【悲報】更木出身俺氏、イマジナリー美少女が見えてくる   作:三白めめ

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【悲報】更木出身俺氏、イマジナリー美少女が見えてくる

 悲報。更木とかいう治安最悪の場所にトバされる。

 いや、生前に悪行を積み過ぎたとかじゃなくて、1から順に分けられた治安80分の1のガチャで、最低値の80を引いただけだし……

 なんだよ、転生先(?)がくじ引きって。

 

 まず、さっき転生って言ったことからわかると思うが、俺は一度死んだ。死因としては、トラックに撥ねられたとかそのへんだったはずだ。あんまり思い出したくない。で、胸に鎖のついた幽霊になったと思ったらすぐにその辺にいた黒い着物を着たおっさんが日本刀の後ろ側を頭に思いっ切りぶつけてきやがったわけだ。メッチャ痛かった。なんか、ソウルなんたらとか言ってたけど、痛みでそれどころじゃなかったし。せっかく幽霊になったんだから、女湯を覗きに行くとかの未練をこなしておきたかったのに……

 そんで、気づいたらコミケレベルに人が並んでる列に加わってたんだ。

「いやー、きっと転生の順番待ちとかだろうなー」とか思っておとなしく並んでたら、頭に刀ぶつけてきた着物のやつと同じ格好をした人たちがいたんだよ。話を聞いてたら、彼らの職業はやっぱり死神らしく、俺らの転生先(?)はくじ引きで決まるみたいなことを全員に向けて話していたんだ。業みたいな感じの概念はないのかと思ってたが、あんまりにも生前の所業が酷いと地獄行きになってたらしい。地獄はあるのか。

 でもまあ地獄に行くようなやつはここにいないから治安が最低の場所といってもそれなりだろうし、そもそも80分の1なんてそうそう当たらんやろくらいのメンタルでくじを引いたところ、見事に当たっちゃったんだな、80番の更木が。くじの管理担当者もすっごい申し訳ない表情してたもん。結果は変わらないけど。

 

 それでも地獄じゃあるまいし、治安は現代より少し悪いくらいだろうと思いながら辿り着いた更木だけど……

 地獄ってここでは?世紀末より世紀末してるんだけど。言葉通じてないし。柵も檻もない肉食動物だけの動物園か?エブリタイム命の危機なんだけど。目が合ったら殺し合いって、ポケモンよりひどいぞ。あと、なんか仮面被った巨大な人食いの化け物がいる。で、その人食いの化け物も殺し合いに巻き込まれて死ぬときがある。こわ~。

 そんな治安最悪の場所だと、癒やしが欲しくなるわけで……いや、全く女っ気がないわけではないんだけど、たまに散歩感覚で来て、近くにいる人や化け物全員を斬り殺していく殺人鬼の女は癒やしじゃないだろ?真実(マジ)恐怖(ブル)っちまうよ。震えて見つからないように身を隠すのは心臓に悪かった。ホントに。あと、ここは転生先の異世界じゃなくて死後の世界らしい。死後の世界にも死はあるのかよ……

 

 で、そこから二、三年くらいしたときだったかな。パトロールだかなんだかでやってきて化け物に襲われて死んだ死神が落とした、浅打とかいう日本刀を拾ったんよ。俺の頭にぶつかった刀だな。で、割と頻繁に近くにくる化け物──たまに来る女(長いので辻斬りって呼ぶ)やその周りにいる部下っぽい人が(ホロウ)って言ってたそれから身を守るために、素振りとか鍛錬を始めたわけだ。もちろん、クッソ強いあの辻斬りから少しでも逃げ延びられる可能性にも賭けている。一太刀入れるなんて無理だろうけど、一瞬隙を作れれば、もしかしたら……なんか瞬間移動してた気がするけど……

 変化があったのは、鍛錬を初めて3年くらい経ったときなんだけどな?イマジナリー美少女が見えてきたんだよ。いや、マジで。夕日みたいに赤い髪に、勝気そうな赤色のつり目。服装は死神と同じ着物だったけど、白を基調とした感じだったな。結婚する時の白無垢みたいな感じかもしれない。かわいい。

 しかも、このイマジナリー美少女は俺のそばにいて、鍛錬の正しい姿勢や方法まで見せてくれるんだ。有能すぎない?いくら俺の無意識が作り出したっぽいイマジナリー美少女とはいえ、対応が上の上だった。あとすっごいかわいい。

 そんなイマジナリー美少女が「がんばれ♡がんばれ♡」と励ましてくれることを心の支えに頑張ってきたんだ。

 

 ──今、クソ強辻斬り女とエンカウントするまでは……

 

 イマジナリー美少女の導きもあって、なんとか辻斬り女に一太刀入れることには成功したが、なんか直ぐに傷が治っていった。オートリジェネとかやめてくだち……

 何年か前に遠目で見た時よりは弱くなっているかもしれないけど、対峙してみたら大して変わってないように思えるし、自動回復みたいなものまでつくようになってる。

「これ、無理だな……」

 実質二度目の人生を諦めたくはないが、これは無理だ。勝てない。

「なあ、イマジナリー美少女、俺、お前の名前を聞いたことなかったよな……」

 俺はここで死ぬだろう。目の前のやべー女を倒す自信は全くないし、逃げ延びられるかどうかも怪しい。傍らのイマジナリー美少女が疲れ果てた俺の妄想の産物だったとしても、この十何年という付き合いだ。最期に名前だけは聞いておきたかった。

「お前、なんて名前なんだ?」

 そう尋ねたとき、今までずっと辻斬り女を睨みつけていたイマジナリー美少女が、少し驚いたように話しかけてきた。

「やっと聞いてくれたわね!まったく、十年以上一緒にいるんだから、名前ぐらいさっさと聞きなさいよ!」

「さあ、遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!」

 張り切ってそう言い出したイマジナリー美少女は、太陽みたいな笑みを浮かべてこっちを見たんだ。

「解号はわかってるわよね。それを思いっ切り叫びなさい!」

 解号……確かに、頭に浮かんだフレーズはある。けどこれを叫ぶのか?マジ?

「早くしなさい!臆せば死ぬわよ!」

「ああ、わかったよ!」

 

「嫁げ!」

「「紅染(くぜん)!」」

 

 俺が「嫁げ」とプロポーズみたいな言葉を言って、イマジナリー美少女と共にその名前を高らかに叫ぶ。すると直後に共に周囲を強いプレッシャーみたいなものが奔った。それと共に巻き上がる砂煙。視界が晴れた時に俺の目の前に立っていたのは、しっかりと地に足をつけ、地面には影が映っている、もはやイマジナリーではない美少女だった。

 

「さあ、ここからは二人で反撃よ!」

 

 

 

 ──この後死ぬ寸前までボコボコにされた。命からがら逃げ出せたのは、ホントに運が良かったと思う。




気が向いたら続きます
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