ソードアート・オンライン アナザーゲート・プログレッシブ    作:たかてつ

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《SAO AGP》 の付録みたいなものです。
ナナミさん目線のお話です。
多分……続きます。ごめんなさい。


033 ナナミ備忘録 ―アインクラッド解放軍―

「……以上だ。悪いが質問はするな」

シヴァタはそう言って、足早に会議室を後にした。

「…………」

私には、さっぱり――これは終わったら、いや先にメッセージ、かな?

溜息をひとつ。私も席を離れた。

 

 

数ヶ月もこの街で暮らしたというのに、 《アルゲード》 はまだまだ知らない場所ばかり。

迷い込んだら脱出は困難――

そう例えられるように入り組んだ路地。無秩序に配置された建物。膨大なNPC。

「探検するのはやめといたほうがいいらしいぞ……」

当時、あの出不精にそう忠告されたものの、攻略の合間にコムロンと知らない路地を散策するのが楽しかった。

――それにしても、これまでのルート、そしてこれから向かう場所、一度で覚えるのは難しいかもしれない。

地上だけでなく、幾度か地下道を利用……とにかく見つかりにくい場所を選んだようだ。

ここまで徹底して隠匿する必要性――悪い予感しかしない。

そんな時に限って、あのめんどくさがりからの返信は、ない。

――あとで、お説教。

帰宅後の楽しみが出来た。嬉しい。

「ここだ。」

転移門から二時間ほどの場所で、やっとシヴァタの足が止まった。

「…………」

到着したけれど……本当に、ここ?

 

 

そこは今にも朽ち果てそうな民家が並ぶ路地のちょうど曲がり角。

おそらくこの裏手に水路があるのだろう。ちょっと臭う。

並びの中で最も崩れそうな家……というより小屋。

路地に面した窓には薄汚れた淡いグレーのカーテン。

腐りかけた玄関の表札には 《佐藤》 という文字。

……絶対、嘘。

歪んだドアはノックをしたら外れてしまいそうだ。

そう思った瞬間、ガチャっと開く――

「おっ、ナナちゃん、久しぶり。ようこそ、秘密基地ヘ!」

 

 

……それだけ?

あっという間に姿を消したアルゴさん。

「ナナミ、入って」

振り向いて玄関に……入りたくないけど、足を踏み入れる。

乱雑。その一言に尽きる。

落ちているものを気にせず、踏みつけながら進むシヴァタの後を追う。

短い廊下を右に曲がると、床にぽっかり穴が開いていた。

人ひとりならかろうじて入れそうな、ぎりぎり通れそうなその穴には階段が――悪い予感どころではない。

――あいつ、ほんとに説教。

私はいらいらしながら、その暗く狭い階段を下りた。

 

 

あきらかにおかしい。下りすぎ。

もう五分は下っている。

――地下ダンジョン、じゃないよね?

唐突に前を行くシヴァタが止まる。

暗闇から浮かび上がる真っ白なドア。

無言でシヴァタが開く。

「…………」

レンガの壁に均等に配置された蝋燭は、優しい明かりを部屋の隅々まで照らしていた。

広さは学校の教室程度――中央に置かれた黒皮のソファーとウッドテーブル。

それだけ。それに驚いた。

――何、これ?

アルゴさんの 《秘密基地》 という言葉が脳裏を過ぎる。

しかし、基地という割には何も無い。ただの会議室、といったところ。

「そこに座って待っていてくれ」

部屋の奥の黒いドアへ向かうシヴァタ。

私はソファーに腰を下ろした。

……ここって、圏内?

鞘から刀身を僅かに抜き、指を当ててみるがカーソルに変化はない。

その時、勢いよく奥の部屋のドアが開いた。

ダークグレーのマント。深く被ったフードから流れる長い髪の毛。

手にはティーセットが載ったトレイ。

「こんにちは!」

元気な女性の声。

「……こんにちは」

座ったまま小さく頭を下げた。

その時、奥の方から、

「ちょっと待って、お茶のほうがいい……」

……ん? あれ?

彼女はテーブルにすっとトレイを置くと、素早く振り返って、

「うるさいなあ、女の子は紅茶がいいに決まってるでしょ!」

……すみません、お茶が好みです。

 

 

シヴァタの後について、だらだら歩く、今、とっても怒りたい人。

各自手にパイプ椅子。

座るなり、深くフードを被ると、脚と腕を組んで俯いている。

――何、その態度……でも、椅子ぐらい置いといたらいいのに。

彼らが壁際に一列に座ると、奥の部屋から現れた少し大きめな深緑のマントを着た若い女性が、 「お待たせしました」 と向かいのソファーに座った。

「はじめまして、ナナミさん。 《アインクラッド解放軍》 のリーテンと申します」

……えっ、確か、リーテンって。

私はその名前を聞いたことがあったはず……知っているはず。

「……はじめまして。 《聖竜連合》 のナナミです」

思い出せないまま名乗った……でも、確かに聞き覚えのある名前。

「きっと、この状況に困惑していらっしゃると思います。ですから――」

いえ、あなたの名前を必死に、あっ、そうだ。

瞬間、そちらに視線を向ける……寝てる? 

――こらこら、こちらでもそういう感じなの? 怒られるよ。起きなさい。

私の視線の方向へ、リーテンも顔を向ける。

その時、おもむろに立ち上がった女性。 《寝てる馬鹿》 につかつかと歩み寄ると、

「起きろっ!」

速い平手、空を切る。

「……ごめん、起きてる」

全く見えなかった――テーブルの横に立ち、ウインドウを操作するシュウ。

「はい……ほうじ茶っぽいやつ」

私の前にカップを置いて水筒からそれを注ぐ。

彼女はいらいらした様子でばさっと乱暴にフードを脱いだ。

「まったくもう……」

――えっ、アスナさん!? ……じゃない、誰?

 

 

(終わり)

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