FGORTA―配られし切り札―   作:雨乞い

10 / 32
10 Round 3

一瞬の出来事だった。

 

遠くに見えた黒い鎧は、気付けばマシュの目の前で。

割り込むように入ってきた別の黒は、しかし弾き飛ばされるように、岩壁へ叩きつけられていた。

 

 

【「日彩君!!!!」】

 

 

通信越しにロマニが悲鳴を上げる。

マシュは動かない。動けない。下手に動くわけにはいかない。

アーサー――否、ここではアルトリア・ペンドラゴン。

聖剣の担い手。円卓を率いし、騎士の王。その一側面(オルタ)。

光の御子(キャスター)を以てなお伍する、英雄中の英雄が、こちらに向き直る。

その黄金色の瞳は――

 

「では、次は貴様だ」

 

奇妙に揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、黒い嵐だった。

幾度となく振り下ろされる剣を、全霊をもって耐え凌ぐ。

転じることなど夢のまた夢。

蹂躙劇と言っても過言ではない中にあって、しかし、マシュはまだ立っていた。

 

 

「よく耐える。だが――」

 

抜け落ちた表情のままに、黒の騎士王は剣を大きく振る。

手にした盾もろとも弾き飛ばされたマシュは、その体勢を整えて――

 

 

「『光を呑め――』」

 

 

【「魔力反応増大!!」】

 

「――ッ、マシュ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「『約束された、勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』!!」

 

 

聖剣から放たれた膨大な魔力が、マシュに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

空が見えていた。

黒の騎士王が放った一撃は、岩壁を貫き、そこから地上の風景を垣間見せていた。赤黒く染まった空は、地上の炎だけが原因では、きっと、ない。

 

 

「マシュ!!」

 

立香は地面に叩きつけられた、自身のサーヴァントへと駆け寄る。

空中で咄嗟に身を捻り、直撃を避けてなお、その威力は凄まじいモノだった。

 

「せ、んぱいっ……来ちゃ、ダメです……!!!!」

ボロボロになり、助け起こされながらも、マシュは自身の主(マスター)にそう叫ぶ。

 

 

 

 

「『光を呑め――』」

 

次が来ることを予期していたからだ。

 

2発目のそれが放たれようとしたその時、マシュは一歩前に出た。

避ける余裕などありはしなかった。だから彼女は、立香の前に立ち、盾を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔力の奔流が身を襲う。盾を持つ両手も、自身を支える両脚も、限界を訴えるように震える。

それでも、耐えて、耐えて、耐えて――

 

 

誰かの手が、肩に回された。

誰かの手が、盾を持つ自身の手の横に伸びた。

 

 

 

「俺には、こんなことしか出来ないけどっ――――!!!!」

 

 

「大丈夫だ……!きっと、マシュなら!!!!」

 

 

立香が、隣に立っていた。

彼女を励まし、彼女を支えるようにして立っていた。

未だ何を成し遂げたわけでもない、未完の英霊モドキ(マシュ)を、彼は強く信じていた。

だからこそ――

 

 

マシュは、そんな自分を信じるマスターを、何より信じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒の騎士王は、自身の『宝具』がもたらした結果を見て嘆息した。

2発目、放たれたそれはマシュと立香を吞み込み、しかし2人は健在だった。

マシュの『宝具』、そしてマスターである立香の『令呪』2画は、確かにその役目を全うした。

 

黒(・)の(・)騎(・)士(・)王(・)が(・)想(・)定(・)し(・)て(・)い(・)た(・)通(・)り(・)に(・)。

 

 

剣身に魔力が渦を巻く。

黒く染まった聖剣が、膨れ上がる様を幻視する。

 

 

こちらの様子に気付き、膝をついたサーヴァント(マシュ)を庇うように立つマスター(立香)。

それは、先ほどとはまるで鏡写し。

 

絶望、希望、絶望と、『宝具』は三度反転させる。

 

 

そうして聖剣を解放しようとした時、黒の騎士王はソレに気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが歩いてくる。

頭から、背中から、そこかしこから血を流しながら、しかし確かな足取りで。

 

膝をついたマシュの頭を撫で、手を伸ばして立香の肩を叩き、ソレは最前に立った。

 

 

 

御剣日彩は、黒の騎士王の眼前に立った。

 

 

懐から取り出したのはトランプ、そしておもちゃのベルト。

バックルに一枚――スペードのエースを滑り込ませると、残りのカードが宙を舞う。

 

 

【「魔力が増大!いや待て……何だ、この反応は!!??」】

 

 

『宵闇の星』――黒の騎士王が持つスキルの一つ。

戦場にあって最適解をもたらす、黒の騎士王の直感。

その星の如き黄金色の瞳が、来訪者たちを初めて捉えたとき、黒の騎士王は感じた。

とびきりの異(・)常(・)を。あってはならない混(・)沌(・)を。

 

 

――――ソレは何としても止めなくてはならないと。

 

 

 

「くっ――!!??」

 

だからこその本気だった。

一つの口上すらなく、不意を打った。

魔力に飽かせて蹂躙した。

――しかし、彼らは止まらなかった。

 

最初に感じたソレ、その根源を目の当たりにし、黒の騎士王の顔に焦燥の色が浮かぶ。

魔力が解き放たれ、3人へ――最前の日彩へと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い瞳が相手を見据える。

ゆらりと右腕を掲げ、その唇が紡ぐ。

音はなかった。だが、その場の誰もが聞えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《――――変身ッ》

 

 

 

 

【TURN UP!】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。