フォースワールド   作:異 威

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自分の妄想を形にしてみようかと始めました
拙い文章ですがご容赦ください


第1部【箱庭】第1章 フォースワールド 序

近年

人類の中に

【特異能力】

と呼ばれる超能力を持って産まれる者が確認されている。

 

“常人より優れた視力”

 

“鋭い直感”

 

“睡眠時間のコントロール”

 

…等の生活を便利にするような能力が大半だが

 

“パイロキネシス(発火能力)”

 

“マインドコントロール(精神操作)”

 

“自身をエネルギー体に変化させ他者の肉体に寄生”

 

…等といった危険な能力を持つ者、能力を悪用する者も増え、世界的な問題として日夜、法整備や議論が行われている。

 

そんな中、特異能力研究者 ジャック=レイニーが髄液検査による特異能力の特定、脳外科手術による特異能力の抑制と切除の方法を確立したことにより

 

特異能力は未知の恐怖ではない

特異能力者は神秘的存在ではない

我々と同じ人間である

 

といった思想が治療方と共に世界的に広まり

多くの者に希望を与えた

 

またジャック自身も“爆炎”と“吸収”の特異能力者であったが

自ら特異能力排除の実験台として手術を受けており、無事に能力の切除に成功していることも人々の信頼を得られた要因であろう

 

世界中の病院で特異能力に関する検査と治療が受けられるようになった今でもジャックは日夜特異能力の研究に明け暮れている

 

~研究所~

 

「ジャック=スカーレットだな?」

 

研究室で独り

特異能力治療の精度を更に高められないかと調査を進めていると聞き覚えのない男の声が背後から響いた

 

「ああ、失礼。」

「“ここ”での姓はレイニーだったか?」

 

驚きから、振り向いた姿勢のまま硬直してしまったがどうにか声を発する

 

「キミは…?」

「鍵をかけていたはずだが…」

「いや、そもそもこの施設は関係者以外は…」

 

ふと

その男が大型の拳銃を二丁、腰に提げていることに気付き呼吸が止まる

 

今やジャックは世界的な特異能力研究の権威であり

どこぞの権力者や同業者に命を狙われたとしても不思議はない

 

「殺し屋か…?」

「私の命を…」

 

「まぁ待て。」

「俺が殺し屋ならとっくに“仕事”をしてるだろう?」

「わざわざ声をかける必要もない。」

「それに…特異能力者じゃなくなった今のあんたを仕留めるなら素手で事足りる。」

「こんなデカい銃を持ってくることもない。」

「だが…知らない男が突然現れたら驚くよな。」

 

銃には触れないよう、ゆっくりホルスターを外して壁際の机の上に置く

机の反対側の壁にもたれて両手を頭の上に挙げる

 

「これで敵意がないことが伝わると嬉しいんだが。」

 

「…何者だ?」

「いや…何の用だ?」

 

ジャックが話を聞く気になったと分かると男は微笑んだ

 

「単刀直入に言う。」

「仕事を頼みたい。」

「俺の特異能力を抽出し、データ化してもらいたい。」

「報酬は全額先払いで4億。足りないなら言ってくれ。」

「引き受けてくれるなら助手もひとり連れてくる。」

 

特異能力の抽出

これは可能だ

脳の一部を切除することで特異能力は取り除ける

その部位を傷付けずに保管出来れば問題ない

 

(かつて特異能力の移植を試みた研究者がいたが特異能力はその核となる脳髄の一部だけでは発現しないことがその移植手術で発覚している)

 

「…他者への特異能力の移植が目的なら、それは不可能だ。」

「特異能力は脳だけでなく肉体や精神、その人間を形成するあらゆる要素に影響される。」

「精神疾患が原因で特異能力が失われた事例や、逆に発現した事例も存在する。」

 

「だからデータ化が必要なんだ。」

「抽出した能力を機械にインストールしてAIで制御する。」

「これなら他人の脳に移植するよりオリジナルの状態の再現は容易だ。」

 

「そんなことは不可能だ。」

 

「その不可能を乗り越えるのが人間の使命だ。」

「現にあなたは特異能力の制御に成功している。」

「次の段階に、新しい領域に挑戦してみないか?」

 

「…そこまでするほどの能力なのか?」

「悪いが危険なことなら手は貸せないぞ…」

 

「ならまずは俺の髄液を検査してみてくれ。」

「直接調べれば納得しやすいだろ?」

 

「いいだろう…」

 

その男の髄液を採取し検査にかける

 

正直な話、ジャックは高揚していた

 

“何かただならぬ事態が起こっている”

 

その予感に突き動かされ、男の能力の特定を急ぐ

 

翌朝

予感を超える結果が出た

 

「ありえない…」

「特異能力は人体の限界を超えたものも多く確認されている…」

「中には神秘としか形容出来ない能力もある…」

「だが…これは…」

 

何かの間違いかと再検査を行うがモニターに表示される検査結果は変わらない

これがあの男の特異能力であることは間違いない

だがあまりにも突拍子もない、今まで全く確認されていない、予測すらされていない能力に愕然とする

 

“時空間転移”

 

あらゆる場所、あらゆる時代を瞬時に移動する特異能力

 

「結果が出たようだな。」

「納得出来たか?」

 

昨晩と同じように、施錠した部屋の中に男が現れた

 

「そうか…確かにこの能力なら守衛も監視カメラも鍵も関係ないな…」

「まさかこんな能力が存在するなんて…」

 

「希少な能力なのは理解出来たろ?」

「引き受けてくれるか?」

 

「…分かった。」

「手術の準備をしておくよ。」

「だが特異能力のデータ化なんてものは考えたこともなかったんだ。」

「抽出したとしてもすぐには…」

 

「すぐじゃなくても構わないさ。」

 

「あぁ…そうか…時間もキミには関係ないんだな…」

 

「そういうことだ。」

「いつかの未来で上手くいってることを願うよ。」

 

「キミは…何をするつもりなんだ…?」

「時代を…世界を変えるつもりか?」

 

僅かに、男の目付きが険しくなる

 

「変えたかったんだが、失敗してな。」

 

「それで他者に託したいと?」

「そうまでして、どんな世界を欲したんだ?」

 

「戦争のない世界にしたかった。」

「だがそれ自体が間違ってたらしい。」

「神様を怒らせてしまってね。」

 

「神…それは比喩表現か?」

 

「真実さ。」

 

その後、“守家(もりや)”と名乗ったその男が連れてきた助手“ドゥオ=ルゥエル”という女と共にジャックは守家の特異能力の抽出に取り掛かった

 

守家の協力者、ルゥエルという女により摘出した脳組織の複製が行われると次は摘出した脳組織を再び守家の頭部に戻す手術を行う

 

ジャックには信じがたいことだったが

ルゥエルは事も無げに、半日足らずで“脳組織の複製”などというSFじみたことをやってのけた

隣国が研究しているクローン技術を用いればどうにか…などと考えていたのはなんだったのか

彼女も特異能力者なのだろうか

 

「驚いたな…」

「全く見分けがつかん…」

「いったいどうやって…」

「こんなことが出来るならキミだけでも問題なかったのでは?」

 

「私に特異能力に関する知識や医学の心得は無い。」

「これは人体を解析し復元させる治癒魔術の応用による擬似人体の生成だ。」

「脳の一部分だけを精密に再現するには特異能力の根本になる部位だけを見て解析しておきたくてな。」

「適材適所というやつだな。」

 

“魔術”という単語が引っ掛かったが今は気にしないようにした

タイムトラベラーの脳外科手術をしてるんだ

魔術師が出てきてもおかしくないさ

 

その後、無事に手術は終わり

僅か1週間の入院で守家は以前と変わらない調子に回復していた

 

なんでも

守家は人体の生命エネルギー“気”を操作する“心術”の使い手であり

脳に意識を集中させ、気で回復を早めたらしい

 

“心術”に関しては現代でも多くの使い手が確認されている

特異能力とはまた異なる能力であり

全ての生物が体内に秘めた“気”を訓練によって自在に操り

体内で気を増幅させ身体能力を強化する

体外に気を放出し肉体を覆う鎧にする

などが主な技術とされている

 

守家は特異能力も全く問題なく機能しており

礼を告げるとその場から、或いはこの時代から…

姿を消した

 

その後

ジャックは別の時代に転移したルゥエルと共に特異能力のデータ化、機械化に関する研究を秘密裏に行うことになる

 

時空間制御装置“タブー”が完成するのはそれから数十年後

 

これは人類と神との戦いの物語

そのほんの一部


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