FGORTA―配られし切り札― 作:雨乞い
走る。
走る。
走る。
ときに躓き、足を縺れさせながら。
剣が切り裂く。
盾が打ち砕く。
炎が爆ぜる。
魔球が穿つ。
戦場、その只中を駆け抜けて。
川の向こう、高くそびえる壁を捉えた。
ふと、思い出す。
いつかのあの日、陽光の射す教室。
室内に響く声に目を擦り、手繰ったページに踊る一文。
「――オルレアン」
そここそ、歴史の転換点。
百年続いた戦争に一石を投じた、運命の街。
ぽっかりと口を開けた門。
そこから伸びる橋の方へと、歩を進め――
袂に立つ影に、足を止めた。
夕陽で赤く染まった太地。
それは静かに立っていた。
古今東西の英雄、各々が得物を構える。
張り詰める空気、その中で。
「――ごめん、皆」
一つ、言葉を告げる。
震えていた。
脚が、手が、声が。
どうしようもなくみっともなく。
いっそ、滑稽なほどに。
――でも。
「ここは俺に……俺に、やらせてほしいんだ」
後ずさりしそうな脚を、その場に縫い留めて。
小刻みに揺れ出しそうな指を、ぎゅっと握り込んで。
滝のような汗が頬を伝うのも、そのままに。
それでも、瞳は逸らさずに。
不思議なことに。
影は、橋を渡る者たちを止めはしなかった。
それは後世形作られた、
或いは。
「……ありがとう、アーチャー」
背後から掛けられた声に思考を中断し、ちらりと目を向ける。
青褪めて、汗の浮かぶ顔。
しかしぎこちなくも、笑顔を浮かべる口元。
その様子は、紛れもなく――
「なに、構わないさ」
赤い外套を翻し、男は双剣を構える。
視線が絡み合い、そして。
「では行こうか、
「よろしいんですか?」
上がる声に視線を向ければ、スタッフと目が合った。
その判断は正しいのか、と。
不安げな表情が、そう語っている。
横を見れども、モニターを見つめ続ける少女は何も言わない。
唯
それを場に残し、先に進むこと。
「正しくは、ないだろうね」
モニターに映る少年を見る。
その表情を、見る。
「――でも」
それは他の誰かにとって、無意味で、無価値で、不合理なことかもしれない。
そう。でも、だ。
「きっと彼には――ボクたちには、必要なことなんだ」
困ったように笑いながら。
ロマニ・アーキマンは言った。
「すまない。荷物になってしまってすまない」
傍らのジャンヌへと、ジークフリートは声を掛ける。
いよいよ、身体を蝕む呪いは無視出来なくなっていた。
大英雄である男が、手を借りるほどに。
だが――
「あのジークフリートが、モノみたいに運ばれるなんてね」
目が合った音楽家が、茶化すように言う。
俵担ぎ。
尻を前に向け、肩上に担がれている様子は、中々珍しいだろう。
【「ジークフリートを除くと、君がこの場で唯一の男性の筈なんだけどね」】
「僕に腕っぷしを期待されてもねぇ」
通信機越しの呆れたような声。
「代わりましょうか?」「大丈夫ですよ」などと会話を交わす
「お客様ですね」
一番後ろ、それまで黙していた清姫が口を開く。
手にした扇で前方―― そこに並ぶ骸骨たちを指す。
先頭の少女が立ち止まる。
その瞳は、少しだけ揺れていて。
「頼んだ」と。
ならば
一つ、息を吸い、手にした大盾を構え直す。
「――マシュ・キリエライト、突破します!!」
今はただ、行くのみ。