ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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ご紹介するのが遅れたのですが、チア=サンからえっっっっ(昇天)なアウラちゃんをいただきました。ぜひご覧なすってください。。

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私になれなかった私を愛してくれる男を愛している私は私の名前を知っている。

 シガンシナ区にて切られた火蓋。

 

 戦士たちはレベリオで受けた雪辱を果たすため、エレン・イェーガーやパラディ島勢力と対峙した。

 

 一方候補生二人も助けに来たコルトと再会を果たし、その上で候補生として残ることを決意する。

 頑なな意志を示すガビとファルコに、なるべく安全な位置で待機するようマガトは命じた。

 

 また、ファルコが飛行船で聞いたパラディ島の兵士の「始祖と王家の血を引く巨人がそろった…」という内容から、その“王家の血を継ぐ巨人”に該当する人物が、ジーク・イェーガーであることが考えられた。

 

 さらに敵の情報とジークが現場に不在であることを調べていたピークは、現状「始祖の力」を使われる可能性は著しく低い──と見解を述べた。

 

 王家の血の情報が正しいなら、アウラ・イェーガーもまた王家の血を継ぐ人間ということになる。

 

 それを踏まえ、マガトはヴィリー・タイバーの不可解な発言を思い出し、やはり何かしらこの二者に関わりがあったのだろう、と思い至った。

 

 

 

 

 

 戦場では民家を破壊しながら、鎧&女型VS進撃の戦いが繰り広げられる。

 

 通常なら単独でも十分すぎる力を発揮するアニが協力して戦うと、より強い。

 

 エレンが戦鎚の能力を使い、地面から杭状の物体を無数に生やして女型の動きを止めれども、できた隙を許さないとばかりに鎧の装甲を活かしたライナーのタックルが炸裂する。

 

 ミカサたちがいればもう少し戦況は変わったかもしれないが、104期生の面々は現在拘束されている。

 

 敵はしかも対巨人用の砲弾を用いて狙撃してくる、遠距離担当の車力の巨人も存在する。さらに飛行船から舞い降りたマーレ兵もだ。

 

 

 イェーガー派が雷槍を使いエレンの助力やマーレ兵の掃討に躍起になるが、戦況はエレン側が押されている。

 

 仮に進撃が戦鎚の力を奪っていなければ、早々にエレンは女型なり鎧なりに食われて、その力を奪われていただろう。

 

 そして、マーレ軍の中で普段以上に殺意が高いのが、女型と車力である。

 

 女子力(?)が発揮される中、その間にヌルっと交ざっているライナーに、格好のチャンスが訪れる。

 

 

 車力に搭載された武器を操縦するマガト。その弾が進撃の巨人の頭に被弾し、脳に著しい損傷を負ったことで、エレンの動きが停止した。

 

 その隙を狙い、後方から顔面の右半分に大きな損傷を負った鎧の巨人が、進撃のうなじをねらう。

 

 ここまでか────と思われたその時、鎧の頭にぶち当たった、投石。

 

 それを投げた主は壁の上に立ち、街の至る所で立ち込めるケムリに目を細めながら、弟へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 放置プレイだ。

 

 

 失礼、自己紹介が遅れました。私はアウヌンティウスと申す。

 私は友人が邪智暴虐の王にカチコミをかけてあっけなく捕まり、奴が処刑される代わりに王に差し出されてしまった悲劇の人間である。

 奴は妹の結婚式に赴くとかで、必ず3日以内に帰ってくると言っていたが、到底私は信じられぬ。人間不信だからだ。

 まるでそう、王のように。むしろ王の方に共感ができてしまうくらいには人を信頼できぬ。

 そんな私は周囲の人間の「友人の代わりに身を差し出すなど、なんてイイヤツなんだ…」という、すでに私が奴の代わりに捕らえられることが前提のような視線に、「ノー」とも言えず、捕らえられることになってしまった。空気の読めない人間は社会で淘汰されてしまうのだ。私が人間不信になる理由の一つである。

 きっとこれも私が断れないようにする、奴の策略だったに違いない。「絶対に帰って来る」の宣っていた奴が信じられぬ。

 そんな、夜な夜な奴の暴言を吐く私の言葉に王はシンパシーを感じ、以来私たちは意気投合した。

 そして最終的に奴は、ギリギリ間に合わず帰ってきた。

 きっと民衆の前で処刑された私の死体を見ながら嘆き、悲劇の主人公ヅラを浮かべ、民衆に哀れみを向けられるよう役者を演じたに違いない。

 まぁよいのだ。結果として私は死なず、それどころか生涯の友を得たのだから。

 王と共にいる私を見て、奴は絶望したような顔を浮かべ、この話は幕を閉じ──────え?アウヌンティウスじゃないだろうお前、って?

 

 

 そうです。アウヌンティウスではない私の本当の名前は、アウラ・イェーガーちゃんです。

 

 だっふんだ!

 

 

 

 

 

 話を戻しましょう。

 

 放置プレイを受けているのは本当です。久々の騎乗に調査兵団に入っていた当時を思い出していたら、シガンシナ区が視界に入った時に異変が起こりました。

 

 上空に見えた数隻の飛行船。それがマーレの物であるとわかり、馬を急がすことに。

 

 

 そして受けた、放置プレイです。

 

 イェーガー派が立体機動で壁上に向かい、ジーク・イェーガーも巨人化して登っていった。

 危険なため、絶対に私は来ないよう念を押して。

 

 俺も行くぜぇ!と意気揚々と向かいたいところですが、今の私には生えた右足があるものの、立体機動装置がありません。

 側にいるのは置いて行かれた馬のみ。内門も閉じているので入れません。詰みかな?

 

 

 アウラちゃんは未だに“最高の最期”を諦めていません。

 

 自分が始祖の力を持っているかもしれないという可能性に至った以上、殊更にこの力をエレンに渡さなければならない。

 

 ユミルも流石にできることと、できないことがある。

 

 今まで彼女は、エレンに始祖があるように見せかけるため手回しをしていましたが、「地ならし」を行うとなると、難しくなるでしょう。

 

 というより地ならしが始まってしまったら、エレンに殺されてお兄さまに看取られて──の機会がいつ訪れるかわからなくなる。

 

 ガビ・ブラウンに撃たれて、そのままお兄さまの膝の上で終わってもよかったんですけどね。

 やはりユミルも「本願をなさずに終わっていいのか、アウラッ──!!」という心境だったのでしょう。

 

 ユミルに背を押されて、また目覚めてしまったのですから、自分の最高のエンドに向けて私も突き進まなければなりません。

 

 肝心のユミルの方は史上最高に疲れているのかもしれない。

 普段なら私が撃たれた後に彼女の世界に招いて、お兄さまの反応をじっくり堪能させてくれそうなものを、ずっと会っていない。

 

 それに加えて彼女が制御していたはずの始祖の力が緩んで、“不戦の契り”の影響を受ける結果、私の意識が飛び飛びになる状態が続いている。

 

 

「……そうか、自傷すればワンチャン行けるかも」

 

 

 受験料が精神疲労のハンジ講座で、巨人になるために必要なことは知っています。

 

 自傷の他に巨人化するには、“目的”が必要。その内容は大きくとも小さくともよいのです。極端に言うと「アイツを殺してやりたい」でも「棒を握る♂」でも巨人化する。

 

 

 問題は自傷の範囲についてです。

 

 エレンは手を噛みちぎるという正気を疑う方法を使いがちだったのに対し、戦士たちは戦争の中で巨人化する時、ナイフなどを使うことが多いそうです。

 

 特にアニは最小限のキズ、指を少し切った程度で巨人化できるといいます。

 

 その関連について、自傷行為には文字どおり自分を傷つける行為として、その人間に相応の覚悟が必要となるのだと思います。

 

 それは直結して、“目的”をなす上での意思に比例するのでしょう。

 

 

 例えば明確な意思をもって人を殺す時、殺す側には相当な精神的ストレスがかかる。

 

 その目的を果たす上で行う自傷行為が些細な痛みでは、その目的に対して釣り合わないものであると、本能的に感じてしまうのかもしれない。

 

 そう考えていくと、巨人化することに不可欠なのは目的を果たす“覚悟”に、痛みを享受する“覚悟”。

 そしてその二つの“覚悟”が釣り合ってこそ、巨人化が行えるのかもしれませんね。

 

 

 所詮、私の憶測に過ぎませんが。それこそ、巨人に詳しいハンジと意見を交わしてみないことにはどうにも──────あれ?私今、自分で地獄を見に行こうとしていた……?(洗脳・調教済み)

 

 ただ、人によって感情のコントロールや覚悟の決め方など異なるわけであり、その点を考えるとアニは相当その類が上手いのでしょう。

 また巨人化は“慣れ”もあるはずです。

 

 手を噛みまくっていたエレンも今は過剰に自傷せずとも、巨人化できるようになっているかもしれない。

 

 

 ともかく、どの道私が巨人化できたとして、必要なのは自傷と目的。

 痛いのは嫌ですね。散々足を折るなりしてきた奴が何を言っているんだ、と思われるかもしれませんが。

 

 目的は「最高の最期を送りたい」で十分な気がします。

 

 しかし、本当に巨人化できるのでしょうか。

 

 お兄さまの脊髄液を摂取したのは本当のようですし、始祖を有していない可能性も捨てきれない。

 

 そもそもお兄さまが叫んだから巨人化できただけかもしれませんし、巨人化した時の記憶は一切ない。

 

 エレンもトロスト区ではじめて巨人化した時は、記憶がなかったと言いますし。

 単純にその例に私が当てはまるのか、それとも無知性巨人になっただけなのか。

 

 それにお兄さまを私に食わせたのは、兄を助けるための私自身の意思だったのか、ユミルの計らいだったのか。

 

 まぁどちらせよ、彼女がフォローしてくれることを願い、やるしかありません。

 

 

 

 考えている最中にも中からはこんこんと黒いケムリが立ち込め、轟音がひっきりなしに響き渡る。

 

 壁の上に立っているお兄さまはつかんだ壁を破壊して、その破片を次々と投げては頭上の飛行船に命中させるに留まらず、壁内目がけて投擲する。ぜひ私にもぶち当てて、肉片にしてください。

 

 頬を蒸気させてウットリと魅入っていたら、獣の巨人(お兄さま)の体勢が大きく崩れた。

 小さくて詳しくは見えませんが、右の鎖骨より上部に砲弾が当たったらしい。

 

 お兄さまが落ちて行く、下に。見えなくなる。

 

 まるでブラウス家で狩猟に付き合った時に見た、鳥が撃ち落とされる様と似ていた。

 

 

「…あぁ」

 

 

 気づけば私の口内に広がっていた鉄臭い味。それと、肉。親指に食らいついていたようで、骨が見えていた。そのまま咀嚼して飲み込んでみると、美味いのかまずいのか、痛みにまぎれてよくわからない。

 

 ただ、己の肉体が発光したのはわかった。

 

 

 

 

 

「私」はお兄さまのためだけに存在して。

 

 あなたの涙が、愛おしい。

 

 ユミル()になれなかった『×××××』()を愛してくれるジーク・イェーガーを愛しているアウラ()は私の名前を知っている。

 

 

 アウズンブラ。

 

 だから「アウラ」。

 

 私は雌牛の奴隷。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 イェーガー派、そしてオニャンコポンの救援を求める声と、イェレナから「安楽死計画」の全貌を聞いたアルミン。

 

 彼は、エレンの行動の裏にあるのがエルディア人の犠牲ではなく、ジークを利用して仲間を守るために「地ならし」を行おうとしていると察し、発言した。

 

 それによって、エレン側に力を貸すことを決めた104期生のメンバーの加勢を受け、今度はマーレ側は押され始めた。

 

 

 しかしイェーガー派の猛攻を受けやられた──と見せかけていたピークとマガトにより、ジークに不意打ちを食らわすなど、一進一退の状況が続く。

 

 また過剰な戦鎚の力の行使によってガス欠になっていたエレンは、女型と鎧に大きなキズを与えているものの、戦闘不能に追い込む明確な一手を決めることができずにいる。

 

 どうにか隙をつき地面に落ちた獣の巨人の元へ近づきたいが、そう簡単にライナーたちが許すはずもなかった。

 

 時間が経つにつれて、鎧&女型VS進撃の構図は前者に軍配が傾いていく。

 

 

 

 だがその女型の視線がふいに、頭上へと向く。

 

 アニの向いている場所はエレンの後方。そこはジークが倒れている場所の上────ちょうど内門がある壁上の場所。

 

 そこに大きな手が二つ肘から先がのぞいており、壁を掴んでいる。

 

 そしてその二つの手がある中央の位置に、首がある。

 人骨の頭のようであるが、肩につかないほどの金髪を壁の上にばら撒いて、小首をかしげるように、“ソレ”はいた。

 

 

 不気味なその巨人は一直線にエレンを見つめている。途中笑うように何度もカタカタと、上下の歯が付いたり離れたり──を繰り返した。

 

 異質な巨人の様子を目に留めた者たちの一部に浮かんでくるのは、なぜウォール・マリア内に巨人がいるのか、という疑問である。

 すでに三年前にパラディ島の巨人は掃討された。

 

 巨人はそのまま壁の上を這い上がると、ケモノのようにジャンプし、地面に落ちた。

 突如現れた巨人に、敵味方関係なくチラホラと気づき始める者が現れる。

 

 

 ソイツは地面を這って、ゆっくりとエレンに近づく。

 

 対し、我に返ったライナーが攻撃の手を加えようとするが、アニの方は動かなくなった。彼女の体は微かに震えている。

 歯を鳴らして笑った巨人の笑みにアニは、一人の女を想起せざるを得なかった。ゆえに、動けない。動かないのではなく。

 

 異常を察知したイェーガー派が投げた雷槍。それがその巨人のうなじに当たりかけた。しかしソイツは関節を無視して首を180度動かすと、口を開け噛み砕いた拍子に爆発する。目元のくぼみや顎が完全に破壊されたが、蒸気を振りまきながらソイツはまた進み出す。

 

 

 そしてナイスガイがエレンに馬乗りにされ、顔面を何度も殴打され動かなくなった頃、その巨人はエレンの元にたどり着いた。

 

 正体のわからぬその巨人にエレンが手を伸ばした時、ソイツもまた手を伸ばし────人差し指同士が、触れあった。




〜『E.◯.』END〜
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