後日譚書いてるのに前日譚もやっちゃいます。だいたい大満開の章のせいです。
ひのきとは違って不定期投稿になりますが、またよろしくお願いいたします。
星が降る、という表現は皆流星群か何かを思い浮かべるだろう。流れ星が消える前に3回願いを言えばその願いが叶うという話もある。だが、そんなことはなかった。なぜならその星は、文字通り降ってきたのだ。
──ただ一人の、友の真上に。
「……また、あの日の、夢。」
もう、何年か経った。7・30天災と名付けられたその災害は日本の人口を半分以上減らしたと言っても過言ではなさそうだ。何故今俺がこの丸亀城の二の丸で寝起きできているのか、そもそもなぜ今生きているのか。いまだにわからない。あるのは孤独と、絶望。拭えない深い悲しみ。それだけが、俺の心を支配する。
「緋月、起きたか。」
「あぁ……仕事か?」
「うむ。神託があった。まもなく、ここは戦場になるだろう。」
「……まだ、何もわかってないってのに……」
緋月望。7・30天災の後に設立された暫定統治機関、大社の職員。年齢は17。幼いころから研究者である両親を見て育った俺は自身も生物系の研究に興味を持ち、常にサンプルを採取できるような道具を持ち歩いていた。そんな最中、7・30天災にて落ちてきた謎の生物「星屑」に襲われた俺は、友の上に落ちた星屑から逃げ、一目散に逃げ、場所もわからぬ社の近くで両断された星屑を確認した。そのサンプルをいくつも採取したことから、大社に所属することとなっている。
「だが、お前が採取してきたサンプルによって、勇者システムは実用段階にまで開発することができた。お前の功績だ。」
「……友人を見捨てて得た成果、だよ。俺はそんな俺と、突然降ってきて友を奪った星屑を許せない。」
「あぁ。だが、勇者たちは星屑に勝つ。乃木若葉様なら、必ず。」
「……勇者、乃木若葉か。」
勇者。7・30天災の後四国に出現した樹木を模した神の集合体、「神樹様」の力をふるうことができる少女たちの総称。リーダーとして目されている乃木若葉、快活な性格で周囲を鼓舞する高嶋友奈、豪快で男勝りかつ自信家の土居球子、球子とは対照的に内向的で策謀に長ける伊予島杏、俺と同じかそれ以上に深い孤独を持つ、郡千景。
たった5人の少女たちに背負わせるには四国は広すぎる。だが、そうせざるを得ないのが現状である。
「馬鹿馬鹿しい。大人は空を見上げることすら叶わないものもいるというのが……余計に。」
「天恐か。仕方ないだろう。」
「だとしてもだ。それじゃあ鷲尾、俺は着替える。研究報告書、進めといてくれ。」
「主任はお前だぞ緋月。また丸投げするんじゃない。」
「主任だから研究するんだ。」
同僚の鷲尾海を追い出し、身だしなみを整え、食事をする。何年も研究しているが、人類の細胞組成とは全く違うこと、サンプル単位に分解してもまだ「生きている」状態だということ。そして、細胞の再生速度が尋常ではないということ。この3点しかわかっていない。そのため、神樹様の霊力が込められた特殊な液体に浸されたサンプルでしか研究を進めることはできず、またサンプルの量も限りがあるため、研究は難航している。せめて、せめて遺伝子のようなものさえ発見できれば……
「……人類や、他の生物の細胞には必ず核が存在し、その中に染色体、遺伝子が存在している……だが、あれには核が発見されたという有意の報告はない。これが研究を難航させている一因だ。また、細胞膜も観測されていない。……単細胞生物……だとしたらあの複雑な造形はなんだ?」
常識や知識が通用しない。神の被造物だから覚悟はしていたが……
「焦るな、緋月望。」
白衣を纏い、研究室に向かう。
急いては事を仕損じる。研究者は長い目で物事を俯瞰し、多角的な視点でもって知見を広げる。もっともそれは、『時間があれば』という仮定が必要なのだが。
「…………」
沈痛な面持ちで通信室を出てきたのは件の勇者、乃木若葉である。彼女はここ以外にも人類が生きていた諏訪との通信役も兼ねていた。その表情がいつもより重いというのならば、状況は容易に想像できる。
「貴方は、たしか……」
「大社研究部、緋月望。時間がもうないんだな。」
「……先ほど、諏訪との通信が途絶えた。もう、回線そのものが使えなくなっていた……」
「ならば、勇者たる乃木若葉はここにいるべきではない。ここは裏方の仕事場だ。行け。」
「あぁ。」
向かうべき場所へ進む俺と乃木若葉。こんなどうしようもない現状に少女たちを立ち向かわせざるを得ないとは、本当にどうしようもない。
「来たぞ。」
「やっと来たな緋月主任。報告書だ。」
「ありがとう鷲尾。……時間がない。始めよう。」
と、研究を始めた矢先、新たな報告が駆け足できた。
勇者の初陣は勝利で終わったと。
次回、第二話「実証結果と考察」
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