ゲーム・オブ・ドローンズ—椅子取りゲーム— 作:生き残れ戦線
あの後、何とか安住家の表札を発見できた蔵人はコノハを家に送り届けると、足早にマンションの自室に戻って来た。
ドアにもたれかかる様にして座る。
そこでようやく一息つけた。
行きの道中で見つけた男女の死体。
まさかあれがコノハの両親だとは思わなかった。
もっと早く気づいていれば防げたかもしれない。
そう思うと何とも言えない気分になる。最低の気分だ。
やるせなさに腸が煮えくり返る。
なので蔵人は筋トレを始めた。
まずは腕立てだ。上腕二頭筋と大胸筋に負荷を与えていく。
一、二、三、四——。
腕立て伏せ百回を難なくこなしスクワット百五十回を終わる頃には汗でびっしょりになっていた。
流れる様にシャワーに入った。それがいつもの日課だった。
まだやっていなかったからな。
いつものルーティンをこなし終えるとすっかり頭が冷えていた。
胸の内にあったどす黒いもやもやが晴れる。
やっぱりこういう時は筋トレに限るな。
精神の調整はまず肉体から。それが心を強くする基本だ。
昔はそれが出来なかったから良く荒れていたっけ。
今では懐かしい思い出である。
ぐぅと腹が鳴る。飯にしよう。
蔵人はバックバックから保存食をテーブルに並べていく。
大量とは言えないが、とりあえず今日と明日の分はある。
俺はレトルトカレーと乾麺をを手に取った。
台所に行き鍋に水を溜める。
沸騰したところで乾麺を入れ茹でる。
その間にレトルトカレーをレンジで温める。
完成は同時だった。二つを組み合わせ出来上がったカレーパスタを手にリビングへ。椅子に座っていただきます。
「.....うまい」
人生で一番うまいカレーパスタだった。
自信を持って言える。それ程にうまかった。
夢中になって食べる。一気に半分無くなり慌ててゆっくり食べる事にした。出来るだけ満腹を感じる為だ。リモコンを手に取りテレビを点けた。
当然だがどのチャンネルも連日連夜暴走ドローン関連のものだ。
伝えられるのは少し前までは非日常のものばかり。
キャスターだけがいつも通りの様子で台本を読み上げていく。
「『AIの不具合による死傷者は今日で四千三百二人となり——』」
「『専門家の予想では一週間程で沈静化するとの見込みで——』
「『ノズマ社の株価が驚異の80%暴落し経済に対して負担が増えるとの見込みです。次は——』」
どんなに探してもあの男達に関しての記事がない。
警察がこれを把握していないはずがない。
という事は意図的に隠しているのか。
公表する時期を見計らっているのか。
どちらにせよ警察は判断を見送っている。
やはり実行犯と目される望月ナガラが関係しているのは間違いない。
「『今回の騒動に対して政府は効果的な打開策を提案できていないとして都市部では抗議デモが行われており——』」
「こんな時でもデモは起きるんだな」
感心するやら呆れるやら何とも言えない顔になる。
だがまあ気持ちが分からないでもない。
いつまでたっても議会を優先して進まない現状を見れば現場の人間からは声も出るだろう。
「『一部の人々からはAIの行動を肯定的に捉える者も出ており中には「AIは犯罪者を殺している」という声もあり賛否両論の声が上がっています。次に『著名クリエーター社長河野聡さんが死去、AI暴走に巻き込まれたか——』」
「うそ.....だろ」
ピタリとフォークを動かす手が止まる。
AIは犯罪者を殺している。そのフレーズが引っ掛かった。
あの店で起きた惨劇を思い出す。
罪のない人々をただ口封じの為に殺していた罪人ども。
奴らは報いを受けるべき人間だった。
黒蟻があいつらを殺すことを優先したのも確かだ。
それだけを見れば成程、犯罪者を殺しているというのも間違いじゃない。
だが同時に黒蟻はコノハの両親も殺している。
彼女の話しぶりから両親は善良な人だったのが伺える。
罪のない人間を殺したAIはヒーローじゃない。悪だ。
悪は倒すべき敵だ。
「.....倒してやる」
震える声でそう言った。
この町に放たれた犯罪者もAIもぜんぶ。
俺が邪魔だと思ったものは全て排除する。
......だって。
....だってこのままだと新作のゲーム出ないしな!
著名クリエーターが死去!?しかも河野聡氏が!?
嘘だろもう『ポッケモン』出来ねえじゃん。
世界的大人気ゲーム『ポッケモン』の生みの親が死んだ。
その情報は俺に激震を与えていた。
噓だあああ世界の損失だああ。
彼の作品たちをを愛する一人として俺は泣いた。
嘘だと思いたかった。
信じたくなかった。思わず現実逃避をしたほどに。
正義とか悪とか関係ない。
「許せねえ!」
俺は亡くなられた河野聡氏の為に黒蟻と戦うと誓った。