銀の戦車の英雄譚   作:OSPS

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宣誓と第一種目

 体育祭当日。今は控室で入場を待っている。

 

「緑谷」

 

「轟くん……何?」

 

 脈絡無く轟くんが緑谷くんに話しかける。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う。……おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが…おまえには勝つぞ」

 

「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」

 

 言葉だけ捉えれば確かにそうなる。けど、なんとなくいつもと雰囲気が違う。言葉にし難いけど…焦り?抗い?ここら辺の年齢の男子って反抗期真っ盛りらしいしお母さんが来るの恥ずかしいみたいな感じかな。

 

「それとポルナレフ、おまえにも俺は勝つ」

 

「!」

 

 あたしがぼんやりとストレッチしながら考察してるうちに緑谷くんは返答を終えたらしくあたしに矛が向いていた。

 

「楽しみにしてるわ」

 

 模擬戦やUSJ襲撃の時が彼の全てじゃ無いだろうし、そこであたしの能力は見ている以上単純な攻撃は効かないのは分かっているはず。どうやってくるのか本当に楽しみだわ。

 

-----------------------

 

《雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!》

 

《どうせてめーらアレだろ?コイツらだろ!!》

 

《敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!》

 

《ヒーロー科!1年!!A組だろぉ!!!?》

 

 あたし達だけおおそれた紹介だなぁ。こういう細かいところが他生徒の不満を買うのが分からないの?教師なのに。

 それはそれとして鋼の精神って本当に言い得て妙ね。あたしの(というか騎士さんの)精神は銀だけど。

 

「選手宣誓!!選手代表、1-A あじみ・ポルナレフ!!」

 

 そう。なんやかんや1位になっているあたしが選手宣誓を務める事になったのだ。

 

「宣誓 我々生徒一同、各々持てる限りの実力を持って精一杯臨む事をここに誓い、望みます。…きっと、ブレずに努力を続けている者こそが表彰台に昇る事でしょう」

 

 言い終わった途端に以前ほどじゃないけどなんとなく嫌な視線を他クラスの方から感じた気がする。多分最後の一言が刺さってる人達だろうし気にせず戻ろっと。

 

「さーて、早速第一種目の発表といきましょ!これは所謂予選!!ここで多くの者が涙を飲むわ!今年は……コレ!!」

 

 そう言ったミッドナイト先生の背後、このスタジアムのディスプレイには『障害物競走』と表示されている。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!!コースはこのスタジアムの外周約4km!コースさえ守れば()()()()()()構わないわ。さぁ、位置に着きなさい!!」

 

「希乃子ちゃん、支配くん、あたしの後ろに」

 

 みんな我先にとスタート地点の前の方に集まっているがあたし達はあえて後ろで待機する。

 

「スターート!!!」

 

 号令と同時にみんな走り出して、案の定すし詰め状態になる。10秒もせずに前方からただの競争ではあまり聞かない声色とパキパキと何かが凍る音が急速に迫ってくる。

 

 あたしに向かって迫る氷を目視でも確認し、その歯牙に対して――

 

「シルバー・チャリオッツ」

 

 チャリオッツの剣先を地面に接触させ、氷が迫るタイミングで切り上げて氷の侵攻を左右に切り逃す。

 

「この種目であたしに出来るのはここまでかな。後は個々人の実力になるけど…2人とも、頑張って第2種目に進んで。この3人なら団体戦での負けはまず無い。ここを抜ければ実質最終戦。……いきましょ!!」

 

「「……うん!!!」」

 

 3人で同時に駆け出すが、流石に2週間程度じゃ付け焼き刃だったのかあたしだけどんどん先に行くことになる。……待ってるからね、2人とも。

 4kmならなんとかなるから人混みを掻き分けつつ7割程度の速度を維持して走り続ける。これでも他の人より速いのだから考えものだ。最低限のスタミナはつけるべきでしょうに、なんで考えていると先程から見えていた入試時の0ポイントロボが丁度1体凍らされる場面に遭遇した。第一関門はコレ切り抜ければ良いわけね。あくまで障害物な訳だしそれだけなら話は簡単ね。

 

「チャリオッツ!」

 

《おおっとぉ!1-Aポルナレフが轟に続いてスマートに突破ぁ!!というか最初後ろの方にいたのに最前列くるの速くねぇ!?》

 

《あいつは普段から居残って自主訓練してるからな。そう言った細かいコトの積み重ねが今響いているんだろう。まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()するとはな。》

 

 解説は相澤先生なのね。未だに包帯まみれだけど…マイク先生に引っ張り出されたんだろうなぁ。

 

「……速いな。ポルナレフ」

 

「スタミナには自信あるのよ。他の人より何倍も積み重ねている自負があるしね。…折角だし第二関門まで一緒に行く?爆豪くんとかスロースターターで暫くは追いついてこないしその他のみんなはまだロボに対処中よ」

 

「……なんで他の奴らの事が分かる?それに、一緒にいて俺が妨害するとは考えられないのか?」

 

「あたし、生まれつき耳は良いのよ。個性関係無くね。それに今まで見せてきた限りの実力じゃ貴方はあたしに絶対に勝てないから、別に途中までならいいかなって」

 

 質問に返した途端に機嫌が悪くなる轟くん。

 

「チッ……俺のこと…!!」

 

 言いながら氷を地面に走らせ、轟くんの右手から氷柱の様に尖った氷があたしに向かってくる。

 

「残念。雑談ついでに『ヒント』とあたしの能力についてちょっとだけ話してあげようかと思ったけど…決裂ね。それじゃあ先に行くから、轟くんも頑張ってね」

 

 地面を滑る氷を先ほどのように回避し、氷柱の様に伸びた氷は2m以内に入った時点で人参を輪切りにする様に同じ感覚で切る。そして轟くんに合わせてたペースを元に戻し、どんどん置いていく。

 

《ポルナレフあっつーまに独走状態の轟に追いついちまったよ!!轟と何か話してるようだが流石に聞き取ることは出来ねぇな。何話してると思う?》

 

《俺が知るか》

 

《そんなこと話してる間に轟が攻撃!!しかしポルナレフ、毎日散歩してる犬にされてるのと同じレベルですよと言わんばかりのすました顔で轟の出した氷を迎撃!!イレイザー!お前の生徒の個性強すぎねぇ?》

 

《俺に言うな。決めたのは校長だ。ただA組がたまたま敵との戦闘を経験し、それぞれ考えながら個性を伸ばした点はあるだろうな。特にポルナレフの個性は身体能力というより精神力がモノを言うタイプらしいからな。相応の努力を積んでるという事だろう》

 

《珍しく饒舌だな!そんな第一関門がヌルいヤツら!!第二はどうだ!?落ちたら終わりの綱渡り!『ザ・フォール』!!!》

 

 轟くんを抜いて走っていると崖とそれを繋ぐ紐という、何というかお約束のギミックが出てきた。ザ・フォールね…。綱渡り風情に大層な名前じゃない。あたしは渡らないけど。

 

《いち早く辿り着いたポルナレフ!おあっと!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()いるッ!!過去似た様な種目はあったがこんな方法で渡ったヤツは今までいなかった!!!》

 

《自身は普通に綱渡りするより素早く移動でき、尚且つ後続の選択肢を狭めて妨害も行う…。しかもこの一連の動作にほとんど躊躇いが見られないのも個人的に評価できる》

 

《普通に渡るよりは早いのは間違いないんだが轟が紐と足を氷で固定して渡っているせいで遅く見えちまうな!だがポルナレフ、綱渡の前に稼いだ距離に助けられて今、1番に最終関門へと進む!!最終関門は――、一面の地雷原!!地雷はよく見りゃ分かるし音と光だけ大きい親切設計だ!安心して突っ込みな!!》

 

《親切ではないだろ》

 

 地雷かぁ。見やすいから避けて通るのも良いけど走ってると見逃すしチャリオッツで前方全て爆破して裂きながら進んでも良いけど余計後方に有利になるわね…。正直、実践なら兎も角こう言った徒競走に地雷みたいなシンプルな走者妨害はチャリオッツは弱い。上手く妨害も兼ねることが出来ないし……しょうがない。しばらく疲労が取れないけど後続の進み的になんとかなると信じるしかないか。

 

《なあイレイザー、ポルナレフのやつ最終関門を前に立ち止まりストレッチを行っている様に見えるんだけど?何やろうとしてるのか何となくわかっちゃうんだけどあの子正気?》

 

《正気だろ。あいつの個性がこの関門に向いてないから大人しくリスクを受け入れているだけだろう》

 

 相澤先生の言う通り、これはこうするのが速度・妨害・リスク3つを1番両立出来ると判断したからだ。大丈夫、多少火傷するだろうし怪我をしてするだろうけど覚悟を決めて受け入れよう。リカバリーガールがいるし最悪甲冑に肩代わりしよう。

 あたしは思いっきり息を吸い、止める。いざ!!

 

《ポルナレフが予想通り走り出したぁ!!既に何度も地雷は起動しているが、それを意にも介さずひたすら走り抜けていく!!!というかさっきまでの速度の倍は出てる様な気がするんだけどここまで半分くらいの速度で走っていたってこと!?》

 

《いや、走り出す直前から息を止め続けているんだろう。人間は呼吸にもエネルギーを使っているらしい。だから息を止め、その分のエネルギーも全て回して走る事にのみ注力しているんだろう》

 

《はーん、そんなお手軽強化方法があるなんてな!今度俺も試してみようっと》

 

《呼吸を止めて最大で……15秒程度か?その間限界を超えて活動できる代わりに当然疲労の溜まり方も普段とは比べ物にならないだろうな。そんな大きな隙を敵の前で晒せるなら好きにしろ》

 

《…つまりこう言った競技だからこそ輝く裏技的なモノなのね。やっぱやめとくわ。………そうこう話してる間にポルナレフ、多少服が焦げつつも走り切ったぁ!!流石に疲労が溜まったのか流石に直ぐに走り出すとはいかねぇな。おお!!遂に轟が地雷原に脚を踏み入れた!!流石に脚を取られているな!》

 

《足元を凍らせると後続が有利になるから迂闊に氷は出せない。慎重にいくしかないだろうな》

 

 ハァ、ハァ、ハァ、……本当に疲れるわね。でも、距離は稼げてるし轟くんはあたし以上に後続に有利になる手段しか思い浮かばない。爆豪くんも今なら綱渡が終わるかどうかだろうしこれなら少し時間ありそうだし歩こう。というか歩かなきゃ駄目だ。身体が走るのを拒否してる。

 ……爆豪くんも轟くんに追いついた。幸い妨害しあって轟くんと同じくらいの速度だからまた時間は取れるね。

 

    ドゴォォォォォォォォォン

 

 なに!?後ろの爆音にめっちゃびっくりしてその方向、後ろを確認。連続してなってた地雷が一個じゃ起こり得ない爆発音だから完全に虚を突かれちゃった。

 …何か飛んでくる…。

 

『騎士さん、あれ誰?』

 

『……ミドリヤ、と言ったかな。彼だ。あじみも察しの通り地雷を集めて、アレは…第一関門のロボットの装甲か?あれで起爆して爆風を利用したのか。中々面白い小僧だ』

 

 なるほど、緑谷くんか…。というかこの角度だと………なるほど、丁度轟くんと爆豪くんの辺りに落ちたところでもう装甲を地面に叩きつけて起爆。再加速と妨害を同時にこなし…やば。集めたのじゃなくて数個の起爆でもあたしの距離超えそう!?

 ……反省会はあと!!今は全力で追いつく!!!

 

 あたしはもう一度息を止めて―――

 

《緑谷!トップのポルナレフを抜かし一気に逆転!!しかしそれを許さないポルナレフが一気に追い上げる!!!…いやこれ下手したらさっきの地雷原の時より速いんじゃない?どんな教育したらこうなるの?》

 

《その場その場で適切な力配分をすることは間違いではないがただ単純に、今までも全力でやっていたがこのレースで初めて危機感を覚えて()()になったという事だろう。…あいつらが勝手に火ぃ付け合ってるだけだ》

 

《さぁ、この場に一番乗りするのは大逆転を果たした緑谷出久か!!はたまたスマートに合理的に最善手を取り続けたあじみ・ポルナレフか!!!》

 

《無視かよ》

 

 あたしの前方を緑谷くんが走っているがあたしの方が何倍も速い。連続で息止めしてるから今回は余り余裕が無い。間に合うか微妙ね…。

 よし、もう少しで追い越せ―――やばっ

 

「カハッ…ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 遂に息を吐き出してしまい一気に減速。でも脚は止めない。

 

 間に合えーーーーっっっ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《なんつーことだ!あじみ・ポルナレフと緑谷出久!!長い雄英の歴史においてもほとんど例の無い()()を叩き出したぁッ!!!》




これから第二、第三種目の組み合わせを考えるためちょっと長引くと思いきやます。

『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜』編、読みたいですか? (2作目以降の映画は自分は他の方の小説でも見たことが無く、時系列が曖昧なのでまたその内調べ、適宜アンケート取ります)

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