苗木誠の奇妙な冒険~バレット・オブ・ホープ~   作:ナナシのG愛好家

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エアロスミスとクレイジー・ダイヤモンド

「先に帰っていろとは言った物の兄弟、どうするつもりだ?」

 

 石丸は大和田にそう問いかけた。それもそうだ。敵のスタンド、マンハッタン・トランスファーは狙撃の弾丸を中継して軌道を変更させる能力を持ち、気流を読んで敵の位置を見極めることも出来る『狙撃衛星』。外に出れば一瞬でズドンだ。

 

「ああ。それなんだけどよ、戦刃、オメェ、そのA(エース)とやらについてどんだけ知ってんだ?」

 

 とりあえず、大和田は戦刃に情報を求める。

 

「あなた達も知っている人。本名は裡貫(うちぬき) 智也(ともや)。」

「なっ!? 列貫 射手彦だと!?」

「なんだ? 知り合いか? 兄弟。」

 

 声を上げた石丸に、大和田が問いかけると、

 

「知り合いも何も大和田クン、逆に知らないの? 三年前……じゃなかった。ボク達が記憶をなくして二年たってるから、五年前の、希望ヶ峰学園の卒業生だよぉ?」

「なっ!? マジかよ……。」

「ああ。クレー射撃など、ありとあらゆるライフルに精通し、その弾丸は百発百中の『超高校級の狙撃手(スナイパー)だ。」

「狙撃だけなら、私より上。」

「射撃の天才……あのスタンドは通りで。」

 

 三人の言葉に大和田は考えこむ。

 

「アイツが私の監視役だったのは、私のスタンドに対して有利を取れるから。」

「有利? ああ。確か、兄弟のチャリオッツの剣を避けきったんだっけか。俺も一回見ただけだが、あのバカみてぇに速ぇ剣を……。」

「マンハッタン・トランスファーは気流を読んで相手の位置を見極めてるだけじゃなくて、気流に乗って移動するんだ。だから、攻撃の『気流』に沿って移動するせいで攻撃が当たらない。集中豪雨だってすべて避けられるっていうのは分からないけど、少なくとも私の極悪中隊(バット・カンパニー)じゃ落とせない。」

「となると、ボクのスタンドも厳しそうだね……。」

「不二咲クンのスタンド……そういえば、僕のことを見つけられたのも、君のスタンド能力か?」

「うん。ボクのスタンドはこれだよぉ。」

 

 そう言って手をまっすぐに伸ばした不二咲の腕を滑走路にするように飛び立ったのは、プロペラ飛行機だ。

 

「ひ、飛行機?」

「うん。ボクの『エアロスミス』は空を飛ぶスタンドなんだ。遠くまで飛び回ることが出来るし、」

 

 不二咲の右目の側には、これまたプロペラで浮いているモニターのようなものが出現していた。

 

「このレーダーで、エアロスミスが二酸化炭素を感知することが出来るんだ。あたりを歩き回っている暴徒たちの中で、一つだけ一直線に進んでいく二酸化炭素、つまり呼吸の反応があったから、それを探知して追ってきたんだ。」

「飛行機というだけあってかなり素早そうなスタンドだな。それに……。」

 

 周囲を低速で旋回するエアロスミスに目を向けた性格には、エアロスミスに装備されている二梃の機銃のような物体にだ。

 

「明らかに殺意の高そうな武装が積まれているんだが……。」

「あ、アハハ……元々はナランチャさんのスタンドらしくて……。」

「ナランチャ?」

「うん。夢の中で、『エアロスミス』の使い方を教えてくれた人だよ。多分外国人かなぁ? ボク達と同じくらいだったのに、日本語もペラペラですごかったよぉ。」

「へぇ、俺は東方仗助っつうイカした男だったけどよ。」

「兄弟、そこら辺の話をしているとややこしくなる。」

「というか、不二咲さん、私の見立てが正しければ、このスタンドのお腹に付いてる物って……」

 

 と言って、周囲を低速で飛び回るエアロスミスの下の部分についたものを指差して言う。

 

「うん。ナパーム弾だよぉ。」

「「「なっ!?」」」

 

 その言葉に大和田も石丸も戦刃まで顔を青くした。

 

「国際条約で禁止された兵器⁉」

「ばっ、オメェなんつぅ危ねぇモン持ち込んでんだ不二咲ィ!! 今すぐ捨てろ!!」

「ま、待て兄弟!! 捨てたりしたらここが火の海だぞ!!」

 

 と、わたわたする三人。締まらない……

 

「でも、エアロスミスのこれがあれば、相手を何とか出来るかも。」

「何? それは本当か⁉ 不二咲クン!!」

「うん。ボクに考えがあるんだぁ。」

 

 不二咲は、寄ってくる三人に、ごにょごにょと耳打ちをした

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《10分後》

「まだか……」

 

 遠方の高層ビル。そこで狙撃中を構えた裡貫は、マンハッタン・トランスファーによる気流感知と、己のスコープ、そして、江ノ島からプレゼントされた、監視カメラのデータの詰まったノートパソコン。それにより家の周囲を監視していたが、一切出てくる様子の無い相手を待ち続けていた。

 

「マンハッタン・トランスファーを中に入れてもいいのだが、罠を仕掛けられていては厄介だ。」

 

 マンハッタン・トランスファーは確かに気流に沿って相手の攻撃を躱すことが出来る。だが、網などで押さえつけられてしまってはそれも無理だ。」

 

「だったら待ってやる。その家には食料も何も無いだろう? ずっと、ずっと待ち続けて、出てきたところを撃ち抜いてやる。」

 

 狙撃手に最も必要な物とは何か? 銃弾を的に当てる技術? 確かにそれは重要だ。しかし、最も重要なことではない。

 

「狙撃手に最も重要な物は胆力だ。獲物をしとめるまで、決して狙撃ポイントから動かず待ち構えられる胆力。俺は元『超高校級の狙撃手』だ。希望ヶ峰学園を卒業してからも、ずっと狙撃の腕と胆力を鍛え続けてきた。お前達がシェルターにこもっている間……!!」

 

 彼は希望ヶ峰学園の卒業生として、人類史上最大最悪の絶望的事件が起こった後も、人類の希望の一人として戦い続けていた。だが、戦力差は絶望的。一人、また一人と仲間が倒れていくのを目にしていた。安全圏の狙撃地点からスコープ越しに。

 そんな彼は、仲間たちからもいい目では見られなかった。わかってくれる人々もいたが、わかってくれない人々の数が多すぎた。

 そして、彼は絶望したのだ。希望ヶ峰学園第78期生。彼らを見て。

 

「ぬくぬくと、お前達だけで希望ヶ峰学園の中に引きこもった。あの安全なシェルターの中に引きこもっていて、今更出てきて正義面とは反吐が出る。」

 

 だから、打ち抜いてやる。こんな世界壊してやる。そんな思いを胸に、スコープを除き続けたとき、気流の感知網に、何かがかかった。

 

「これは……ラジコン飛行機か?」

 

 プロペラが空気を掻く気流の流れ、流線型のボディを感知する。

 

「囮か? いや、連中は大慌てで出てきたはずだ。ならばそんなものを用意してこれたとは思えない。……もしや、スタンドか? カメラで見た大和田紋土のスタンドは少しだけ感知できたが人型だった。石丸清多夏のシルバー・チャリオッツと戦刃むくろのバット・カンパニーではない。となると、不二咲千尋のスタンドか……本体の反応がないとなると遠隔操作型のスタンド。索敵か? だが、それにしては……。」

 

 先ほどから狙撃されないような軌道で動き回って入るが、家のそばを離れようとしない。狙撃手である自分を探すのなら、もっと遠方を索敵するはずだ。

 

「しらみつぶし……という訳でもない。何が目的だ?」

 

 目的が分からない限り、撃てない。もしかしたら、あのスタンドを撃った時、こちらを見つけられる索敵手段があるのかもしれない。そう考えていた時だった。

 

「何かが、離れた?」

 

 飛行機型のスタンドが、何かを切り離すのを感知した。そして、それが地面に辺り、爆発炎上したのだ。

 

「なっ!?」

 

 爆風で乱された気流感知が、家から出て走り出した人影を感知する。

 

「なるほどそれが狙いか!!」

 

 爆風で気流感知は乱されており、狙撃中自体の射角には偶然にも相手はいない。

 

「だが、狙いは外さない!!」

 

 豪雨や暴風の中での狙撃、それも行ったことがある。確かに気流は乱されているが、相手の位置はしっかりと把握している。相対的に、どこに相手がいるのか分かる。

 

「甘かったな!! 戦刃むくろ、あのお方の為に、お前の命はここでもらう!!」

 

 銃の位置を調整、そして、マンハッタン・トランスファーに狙撃を当てて見せた。そして、乱れる気流の中、戦刃むくろの位置を感知する。

 

「(走り方からして、手前が男、後ろが女。石丸清多夏と戦刃むくろという訳か!!)」

 

 そして、弾丸をマンハッタン・トランスファーが曲げる。飛んでいく弾丸が、戦刃むくろの反応に当たるのを、気流感知は確かにとらえていた。

 

「やったか!!」

 

 しかし、その後戦刃むくろの反応が倒れる様子はない。

 

「馬鹿な!? 気流感知は絶対だ。確かに当たっていたはず!!」

 

 横に置かれたパソコンの監視カメラを見る。そこには、走る二人と、その後ろで燃え上がる場所があった。

 

「ただの爆弾じゃなかったのか? 炎上する爆弾。しまった!! 気流感知を歪められた!!」

 

 それだけじゃない。気流感知が捉えた反応は二人だけだった。

 

「大和田紋土と不二咲千尋は……どこだ?」

 

 気流感知に反応は無い。いや、反応があった。

 

「それだけじゃない。どういうことだ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()?()

 

 気流感知はその様子を的確にとらえていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「見つけた。硝煙と荒い呼吸の反応!! 狙撃を外して焦ってる証拠だ!!」

「でかしたぜ、不二咲ィ!!」

 

 石丸と戦刃の二人が逃げた時、二人は窓からマンハッタン・トランスファーを見ていたのだ。マンハッタン・トランスファーに弾丸が刺さる瞬間を目にするために。目を凝らしていたからこそ少しだけ見えた弾丸の軌道を頼りに、エアロスミスを進めていた。一見無茶苦茶な作戦だ。だが、エアロスミスのレーダーはとらえていた。全く動いていないのに荒い呼吸と、その近くにある薄い二酸化炭素の反応。

 

 そして、裡貫が狙撃を外したのは、投下されたナパーム弾による上昇気流により発生した空気の壁が、気流の流れを勘違いさせたからだ。それを計算して石丸達を逃がし、返す刀で二人で反撃に転じる。それがみんなで建てた作戦だった。

 

「それじゃあ、大和田クン!!」

「任せとけ。けどよ、俺が行く間俺はオメェを直せねぇからよォ、当たるんじゃねぇぞ、不二咲。」

「うん。任せて!!」

 

 不二咲のその声に笑みを浮かべて、大和田は飛び出した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「クソッ!! 何故ここがバレた、何故こっちに向かってきた!! しかも、何故途中で、一直線に俺の方に軌道を変えた? 迷うことなく!!」

 

 視界はありえない。遠隔操作型のスタンドではあるが、あの距離からじゃ高層ビルにいる彼を見ることはできないはずだ。

 裡貫は必死に頭を巡らせる

 

「何か、何かを感知していた、という訳か。ん?」

 

 苦々しい顔をする彼だったが、そこで、飛行機型のスタンドが、急にアクロバティックな動きを始めたことに疑問を感じた。

 

「どういうことだ? 急に動きが変わった。俺に撃たれることを危惧したのか?」

 

 スタンドとスタンド使いは深くリンクしている。それもそのはずだ。スタンドは、己の精神の形なのだから。だからこそ、スタンドの受けたダメージは本体にフィードバックされる。遠隔自動操縦型や群体型など、一部、ダメージのフィードバックされないあるいは、フィードバックされるダメージの少ないスタンドこそあるものの、この不二咲千尋のスタンドはその類ではないと判断した。

 

「舐められたものだ。撃ち抜いてやる。」

 

 ギリッ。と奥歯をかんで狙撃中を構えた。

 

「飛ぶ鳥やフリスビーだって撃ち落せるんだ。こんなオモチャの飛行機くらい……!!」

 

 スコープを覗き、アクロバティックな動きを繰り返す彼を補足して狙いをつける。

 

「この上空には遮るものも無ければ上昇気流の壁もない!! 終わりだ。不二咲千尋!!」

 

 じっと銃を構えた彼はそう言って引き金に指をかける。

 

「(今だ……!! 絶好の)」

 

 チャンス、と思ったところで、背後で音がした。

 

「なっ……!?」

 

 驚愕の表情と共に振り返る。エレベーターの扉が、ゆっくりと開いていく。そこにいたのは、

 

「へぇ、オメェが裡貫か。」

 

 不敵な笑みを浮かべる大和田だった。

 

「な、何で、ここが……。」

「不二咲が地図で教えてくれたぜ。」

「だとしても、幽霊屋敷からかなり離れていたはずだ。道中に暴徒だっている。何故こんなにも早く……!!」

「忘れたか? 俺は超高校級の暴走族だぜ? ここら辺の道、地図に書いてねぇ裏道まで頭に入ってるにきまってんだろうがよォ~!!」

「くっ!!」

 

 素早く起き上がり、抜いた拳銃を彼は構えた。

 

「超高校級の暴走族だと? ふざけやがって……!!」

「何か、気に入らねぇ見てぇだな。」

 

 銃を構えた彼に、大和田はそう呟く。

 

「気に入らない……か。全く持ってその通りだな。超高校級の才能だか何だか知らないが、お前のような奴が希望ヶ峰学園にいるなど俺は許せない。ましてや、俺たちが戦っている間、ぬくぬくとシェルターにこもっていたような奴らはな!! マンハッタン・トランスファー!!」

 

 そして、引っ込めていたスタンド、マンハッタン・トランスファーを出現さ上空に舞い上がらせる

 

「近づけば狙撃手の俺に勝てるとでも思ったか!? 俺は超高校級の狙撃手だ。近づかれた時のことも対策済みだ!!」

 

 上に照準を向けて、マンハッタン・トランスファーに発砲する。

 

「上空からの弾丸に蜂の巣になって死ね!! 俺たちが血を流している間引きこもっていた報いだ。この社会のクズがーッ!!」

 

 そして降り注いだ弾丸は、

 

「クレイジー・ダイヤモンド!!」

 

 クレイジー・ダイヤモンドが床に振り下ろした結果飛び散ったコンクリート片が再構築された即席の壁に止められた。

 

「なっ!?」

「へっ、その様子だとその拳銃以外にもう隠し玉は無ぇ見てぇだな。

 おい裡貫、確かによォ~。不良なんて今どき流行んねぇしよォ~、俺達だって悪さしてきたことは認めるぜ。けどなぁ、」

 

 歩いて彼に近づいていく。

 

暴走族(そこ)しか居場所のねぇ奴もいるし、俺たちの中にだって絆があんだよ。」

 

 そう言って駆け出す。

 

「く、クソッ!!」

 

 素早く弾倉を取り出して、新しいものに交換。だが、大和田に向けて撃とうと視界を向けた時には、クレイジー・ダイヤモンドの拳が迫っていた。

 

「ドラララララララララララ!!」

「ぐおああぁぁぁぁ!?」

 

 そして、全力の連撃を叩き込む。

 

「ドラァ!!」

 

 とどめに重い一撃を入れられた裡貫は、白目をむいて転がった。

 

「それを勝手に社会のクズ呼ばわりする権利はテメェに無ぇよ!!」

 

裡貫 智也 スタンド名 マンハッタン・トランスファー 再起不能(リタイア)

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