ゲーム・オブ・ドローンズ—椅子取りゲーム—   作:生き残れ戦線

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第四話 道端の猫

何とか最寄りのコンビニまで戻って来れた。

そこで俺は走るのをやめた。

 

息を切らして駐車場にへたり込む。

何だったんだあの黒蟻は。

最初に遭遇した時とは様子が違った。

銃弾を受けても安全装置が作動していなかった。切ったのか自力で。

ありえない。もしそうだとしたら学習しているという事だ。

AIが考えて動いている。

 

先程の光景を思い出す。

殴殺、切断、圧殺、あらゆる殺し方でヤクザ達を殺していた。

幼児が積み木の玩具で色んな遊び方を考える様に。

基準のアルゴリズムを増やしている。

 

俺を殺さなかったのも妙だ。

一番近くに居たはずなのに。

小太り男の言葉を思い出す。

 

奴らは追われていたドローンに。だから隠れていた。

見つかれば殺されると分かっていたから。そう仕組んだのは誰だ。

望月ナガラだ。奴がドローンに何か仕組んだ。

なら俺とヤクザの違いはなんだ。

 

そうか犯罪履歴だ。それを基準にしてリストを分けた。

それなら犯罪を犯した人間を優先して殺す事が出来る。

だが何のためにそんなことをする。

 

望月ナガラの目的とは一体。

 

「.....分からん」

 

考えても仕方ない。奴がどこに居るのかすら分からないんだ。

蔵人は考えるのを諦める。

当初の目的は失敗に終わった。

食料を補給できないばかりか百貨店を黒蟻に占領されてしまった。

恐らく今もあそこにいる可能性は高い。

 

そういえばどうして黒蟻は百貨店を襲った。

あのタイミングで来たという事は原因は一つしかない。

外に逃げたコノハ達だ。そこで遭遇したのだろう。

襲われちりぢりになったか。

コノハは無事なのか。それも分からない。

今から助けに行く気力も残っていない。

このままだとまじで餓死するぞ。

 

「......腹減った」

「あ、ならコレ入りますか?」

 

振って湧いた声に俺は顔を上げる。

そこにいたのはなんとコノハだった。

奴らに追われていたはずなのに彼女はケロッとしていた。

それどころか背負っていた可愛らしいバックから食べ物を幾つも取り出すと俺の目の前に置いていく。ナッツ、缶詰、スナック、カップ麺、レトルトカレーもある。

 

「ど、どうやってこんなに。というか無事だったのか」

「はいあの後、商店街を出た所であの黒蟻に出くわしてしまったんです。ですが何故か私を追って来た人たちを追いかけ始めて。私はよく分からなかったんですけど助かったんです」

 

そうか俺と同じだ。優先されなかったんだな。

 

「でこれは?」

「助かった後、実はまた百貨店に入ったんです。今度は裏の非常口から食料コーナーに行って片っ端から食べ物をバックに詰めていたら凄い悲鳴が聞こえたので逃げてきました」

 

何故か誇らしげに語る。

いやまあ凄い事をやってのけたんだが。

あの状況で盗みに戻るとはな意外と肝が太いやつ。

そんな事よりも蔵人は宝石の様に並ぶ保存食を見て。

 

「くれるのか?」

「勿論です食料が手に入ったのもクラウドさんの御蔭ですし」

 

ジーザス。

俺は恥じた。こんな良い子を囮に使うなんて。

何て俺は酷い奴なんだ。そして俺はくらんどだ。

 

「ありがとう本当にありがとう」

「え、何で泣いてるんですか!?」

 

まだこの世の中、腐っちゃいなかった。

それが分かり何だかおじさん涙が出ちゃった。

まだ25だけど。

 

現金なもので何だかこの子とは上手くやっていけそうな気がした。

決して物に釣られたわけじゃない。

バックパック(小)に食料を詰め込むと俺はコノハに家に戻ることを提案した。

とりあえず今日の収穫はこれまでにしよう。

 

「はい私も賛成します。とりあえずこれで三日は保つと思うので」

「.....それで三日か六人家族は大変だな」

 

そう六人だ四人じゃない。

きっとご両親は戻って来る。彼女もそう信じているのだ。

だから一週間分の食料を三日と言ったのだろう。

 

「.....はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「ふふんふ~ん」

 

低音のきいた鼻歌がこちらにまで聞こえてくる。

私が食べ物を譲ってからというものクラウドさんは上機嫌だ。

それを見ていると何だかおかしくて。

だって最初会った時は冷たい目をしていたから。

もっと怖い人かなと思ってた。

でも悪い人じゃなさそう。

 

付いていきたいと言った時は悩んでいたようだけど認めてもらえたようだし。

この人についていって正解だった。

私一人だったら今頃もうとっくに死んでいただろう。

 

それほどに今の世の中は変わってしまった。

これからどうなってしまうのか。

それは誰にも分からない。だけど今日を生き延びて分かった事がある。それは自分の足で動かないと誰も私達を助けてはくれないんだということ。

助けを待っていては駄目、自分で動かないと。

家族を守る事は出来ない。

 

その為には——

 

「クラウドさんお話があります」

「ふー.....ん?」

「今後も私を探索に連れて行ってくれませんか。今回の様に私を前に出してくれても構いません。むしろ囮に使って下さい足には自信がありますので足手まといにはならないつもりです」

 

この人の力が必要だ。

後ろを任せられる強い味方が。

それが出来るのはクラウドさんしかいない。

この人は強い。たぶん私が思っているよりもずっと。

この戦いを生き抜く術を知っている。

 

「お願いします!」

「.....顔をあげてくれ」

 

言われて顔をあげる。

クラウドさんは優しい目をしていた。微笑んでくれて、

 

「むしろ俺の方からお願いしたいくらいだよ、これからもよろしく頼む」

 

差し向けられた手を握りしめる。

やった。これで家族を助けられる。

嬉しくなって思わず彼に抱き着いてしまった。

おいおいと彼は困った様に笑う。

 

私も笑った。

きっとうまくいく。

 

....そう思っていたのにな。どうして神様はこんなにも残酷なのだろう。

 

それは何気なく道の端にあったモノをたまたま視界に映してしまったのだ。

何かが道の端に転がっている。何だろうと思い見て絶望した。

それは男女の死体で。

 

......紛れもなくそれは私の父と母のモノだった。

 

「あ、ああああ。.....ああああ!!」

 

そこからは良く覚えてない。

父と母の遺体に縋りつき泣き叫んでいたと後になって知った。

とにかくその時の私は狂乱していた。

鳴いて叫んで喚いていたそうだ。

その間もずっとクラウドさんは傍にいて辺りに注意を払っていてくれた。

 

次に正気を取り戻したのは自分の家のベットの上だった。

何とかクラウドさんが泣きわめく私を運んでくれたらしい。

弟と妹が教えてくれた。

クラウドさんは直ぐに自分の家に戻ったらしい。

 

もうあれから二日が過ぎていた。

父と母の死は弟達に伏せる事にした。

まだ話せない。あの痛ましい死にざまを。

 

許せない。二人をあんな惨いやり方で殺したあいつを。

あの黒蟻だけは許せない。

 

絶対に私がこの手で壊してやる。

それがせめてもの弔いだから。

 

 

私は黒蟻を壊すことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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