【悲報】更木出身俺氏、イマジナリー美少女が見えてくる 作:三白めめ
瀞霊廷内に侵入者だと、警報がけたたましく告げていた。なにやら門番を倒すくらいの実力はあるようだ。
要は強いヤツなんだろうと我が十一番隊の隊長殿が隊首会から戻ってすぐ隊士たちを集め、明け方まで探し回らせていたわけだけど……
「眠い……」
なんなら三席のハゲと五席の鳥っぽい髪型のヤツの二人はサボってやがった。それはともかく、明け方まで探し回っても見当たらなかったからと、集めた当の更木隊長が帰っていいって言ったので帰る。
「……なにあれ」
なんか流れ星みたいなのが落ちてきて、四つに分かれた。旅禍かな?
更木隊長はなんかウキウキしてる。怖ぁ……
「どいつだ……!? 一番強えェのは……どいつなんだ……!?」
まあ、帰っていいって言ってたから俺は帰ろう。もし俺が重傷を負ったら、四番隊に……卯ノ花隊長の隊が運営している救護詰所にいかなきゃいけなくなる。
……ダメだった。更木隊長から命じられたのは、
『正直、更木の剣八が負ける相手が出てくると思えないし、あの草鹿のと戦って副隊長に繰り上がり狙ったらいいんじゃない? 副隊長だったとき割と裁量は自由だったでしょ?』
「でも彼女、更木隊長と似た感じの霊圧放ってただろ? 本気出したら隊長と一体化して「これで二対二だね」とか言ってきそうだし……」
というか、隊長に挑むならともかく副隊長と戦って座を奪うってダサくない……?過酷な環境で頑張ってきた更木民のプライドというか……いや、生き残れるならプライドとか捨てるけど。
どうせ指示聞かないだろう
『ハゲの霊圧が消えたわね』
「負けてんじゃんか」
あと、サボってたハゲの霊圧が消えた。死んではいないみたいだけど。サボってるからバチでも当たったのか? まあ、バチも何も俺たちは死神なわけだが。というか、一応あのハゲは三席だぞ。それがやられるかぁ。あいつ妙に霊圧が強いというか、絶対卍解取得してるだろ。なんか出し惜しみしてるから今回も使ってないだろうけど、それでもまあ強いんだが。
それを倒す旅禍か。……やっぱり帰っちゃダメかな。というか、さっきから聞こえてくる「ガンジュ―」って声はまさか……いや、ハゲ倒せるくらいならその辺の死神相手でも勝てるから理に適ってはいるけどさ。
花火? ……綾瀬川五席の霊圧が弱まった。
「あいつらどっちも負けたのかよ」
とりあえず、ガンジュガンジュ言ってる声の方に行ってみよう。流石にあれを見逃したら怒られる。はぁ、見つけてしまった。オレンジ髪の旅禍だ。道の向こうからは鉢巻を巻いた、見るからに花火師って感じの男が来てるし。
『帰っていいんじゃない? バカたちがもう追ってるみたいだし』
「……いや、ちょっとまずいかも」
どっちも追われているが、両者ともにハゲとロン毛を倒すくらいの実力はある。特にオレンジの旅禍はほとんど傷を負っていない。彼が先に花火を打ち上げたガンジュの方を探していたということは、一角をノーダメージで倒した化物ってことになる。……強くね?
予想通り、突っ込んでいったバカがぐぼっだのぐふっだのと声を上げながら倒れた。まあ、この人数なら逸るバカを突っ込ませて持久戦にすれば勝てるだろう。オレンジの方も、流石に霊力が無尽蔵にあるモンスターじゃないだろうし。
いや、本当に素晴らしいな。挟み撃ちの状態で相手を消耗させられる肉壁がいるってのは。昔は何人いようと気まぐれに訪れる辻斬り女の試し切りで瞬く間に死んでいったから……
そんな風に四席として部下に任せる判断をしていたら、なんか俺のいる方と逆側が騒がしい。どうやらひ弱そうな死神が乱入?してきたようだ。
「おらァ!! てめーら道あけろォ!!」
「てめーらの仲間ブッ殺されたくなかったらなァ!!」
人質? まあ、護廷のために死んでくれ。できればそこの旅禍を一秒でも足止めして。そう思っていると、バカ共が反応した。いいぞ、そのまま突っ込め。
「俺ら十一番隊は、護廷十三隊最強の戦闘部隊。ひきかえ四番隊は弱すぎて救護しかできねえ十三隊最弱のお荷物部隊」
やめろやめろ! 俺を含めて全員でかかっても、その四番隊の隊長に斬り殺されるだけだから!というかお前ら突っ込め! しょうがない。俺が行くか。
「ゆえに俺ら十一番隊は四番隊が……大っキラ」
人質の首に斬魄刀を突きつけていて反応が遅くなる。隊士たちが話していて、そっちに注意が向いている。四番隊の人質ごと斬れば、最大戦力のオレンジ髪は持っていけるだろう。鉢巻の方、ガンジュは負傷済みでどうとでもなる。
壁を蹴り、空中から不意を打っての斬撃。仕留めるつもりで放ったそれが、旅禍の斬魄刀に防がれた。
『反応された!?』
「一死を以て大悪を誅すってやつだ。悪く思わないでくれ」
とはいえ、これが防がれるとなると、些かに面倒だ。具体的にはそこの隊士くんが「十一番隊の四席の人に斬りかかられました」みたいなことを言うと禍根が残る。それっぽい理由をこじつけたが、卯ノ花隊長から抗議が来たりしたらと考えると背筋が寒くなってきた。
「お前ら流魂街のチンピラじゃないんだぞ。キライだのぶッ殺すだの言う前に殺せ」
あと、流魂街のチンピラがどうのといったが、更木人は殺すだのなんだの言う前に殺しにかかる。草鹿もそうだったみたいだ。そう考えると、あいつら随分と育ちがいいな。貴族様かよ。
「──行け」
ちょっと霊圧で脅しつつ旅禍に向かわせる。オレンジ髪の方は「あいつは俺が引き受ける」と俺に警戒を向けてきた。……なんか十一番隊が鎧袖一触で、舐められるのはちょっと癪に障るな。
「嫁げ!」
「???」
やめろ! 旅禍! そんな目で見るな! そういえばあの旅禍ずっと始解状態みたいな斬魄刀持ってるなぁ。お前にはわからないだろうよ。こんな解号になった苦しみが……
『かわいいだのなんだの言ってたでしょ! 嘘ついてたの!? 屈服とかしなかったって言い張るわよ!?』
ごめん。それはともかく、紅染は俺と同等くらいの剣の腕だ。つまり、俺がオレンジの旅禍と斬り合っているうちにガンジュとかいうのを紅染が仕留めればいい。あとは一角を倒したあの旅禍を二対一で倒せばよくなる。そんな計画を頭の中で練っていたとき。
「紅ぜ……っ!?」
突如、壁が壊れて衝撃が襲い来る。その程度で吹き飛びはしないが視界が塞がれた。
……とりあえず、視界が悪いがこの現象の下手人は斬っておいた。妙に硬い腕のせいで仕留め損ねたが、逃げた先は八番隊の管轄だったか。
いやー、あのへんな腕の旅禍、本当に硬かったし身のこなしも上等だった。なんで投げた暗器が刺さらないんだよ。今の現世って戦の真っ最中だったりする?
まあいいか。帰ろう。……四番隊の隊士くんは拉致られてるけど、そこまでは関知しない。そのうち解放されるだろう。俺が斬りかかったことで、護廷十三隊を相手に人質は通用しないと理解したはずだし。
隊舎でのんびりしていたら更木隊長が負けたとか、旅禍の一人を連れてきた上にその幇助をするとかいろんな情報がきた。
──マジ? 隊長格と本気で戦うのは久しぶりだな。ほんの少し、本当にほんの少しだけ、気分が高揚する。もしかしたら、卍解を使うことになるかもしれない。それはそれで楽しみ……かもしれない。あ、卯ノ花隊長だけは勘弁してください。
また気が向いたら続きます。