ソードアート・オンライン アナザーゲート・プログレッシブ    作:たかてつ

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SAOです。
新生アインクラッド編Ⅱです。
二〇二五年十二月のお話。


038 捜索開始

よくよく考えてみれば、この桐ヶ谷少年に出会ってから、すでに三年が経過したわけで……

 

 

別に親友と呼べるような間柄でもないし、また仲間というのもちょっと違う気がする。

かといって、友人ではあるものの微妙な関係であり、知人だと縁遠い気分になってしまう。

確かに恩人ではあるけれど、そういった態度や姿勢でお互い付き合いたいわけでもない。

まあ、 《お友達》 と便宜上定義するのが、最も正しいのではなかろうか。

「……ということなんだけど、分かったか? シュウ」

ずーっとなにやらかにやらめんどくさいお話を聞かされ続けた俺は、適当にうんうんと無言で頷いておく。

とりあえず、 《ソードスキル》 が復活したのは知っていた。

六月に開催したあの 《モンスターバトル》 では、それを使用しない協定を結んだ為、俺はあれ以来全く使っていない。

そのソードスキルだが……どうやら昔よりもめんどくさくなったらしい。

ちらっとコムからは聞いていた――はい。その時も聞き流してしまいました。ごめんなさい。

ということで知らないふりをしてまたイチから少年のレクチャーを受けたわけだが……

――まじで、どうでもいい。

普通の攻撃が効かない場合、いろいろあって有効……その程度で足りる気がした。

俺は本当にこの手のゲームのめんどくさい 《カタカナ攻撃》 にはウンザリしている。

――もうクエストとか迷宮区とか絶対やりたくないし、入りたくない。だからソードスキルなんて使う機会ないよ。おそらく。

ということで、早速本日の本題を見せてもらった。

「……ッ……ッ……ッ……ッ!!」

はい、 《バーチカル・スクエア》 ね。

「…………ッ!」

うん、 《ヴォーパル・ストライク》 だ。

――確かに 《二刀流》 だね。ちょっと変な感じはするけれど。

技後硬直が終わると溜息をひとつ。

「こんな感じなんだけど、どうだ?」

俺は拍手をしながら、また無言でうんうん頷いた。

「まだ成功率は五割ってところだけど、とにかく――」

そして、また長い説明。

……ほんとに好きなんだなあ。まあ、そのおかげでみんな助かったわけだから、ありがたいことだけどね。

「……ってことだ。分かった?」

またうんうん頷く。そして、

「じゃあ、ちょっと軽めの剣、貸してもらえる?」

キリトはウインドウを操作して、いかにも 《キリトらしい》 片手直剣を俺に手渡した。

……重っ。相変わらずですね。

趣味が全く合わない。それも懐かしい思い出。

そんなわけで俺は右手に愛剣 《ヴェノムファング》、 そして左手に 《レンタルキリト》 を装備した。

――すげー違和感。気持ち悪い。

とはいえ、とりあえず 《キリト君ごっこ》 をしてみる……せーのっ、

「……っ……っ……っ……っ……よっ…………はいっ」

――あ、出来ちゃった。

長いスキルディレイの後、おそるおそる振り返る。

「おまえ……一発、ってさ……」

とてつもなく申し訳ない気分になる表情が、そこにはあった。

……ごめん、キリトくん。

 

 

一応、言い訳、した。

商売柄というか……それこそ小さい頃から左右の切り替えと予備動作の訓練は、文字通り一日中繰り返し続けてきたから……と。

難しい表情をしてはいたものの、とりあえずの納得はしていただけたようだった。

 

 

数分後、別の場所に移動。

そこには昨日知り合ったばかりの 《メガネっ娘》 改め 《猫娘》 が待っていた。

「遅いっ!」

と叱られる。まじで怖い。この女子。

そして、俺は再び、 《動く的》 をやらされる。

「キリトだけだと思ってた……」

……はい、すいません。

あまりに彼女がばんばん矢を放つので、めんどくさくなった俺は近距離ですぱーんと斬り落としてしまった。

というより、長距離から正確に狙えるほうが恐ろしいのだが……やはり、もう二度と 《GGO》 はやらないことにしよう。

そしてキリトも加わり、ひたすら彼女の矢を回避して、切り落として……だんだん、めんどくさくなってきたので 《投剣》 スキルを発動。

ふたりで子供のように、 「おりゃー!」 と石や枝など落ちているものを拾って思いっきり投げつけた。

そっちのほうがめちゃくちゃ面白かった。ふたりは自然に笑顔になった。

そして、当然、怒られた――まじで、怖いっす。シノンさん。

 

 

「とりあえず、ありがとう。いろいろ検証出来たし、シノンの練習にも……なったんじゃないかな?」

そういってキリトは複雑な表情を浮かべた。

「いや、瑞希が帰ってくるまで暇だったから……こちらこそ誘ってくれてありがとう」

と俺は謝辞を述べた。

――ふふっ、覚えておきなさい。少年。

例の画像流出については一切触れなかった。あえて……

 

 

「……ただいま」

アミュスフィアを外す。電話が光っていた。

……なんだ? これ?

【みっちゃんってこっち来てる?】

小村からのメール……意味が分からない。

とはいえ、アミュスフィアを持って行ったので、その可能性はあった。

俺は瑞希に電話を……出ない。

しょうがないので、小村にメール。

【こっちってALO?GGO】 

すぐに返信――

【ALOっていうかアインクラッドだよー】

【えっ、あいつ攻略してんのか?】

【いーや、なんかはじまりで見かけたような気がしてさー】

【今帰ってきたばかりだけどもう一回行ってみる】

俺はアミュスフィアを被り、またあの言葉を―― 

 

 

とりあえず、ばきゅーんと飛んで 《始まりの街》 到着。

メッセージを飛ばしてみる……が、返信なし。

コムロンにメッセージ。五分もせずに 《サッキン》 と姿を現した。

「おつかれー、シュウ。あっちで連絡とれないの?」

「ああ、今日は友人と温泉って……まさか、こっちの温泉じゃあ、無いよな……そんなめんどくさいこと」

三人とも首を傾げ考える。ふとサッキンが、

「シュウさん、この時期って何してました?」

なるほど、この時期か……昨年はリハビリだし、一昨年は確か五十層くらいだったはず……ああ、サンタ狩りか……

「去年は病院だしー、一昨年は五十層くらいを攻略してた気がするしー、その前はなんだったかなー?」

「ああっ! クリスマスが四層だ。思い出したよ、コム! ……辛い思い出を……」

瞬間、俺とコムロンは互いに顔を見合わせ、がっくりと肩を落とし、苦笑いを浮かべた。それを見たサッキンは不思議そうに首を傾げる。

――そう、あれは悲惨だった。

ふたつのギルドが合同で開催した 《クリスマスパーティー》 で多くのプレイヤーが盛り上がっている最中、俺たちは……やはり俺たちだった。

「ねー、あの頃ナナちゃんって何したのか、シュウは知ってるの?」

……するどいな、コムロン。ちょっとは成長したようだな。

俺はサッキンの直感的発言を聞いた瞬間、背筋に冷たいものを感じた――きっとこれから、すげーめんどくさいことになりそうだ。

「コム、サッキン、俺さ、何となく何処にあいつがいるのか分かったよ……ただ、きっとめんどくさいことになるから……全部終わったら連絡するよ」

二人とも察しが良い――無言で頷くと、 「じゃあ、またねー」 と転移門へ消えた。 

 

 

「うわっ、懐かしい……辛い…………」

アインクラッド四層、主街区 《ロービア》。その景色はやはり美しかった。

白亜の都――宝石のような輝きを放つ水面、大小様々なゴンドラや小船が浮かぶ水路。

「いやー、よくあの辛さに耐えたよなあ、俺たち……」

この美しい街で最も印象に残っているもの――それは熊狩り。

皆が小雪舞う美しい景色の中で 《クリスマスパーティー》 を楽しんでいる最中、俺とコムロンは 《マタギ》 の如く、ひたすら熊を狩っていた。

狩りの最中は、ただひたすらに、無心だった……しかし翌日、アルゴの 「イブに何やってんだヨ、オマエラ……」 その一言で俺たちは全てを覚り、一瞬で燃え尽きて灰になった。

別に悔しくは無かったが、悲しく、切なく、泣きたくなった。

そんなわけで、その感情をまた熊にぶつけたのだった……バカすぎる。今思えば。

溜息を深くひとつ――捜すか。

俺は黒い翅を広げ、青空に飛び立つ。

 

 

(終わり) 

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