ゲーム・オブ・ドローンズ—椅子取りゲーム—   作:生き残れ戦線

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フェーズ1 ブラックアント編
第一話 黒蟻


久しぶりの外の空気は平穏としていた。

 

もっと物々しい世紀末感が漂っているかと思ったが、マンション前には人っ子ひとり居やしない。

みんな政府の言う事を守っているようだ。感心感心。

これなら目的もスムーズに達成できそうだ。

とりあえず最寄りのコンビニを目指そう。

十分とかからない場所にある。行きつけの店だ。

人がいれば何かわかるかもしれない。

マンションの自室から見えた飛行ドローンの姿はない。

行くなら今だな。

 

俺は慎重に行動を開始した。

 

住宅街を抜けていく。

道行く通りの家々は戸を閉ざし空虚だがやはり人の気配はあるようだ。

時折こちらに視線がくる気配がある。

頑なに出ようとしないのには訳があるのだろう。

俺はその訳を道の途中で発見した。

 

「....死体だ」

 

男女の死体が転がっていた。

外傷痕から判断するにひき殺されたようだ。顔にタイヤの跡が残っている。

まさか現代日本で野ざらしにされている死体を見る事になるとは思わなかった。

こんなの普通じゃない。

行政はどうなっている。疑問に答えてくれる者はいない。

仕方なく俺は歩みを再開した。

 

幸い死体を見つけたのはそれが最初で最後だった。

ほどなくして無事にコンビニに到着した。

......だが、

 

「ひどいな」

 

コンビニは破壊された後だった。

自動ドアは粉々に粉砕されていてまるで自動車が突っ込んだかのようだった。

内装も酷く荒らされている。だがこれは人間の手によるものだと直ぐに分かった。

商品が全くないのだ。空き巣に入られたかのように空っぽだ。

恐らくドローンによって破壊された後に俺のような人間が後から取って行ったのだろう。

先を越されたわけだ。

 

俺の行きつけの店を狙うとは酷いじゃないか。

 

全く同じ事をしようとしていた事は棚に上げて略奪者たちに憤慨する。

が直ぐに怒りは霧散する。

は、腹が減った。

少しでも良い何かないか。

そう思い荒らされた店舗内を物色する。

有ったのは鉄くずとプラスチックごみ、僅かに駄菓子数種類が見つかった。初めての戦利品はこれだけだ。くそうミルクもないのか。

これじゃあプロテインが作れない。

 

平べったいシート状の駄菓子を食べる。

うん美味い。だが腹の足しにならねえ。

少しだけ満たされた腹も特大の空腹にかき消されては意味がない。

これだけじゃ足りない。もっと大きな店に行く必要がある。

 

「だがその為にはメインストリートに出る必要があるよな」

 

恐らくそこは此処とは比にならないくらいほど危険度が高いだろう。

どうするか一度家に戻るべきか。

少しだけ考え行くことに決めた。

戻っても仕方ないし状況は好転しないだろう。

 

そうと決まれば最寄りの商店街に行くルートを考える。

危険を想定し退路も常に作っておかなければならないだろう。

距離が遠くなるにつれ危険度は増すからな。

安全だと思う道を導き出していく。

脳内マッピングを埋め終わり再出発しようと店を出た。

その時、誰かの悲鳴が聞こえた。

 

「.....って!たす....っ」

 

恐らく誰かが助けを呼んでいる。

段々と声がクリアになっていく事から近づいてきている事が分かる。

音からして俺が来たマンションと同じ方角からだ。

見るとその方向の通りから誰か飛び出してきた。

女性だ。まだ若い高校生ぐらいの女の子が全速力で走って来る。

それは見事なフォームからなる疾走で俺は思わず唸った。

 

実に素晴らしい全力疾走だ。まるで命を懸けているかのように。

事実その女の子は命がけで走っていた。

迫りくる脅威から逃げていたのだ。

 

数秒後現れたそいつを見て俺の顔が凍り付く。

 

それの外観を一言で説明するならば蟻だ。

軽自動車程の大きさ、独特の黒いフォルムからなるその姿は黒蟻を想起させる。

当然その大きさを除けばだが。

実際それは通称ブラックアントと呼ばれているnozma社製四輪駆動型AI配達車だった。

設定速度時速40㎞で走るそれが女の子をひき殺そうと猛然と走っていた。

 

女の子は半泣きだ。そりゃそうだ俺も怖い。

しかし成程これがAIの暴走か。

実際に目の前で起きているのを見るまでは半信半疑だったが、これで信じざるをえなくなった。

機械が人間を殺そうとしている事実を。

 

女の子と目が合った。パッと目が輝いた。

あれ、もしかして助ける流れに入った?

参ったな出来るだけ交戦は控えたかったんだが。

 

しかしそうも言ってられない状況が刻一刻と迫っている。

蔵人は肩にかけていたライフル銃を構えた。

やるしかない。

銃口を黒蟻に向ける。弾は装填している。

後は撃つだけだ。心の中で数を数える。

 

3——2——1。

 

バアンっと強烈な音を立てて放たれた弾丸が女の子の横を通り抜け黒蟻の前面に直撃する。

弾痕が残る程の威力に黒蟻は停まる。

AIが異常をきたしたと判断し即座に異常を検査しているのだ。

女の子はその間に奴との距離を離す。

直ぐに彼女は俺の前に到着する。

息をきらしながら、

 

「.....あ、ありがとうございますっ」

「礼は後だそれより行くぞ」

 

早くこの場所から逃げないとならない。

自己紹介はその後だ。

黒蟻が再稼働する前に俺達はこの場から去った。

 

 

 

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