自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です 作:流石ユユシタ
薄暗い牢のような部屋。そこでサジントがノワールに初任務の経緯について説明をしていた。
「ローブの男か……」
「はい。フェイが確認した様で、ほぼ戦わず逃げられたようです」
「……そいつはハウンドを改造してたんだろ? そんな奴に、ただの仮入団卒業してばかりのルーキーが犠牲も出さずに退けられるのか?」
「それは見てないので……しかし、村の少女が言うには助けられたのは事実だと。記憶が混同してあまりはっきり一件を覚えてはいないようですが」
「トゥルーの方は?」
「彼は非常に優秀です。魔術の精度や、剣術、恐らくですが、彼の同期の中では頭一つ抜けているかと」
「……アーサーは?」
「頭二つくらい抜けてます。化け物でしょう」
「光の魔術を出したか?」
「はい。恐ろしく精度が高いです」
「……アーサーに他におかしな点は?」
「彼女は口数が少なく、普通に人にずばずば際どい事も言います」
「そう言うのは良い。怪しい点とかだ」
「怪しくはないと思います。ただ」
「?」
「フェイのことになると急に口数が増えます。しかも、私は彼の事全部分かってますよ感というか、後方彼女面みたいなことをしてました」
「なんだそりゃ」
「いえ、俺も良く分からないのですが二人はもしかして、恋仲」
「いやねぇよ。俺の勘がそう言ってる。つうか、どっちも重度のコミュ障なんだろ? アーサーの方はよく本が好きなコミュ障男女が自分の好きなことになると饒舌になるみたいな感じだろ」
「あぁ、なるほど」
淡々とアーサーフェイ恋仲説を否定していく。ノワール。小さい少女ではあると思えない程に言葉が乱暴である。
「まぁ、いい。お前はアーサーを見てろ……俺は、少し、このフェイって奴を見ることにする……」
「任務同行ですか?」
「一般人のふりをするがな。ノワールの方の姿、つまり今現時点でのこのプリティーな娘の姿でちと見張る」
「……プリティ」
「あ?」
「あ、すいません。表向きの一等級聖騎士、ブルーノの方の姿の方ではないんですね」
「あの高身長の男装姿じゃ目立つ。それに一等級が身近に居たら色々と本性出さないかもだろ」
「貴方がわざわざ動くのは珍しいですね」
「このフェイって奴……妙な感じがするのが頭が拭えねぇ。取りあえず、こいつの次の任務は俺が見るから、お前はアーサーしっかり見とけよ」
「はい」
彼女には二つの顔がある。
彼女は11人しか存在しない、一等級聖騎士。
そして、裏で汚れ仕事や貴族を探ったりを個人でしている、本当の姿。小さい少女ノワールの姿を使い分けている。
「フェイか……」
彼女は眉を顰めて、とある聖騎士の名を呼んだ。
■◆
フェイが初任務から帰った次の日、再び朝の修業をフェイとユルルは行っていた。二人はある程度の修行を終え、一度休憩にそこでユルルがうーんと唸る。
「フェイ君は星元操作があまり得意ではないようですね」
「……把握している」
「はい、かなり勿体ないことをしているような気がします」
「……そうか」
「普通、無属性の強化魔術。これは、星元を身体の外皮に纏う事も重要ですが、それよりも内側への内包と言うのも凄い大事です。フェイ君の場合、恐らくですが、内側にとどめておかなくてはならない星元が全て外に流れてしまっているのかと……」
「なるほど」
「しかし、無属性強化は感覚的な所もありますからね……難しいと言えばそうなのかもしれません」
「無論、一朝一夕で出来るようになるつもりはない」
「……で、ですよね。その、そこで提案なのですが」
ユルルが僅かに言い淀む。震えながら手を伸ばす。
「わ、私の星元をフェイ君に直接手で流して、ある程度コントロールするのはどうでしょうか? もしかしたら、感覚が――」
「よしやろう」
即答をして、フェイがユルルの手を握った。判断が早いフェイの行動に思わずドキリとしてしまうユルル。
「はぅ!」
「……」
「あ、すいません……な、流しますね」
彼女の綺麗な手から、透明の星元が流れ込む。それをコントロールし、フェイに星元を纏わせる。
「どうですか?」
「……何となく、普段より体が軽い気がするな」
「この感覚を忘れないようにしていればきっと、強化も上達できると思います!」
「……そうか。覚えておこう」
「あ、はい。で、でも、感覚忘れないように、もうちょっとこのままで……」
未だに彼の手を握って星元を流し込む、ユルル。
「あー、そ、そう言えば、フェイ君は、今お付き合いしてる異性とか居るんですか? 」
「いや、そう言うのはあまり興味がない」
「ですよね!」
ちょっぴり笑顔。
「なぜ、そんな事を聞く?」
「そ、それはですね……えっと、戦いにおいては相手の事をよく知ると言うのはとても大事な事なんです……
適当にそれっぽい理由を付けてユルルは話した。フェイは一瞬だけ、怪訝な顔をするが師匠がそう言うのであればと納得の表情。いつもの無表情に戻る。
「あ、えっと、好きな女性のタイプってありますか……? 例えば、年上、とか」
「特にはない」
「へ、へぇー。そうなんですね……好きな食べ物とかは……」
「ハムだな」
「あ、可愛い」
そこから、何度かユルルの質問が繰り返された。
次の日、彼女が持ってきたサンドイッチはハムサンドと言うのはまた、別の話だ。
■◆
とある日、フェイにある任務が命じられた。ニママの町。最近、その町の外では人が襲われ、行方不明になると言うのだ。死傷者、未だに三名と言う少ない数だが、早急な対応が求められている。
ニママの町では在留する聖騎士が居るが、原因を解明するには至っておらず、町の巡回などの仕事もある為に町の外まで活動範囲を広げると町が手薄になってしまう。
そこで、フェイととある二人の聖騎士団員、そして、とあるベテランの聖騎士に任務が回ってきた。
これは円卓英雄記でもあったイベントである。……フェイと言うキャラクターが最初に人を見殺しにし、逃げ腰先輩だとネットで馬鹿にされるイベント。
しかも、このフェイに同行する二人の聖騎士、フェイと同期であるがフェイと並び立つ噛ませ同期と言われている二人。ついでに同行するベテラン聖騎士もなかなかのクズカマセである。
そんな事など知らず、孤児院で朝食を食べるフェイ。前にはレレとマリア。
「ふぇい、もうすぐまりあたんじょうびだって!」
「そうなのか」
「ふぇいはなにあげるの?」
「……決めていないな」
「あら、フェイ。気にしなくていいわ。私は何もいらない」
「だめ! フェイあげてね!! ぼくは、がんばってえをかく!」
「……やるからには最高のモノにする事だな」
そう言いながらフェイは朝食を済ませて、孤児院を出る。いつもの事だがトゥルーとはあまり話さない。今日は任務も違うので益々話さない。二人は何も言わずにそれぞれ、孤児院を出るのであった。
フェイとトゥルー、互いにこの後に試練があることも知らずに。
フェイが門でメンバーを待つ。あまり詳しく聞かされてはいないが、名前だけは聞いているので待って居ると、二人組がやってくる。
「あれ? もしかして、君がフェイ君やろ?」
「僕様より、前に門で待って居るとは感心だな」
「あ、ワイの名前はエセや、よろしゅう」
「僕様はカマセだ」
えせ関西弁を話す、青髪糸目のエセ。僕様と言う特徴的な一人称の茶髪黒い眼のカマセ。
「あ、既に来ていたでヤンスね」
年は二十代後半と言った風貌の聖騎士が彼らの前に姿を現す。黒目、坊主。明らかに覇気のない騎士であった。
「えと、エセにカマセ、それにフェイでヤンスね? オレッチの名前はヘッピリ、ベテランの十一等級聖騎士でヤンス」
「よろしゅうな、おっちゃん」
「僕様の足手まといにならないでくれよおっさん」
「へっ、あんまり生き急ぐなでヤンスよ、新入り」
彼らこそが鬱ノベルゲーム円卓英雄記でフェイと一緒にいきなり、死亡フラグがビンビンに立ち、そのままフェイ以外が死亡すると言うネット界でネタにされて来た聖騎士たちである。
彼らは早速、町に向かう。偉そうな四人が並んで歩く。
元々、フェイは特別部隊ではなくこの二人と一緒に部隊を組んでいるはずであった。だが、フェイは特別部隊に入ってしまったので、エセとカマセはずっと二人で訓練に励んでいた。
そして、今日が彼らの初めての外来任務。流石に二人では少ないと言う事で、フェイがゲーム運命の修正力とでも言うべきものによるのかもしれないが選ばれたのだ。
――この部隊こそフェイが本来いる部隊であったのだ。
町に着いた四人は早速、聞き込みを開始……することなく
「ワイ、ちょっとスロット回してくるわ。あー、あれやで聞き込みやで」
「僕様はちょっとあそこの美女に聞いてくる」
「オレッチは酒場で聞き込みをしてくるでヤンス」
フェイ以外の三人は任務をほっぽりだし勝手に動き回った。フェイは一応、町の外を見回ったが特に怪しい所は無し。
気付けば辺りが……夜に向かっていた。
「なー、おっちゃん。そろそろ帰らへん? ワイもう、疲れたわ」
「ふっ、僕様も聞き込みをしたのだが中々尻尾は掴めん」
「そうでヤンスね。取りあえず、今日は成果なしってことで帰るでヤンスよ」
「……」
フェイはもう、何も言わなかった。と言うか、この任務に来てから一言も話していない。
「なぁ、フェイ、君って全然話さないんやな」
「そうだぞ。僕様が折角……」
二人がフェイに言葉をかけようとした時、大きな叫び声が聞こえて来た。男性の声と女性の声。
「た、助けてくれ!」
「あぁぁ!!」
――それは悲鳴以外のなにものでもなかった。
不細工な走り方。周りの眼などどうでも良い程にその二人は焦っていた。足取りがあまり芳しくない。
「お、お前ら聖騎士だろ!? あれを何とかしてくれ!」
「なんや? 自分らどうしたん?」
「ば、化け物よ。最近、ちょっと不気味だから肝試ししてたら」
「ふーん、それで? 化け物ってのはどんな――ッ」
気付いたら、そこに居た。灰色の粘土のような色。人の模型のような形なのに、服を着ていない。筋肉質の男性型。
髪もあるがそれも灰のような、色味を失った色素。
「
エセがそうつぶやいた。呼吸は荒々しく、こちらをジッと見つめて既に臨戦態勢に入っていた。
ゾクり。生きた心地がしない。エセ、カマセ、そしてヘッピリこの三人にこの圧は強すぎた。
「あ、ああぁぁ、これ、ヤバい奴やろ」
「うわぁあぁぁ!!」
「ちょ、ヘッピリ!? ジジイクソ! 先に逃げんな」
「ちょっと、俺達を置いて行くなよ! 聖騎士だろ」
誰もがそこから逃げ出そうとした。これはゲームと同じ展開である。誰もが逃げ、ここに居るフェイ、エセ、カマセ、ヘッピリ、肝試しをしていた男女二名を含めた六人は一目散に逃げだす。
だが、助かったのはフェイだけである。
頭が無くなり、足が無くなり、血のシミが地面にべっとりと付く。乾いてただのシミになった後に、聖騎士たちの応援が到着し、それは討伐される。
「おい、お前逃げなあかんやろ!」
「そうだ! 僕様たちと一緒に」
「……逃げたければ逃げていろ」
それは今日初めて聞いた男の声であった。地面に張り付いた銅像のようにその男の足は動かなかった。
振り返らず、声だけエセとカマセは言った。ヘッピリとカップルは既にここから走り去っていく。
フェイは剣を抜き、眼の前の存在を捕える。僅かに、エセはその背中を捕えた。その時、僅かに彼の時間は止まった気がした。
あれは……と彼の幼い憧憬が蘇った。
エセは昔から英雄に憧れていた。ずっと自分は凄い存在に成れると思い込んででもそんなことはただの空想であった。だから、彼は面白おかしく道化のように生きていくことになった。
適当にお金を稼いで、女を抱いて、酒に溺れ、訓練はバレない程度にさぼって、気楽に、気楽に、気楽にと。
でも、心の底では
自然と、彼の足は止まった。
剣を抜いたフェイが怪物と対峙する。エセたちは真逆の方向に走る。アビスが左腕を上げる。
それを見て、一瞬で右に跳躍。アビスの腕が地面に刺さる。
ドンっと、クレーターが出来た。拳と言う物では想像もできないような重い音。あれを生身で受けたなら、生身のフェイならば死んでしまうかもしれない。
だが、そんな死の恐れなど彼にはなく、一瞬で再び距離を詰める。アビスが再び、左腕を振り上げフェイにあてようとする。
それに呼応するようにフェイも剣を振った。タイミングは両者同じ、全力と言ってもいい程のフェイの一撃が振り上げられた僅かな腕によって相殺され、彼は宙に舞った。
「ガァぁあ!」
宙に舞って、落ちてくる彼に向かって拳をぶつける。くるりと空中で腰を捻ってそれを彼は躱す。
強靭な体幹がそれを可能にしていた。
躱した、だがそこから左腕、そして右腕と拳の雨がフェイに注ぐ。交わしきれない拳、捌ききれない拳、それを彼は左腕に右腕で受けた。
一瞬で数メートル吹っ飛ぶ。ボールのように地面に跳ね、エセの近くでようやく止まった。右腕は恐らく折れている。そして、吹っ飛んだことで地面に額に傷が出来、血が出ている。
「逃げなきゃいけんと、ちゃうんか」
「……まだだ」
「……あんなの勝てるわけないやろ」
「……勝つ。俺が負けるはずがない」
「自惚れすぎや、だってワイらはまだ、仮入団終えたばかりやで……もっと経験を積んで、それにそんな右腕折れて、怪我だってして、頭も打って脳震盪起こしても可笑しくない……そんな状態じゃ不可能や。勝てへん」
「不可能か……」
「……そうや、だから――」
「クククク」
「なにが、おかしいんや……?」
「俄然、やる気が出てきた。不可能か。それを成した時、俺と言う存在は更に無限の空への階段に一歩足をかけたと言うになる。俺は高みに登るとしよう」
「クク、こんなにも、俺は昂っている」
それは強者の笑みだった。大気が重くなるほどにその者の圧が強くなる。アビスもフェイの笑みと迫力に一歩下がる。そして、敵と見定めて、咆哮を上げる
「■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!!」
フェイの圧。それを自身の闘気で打ち消すように。だが、それでも目の前の存在を下がらせるに至らなかった。
一歩下がった者と、下がらなかった者。満身創痍は後者であるのに明らかに佇まいが違った。
その姿に魅せられた。
アビスの咆哮、それによって魔物がハウンドが呼び寄せられる。数は十数匹。
「ふっ、俺と踊るか。試練ども」
気付けばエセが剣を抜いた。
「あっちはワイに任せておき、時間位稼いでやるわ、速くあっち殺せ」
「……そうか。だが、逃げても構わんぞ。全て俺が切る」
「あほ抜かせ。美味しい所、全部持ってかれてたまるかいな」
「勝手にしろ。だが、あれは俺が貰う」
フェイがアビスを見据えた。
「当たり前や! あんなのワイには無理も無理! だから、ハウンドの方を時間稼ぐって言ってるんや」
エセが馬鹿を言うなと言わんばかりに突っ込む。だが、その後に眼を少し見開いて笑った。
「まぁ、時間稼ぎついでに倒してしまうかもしれへんかもな」
「それだけ口を叩ければ十分だ」
「僕様もいるぞ! ここらでお遊びは終わりってのを見せてやる!!」
気付けばカマセも剣を抜いていた。魅せられたと言うべきだろうか。フェイに感化をされ、剣を抜いたのだ。
「あれ倒して、帰るんや。実はワイ、犬飼っててな。餌あげないといけないんや。はよ済ませてな」
「では、俺は丁度いいあの試練を突破して帰還することにしよう」
「クソ、僕様は本当は安全に出世したかったのに! だが、しょうがない! 終わったら全員で一杯やろうぜ!」
二人が、ハウンドに向かって行く。フェイはただ、アビスを見る。彼には既に勝利のビジョンが見えていた。アビスは核があり、それを破壊すれば良いらしい、人型は心臓部に核が有り、そこを刺せばフェイの勝ち。
だが、刺す暇があれば苦労はしない。殴られて終わりだ。
彼が選んだ選択は接近。ただ、真っすぐ走った。剣を左手に持ち替える。そして、アビスが接近するフェイにタイミングを合わせて拳を握る。全体重と勢いを付けて今までの比ではない左腕それを彼に向ける。
それはフェイは再び右腕で受けた。本来であれば、折れて吹っ飛んで死んでもおかしくはない。だが、彼の右半身には星元を纏っていた。強化された、右半身、しかし、吹っ飛ばされる。
再び地面を転がるように進む。
フェイの負け、ではない。アビスの心臓に剣が刺さっていた。一撃必殺の絶命。
「あ? 嘘やろ、もう、終わったんか!」
「僕様たちも終わらせる!」
二人がハウンドを片付け、フェイに近寄る。三人は何とか、生き残った。
「聞きたいこといくつか、あるんやけど」
「なんだ?」
「一つ、あのアビスが現れた時、そんなに驚いてなかったみたいやけど」
「ふん、常に何らかのイレギュラーが起こるのは当然だ」
「……じゃあ、あれ、どうやって倒したん? よう分からないんやけど」
「奴は左利きだ」
「え?」
「攻撃の時に必ず左腕から攻撃をする、だから右半身に全部星元を集中して、一発受けた。そして、俺も吹き飛ばされる前に、一発返した。それだけだ」
「み、右利きやった可能性もあるやろ?」
「俺の勘は外れない」
「……キモいわ。お前」
つまりはギャンブル。フェイは星元操作が上手くない。だから器用なことが出来ない。だから、あらかじめ右に溜めておいた。高速で強化する場所を選べないからだ。ギャンブル。
生と死を駆けた狂気であった。
コイツは本当に狂ってると、二人は感じる。
だが、なんとかカマセとバカにされた三人は生き残ったのであった。エセとカマセはフェイは狂っていると感じたが同時に自然と好意を持っていた。
「ふぇ、フェイ君! その腕どうしたんですか! もう、無理してバかバか!」
王都に帰った後、ユルルが心配してフェイに絡み、胸が押し付けられる光景を見て、二人はこいつクソだなと感じることになる。
■◆
んー、新たな任務か。メンバーがかなり変な感じするけど。こいつらモブやな
しかし、なんだろうか?
この、何とも言えないフィット感と言うか……元々俺の居場所はここではないかと思うような……。
いや、主人公である俺がこんなエセ関西弁とただ偉そうや奴と、でヤンすとか言う奴らと一緒の訳が無い。
町に着いた。こいつら、全然仕事しないな。まぁ俺は俺でしっかりやるからいいけどさ。
――俺、意識高い系主人公だし。
はぁ、何もないやん。つまらんわー。お? 何か出てきたな。
アビス? 初遭遇や!!
おー、ええなぁ。よっしゃ、ワイが倒したる!
こいつ、強いな……。でも、主人公である俺が負けるはずない!!
はッ!! その時、主人公である俺に電流が走る。
『それはですね……えっと、戦いにおいては相手の事をよく知ると言うのはとても大事な事なんです……
ユルル先生!! 実はあれ、もしかして俺のことが異性として気になってるのかなって思ったけど、ここの伏線かぁ! いや、流石師匠ポジ!
戦闘での伏線を張っていてくれたんだな。
そう言えばこいつ左利きっぽくね? さっきから左から攻撃だし、うわ、ユルル師匠!! 恋愛系の相談かなって、一瞬思ったんだけど杞憂だったな。
と思っていたら助っ人が。あれ? 逃げてなかったんだ? 俺の姿に心動かされたのか?
友情・努力・勝利……系、主人公か……? 俺は? 新たなる主人公疑惑が湧いてくるが、それを考える前に倒す! これで倒したら師匠も鼻が高いよな!
星元操作上手く出来ないけど、右に溜めるくらいはできる。心臓の核に剣を刺して、俺の勝ちだ!!
流石、一歩間違えたら死んでたかもしれないけど
まぁ、俺の勘が外れるわけないやろ!!
ん? なんや?
「一つ、あのアビスが現れた時、そんなに驚いてなかったみたいやけど」
何言うとりまんねん。こっちは主人公やぞ?
常にイレギュラーが起こるのは分かってんの。だいたい、初心者の任務ですとか言われても『これはS級任務になったな』みたいなのはあるあるでしょ?
俺、意識高い系主人公なので、常に心構えしっかりしてんですよ。
「み、右利きやった可能性もあるやろ?」
いや、主人公だから。それはない。俺の勘は絶対外れない。奴は左利き、
俺の
■◆
フェイ達の光景を遠くで見ていたノワール。小さい少女。
(おいおい、嘘だろ……狂気が伝染しやがった……)
彼女は何かあれば即座に助けるつもりであった。ゲームではフェイの事を怪しんでいない彼女は本来ならここに居ない。だが、フェイをマークしていた彼女はそこに居た。
つまり、フェイ達はどちらにしろ生きていたことになる。
(さっきまで逃げることしか考えていなかった奴らに、息を吹き込みやがった。何もせず、ただ背中を見せただけで……同じく命を賭けさせた、だと? どんな冗談だ)
(あいつ……自身の命をなんだと思ってる? なぜ、あんなに簡単に命を賭けられる!? 死ぬことが怖くねぇのか!?)
(ガレスティーアの娘がアイツに入れ込んでるのはそう言うわけか? あの感じ、死を恐れず、ただ覇道を行くあの感じ……ガウェイン……と同じ、強くなると言うこと以外全てを放棄した愚者……)
彼女は一度、ガウェインに殺されかけたことがあった。だからだろうか。フェイに僅かにその雰囲気を感じた。
(だが、アイツはガウェインより質が悪いかもしれねぇ、あの他者に意思を伝染させる蔓延力……危険分子と決めつけるのは早計か……? 俺だって暇じゃねぇ、他にもやることはある……今動かせるのはサジントだけ……アーサーが終わったら休みなしでフェイの監視させるか……)
(あと、フェイの過去とかも洗い直さねぇと動かせるのは……サジントだな。よし、全部任せよ)
彼女はそう言って闇に姿を染めた。
一方、その頃、トゥルーは……もう、聖騎士を辞めようとしていた。