自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です   作:流石ユユシタ

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8話 フェイに隠された才能

 フェイ、トゥルー、アーサー、ボウランが特別部隊に入隊をして、一か月が経過した。フェイ達は毎日、正式な聖騎士となる為に訓練を積んでいる。

 

 そして、フェイはほぼ毎日罰ゲームとして、訓練後も逆立ちで王都十周をこなす。

 

「あ! さかだちのにーちゃん!」

「ねぇねぇ、なんで、いつもやってるの?」

「ぼくにもおしえて!」

「煩わしい……俺の邪魔をするな」

「わずらわしいってどういういみなのー?」

「五月蠅いと言う意味だ」

 

 広い広い王都の一角。そこではフェイの逆立ちが一種のブームとなり、注目を浴びていた。

 

「お、あの小僧が来たって事は……そろそろコロッケの安売りが始まるな」

「あら、もう、こんな時間なのね。早く家に帰って夕飯の支度をしないと」

「くー、アイツを見ながら飲む酒にハマってるだ、おかわり」

 

 

 子供たちは純粋な興味。大人たちは時計として使ったり、お酒のつまみとして使ったり、安売りの合図として使ったり様々だ。無論、全ての人間が好意的ではない。時折、陰口、小馬鹿にする笑い声が聞こえるのもフェイは知っている。

 

 

 だが、それを続けて、一か月……

 

 

 フェイとユルルは毎日のように、朝練を行っている。剣術、つまりはその訓練だ。ユルルから癖を直され、そして、実戦としての経験。それらを彼は積んでいる。

 

 

 そこでユルルはあることを感じていた。

 

 

(…最初は気付かなかったけど……フェイ君には()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

それは驚きに近いものだった。最初彼の剣戟を見た時は、あまりに不細工でこの子は才能がないと感じていたからだ。

 

(最初は、なんてヘンテコな剣だなって少し、思ったけど……癖が治りつつあって、純粋な剣戟がものすごい勢いで伸びてる……)

 

 

(でも、それだけじゃない。フェイ君が凄いのは……変化を恐れない、直ぐに自分の積み上げたものを壊して新しくする)

 

 

(フェイ君みたいな諦めの悪い人って、変化を拒否する人が多いんだけど……この子は違う。常に自分を壊して、どんどん駆け上がって行く。過去なんて、忘れて……)

 

 

フェイは真面目であった。誰よりも、彼はユルルの事を師匠ポジであると勘違いをし、真面目に話を聞いて、それをこなす。ユルルもここまで物分かりが良く、仏頂面に相反して素直な生徒を持つのは初めてであり、やる気もあった。

 

 

(……どうして、あそこまで妙な癖が。)

 

 

 朝の訓練が終わる。そこでユルルはフェイに聞いてみることにした。

 

 

「あの、フェイ君は元々独学だったのですか?」

「あぁ……そうだ」

「そうなんですか……」

 

 

(独学でも、あそこまで妙な癖は普通付いたりはしないんだけど……何か、フェイ君の場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 

 ユルルは悩む。だが、彼女の考えである、フェイの剣術の才能と存在しない剣術については的を得ていた。

 

 元々、フェイと言う噛ませキャラであり、踏み台キャラ。途中、途中で主人公を邪魔する丁度良い敵なのだ。だからこそ、スペックはそれなりである。剣術においては多大な才能を保有していた。アーサー、トゥルーに勝るとも劣らないまでの才能を。

 

 素晴らしい剣の才能があったのだが、魔術の適性はからっきし。だからこそ、彼は同期や馬鹿にする者を剣でボコボコにしていた。それを毎回、トゥルーに止められるのだが、その才能があってもトゥルーやアーサーには遠く及ばなかった。

 

 理由は二つ、一つ目は元々フェイと言うキャラが傲慢であったこと努力などをしない。だから、素晴らしい才能があってもそれを生かせなかった。二つ目、フェイには魔術適正が全くなかった。後者の比重が特に大きい。

 

 アーサー、トゥルーといった規格外。彼らにはいくら頑張っても半端な者では勝てない。例え素晴らしい才能があっても、より才能に溢れ、より努力をする者には敵わない。だからフェイというキャラは、精神的に未熟であり、非道な者にたぶらかされ、闇の星元を預けられ暴走する末路を辿った。

 

 だから、アーサーとトゥルーに叩きのめされた。それなりの物を持っていたのに。

 

 だが、フェイに成り代わった少年には努力をすることが出来た。しかし、それは実を結ばない。なぜならフェイの剣術が独学だからだ。頭の中がお花畑の現在のフェイは

 

(十六連撃出来たらカッコいいだろうなぁ)

 

(十字斬りをもっとスタイリッシュに!)

 

(これ、剣を逆手で持ったら忍っぽくてカッコよくね?)

 

 

みたいな事を考えて孤児院で過ごしていた。原作のフェイはマリアが剣術の本を隠すなどという事はしなかったために、ある程度読んでおり、それなりの型が最初に出来ていた。

 

だが、お花畑のフェイはマリアによって本を隠され、伸びることは無かった。トゥルーは元々、フェイより前から型が出来ていたために、彼はしっかりと成長する。これによって、多大な差が出てしまった。

 

 

フェイは最新型のスマホを所持しているのに、使い方を誤り、興味本位でアダルトサイトを閲覧し、ウイルスが蔓延して本来のスペックを出せないような状態なのだ。あまりに不格好な為に一人を除いて才能を見抜けなかったが。

 

マリアだけは僅かに勘付いていた。だから隠したのだ。剣術の本を。つまり、大体、マリアが悪いと言う事だ。

 

ウイルスを除去して要所を見ていけば、剣に全てをかけてきたユルルには分かった。

 

 

 

「あの、フェイ君は剣術の才能がかなりあると考えています……」

「そうか……」

「はい……でも、少しだけ聞かせてください。フェイ君はどうして、強くなろうとするのですか?」

「……」

 

 

ユルルがそう聞くとフェイは眼を遥か上に向けた。

 

 

「なぜか……」

 

 

ここではない、別の何処かを見ているようで。その眼は誰かに似ているようで。

 

 

「理由と言われると……そうだな……。漠然と強くなりたい……この世で一番。それだけだ」

「――ッ」

「……」

「どこまで、強くなるつもりですか……?」

「――どこまでも」

 

 

 

(兄さま……)

 

 

 

ユルルの瞼の奥に焼き付いている古い古い記憶。彼女は元々、ユルル・ガレスティーアと言う貴族であった。父と母、そして、三人の兄が居て、幸せだった。

 

家族は全員聖騎士。だから、自分もと、夢を追いかけていた。

 

だが、先ず三男である兄が母を殺した。次に次男が騎士を十二人惨殺した。そして、長男である兄は……父を殺した。

 

 

 

『どう、して……父さまを……ころしたの、ですか?』

『……なぜ? ただ、強くなるためだ。その通り道にコイツが居た。それを切っただけの事……』

 

 

首がきれた父。鉄のような血の匂い。水たまりのようになった父の血液がある。胃液が逆流して、吐き気が湧いてくる。長男である。ガウェイン・ガレスティーアが虚空を見ながら機械のように呟く。

 

『これは……深みに落ちた者しか分からない。理解する事など出来ない。お前ではな』

 

 

(兄さまは、()()()()()()()()()()()()()。修羅の道を行き、後には帰らない。大事な物も全部捨て、全てを切って強くなるだけ……)

 

 

(そこに、目的も誇りもない。人の道を外れて、ただ、進んでいった。あの人……フェイ君は、あの人に似ている)

 

 

ただ、己の体を痛めつけ、狂ったように訓練を積むフェイを見て彼女は思い出す。あのドロドロした深淵の眼が兄を連想させた。

 

 

(もしかして……フェイ君も、兄さまのようになってしまうのだろうか。強くなるためには手段を択ばない、目的に達するために強さを手段とするのではなく、強くなることを目的にしてしまう人に)

 

 

(強さの深みに落ちた……修羅に……)

 

 

 仏頂面で寡黙で、強くなる以外に興味がないと言わんばかりの彼を見て、ユルルは心配で胸が苦しくなった。

 

 

◆◆

 

 

 

 最近、順調に強くなっている気がする。やはりユルル先生は凄いなぁ。俺に才能があるかもしれないだって?

 

 やはり、分かる人には分かるんだろうなぁ。剣術の才能ね……。ユルル先生は凄いなぁ

 

 まぁ、魔術はからっきしだけど。剣も隠された才能だったし、魔術も才能あるだろうなぁ

 

 「はい……でも、少しだけ聞かせてください。フェイ君はどうして、強くなろうとするのですか?」

「……」

 

 何で強くなりたいのか、って先生が聞いてきた

 

 うーん、まぁ、強くなるのに理由はそんなにいらない気もするが。俺の場合ッて主人公だからさ。どこまでも強くなるのは絶対じゃん?

 

 

 しかし、そうだなぁ。主人公なんでって言ってもね。理解はされないだろうし。クール系だからな、あんまりくどい事を言うのもどうかもと思うし、偶にならイイとは思うけど……今回はクールに返すぜ

 

『特に理由は無いです』

     ↓

「理由と言われると……そうだな……。漠然と強くなりたい……それだけだ」

 

翻訳機能が働いたな。クールにしっかりとしてくれている。

 

「――ッ」

「……」

「どこまで、強くなるつもりですか……?」

『「――どこまでも」』

 

 

 

これは翻訳されなかった。だって、俺はどこまでも強くなって世界を救うからな。これは当然だ。その後、俺達は再び剣を交えた。

 

 




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