【悲報】更木出身俺氏、イマジナリー美少女が見えてくる   作:三白めめ

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嫁入り道具を携えて。


剣八ではなく

 オレンジ髪の旅禍は"黒崎一護"というらしい。そんなことを聞きつつ、更木隊長がその黒崎や他の旅禍を探しに走るのに同行している。他のメンバーは我らが隊長と副隊長、織姫という旅禍とハゲ、ロン毛にあとひとり……何て名前だっけ。まあいいか。その六人と俺だ。

 道中で捕まっていた変な腕の旅禍(普通の腕に戻っていた)やメガネにガンジュを解放したりしたが、別に大した出来事じゃなかった。見張りも簡単に伸せたし。

 

 そうして更木隊長の勘と副隊長のアテにならない道案内で迷うこと二十回ほど。広々とした場の一つで立ち止まった。

 隊長格の霊圧が四つ。綾瀬川や更木隊長も気づいたようで、出てこいよと隊長が声をかけた。

 現れたのは七番隊と九番隊の隊長及び副隊長。七番隊副隊長の射場さんは、昔十一番隊にいたから顔見知りだ。

 「敗れて誇りまで失ったか」と我らが隊長に声をかけてきた東仙隊長とが戦うとして、残り三人、誰が誰と戦うかだな……

 

「狼狽えるな荒巻! 数ではまだこっちが有利だ!」

 

 そんなことをロン毛こと綾瀬川が言っている。

 いや、ここは一対一を四人の流れじゃないのか? いや、戦わないならそれに越したことはないかもしれないけど……

 

「喚くな。誰がてめえらに戦わせてやるなんて言ったよ?」

 

 あれ? これ、もしかして……

 

「四対一か。試し斬りにゃちっと物足んねェがな」

 

 まあ、どうせ一角と綾瀬川も残るでしょ。じゃあ俺も残るか。それでちょうど四対四だし。総隊長や卯ノ花隊長がいる双極の丘にいくより、ここで隊長格と戦う方がよっぽど楽だ。

 ──予想通り、十一番隊の俺たちが残った。最大の懸念は獲物を取んじゃねぇと更木隊長がキレることだが、隊長はああ見えて良い人というか、戦いの邪魔しない限りはだいたい譲ってくれる。歴代の十一番隊隊長より真面目に仕事はしているし、意外とマトモなんだよな、更木隊長。

 ということで、一角が射場さんと。綾瀬川は檜佐木副隊長と戦るっぽいし、俺は狛村隊長かな……?

 二人とも更木隊長へのヘイトが高いけど、まあいいか。こっちに警戒を向けてはいるし、なにより隊長が邪魔したらそっちから斬るって言っていたからしょうがない。サボろう。

 ……やっぱり強いな。流石は剣八。幾度斬られても立っているとか、俺には到底無理だ。東仙隊長の鈴虫で暗器だか剣だかがいっぱい刺さってるし。痛そう。

 俺はゆっくり観戦できて楽だけど、なんだかんだで更木隊長が優勢っぽい。「死ぬなら隊長らしく、俺に卍解の一つでも見せてから死ね!」とか言ってるし。

 狛村隊長が下がったし、霊圧も高まっているので俺も距離を取ることにした。卍解だろう。楕円形の空間が形成されている。

 

「……中、どうなってるんだろう」

 

 ついに観戦すらできなくなった。剣戟の音も聞こえないので、束の間の平和にすら思えてくる。

 

「貴公、更木に中てられたか……」

 

 そんな中、笠で顔を隠している狛村隊長が話しかけてきたんだが……どういうことだ? 俺は斬り合い楽しいな~って性格じゃない。まさか、十一番隊だからそう思われてるのか?

 

「斬術の鍛錬、多くの者に頭を下げて教えを請うたことは聞き及んでいる。礼節を尽くし、信用を得る。返報を知りながら、何故に旅禍へ味方するのだ」

 

 あ、違った。

 そりゃ十一番隊の剣術指南役はあてにならないというか。見て覚えるよりは教わった方が効率がいい。護廷十三隊という職場だ。自身の能力向上のために別の部署に頭を下げるくらいは問題ないだろう。

 

「あの時は必要に駆られただけです。十一番隊の連中、剣しか使わないので。それに……」

 

 怪訝そうな狛村隊長。まあ、護廷十三隊には俺の方が先に入っていたし、分からなくても無理はないが。

 

「強くなるのは好きなんですよ。生きてるって実感がして」

 

 なにせ、更木出身だからな。

 霊圧を高める。久しぶりだ。こうして、全力で戦うのは。

 

「卍解──雨狐紅染(よめいりくぜん)」

 

 卍解としての名を呼ぶとともに、紅染の姿が俺と重なる。見かけとしては、俺が彼女になったと呼称する方が正しいだろう。

 

「一度壊れた卍解は治せない。そして、俺と紅染が融合している以上、それは俺の体そのものにも当てはまる」

 

 一度壊れた卍解は治せない。よって、この状態の俺と紅染が傷を負うと、その傷が治癒することはないのだ。卍解を解けば治るけど、それまでは治療不可能。というのも事情があって……

 手にしていた斬魄刀が変形する。紅染曰く反則に近いというか、具象化する始解であるが故に刀の形は決まっておらず、何にでもなれるという"浅打"の性質を引き出して無数の武器にすることができるとか言ってた。ただ、氷だったり炎だったりは出せないらしい。そして、服の内側に仕込んだ武器などにも対応しているため、死覇装や紅染の姿に変化した俺自身も卍解の判定になっている。

 つまり、槍や刺突剣など俺が知る限りのあらゆる武器を使うことができるということを意味していた。……それらの武器を習熟するための時間は別だ。本当に使い勝手が悪いな、この卍解。

 これを使うのに必要なのは、戦闘技能の習熟。槍、斧、刺突剣、仕込み武器、弓、銃……あらゆる武器の術理を解した事実だ。それは如何なる流派だろうと我が手にした者でないと扱えず。故にこそ、剣八にあらずとも八千流と名乗る資格は……いや、名乗りたくないわ。八千流さんに喧嘩売りたくない。ホント怖い。

 ちょくちょく現世での魂送任務を受けているのも、新しい技術を知るためだ。

 

 俺が卍解を使ったのを見て、自分も使わないと相手取れないと判断したのだろう。狛村隊長もまた卍解──黒縄天譴明王を顕現させた。巨大な鎧。確かに、大きいのは強いな。

 さて、卍解状態の俺と紅染は、思考も共有されている。つまり、シームレスに使う武器を切り替えられるわけで。

 狛村隊長に暗剣を投げ、同時に卍解の鎧へと鉤縄を引っ掛ける。現世ならともかく、霊子の足場を作れない瀞霊廷ではこうした移動をするしかない。

 暗剣は弾かれるが、ロープを引いて腕に着地するまでの隙は作れた。そのまま頭まで駆け上り、三節棍で角や顔を殴り続ける。

 巨人に対して、たかが人間サイズの攻撃だ。ただ、霊圧と適切な衝撃の通し方をすれば!

 

「本体と傷も共有するのか! お揃いだな!」

『あたしはそんなにごつくないんだけど』

 

 ふらついている。……笠で顔が見えないから、頭殴ってもどのくらいの一撃だったのか分かりにくいな。

 あと二撃ほど叩き込んだところで、黒縄天譴明王がすごい速さで剣を振ってくる。腕の動きと連動しているとは予想していたけど、速さも同じか。

 手に持つ武器を、雀部副隊長が使っているようなレイピアに変更。兜の部分を蹴り、腕にハンドガードを擦らせながら攻撃を逸らす。巨大な刀より内側──巨躯の腕部に潜り込めば、あとはそこへ当たった時の衝撃に対処するだけでいい。

 ハンドガードの接触で散る火花を横目にそのまま降下。武具を斧へと変え、その重さと落下速度を使って振り下ろした。狛村隊長は右腕の籠手で咄嗟に防いだようだが、それくらいなら簡単に割れる。腕ごと持っていくことはできなかったが、斧でなくともあと一撃入れれば落とせるだろう。

 距離を取れば、黒縄天譴明王の間合いだ。徹底的にインファイトで攻め続けるしかない。取れる戦法を狭めてくるのは厄介だ。極論、いるだけで強い。

 ただ、あの辻斬り女みたいに無法な強さじゃない以上は臆することもないな。

 

「っ!」

 

 その時、東仙隊長が作った卍解の領域が崩壊する。現れたのは、満身創痍の東仙隊長自身だった。更木隊長もそれなりに傷を負っているが、あくまでそれなり。更木隊長の勝ちだろう。

 なんか「お前を止めなければならないのだ」とか言って足掻く東仙隊長と、そんなに死にたきゃそうしろととどめを刺そうとする更木隊長。二人を止めるために、狛村隊長がそっちに行った。

 ……笠の下、犬だったんだ。卍解越しとはいえ何度も殴ったのがちょっと申し訳なくなってくる。……いや、更木の犬も妙に強かった気がするな。死体食ってたからかな……そう考えると罪悪感も微量になった。

 なんか更木隊長対狛村隊長にシフトしそうなので、俺は卍解を解く。久しぶりに卍解して楽しかった。

 あと、なんか処刑が始まって戦いが中断されたみたいだ。俺は興味ないので帰る。

 

 なんか享楽と浮竹に総隊長が相対している霊圧が感じ取れたけど、怖いので近寄らない。俺は賢いので。




二代目八千流(非公式)です。
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