ゲーム・オブ・ドローンズ—椅子取りゲーム— 作:生き残れ戦線
私は目を覚ました後、着替えた。
いつもと変わらない。動きやすい運動着に。
私が前から欲しいと言っていた物をお母さんがブレゼントしてくれたものだ。
大事な試合の時に使っていた。
それを纏うと部屋を出てゆっくりと階段を降りる。
弟と妹を起さないように。もう誰も心配しなくていいように。
静かに階下に降りると玄関に。
お父さんが誕生日に買ってくれた靴に履き替える。
これで初めて全国大会に出場したのだ。嬉しかったな。
私はゆっくりと振り返り、
「いってきます」
そう言ってコノハは家を出た。
また戻って来る、そう心の中で呟いた。
門まで歩いたところで、そこで誰かが壁にもたれかかっている事に気付いた。彼は目を瞑っていて、私が目の前に来たところで気づいたように目を開ける。
「よう奇遇だな」
わざわざ家の前で待っていたくせに、まるで偶然かのような物言いが可笑しかった。
「....ここは待合室じゃありませんよ?」
「知ってるさ、だがお前は来た」
「もしかして昨日も待っていたんですか?それならすみません」
律儀に謝るコノハに蔵人は首を振ってそれを否定する。
「いんや言ったろ奇遇だって。もしかしたら今日には復帰するんじゃないかと思ってたが、あと十分もしたら一人で行くつもりだった」
「それは見透かされたみたいで悔しいですね」
「俺としちゃあ望みは薄いと思ったんだがな」
蔵人は驚きを隠さなかった。
たった一日だ。その間をおいて彼女が外の世界に出て来れるとは思っていなかった。
此処に来たのは最後にそれを確かめようと思ったからだ。
流石に諦めようと思っていた。
しかし彼女は来た。両親の死という痛みを克服して。
信じられない。何というタフな精神力だろう。
「ナメてもらっちゃあ困ります、これでも安住家の長女なんですから」
「ハハ...次女じゃ耐えられなかった?」
「いいえ妹の明日葉は私よりも強いですから」
「そうなのか?だがそんな君に頼みたい事があって今日は来た」
「私もクラウドさんに頼みたいことがありました」
「何だ?」
「止めないで下さい。ただそれだけです」
今すぐにでも駈け出さんばかりの勢いだ。そんな気迫をコノハは目に宿している。
クラウドさんが何のつもりで来たか知らないけれど、例え制止されようと止まる気はなかった。
ただこの気持ちをぶつけたかった。あの憎い敵に。
蔵人は頷く、元よりそのつもりはないとでも言うように。
「今回の主役はお前だろう気のすむまで戦えばいい」
「それではクラウドさん....貴方は何の為に私の所に来たんですか?」
「無論共に戦う為に」
怪訝な顔になる。てっきり喜ばれると思ったんだがな。
「何故です私の様に父や母を殺されたわけではないはず」
「命を懸けるには足りない....と。案外信用ないんだな俺って」
信頼される人間ではないと自分でも思っているが蔵人は肩を落とした。落ち込んだ風をする。
そうではないとコノハは言う。
「巻き込みたくないんです。私の家族の問題に」
「そりゃ遅かったな巻き込まれてるし飯を恵んでもらった恩もある。命を懸けるには十分だ少なくともお前さん一人死にに行かせる様なことはさせない。何か作戦があるわけじゃないんだろ」
意外にもコノハは首を横に振った。
「作戦ならあります、私が走ってあの機械を誘き寄せてこの町から引き離すんです」
「....それはちと無謀すぎじゃないか?」
確かに彼女の足の速さは認めるところだ。俺も彼女の速さを買ってるからこうして待ってたわけだからな。だが、郊外の山まで6㎞ある事を考えれば無茶な作戦だ。よしんば成功したとしても彼女の体力は残っていないだろう。帰って来られないかもしれない。そう言うとコノハはじゃあどうすればいいんですかと言った。
「公的機関は頼れないし家族を守るには誰かが犠牲にならなければならないんですっ.....それとも他に何か考えがあるんですか」
「あるさっお前と協力すれば怪我なく黒蟻を倒せる。それどころか奴の弱点を調べられるかもしれない。そうすれば全ての黒蟻を倒すことができ、この町を全体を解放する事が出来る」
えっと驚くコノハを前に蔵人はニヤリと笑って、計画を話し出す。
内容はシンプルだった。だけどこれなら確かに私でも出来る。
いや私にしか出来ない事だ。
コノハは蔵人の計画にのることにした。
蔵人は反撃開始だと言わんばかりにこう言った。
「さあゲームを始めよう」