前回の作品を一度読んでくださった方がおりましたら、申し訳ないです。
自分で書いておいて、あれ、気持ち悪いぞこの主人公…?なラインナップになっております(えっ?)
でもこういう系が自分は好き、ハッキリわかんだね。
愛が重い、この少女。
生まれた時から、私は「私」だった。
前世の私の最期は、所々モヤがかかっている。青い空を眺めるようにして、身体が冷たくなる感覚。身体に突き刺さった無数の矢が、私の死因だった。
それ以上は何も覚えていない。誰に殺されたのか、自分が死ぬまでの経緯も覚えていない。年齢は?身分は?…どれもわからない。ただ、一つだけ確かなのは身体を見た時に胸があったから、女であったということくらい。また最低限の生きる上での知識が、不思議とインプットされている。
そんな私は今世も女だ、まだ胸もクソもないんだけど。真っ平らに舗装されているんだけど。
今の私は超絶に可愛い幼女だ。自分で言っておいてドン引きするが、事実可愛いのだから仕方ない。容姿はお母さまで、髪の色はお父さまに似ている。
試しにこの小ちゃい紅葉のようなお手手を、一回目に入れてみるとするじゃろ?すると、なんということでしょう────失明します。当たり前のことだ。目に入れても痛くない、って言うんだったら、実際に一回入れてから言ってみろ。もちろんこれは私なりのブラックジョークだ(ニッコリ)
話は変わって「私」の意識が目覚めたのが、どうやら今世の私の自我が芽生えたことがきっかけらしい。これまでギャン泣きクソガキ野郎だった私は突如大人しくなり、絵本ばかり読むようになった。とは言っても文字は読めないから、私に美貌を遺伝させてくれたお母さまに読んでもらって、今の世界の常識を身に付けている。
ちなみに私は“エルディア人”という種族で、今住んでいる国は“マーレ帝国”。その名の通りマーレ人が治めている国だ。
しかして二つの種族は仲良くお花畑を駆け回るような関係ではなく、エルディア人はマーレ人に管理されている。しかも収容区に入れられ、壁に囲まれて暮らしている。
何故そのような統治体制になったかについてだが、昔マーレ人は逆にエルディア人が治めるエルディア帝国の支配下にあったらしく、何十年も前にマーレが「謀反♡」を起こし、それが成功して立場がひっくり返った。
お母さま曰く、一方エルディア帝国崩壊の裏では、当時の王が数多のエルディア人とその他の種族を引き連れて、なんだかパラダイスしてそうな島へ逃げ、壁を築いたそうだ。当然これを聞いた私は思うわけです。
────え?何で私たちの祖先も行かなかったの?
お母さま、そこは行きましょうよ。共に逃げていれば「
まだ3ちゃいの私が「どうちて?」と舌ったらずな声で聞けば、お母さまは天使のような表情から一転して、悪魔のような顔になった。“悪魔の民”だけに、なーんて……あっ、お母さまそんなに私の肩を強く掴んでどうなさったの。そんな、私心の準備がまだ────、
「マーレに残った
「ま、ままっ、いちゃい…!」
「我が
「ふ、ふりっちゃ??」
ちょっと待てお母さま、「フリッツ家」ってエルディアの王様の名前じゃなかったっけ?…っていうことはですよ、もしかしなくともお母さまは、王家の血筋を引いていらっしゃる感じですか?話の内容からして、打倒マーレ帝国のために、我が先祖がパラディ島に行かなかったのはわかった。
………ということは、お母さまの血を受け継ぐ私は、当然その王家の血筋を受け継いでいるわけであって。
そうなると3つ上のお兄さまも王家の血筋を引いているわけだ。ふーん……ふーん…?
「あなたの“
それはつまり──子を増やせってことでしょうか、お母さま。まだ3ちゃいの私に何を言ってるんだ。まだ自我が覚醒した私だったからいいものを、普通のガキだったら小首をかしげることしかできないよ。いや、私も理解が追いつかなくて小首を傾げているよ。側から見たら可愛いに違いない。だってお母さまの血が流れているんだもの。
「う、うーん……わかっちゃ!」
わからないムーブを演じながら、虚しくも理解が追いついてきた脳が「子孫繁栄」のワードに頭を悩ませる。別に好きな人と結婚して赤ちゃん授かるのはいいんだけど、3歳の頃から重圧をかけられてもなぁ…。
私はまだしもお兄さまなんか、まだ6歳だというのに毎日戦士になるための訓練を行っている。朝起きたら既におらず、帰ってくるのも私が夢の中にいる頃。精神が確立していても、肉体による睡眠欲求からは逃れられないのだ。お兄さまのお顔は、四六時中見ていたいというのに。
それに“本”に私が興味を持つようになってから、両親はここぞとばかりに洗脳教育をしてくる。
お祖父さまたちがマーレの教育に基づいた「エルディア人は悪魔の子孫」という思想を教えてくるなら、両親はその考えを真っ向から反対してくる。私はさておき、お兄さまの洗脳はより深刻に進んでいる。
子供の時に受ける親からの影響は、きっと計り知れない。
私が王家の血筋を紡いでいく
思うことは一つ。私たちは両親の道具ではない。
それでも私が「アウラ・イェーガー」────否、「アウラ・フリッツ」としてこの世に奇妙な生を受けた以上、絡まった“運命”からは逃れられないのだろうか。
それはまだ、ハッキリとはわからない。
◻︎◻︎◻︎
私は家族を愛している。その中でも特に愛しているのが、お兄さまのジークだ。
どのくらい好きかと言うと、お兄さまのお兄さま(隠喩)を目に入れても痛くないどころか、絶頂するぐらいには好きだ。──変態?違います、兄妹愛です。もちろんブラックジョークではありません、本気です。
お兄さまは今6歳、とてもかわいい。まずお母さま似の金髪と、くせ毛がかわいい。それに白い肌、ついで柔らかいほっぺ。最後に青い瞳がそれはそれはかわいくて好きです愛してます総じて食べたいくらいには。
私がここまでお兄さまラブといいますか、お兄さま至上主義になったのにはきちんと理由がある。
それはまだ、「私」の自我が芽生え始めたばかりで、毎日精神が不安定だった頃のこと。前世と今世の
そんな私を、お兄さまは訓練帰りで疲れ切っていたはずなのに、毎日見にきては手を握って励ましてくれた。そのまま寝落ちしていることも、ザラにあったらしい。もちろん両親も心配してくれていた。けれど成熟した精神が混ざった私には、両親の愛情より、お兄さまの献身の方が心に響いた。これは多分、前世の「私」の影響もあるのかもしれない。ほとんど思い出せないけれど、不思議と確信がある。
だからこそ私はお兄さまの喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、全て見たいわけです。さらに願わくばその感情の全てをこの身に浴びたい。愛したいし、愛されたい。食べたいし、食べられたい。
お母さまやお父さまの教育には悪いけど、私は確かに“悪魔の民”なのでしょう。
だってこんなに、歪んだ考えを持っているんですもの。
それを「異常」と理解しながら受け入れて、行動にしたいと思っているのだから余計に。
悪いことだとは理解している。その上で、私はお兄さまを取る。理由は「愛している」だけだからでいい。
思い出すのは初めて私が「私」として、この世に存在していることを自覚した時、高熱の苦しみの中で涙を流しながら微笑んでくれたお兄さまの姿、言葉、その息遣いに表情すべて。
『────アウラ、死なないで、アウラ……』
あぁ、好きです、好きです、好きです好きです、大好きです。
だから私に、お兄さまの全てをください。代わりに、お兄さまに私の全てを差しあげますので。
──と、そんな私がこれからすべきことは決まっています。
お兄さまの「喜」も「哀」も「楽」も見ました。なら次に見るのは、「怒」の感情。
お兄さまはお父さまとお母さまの“洗脳”的な教育の裏で、陰った感情を持っている。それは親からの「愛」に他ならない。おうちで子を増やす使命を持つ私が、大切に、そして傷つかないよう育てられている一方で、お兄さまはいつ死ぬかわからない中にいる。この差が余計に、お兄さまを追い込む材料となっている。
さらに親に認められたい欲求の反面、マーレの“戦士”を目指す中で、中々成績が優れていない現状。
壁に突き当たっているお兄さま。私の行動一つで、その怒りが妹の私に向くことは想像に難くない。
「──んはっ♡」
いけない、想像しただけで自分の部屋でとんでもない声を出してしまった。お父さまは仕事でいないので大丈夫、お母さまは……扉から覗いてキッチンの方を見てみたけど、鼻歌まじりに料理している。本当によかった。
これから私が行うのは『ジークお兄さまに、いつの間にか好きな妹へ憎愛をごちゃ混ぜにした、複雑な感情抱かせよう』計画だ。…うん、長いので『曇らせジークお兄さま♡』でいいでしょう。最終的にお兄さまに殺されて死にたい。好きも嫌いも、憎愛をドロドロに溶かしてその全てを私に注いで欲しい。
だから、私はお兄さま以外の誰かの子を身篭る気はないし、兄妹で子を成すタブーを理解しているから、相当なことがなければ一生独り身だろう。…いえね、まぁ、お兄さまが複雑な感情抱いてくれるなら、この身体を他人に蔑みにされていいし、他の人間と付き合ってもいい。お兄さまが求めてくれたらそれはそれで即堕ちする、絶対。
もちろんお兄さまが他の女性と結婚するのは構わない、むしろ幸せになって欲しい。けれどその奥で、ずっと私という存在を飼い続けて生きてくれ。
目先の目標として、このままお兄さまには戦士を不合格になってもらいたいところ。戦士になれば、必然的に巨人の力を継承して、ビッグお兄さまになってしま………ビッグお兄さま……!??
なにそれしゅき────じゃなくて、死ぬ可能性が上がってしまう。
ただジークお兄さまなら、合格してしまいそうな気しかしない。だって私のお兄さまだもの。
ならば今後その上で複数の可能性を模索しながら、『曇お兄♡』計画を進めていこう。
私アウラ・イェーガーは、お兄さまを心の底から愛しております。
ですからお兄さま、一緒にいっぱい、ぐちゃぐちゃになりましょうね。