頭文字b -貧乏学生の走り屋生活-   作:ケンゴ

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頭文字Dを読み返していたら、何となく書きたくなったので投稿。
原作コミック、TVアニメシリーズ、新劇場版の3つをベースにごちゃ混ぜしているつもり。
とりあえず飽きるまではボチボチやってくつもりです。

D.C.S.D.……?
Distance of Speed……?

知らん子だなぁ()


第1話

「高いなぁ……好きな色だけどS13は高すぎるぜぇ……」

 

 夏の日差しが降り注ぐ群馬県。

 県内のとある高校の屋上で、中古車雑誌を見つめながら呟く男子生徒と、その横にボケッとした表情で屋上からの景色を眺める男子生徒の姿があった。

 

「やっぱシルビアは止めてハチロク探そう。そっちの方が現実味あるし、やっぱ車はFRじゃないとな――って、聞いてんのかよ拓海?」

「聞いてるよイツキ」

 

 拓海と呼ばれたボケッとしていた男子生徒――藤原 拓海(ふじわら たくみ)は、イツキと呼んだ中古車雑誌と睨めっこしている男子生徒――竹内 樹(たけうち いつき)に視線をやった。

 

「そのハチロクってのは幾らするんだよ?」

「中古で30万ってのがあるけど車検無しだな……」

「ふーん……そんで貯金は今んとこ幾らあるんだ?」

 

 あまり興味なさ気な表情で問う拓海にイツキは力なく貯金額を答えるが、それはシルビアはおろかハチロクすら手の届かない額であった。

 

「先は長ぇな」

「もっとこう、ドッカーンと稼げるバイトねぇかなぁ……今やってるGSのバイトじゃあ、夏休みフルで働いても良いトコ12万だもんなぁ」

 

 拓海とイツキがそんな話をしていると、そこに割って入ってくる人物が居た。

 

「バイトしてるんだね、拓海君たちって」

「茂木……?」

 

 声をかけてきた女子生徒――茂木(もぎ) なつきを、拓海はキョトンとした表情で見つめる。

 

「なぁに? 私が話しかけたの、そんなに意外だった?」

「いや、別に……」

 

 拓海は表情そのままで茂木に返答する。

 

「ふーん。ところでさ、バイトって1ヵ月どれだけ働いて12万なの?」

「ああ、週に5日か6日みっちり8時間働いて」

 

 茂木の質問にイツキが答えると、茂木は心底驚いた表情を見せた。

 

「えーっ!? それだけ働いてたったの12万円なの!?」

「いや普通そんなモンだろ、どんな金銭感覚してんだよ」

「高校生バイトの時給なんて安いんだぜ」

 

 さも当然だろうといった表情で、拓海とイツキは茂木にツッコミを入れる。

 

「へぇ~知らなかった……なつきバイトしたこと無いからさ」

 

 茂木はそう言った後、驚いた表情を一変させて笑顔を見せる。

 

「バイト頑張ってね、期末試験終わったらみんなで遊びに行こ?」

 

 2人に手を振りながら、茂木は小走りで屋上を後にして公舎へと入って行った。

 

「茂木なつきと話したの1年ぶりくらいだな」

「えぇ?」

「サッカー部に居たときはよく話してたんだけどな、あいつマネージャーやってたし」

 

 茂木が走り去って行った方向を見つめながら拓海が話す。

 

「けど、ある時からすげぇ嫌われちまってさ。廊下ですれ違っても目も合わされない位にな」

「ホントかよ、お前何したんだ?」

 

 屋上に設置された柵にもたれかかり、空を見上げる拓海にイツキが至極当然の質問をぶつける。

 

「別に茂木には何もしてないけど、その頃アイツの彼氏だった3年の先輩をさぁ……殴ったんだよ部室で」

「サッカー部の先輩を殴った!?」

 

 思いもよらなかった拓海の返答に、イツキは思わず大きな声を上げてしまう。

 

「理由は言いたくないけど、ついカッとしちまってさ……嫌なヤツだったんだよその先輩」

 

 少しバツの悪そうな顔をする拓海に、苦笑してしまうイツキ。

 

「お前って昔からそういうトコあるよなぁ……。普段は眠そうにボーっとしてんのに、たまにキレたら人格かわるし」

「小学生ぐらいの時ってさ、すぐ泣くのに泣き出してからは妙に強いヤツいるだろ。俺ってそういうガキだったんだよな」

 

 空を見上げた格好のまま、拓海はそう呟いた――。

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

 未だ太陽の光が燦々と降り注ぐ中、拓海とイツキはバイト先であるガソリンスタンドで労働に勤しんでいた。

 先程スタンドから見送った車で給油客は一旦捌けたため、イツキは拓海に話しかける。

 

「拓海ぃ、屋上での話の続きだけどさー。2人で買おうぜハチロク」

「はぁ?」

 

 イツキからの突拍子もない提案に、拓海は思わず耳を疑ってしまう。

 

「2人のバイト代を合わせればローン払えるじゃんかよー」

「要らねぇよーハチロクなんて車」

 

 イツキの懇願を問答無用で切り捨てる拓海。

 

「大体なんでそんなに無理してまで車が欲しいんだよ、お前ん家にも車ぐらいあるだろうが。それ借りれば良いじゃん」

「ダメだよ親父の車なんて。FFでオートマでオマケにディーゼルエンジンなんだぜ。サイテーだよ、あんなの車じゃねぇよ」

 

 拓海の質問に、今度はイツキが一刀両断で切り捨てる番だった。

 

「タイヤ4つ付いててちゃんと走れば立派に車だよ」

「わかってねぇなー。峠に行って楽しく無けりゃあ車の意味ねぇじゃん」

 

 したり顔で説明するイツキに、拓海はいつも疑問に思っていたことを口にする。

 

「お前よくそれ言ってるけどさー、峠に行って何すんだよ?」

「そんなの決まってるんだろ、攻めるんだよ峠のコーナーを」

 

 イツキの返答に、拓海はよくわからないといった表情で言葉を返す。

 

「楽しいんか、そんなことして?」

「はぁ!? 楽しいに決まってるじゃん! 男なら格好良く峠を攻めてみたいと思わねぇのかよ?」

「ふーん……そういうモンかなぁ」

 

 心底興味が無いといった感じで拓海は答える。

 

「はぁ……お前に聞いた俺がバカだったよ。俺は何としてでもハチロク買ってやる!」

 

 マイカーを夢見て心に炎を灯すイツキとそれを冷めた目で見る拓海の前に、1人の男性スタッフがやってくる。

 

「お前らハチロク狙うなんて良い趣味してるじゃねーか」

 

 2人に声をかけたのは、このガソリンスタンドで働く先輩社員――池谷 浩一郎(いけたに こういちろう)だった。

 

「でしょでしょ!? 池谷先輩もそう思いますよね!」

「ああ、良い車だぞハチロクは」

「ほら見ろー、聞いたか拓海!」

 

 自分の考えに賛同者が現れたイツキは興奮気味になる。

 

「でも俺そのハチロクって車よく知らねーからなぁ……結局どこの車なんだよ、マツダだっけ?」

 

 拓海のトンデモ発言に、イツキと池谷はコント漫才と見間違うかのようにズッコケた。

 

「おいおい、スタンドで働いててハチロクも知らねぇのかよ」

 

 そんなワイワイ騒いでる3人の後ろから、拓海に声をかけながら苦笑している男性スタッフがやってきた。

 

「なんだよー、お前は知ってるのかよー」

「当たり前だろ」

 

 そう話すのは拓海とイツキの同級生で、2人と同じくこのガソリンスタンドでバイトをしている神原 俊樹(かんばら としき)である。

 

「ハチロクはトヨタ車だよ。ただ割と古いモデルだし、拓海が知らないのも無理ないッスよね?」

「まぁな……ハチロクがモデルチェンジして新しい型が出たのも、もう随分と前の話だしなぁ」

 

 ハチロクという車を知らなかった拓海をフォローするかのように解説する俊樹と池谷。

 

「古いトヨタかー……あんまイメージ良くねぇなぁ。ウチにも商売で使ってる古いトヨタ車あるし」

「そんなのと一緒にすんなよ、古い車でもハチロクだけは別だよ」

 

 2人の説明を受け、ポリポリと頬を掻きながらあまりパッとしない表情を浮かべる拓海に、ハチロクをマイカーとして狙っているイツキが反論する。

 

「俺がハチロク買ったら、池谷先輩がやってるチームの秋名スピードスターズに入れてくれますか?」

「ああ。それなら今度の土曜日にチームの定例会やるから、夜になればチームのメンバーも秋名山に集まるぞ。お前らも来るか?」

「良いんですか!?」

 

 池谷からの思わぬ提案に、今にも踊り出しそうなほど嬉しそうに大きな声を出すイツキ。

 しかし、その一瞬後には自分の立場を思い出してがっくりと項垂れてしまう。

 

「あ……でも俺ら車無いから……」

「心配すんな、乗せてってやるよ」

「先輩のS13に!?」

 

 池谷の言葉にイツキは目を輝かせ、スタンドの片隅に駐車してある1台の車を見つめる。

 そこには池谷の愛車――ライムグリーンツートンに塗装された、ニッサンS13型シルビアが止まっていた。

 

「行きます行きます! 俺、絶対に行きます! 拓海と俊樹も行くよな!? こんなチャンス滅多にないぞ!」

「あ、ああ。オレも興味ありますし」

 

 ハイテンションで拓海と俊樹の2人の体を揺さぶるイツキに、俊樹は思わず苦笑しながら答える。

 その一方で興味なさ気に先程までの会話を聞いてた拓海は、ひっそりと溜息ひとつ。

 

「俺……行くなんて言ってねぇんだけどな……」

「まぁそう言うなって。友達付き合いも大事だし、案外行ってみれば楽しいかも知れねぇだろ」

 

 スピードスターズのメンバーにも会えると大興奮のイツキとは対照的に、テンションの低い拓海の肩をポンポンと叩きながら俊樹が宥める。

 

「よし。それじゃあ今度の土曜日、仕事終わったら連れて行ってやるよ」

「わかりました! くぅーっ、今から土曜日が待ち遠しいぜぇ!」

 

 そこからしばらくの間、イツキの仕事ぶりが今までで一番だったらしいのはまた別のお話である。

 

 

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