけど」
ベッドに腰を下ろしながら蓋を開ける。
「ありがとう……」
瑞希の左手をとり、
「あらためて……結婚しよう……」
指輪をはめた。
「……はい」
笑顔に涙。そんな瑞希を優しく抱きしめる。
ふいに、俺の目から……ようやく涙が零れ落ちた。
(終わり)
はじめての、あとがきです。
今回のお話でファーストシーズン終了……そんな気分になりましたので。
この 《SAO AGP》 は初めて執筆した二次創作小説になります。
よくわからない物語、文章、表現、誤字、脱字、すいません。ごめんなさい。
1話ずつ、毎回お話を考えながら執筆した為、かなりおかしな部分も見受けられるはず……ごめんなさい。
一応、このお話のテーマは 《仮想世界の嘘》 だったりします。
仮想世界の中で本物を探し続け、見つけたり、見つけられなかったする少年少女達 (おじさんもいるけど) とは違って、偽りを探し求める主人公のお話を書いてみました。
オリジナルキャラクターの3人を中心に据えたせいで、原作の方々が活躍する場面が少なくなってしまい、大変申し訳ないです。
とにかく、1話から27話まで全て読んでいただいた方、ありがとうございました。
どれか1話だけでも読んでいただいた方々、ありがとうございました。
最後に、このお話、まだ続きます。今後もお願いいたします。
あ、 《冥き夕闇のスケルツォ》 を観るまでは、何とか生きていたいっす(笑)。
それでは 《SAO AGP》 何卒お願いいたします。
たかてつ