本当に何も見えないね。そして結構寒い。ワープの個性ってこんなに熱がないものなの?他のみんなも、特にカエルの個性である蛙吹さんなんかは特にきつそう。
お、一瞬で視界が晴れた。10メートルほど前方にあの黒い霧のヤツと手の付いた主犯格…死柄木?とか言うやつがこちらに背を向けゲームオーバーだの帰るだの会話している。やっぱり個性の霧に感覚がないのか、あたしの存在は悟られていないみたいね。
あたしは息を殺し、音もたてずに二人へ向かって走り出す。狙いは敵連合の頭らしき死柄木とかいうヤツだ。ヒーロー志望だから殺しがご法度なのは承知の上だけど、歴戦を潜り抜けた騎士さんを以てしてDIOやディアボロを彷彿とさせるような”悪”はあたしの今後の人生を天秤にかけても今排除すべき存在だと、あたしの勘が告げている。
「けどもその前に」
!!死柄木の気配が変わった!意識を向けてるのは…梅雨ちゃん達か!!
「平和の象徴としての矜持を……っ! 脳無!!!」
死柄木が脳無の名前を呼んだ瞬間、残り5mもなかった死柄木とあたしの間に脳無が立ちふさがった。あのまま3人に被害が行くよりはこの場に留めておきたかったから思わず殺気が漏れ出た。…脳無はそこから動く気配無いね。
――チャリオッツ!!脳無の足を重点的に身体中切り刻んで!
そう念じて数舜後、あたしにしか見えない白銀の剣筋が脳無の身体に隈なく傷を作り出す。オールマイトを殺せると主張していた死柄木と黒霧はこの状況が頭に入ってこないのか静止したままになってる。阻まれて本命に届かなかったのが悔やまれるけどそれなら最優先は相澤先生だ。多分死んではいないだろうけど、どう見ても不安しかない状態だから急いで駆け寄った。
…よかった、まだ脈はある。今は気絶している感じ?あとは怪我の状態だけど……
『どう?』
『出血量が多少不安だが命に別状は見られない。多少障害が残るかもしれないがその程度で教職をやめるような男ではないだろう』
とりあえずは一安心かな。他の先生達が集まるまで耐えればリカバリーガールの個性で治せるしね。
「最近の子供は本当にすごいなぁ…。対オールマイト用に作られた脳無を一瞬で傷だらけにした…」
そのためにもあたしがこいつらを足止めしなくちゃね。
「3人ともこっち来て!!」
呆然とあたし達を眺めていた梅雨ちゃん等3人はハッとしながら急いであたしの後ろに回ってきた。
「1回しか言わないからね。あたしがあの脳無を足止めするからその間に3人で相澤先生を連れて入口まで避難して「ひ、一人じゃ危険だよ!!それなら僕m」…悪いけど緑谷くん。今のあなたは相澤先生に言われてる通り1回個性を使えるだけのただの足手まといなの」
「……!!」
「それならまだ、峰田?くんか梅雨ちゃんが残ってくれた方がマシ。仮に個性を制御できても、あたしの能力に巻き込まれかねないから逆に危ないの。だから言うとおりにして」
そう言うと緑谷くんは逡巡しながらも引き下がってくれた。緑谷くんが個性を制御できて高速で移動されてもチャリオッツ本来の精密性なら巻き込まないけどあたしはまだまだ修行不足で精密性が完全じゃないから嘘じゃない。
「よかったのかい?折角の戦力を逃がしちゃって」
脳無に目を向けるといつの間にか傷が塞がっていた。え?あいつの個性は素であの怪力を誇る異形型の個性じゃないの?それも含めての異形型?
「驚いただろ?”超再生”さ」
異形型個性の一部ではなくあくまで”超再生”単体?
「素でそのパワーに加え超再生ね…。オールマイトを相手にするなら確かにそれくらいは欲しいかもね」
「今ならまだお友達を呼び戻せるぜ。なんなら待っててあげようか?」
「必要ないわ」
あたしは脳無に向かって歩き出した。
「へぇ、たった1人でオールマイト用サンドバッグを倒す気?せっかくお友達を呼び戻す時間をあげようって言ってるのにそれどころか近づいてくるんだ。流石ヒーローの卵」
「近づかなきゃ、コイツを切り刻めないものでね」
「ふぅん。じゃあもっと近づいてきなよ。その切り刻める距離にさ」
その言葉通り足を進め、立ち止まる。脳無を射程距離内、つまり2m以内におさめた。ここまでくるとヤツの頭の位置はあたしが背伸びをしてもまだ見上げる必要があるほど高い。
「脳無!目の前のガキを殺せ!!!」
先に動いたのは脳無。指示が出された直後、あたしの首を絞めるように両腕を伸ばしてくる。
だが――
「シルバー・チャリオッツ!!!」
あたしにしか見えない白銀の騎士が脳無の両腕を二の腕から切断、更に両足も太ももから切断した。
「おい!脳無!!……なんでだよ…なんで”超再生”が発動しない!!そもそも”ショック吸収”がなぜ発動しない!!!」
「あなたまともに学校行ってた?ショック、つまり打撃を防ぐ個性で斬撃を防げるわけないでしょ!そして‼”超再生”でどんな傷でも即座に治るというのなら‼治りだした瞬間に同じ場所を刻み続ければいい!!」
複数の個性を持っているとは思わなかったが、まさか死柄木が最初に脳無で自らの身を守った際には切り傷がついていたのにもう忘れてしまったの?それともショック吸収が相手からの攻撃なら種類問わず通用すると本当に思っていた?どちらにしても対オールマイトに特化しすぎて彼とは全く別の攻撃にあっけなくやられてしまっているわけだが。
そして超再生は分かった瞬間にこういった方法で無効化できると考えていたけど思った通りだったね。再生した瞬間に切っているから絶え間なく同じ箇所を攻撃し続けるのは結構神経を使うけど時間を稼ぐだけで倒す必要はないし集中しよう。あ、別の個性で眼や口から攻撃されるかもしれないからそれらも切り刻もう。
問題は残りの二人だけどこれも多分大丈夫。さっきからこちらに向かってくる音が2つ聞こえる。
「爆豪くん‼轟くん‼あたしがこいつ抑えるから残りの2人よろしく!!」
「うるせぇ銀髪女!俺に指図するんじゃねぇ!!」
そういって一足先に飛んできた爆豪くんが脳無のほうにまっすぐ突っ込んでいき、至近距離にいるあたしごと爆破してきた。
……さっき大丈夫とか考えたけど撤回だね。爆破を避けるために(そして斬撃が爆豪くんに及ばないように)大分後退したから脳無の手足と顔面がみるみる再生されていってるし。轟くんも滑ってここまで追いついたようだ。
もうあんな距離まで接近できるかわからないんだけどなぁ…、どうしようか。
『…あじみ、チャリオッツの操作権を私に譲ってくれ。試してみたいことがある』
私が譲らなくても支配権を行使できるのに急に騎士さんからそんなことを伝えられた。試してみたいこと?
『?わかった』
よく分からないが言われたとおり譲る。
あたしの目の前に出現したチャリオッツは、さっきまで見ていたチャリオッツとは少し違っていた。まず、剣がない。素の力はそこそこあるとはいえ決して高いとは言えないチャリオッツなのになぜ剣がないんだろう?そして2つ目に、色が変わっている。輝く白銀だった鎧の色が黒みがかっている。というかそもそも、スタンドってそう簡単に形や色って変わらないはずだよね?なんで変えられるの?
「再生できたな。脳無、3人のガキを殺せ。………おい、脳無!」
どうやら脳無は動かなくなったらしい。超再生にエネルギーを使いきったのかな。
バアアアン!!!!!
入口の方から轟音が轟いた。そちらに向けると巨大な扉が壊れ、砂煙が舞っていた。
「もう大丈夫」
砂煙の中からよくTVで流れていたあの声、あのセリフが聞こえた。
「私が来た」
その声と共によく見た笑顔はなかった。
「チィッ!!ようやくラスボスが出たっていうのに…脳無!!動け!」
脳無は動く気配がない。いい加減あたしも感づいている。この変わったチャリオッツが脳無の行動を阻害しているのではないかと。
「あ~もう!!こんな時にバグったか!?おい‼動けよ脳無!!!」
「緑谷少年から大体聞いた。思ったよりも被害が無くて安心したよ。そして敵連合よ‼その私用の敵は動かないようだが?」
脳無に目を向け考察していた十数秒で私たちの後ろに移動していたオールマイトの声は普段より数段低く、相当怒っていることが容易に想像できた。
「!!グハァッッ!!黒霧ぃ!!!」
ほんの一瞬で死柄木が吹っ飛んだ。少ししか見えなかったがどうやらオールマイトがあいつを殴り飛ばしたらしい。呼ばれた黒霧は死柄木の背後に出現し死柄木を飲み込んだ。
「オールマイト‼それに銀髪のガキ‼必ず殺す!!」
そう言葉を残して。
「あれ?」
身体に力が入らな――
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
客が来ないのに不自然に小綺麗なバーの一角にその黒いモヤは現れた。
「ガフッッ」
【大丈夫かい弔?】
隅に置かれたディスプレイから話しかけられる。
「オールマイトに殴られたんだ…。大丈夫とは言えないよ……先生」
【ワシと先生の共作、脳無は?】
「脳無は…1人の少女にやられた末に、死柄木弔の言葉に耳を貸さなくなり動作しなくなりました。今頃はおそらく、ヒーローたちに厳重に警戒され回収は厳しいかと…」
「あの銀髪のガキ…脳無はあいつに手も足も出なかった…」
【へぇ】
【信じられん!アレは対オールマイト用の特別製じゃぞ!たかが1人の子供に簡単にやられるなど!】
「対オールマイトに特化しすぎたからだ…あのガキさえいなければバグらずにオールマイトに当てて殺せたかもしれないのに……」
【悔やんでも仕方ないさ!今回だって決して無駄では無かったハズだ!時間をかけて精鋭を集めよう! 我々は自由に動けないからこそ君のようなシンボルが必要なんだ! 死柄木 弔‼次こそ君という恐怖を世に知らしめよう!!】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
緑谷視点
「――悪いけど緑谷くん。今のあなたは相澤先生に言われてる通り1回個性を使えるだけのただの足手まといなの」
この一言を言われたとき、僕は息が止まった。勢いで自分も残ると言おうとしたけどその結果どうなるかが見えていなかった。
「それならまだ、峰田?くんか梅雨ちゃんが残ってくれた方がマシ。仮に個性を制御できても、あたしの能力に巻き込まれかねないから逆に危ないの。だから言うとおりにして」
だから僕は続いたセリフにも納得してしまった。峰田くんのもぎもぎは使いようによってはあの敵達を足止めできるし、蛙吹さんなら個性も優秀だしさっきみたいに頭が回る。それに比べて僕はまだ個性をコントロール出来ていないから1回でも発動したら使い物にならず、最悪殺されてしまうかもしれない。
だから僕はおとなしく引き下がるしかなかった…。
相澤先生を担いで4人で入口まで避難してすぐに、ポルナレフさんが不安でそちらを見た。…彼女は、相澤先生が手も足も出なかったあの敵を一方的に無力化してしまっていたんだ。言葉を失ったと同時に見とれ、それ以上に納得もした。ポルナレフさんの個性は斬撃を発生させるもの。僕が仮にOFAを制御できても斬撃を全力で使うなら足手まといだし、何より彼女1人であの敵を倒せるんだからあの言葉になるのも納得した。
バアアアン!!!!!
突然背後から砂煙が舞い轟音が聞こえた。
「もう大丈夫」
「私が来た」
「オールマイト‼…えと、今ポルナレフさんの目の前にいるオールマイト用の脳みそ敵に相澤先生がやられて‼それで近くにいる黒い霧がワープ、身体中に手を付けてる奴がリーダーです!」
安心感がすごいが、今はそんな状況じゃないと思いなおしてあの広場の敵の情報を簡単に伝えた。
「ありがとう緑谷少年!!!あとは我々にまかせなさい!!」
そういってオールマイトは一瞬でかっちゃん、轟君、ポルナレフさんの背後に移動して、直後に身体中に手を付けてる奴…確か死柄木 弔が後ろに吹っ飛んでいった。よく見えなかったがオールマイトがあいつを殴り飛ばしたんだと思う。その勢いのまま黒い霧に飲まれて消えていった。この時を以てこの事件は幕を閉じた。
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翌日:雄英高校
昨日のごたごたで学校は休みになったけど、僕は学校に来ていた。
「やあ、来たね緑谷少年」
「あの、オールマイト、昨日の件で制限時間は大丈夫でしたか?」
「ああ、緑谷少年も見ていた通り、ポルナレフ少女があの脳無を相手してくれてそのあとはなぜか敵の命令を聞かなくなったおかげでで私は殆ど何もしていない。制限時間はまだほとんど変わっていないさ」
「…………」
「緑谷少年?」
「……昨日、オールマイトが来る前の話は報告を聞いていますよね。…あのとき、ポルナレフさんに言われたんです。今の僕は1回個性をつかったら何もできない足手まといだ、って。そのとき僕は、言い返せなかったんです。屋内戦闘訓練でも同じように1回OFAを使ったら倒れましたし、それ以前に体力テストでも相澤先生に同じことを言われました…。」
「それで今焦燥感に駆られていると。…緑谷少年、君は個性をその体に宿してまだ数ヶ月しかたっていない。言ってしまえば個性については君は4歳児だ。しかも生来の物じゃない。誰だって最初は何もできないものさ。1歩ずつ、着実に行こう!!」
「っ……!!はいっ!!!」
そうだ、元々誰よりも遅れている僕だからだれよりも努力する必要があるのに、目先の言葉にとらわれていた!
「ありがとうございますオールマイト!よければこの後訓練に付き合っていただけませんか!」
このあと、めちゃくちゃ訓練した。そして今の自分が出せる限界が5%でそこまで抑えるのに今は結構集中する必要があると分かった。筋トレをもっと頑張ろう!
前回のアンケートありがとうございました。他の方の描写から得た限りのストーリーと今作の設定を考えるとあっさり終わっちゃう可能性が……。とりあえず時間を見つけて原作を見るなり読むなりしていこうと思います。
次回はもっと早めに投稿できるよう頑張ります。よろしくお願いします。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜』編、読みたいですか? (2作目以降の映画は自分は他の方の小説でも見たことが無く、時系列が曖昧なのでまたその内調べ、適宜アンケート取ります)
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