ゲーム・オブ・ドローンズ—椅子取りゲーム—   作:生き残れ戦線

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第十話 AI対策本部

都内某所。

とあるビルの一室にBD事件AI対策本部は創られた。

そこには日本からなる政府機関、関係各所の人間が集められた。

警察、自衛隊、公安等々である。

新大和警察署から出張した本多長門(警部)もそこにいた。

彼が現場を離れここに来たのは一刻も早い事件解決の為である。

こうしている間も街は荒らされ人々は傷ついている。

対策本部が創設されるというから危険を押して足を運んだのだ。

だというのに会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

どういう事だ。どうしてこうも会議が進まない。

理由は分かっている。政治家達のせいだ。

我々がいくら対策を話し合っていても政治家達が国会で議決を通さなければ実行する事が出来ない。ふざけた事に彼らは現在、今回の前代未聞の事件が内乱か侵略かで話し合っているらしい。

憲法に接触しないか審査している状況だ。

今回の会議で分かったのは彼らが話し合いを終わらせなければ我々は動けないという事だけだ。

空気も悪くなるというものだ。

 

くだらない。何の為に私はここに来たんだ。

今も仲間達は現場で血を流しているんだぞ。

直ぐにでも自衛隊を出動させるべきだ。

そんな事もこの国の連中は分からないのか。

事件発生から一週間が過ぎても行動に移せないほどに。

 

だがその日、ようやく我々が待ち望んでいた変化が訪れた。

この事件の主犯と目される男からの通信だった。

それは事件発生から初めての事だ。

みんなが揃って奴からの配信を待った。

やがてモニターに男の姿が映し出される。

 

「.....ナガラッ!」

 

その男の顔を見て思わず長門は立ち上がった。

忘れもしないあの男、望月ナガラその人だ。

ナガラはこちらに気付き長門を従来の親友を見る様な目で言った。

 

「おや?貴方は長門警部、嬉しいな貴方も来てくれたのですね」

「当り前だ!お前に殺された私の部下を忘れたとは言わせんぞ!必ずお前を捕まえてやる!」

「それは楽しみだ、もう一度ぼくを捕まえに来てください」

「.....警部気持ちは分かるが今は着席したまえ」

「失礼しました」

 

忸怩たる思いで長門は着席する。

自分でもこんなに激昂するとは思わなかった。

だが忘れもしない、あの警察署での夜を。

急行していた現場から戻ってきた時には警察署は廃墟と化していた。

無残にも殺された部下たちの亡骸が散らばっていた。

あの光景は今も目に焼き付いて離れない。

あの状況を作り出した憎い男はモニターに映る顔ぶれを見て微笑む。

 

「これは錚々たる面々だ。日本国を守る若き英雄達に会えて光栄です。

 改めて自己紹介をしましょう、望月ナガラと言います日本人です」

 

何故か日本人という言葉を強調した。

何らかの意味があるのだろう。

それまで静かに座っていた巌の様な男、対策本部長の荒木景烈(けいれつ)が質問をする。

 

「初めまして望月さん。

 私達は君が接触してくるのを首を長くして待っていたよ。

 君は...いや君達はなぜこんな事を始めた?」

「ふふこれは僕が始めた事ですよ他は関係ない」

 

 それに対して公安の眼鏡男が言う。

 

「いいや君が単独犯であるはずがない、不可能だよ。我々は君が国際テロ組織『十二月革命軍(じゅうにづきかくめいぐん)』の一人であるという事を既に把握している」

 

そうだ。だからこそ警察は来日したこの男を逮捕した。

奴を逮捕したのは俺だ。それが誤りでなかった事は奴自身が証明している。

日本国民全員を最悪な状況に叩き落した事によって。

 

「分かりました貴方方が信じられる事を言いましょう。

 先程の言葉も嘘ではないんですがね。さて僕の望みは一つ、

 ——この日本という国を僕にくれませんか?」

 

官僚たちが俄かにざわめき立つ。

 

「そ、それはつまり国家転覆という事か」

「僕としては新国家を建ち上げるという感じでしょうか。

 新たな女王を敷き、その統治によって国家を運営していきたいと考えています」

「馬鹿な誰がそれに従うと思っているんだ」

「はい、この国は民主国家です今はまだ国民の皆様は新国家樹立に反対する事でしょう。ですが分かってくれるはずです、それが最も世界に平和をもたらすという事が」

「......正気かね?」

「勿論です全ては平和のために......」

 

ふざけてやがる。

今分かった。こいつは俺達をおちょくる為に現れたのだ。

新国家の樹立だと、出来るはずがない。

 

「そうですねまずは日本国総理大臣にでもなりましょうか。

次の投票選挙には私の名前を書き記しておいてください立候補しますので」

「き、君は何を言っているのかねそんな事が認められるはずが.....!」

「ではこの状況が長引くだけです、貴方方にこの国を守る力がありますか?」

「.....っ」

「この戦争を今すぐに止める力がこの国に、日本の政治家にありますか。

 私にはある。この戦いを終わらせる力が、民衆を救う力が。民衆はどちらを選びますかね」

 

話し合うだけで解決の糸口を提案できない国会議員。

彼らに日本を導く力があれば我々はとうに動いている。

否定できないからこそ誰も何も言えないでいた。

だがその男は違った。

 

「あまり日本をなめるなよ侵略者風情が」

「た、大尉っ」

 

陸上自衛隊の制服に身を包む。

精悍な面構えの男が鋭い眼光でナガラを見ていた。

副官の男が慌てた様にしている。

確か彼は真村冬月(さなむらふゆつき)大尉だ。

 

「日本人が選ぶ大将はいつだって日本を守る男達だ。

 お前の様な敵を選ぶ日本人は一人だっていない」

「そうだ!お前なんかに大尉が負けるか!自衛隊が動けばお前なんかひとひねりだぞ!」

 

その言葉でハッとした人達が何人かいた。

そして恥じた少しでもこの国の先行きに不安を感じた事を。

この国にはまだこういう男達がいるのだ。

 

「その通りだ日本はまだ負けちゃいない。

 前哨戦で勝ったからっていい気になるなよ」

 

荒木本部長もその一人だ。我々は力を合わせて立ち向かわなければならないのだ。

この男とその背後に控えるテロ組織に。

パチパチとモニター越しにナガラは拍手を送っていた。

 

「感服いたしました。そうでなくては僕の配下にし甲斐がない。

 ではゲームをしよう楽しいゲームを....ヒヒ」

 

そう言うとナガラは不気味な笑みを浮かべる。

これがこの男の本性か。

そう思っていると私と視線が合った。奴が俺を見ている。

 

「フェーズ1では遊んでもらいましたからね。フェーズ2でも続行しましょう。

 長門警部あなたの街が舞台です。

 これから四十八時間後に新大和市内の病院を——爆発させます」

「なんだと!?」

「ご安心ください複数個所の内の一つだけです。見事その一つを当て退避させる事が出来れば貴方がたの勝ちです。できなければ大勢の患者が死ぬことになる」

「馬鹿な出来るわけがない!」

「出来ますよ言ったでしょ僕には力があるって。今回の事件を見ていたら分かる通り、僕はやると言ったらやりますよ。貴方がたも前言した通り守って見せてください日本国民を。彼らは見てますよ貴方がたを」

 

そう言って望月ナガラは画面から消えた。

配信を終えたのだ。こうしてはいられない、我々は一刻も早く動くべきだ。

直ぐに官僚たちが動き出した。

 

「今すぐ市内にある全ての病院に退避命令を出しましょう!」

「だが市内にはまだ敵のドローンが多数存在する、

 患者を安全に退避させるにはこれらを排除する必要がある」

「ですから一刻も早く自衛隊を派遣するべきです!」

「それがまだできないと言っただろう!」

 

これでは埒が明かない。

千日手だ。彼らが出来ないなら現場の人間でやるしかない。

長門は新大和市に向かうべく席を立ち部屋を出ようとする。

 

「長門警部」

 

そこに呼びかけて来た男がいた。真村大尉だ。

 

「どこに向かうつもりですか?」

「決まっている、署に戻ります。機動隊でも何でも動員して病院の避難を優先させます!」

「それなら私も一緒に連れて行ってもらえませんか」

 

思ってもない提案だった。

自衛隊はまだ動けないのではなかったか。

だから副官も大尉!?と驚いているようだが。

彼はいたずら男子のような笑みを浮かべて。

 

「まあ重要参考人である長門警部の護衛という事で同行すれば問題ないでしょう」

 

問題ないわけがないはずだが。

彼という存在は心強い。きっと大勢の人々の力になってくれるはずだ。

それにと続けて真村は言った。

 

「あそこには弟分がいるんですよ」

「弟さんですか?それは心配ですね」

「いえ心配はしてないんですがね、俺が鍛えたんで、あいつなら何とか生き残ってるでしょうし」

 

はっきりとそう言った。

そこには全幅の信頼が見て取れた。

絶対に生き残っていると確信している。

この覇気に満ちた男にそうまで言わせるとはどんな人物なのだろう。

 

「まあ頼りになる男ですよ。昔はグレてましたが今のあいつなら、この事件も何とかするんじゃないかと思ってるんですよね」

「え?」

 

流石にそれは冗談だろう。

真村大尉は笑って冗談ですと言った。

顔に似合わずお茶目な人だなと思った。

 

こうして長門は真村を付き添って新大和市に向かった。

そこが激しい戦場になると予感を覚えながら。

 

 

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