ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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作中に「え、それは流石に無理じゃね?」なところがあるかもしれませんが、まぁアニちゃんだったらイケるやろ…と思ってください(洗脳)

あとお気づきだと思いますが、あらすじとタグをちょいと変えました。


チキチキ☆ラブマシーン

「地ならし」が始まっても、地上での争いは続いていた。

 

 マーレ側に当初の勢いはなく、どんどんパラディ島勢力に押されている。

 

 それも当然だろう。世界を平らにするエレン(悪魔)の進行は、すでに始まってしまった。

 もう止めることは不可能であると、兵士たちの顔には諦念の色が浮かぶ。

 

 また《鎧の巨人》も、壁の崩落に巻き込まれそうになったガビたちを庇ったのち、エレンが()()()()()()()を解いたことが災いしてヨロイが剥がれ、本体に大きなケガを負った。

 

 さらに戦いの合間でアルミンたちも、エレンの選択に混乱を見せる。

 104期生は幼なじみを非難するアルミンや、エレンの行動を肯定するジャンなど、仲間内でも亀裂が生じた。

 

 

 そんな中、「地ならし」の発動でマーレ軍の生存を絶望視し、撤退する飛行船。

 

 地上からその様子を見ていたのは、マガトとピーク。

 すべての硬質化が解かれた時に壁の上で戦っていた彼らは、ピークがマガトを咥え内側の建物に飛び乗ることで事なきを得た。

 

「賢明な判断だろう。今はマーレにこの事態を一刻も早く知らせることが先決だ」

 

「マガト隊長、地ならし(アレ)を止める術はないのでしょうか……」

 

「…無理だろうな。その前にまだ、こちらの戦いは続いている」

 

 銃を持ち戦うマーレ兵と、雷槍を打ち込むパラディ島勢力。

 どちらかが全滅するまで、このまま殺し合わなければならないのか。

 

 ──否、「地ならし」を止められなかった以上、今のマーレ軍がこのまま戦うのは得策ではない。無駄に死人を増やすだけだ。

 

 であれば降伏も視野に入れなければならないと、マガトは判断した。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

「ハァ、ハァ……!」

 

 

 地を鳴らし、血で均される世界。

 始まった悪魔の行進を聞きながら、アニは荒い息を吐いた。その側では巨人体が蒸発している。

 

 

 戦鎚の力を手に入れたエレン・イェーガーと戦い、体力的にも限界を迎えていた彼女。

 

 そんなアニが目にしたのは、エレンが撃たれ、その生首がジークと接触する姿だった。

 

 そしてその直後、撃たれた男の首の断面から伸びていった、白いゲジのようなもの。

 エレンの瞳がギョロリと動くと、そのゲジは視線の先にいたジークを補食するように蠢き、眩い光が地を覆った。

 

 

 我に返ったアニは、どんどん巨大化していくエレンから逃れるように移動した。

 生首がジークと接触してその大きさを増していくまで、針に糸を通すような、ごくわずかな間に起きた出来事である。

 

 彼女はそして、大型巨人の隙間を縫うように内側から抜け出し、外側へと逃れた。幸いにも街を囲うようにして一列ずつ並び進み出したその間にはまだ、逃走できる余地があった。

 

 わざわざ巨人に踏みつぶされるリスクを負ってまで逃げた理由は複数あるが、一つはこれ以上の争いが無意味だと判断したためである。

 

 マーレ側の目的は「地ならし」の阻止である。しかしそれができなかった以上、たどる未来はパラディ島以外の壊滅。

 

 世界連合軍が今更立ち向かったところで、幾千もの大型巨人に勝てる見込みなど毛頭ない。

 

 しかし、巨人の行進に閉じ込められたマーレ兵とパラディ島勢力はまだ戦っている。

 

 内門側も崩落した壁により、その先へ立体機動があればともかく、容易に逃げられなくなった。そもそも敵がまだ残っている以上、どちらかが壊滅するまで戦い続けるだろう。

 

 戦う理由がなくなったというのに、これ以上争うのはアニはごめんだった。

 

 

 

 

 

「……本当に、わけがわからない…」

 

 

 そう言うアニの横で、眠っている人間。

 見つけた時は全裸だったため、今は戦士服の上着を体にかけている。

 

 その人間がいたのは、エレンに食い散らかされた巨人の肉片の場所。蒸発するそのすぐ近くに横たわっていた。

 

 アニがガイコツの巨人を見た時、脳裏に過ぎったのはアウラ・イェーガーである。

 笑う姿に既視感を覚え、見覚えのあるその正体に気づいたとき、背筋を震わすことになった。

 

 

 そして彼女が内側から逃げだした理由のもう一つにあるのが、このアウラの存在。

 

 見つけた際、女の目元に巨人化の跡はなかった。しかし確かな証拠はないが、アニの勘はガイコツの巨人=アウラ・イェーガーであると告げている。

 

 なぜアウラが巨人化していたのかは不明である。ただし、無知性巨人ではなかったはずだ。

 ガイコツの巨人は人を襲うことなく、エレンにまるで接触する意図があるように移動していたのだから。

 

 最初は驚いたようにガイコツの巨人を見つめていた進撃がキバを剥いたのも、その巨人と接触してからだった。

 

 何かアウラが弟に行ったのだろう、とは推測できる。

 

 

「ハァ……訳がわかんない」

 

 

 巨人化できたのは、やはり始祖ユミルが関わっているのか。

 

 10個目の巨人の力を生み出すくらいはやりそうである。

 もしくはすでに存在する巨人の力、例えばアギトを盗んでくる──だとか。

 案外ユミルが硬質化したのも、これがねらいだったかもしれない。

 

「あの、脳内クソ進撃野郎もふざけんじゃないよ……ッ!」

 

 アニも聞いた、エレンラジオ。ユミルの民の皆さんがお呼びされた回だった。

 

 そこでのエレン・イェーガーの発言どおり、パラディ島以外の人間は殺される。一匹残らずこの世から駆逐されるのだ。

 

 つまりアニの父親も死ぬ。

 ちょうどエレンが進み始めた方角は、マーレがある大陸である。

 

 進撃を止めることはできないだろう。だが正攻法以外の道を、彼女は転がっていたアウラを見つけた時思いついた。

 

 ユミルに「寵愛」を受ける女。そんな女に頼めば、父親だけでも救ってもらえる可能性はある。

 

 

 ただしこの方法は“禁忌”であると、アニは感じ始めていた。

 

 それはレベリオ区襲撃の時に現れた、始祖ユミルを見てから。

 くたばっていたライナーはともかく、あの時エレンにも少女が見えていたようだった。

 

 しかしその他は、その存在にまったく気づいていなかったのである。

 多くの兵士がその現場を目撃していたのだ。突然少女が現れれば騒ぎになっていただろう。

 

 剰えその少女が戦鎚の本体に触れた直後に硬質化が解かれたのだから、自ずとその存在が「ユミル・フリッツ」であるとわかりそうなものであるというのに。

 

 結論、あの時始祖の少女が見えていたのは、巨人化能力者だけだった。

 

 

 

 そしてその一件以来、アニは世界が始祖ユミル、あるいはアウラ・イェーガーの計画どおりに動かされているのではないか?────と、思い始めた。

 

 それから度々、背筋に悪寒を覚える。

 まるで、自分が悪魔にでも魂を売ってしまったように思えて、仕方ないのだ。

 

 

「もう、今更だけど…」

 

 4年前アニは、自分の意思で悪魔の誘惑にノったのだ。もはやこれ以上失うものなどない。

 失いたくないものは二つ(正確には“二人”)あったが、内一つは失って、残るはあと一つだけ。それが父親。

 

 彼女は父親を救えるなら、自分の命を犠牲にしても構わない。失う苦しみはもうたくさんだった。

 

 最後に自分に微笑んだ少年をなくして、その母親が息子の帰還を信じながら静かに息を引き取る姿を看取って。

 そして、多くの人間が彼女自身の手で殺されていく姿を見て。

 

 

「ねぇ、起きてよ」

 

 

 アニは女の顔をのぞき見て、低い声で言う。その声はかすかに震えていた。

 

「お父さんを助けてよ……。ねぇ、アウラ…」

 

 エレンから奪ったアニたちは今度、()()()()()になる。自業自得なのかもしれない。

 それでも黙って父親が死ぬことだけは、許せなかった。

 

 

「んう……」

 

 

 女のまつ毛が震える。その瞬間、アウラの肩をつかんだアニはお構いなしに揺すった。

 その衝撃にカッ、と開いた瞼からのぞく、白銅色の瞳。

 

 至近距離にある歪んだアニの表情を見たアウラは、自分の格好を見て、もう一度顔を上げて、口を開いた。

 

 

「ご…ごめん、私ジーク・イェーガーひと筋だから……」

 

 

 アニちゃんの気持ちには答えられな──まで女の言葉が続いたところで、ゴォンと、激しい衝撃が起こる。

 

 アウラは左頬をかすった拳と、その背後にある拳がめり込んだ木。

 そしてさらに近くにある今にも人を射殺さんばかりのアニの凶悪顔を見て、とっさにブラコン女は両足を閉じる。

 体がこわばった直後に全身が一気に弛緩して、危うくイイ歳で痴態を晒すところだった。

 

「おはよう、話、いいよね…?」

 

「……は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 それから、アニから事情を聞いたアウラ。

 

 彼女はイェーガー派に連れられ、巨大樹の森へ向かったこと。

 またジークの脊髄液入りワインを飲まされてしまった件や、巨人化した後に一度ジークを救ったこと。

 そしてそのあとにシガンシナ区へ向かい、放置プレイを受けていた最中に、倒れる《獣の巨人》を見て巨人化したことなど、順々に話す。

 さらに目覚めてからや、巨人化している最中など、所々記憶がないことも。

 

 その一連の原因が、アウラ自身が「始祖」そのものの可能性が高いため……ということを知ったアニは、固まる。

 

 巨人化したことなど一応の辻褄がそれで合うが、アウラ自身が「始祖ユミルに力が戻っている」と嘘をついていたことになる。

 

 

「まぁそれも、複雑な理由があってね──」

 

 アウラは「不戦の契り」の件を持ち出し、事情を語る。

 

 

「……要は、あんた自身も知らなかったってわけ?ていうか、始祖の力が王家にしか使えないことも、「不戦の契り」によって王家の人間がカール・フリッツの思想に縛られることも、はじめて知ったんだけど」

 

「だろうね。だって、マーレに「不戦の契り」に関する本当の詳細はないわけだから。それこそ壁内でも王家の人間、レイス家の当主しかこの内容を知らなかった」

 

 ただしジークはトム・クサヴァーから「不戦の契り」の効果を知らされていた。

 クサヴァーが巨人学の研究者であったからこそ、知り得た情報であったのだろう。

 

「じゃあずっとマーレの探し物はマーレにいたってわけ?四年間も?……ハァ、呆れた………」

 

「イェーイ、ピースピース」

 

「殺すよ」

 

「アニちゃんはキメ顔でそう言った」

 

「殺す」

 

 豪速球で放たれた蹴り技は先ほどの被害者、木へとめり込む。

 寸前で避けたアウラは地面に尻もちをついて、羽織った上着の上から腕をさすった。

 

 

「……で、始祖の力は今もあんたにあるの?」

 

「え?あぁー…多分それはないんじゃないかな。アウラちゃんってエレンに食われちゃったんでしょ?その段階で力は渡ってると思う」

 

「でもあんた、生き返ってるだろ」

 

「それは恒例のユミルの仕業だよ。私は何度だって蘇る、さながらヒーローのようにね」

 

「「悪魔」の間違いでしょ」

 

「あっ、熊?」

 

「……もういい」

 

 普段以上におふざけに磨きがかかっているアウラに、アニは頭を押さえた。真剣に話している自分がバカらしくなってくる。

 

 

「そもそも何でジークを助けるはずが、エレンに食われたんだよ」

 

「それはわからない。巨人化してた時の記憶ないし。ユミルが操作したんじゃないかな?」

 

「……それって、始祖をエレンに託させるのが、ユミル・フリッツの意思だったってこと?」

 

「アウラちゃんはあくまでジーク・イェーガーの前で、華々しい最期を飾れればそれでいいからね。何だかまた生き返ってしまっているわけですが」

 

「…じゃあ、何?待ってよ………始祖ユミルはエレンが「地ならし」を起こすのも、始祖ユミルは肯定してるってわけ?」

 

「そうかも」

 

「ッ……!!」

 

 アニはアウラの襟を掴み、木に叩きつける。

「地ならし」が始まって少しは驚いていいものだというのに、まったくアウラは取り乱していない。

 

 少なくとも、エレンがジークに取り込まれてしまったのだ。その時点でもっと取り乱しておかしくない。否、取り乱さない方がおかしい。

 

 

 まさか、と思う。

 

 アウラ・イェーガーはこうなることを、予め知っていたのではないのか?────と。

 

 まるでその疑問に答えるように、アウラは口を開く。

 

 

「ユミルの目的は知っている。彼女にとっての「主人公」がエレンで、「ヒロイン」がミカサ」

 

「……は?」

 

「彼女はずっと初代フリッツ王に縛られている、哀れな“奴隷”でしかない。王を愛し、そして王から愛されず彼女は“奴隷”のまま王を守って死んだ。それから“道”で彼女は孤独に、巨人を作るだけの存在となっている」

 

「ま、待って、何を…言って……」

 

「ユミルの民はね、そんな“奴隷”の子孫。何かに囚われ続けているのは同じ。現代のわれわれは「巨人」というものに縛られて、世界の悪意を向けられている。自由なんてない。自由になることなんてできない。ふふ、哀れな民だと思うでしょ?」

 

 瞳を細めて、アウラは笑う。

 

「あんたは、一体……」

 

 マーレでジークを除き一番彼女と接してきたアニは、目の前にいる女が別人に見えた。

 アウラ・イェーガーでは、ないような。しかし何が違うのか、ハッキリとわからない。

 

「ユミルは「愛」の束縛から逃れたい。だからこそ今起こっている「地ならし」も、その大詰めに起こっている出来事である」

 

「……じゃあ、世界は滅ぶの?私の、お父さんは………」

 

「このまま行けば、パラディ島以外は滅ぶね」

 

「………どうにか、してよ」

 

「どうにかって?」

 

「あんたがっ、どうにかしてよ……!!!」

 

 再度襟首をつかまれたアウラは、苦しげに息を詰める。

 アニは泣きそうになりながら、怒りと悲しみと、さまざまな感情でごちゃごちゃになった頭で、女の胸元に頭を押しつけた。

 

 その時また、ふふ、と息をこぼすような笑い声が聞こえた。

 

 

「………え」

 

 

 アニが見たのは、笑っているアウラ。

 

 心底嬉しそうに口角が上がっていて、目元からはぼたぼたと涙が溢れている。

 笑い声は次第に嗚咽が交じっていき、そのままアウラはうずくまってしまった。

 

「……何で、あんたが泣くのよ」

 

「お゛に゛いさま゛がじんでほじぐない゛ぃからぁ゛ぁ゛……!!!!!」

 

「汚い声出さないで」

 

美声(びぜい゛)でじょ゛う゛がぁ゛ぁ…!!」

 

「うるさい」

 

 美女の顔が鼻水と涙と、散々に汚れていく。

 その顔を見ていたアニはかえって冷静になっていき、息を吐いたところで顔を逸らす。

 

「……!」

 

 尚も続く巨人の騒々しい行進の音で意識が霧散してしまうが、人の気配を感じる。

 後方から感じたその場所は転々と木が立ち、草が生い茂っている。

 

 その場所をアニが睨みつけていれば、両手を上げて誰かが立ち上がった。片目を眼帯で覆った姿に、アウラもアニも目を見開く。

 

 その人物は頭に葉っぱをつけたまま、「いやぁ〜」と間伸びした声で話す。

 

 

 

「たまたま通りがかった時、声が聞こえたものでつい……ね?」

 

「………ハンジ・ゾエ…」

 

「こうして女型のあなたと会えたのも何かの縁なのかな?それに………アウラ・イェーガー、生きてたんだね」

 

「オッス!オラ、アウラ・イェーガーちゃん!」

 

「えっと……君ってそんな感じだったっけ?」

 

「ハンジ、私は元々こういう人間ですよ」

 

 訝しんだ表情のハンジは、アニヘと視線を向ける。

 アニは無言で首を縦に振り、肯定を示した。

 

「それよりいつからそこにいたんだ、あんた」

 

「えぇー……アニ、君が「あの、脳内クソ進撃野郎……ッ」って言ってたところからかな」

 

 ほとんど最初からだった。アニは余裕のなかった状態だとはいえ、人の気配に気づかなかった己に苦い表情を浮かべる。

 

 ハンジは笑っていた表情を消し目を細めながら、二人を見た。

 

 

「色々と聞きたいところではある。ユミル・フリッツの目的のところや、想像以上に始祖について、アウラ・イェーガーが情報を持っているところもね。始祖の件も驚いちゃったよ」

 

 

 アウラが巨人化した点については、本人の口から語られていたことゆえ謎が解けた。

 

 その上で、ユミルの深い情報まで知り得るアウラと始祖の関係が「寵愛」で済むものなのか、疑問なところである。

 

 まぁそれも、アウラに尋ねればよいだろう。話し合いができれば、の話だが。

 

 今のところ父を助けたいアニと、ジークを救いたいアウラ、そしてエレンを止めたいハンジたちの目的は一致している。これを利用しない手はない。

 

 

「どうかな?ここは一つ穏便に、話し合いと行かないかい?もう一人死に損ないを呼んできて」

 

「……死に損ない?」

 

 アニが眉を寄せたのに対し、何か察したアウラの表情に殺気が混じっていく。

 

「私たちは「地ならし」を止めたい。それはアニもアウラ、君も同じはずだ」

 

「あのクソチビが何をしたのか、お兄さまから聞いてる」

 

「………絶対リヴァイの前で「クソチビ」って言わないでね?」

 

「160cmの男」

 

「それもダメ」

 

 アニの方は少し悩んだ様子を見せたものの、ハンジの提案に乗るようだ。

 アウラはハンジに説得され、結局リヴァイ抜きでの話し合いに承諾した。

 

 


 

【オイオイオイ…】(1年E組!クサヴァーせんせーい!!)

 

 

 意識が遠くに沈んでいったリヴァイ。

 雷槍を受けた彼はいつの間にか、机と椅子が等間隔に並ぶ不思議な空間にいた。

 

「何だ、コレは…」

 

 顔を顰めている彼の隣で、一人の黒い軍服?のようなものをまとった男が、高く手を挙げる。

 その男が「クサヴァー先生」と呼ばれる人物に指され、立ち上がった。

 

「先生、教科書3026ページのこの部分について質問なのですが…」

 

「……エル、ヴィン…?」

 

 リヴァイに声をかけられた男、襟詰・スミスは目を丸くし、隣を見る。

 よく見ればエルヴィンの頭には、何か輪っかのようなものがある。

 

「ア゛…?」

 

 そして理解できない状況に無意識に頭をかこうとすれば、自分にも何か輪っかのようなものがついていた。頭とその間には何かつなげるものは付いておらず、宙に浮いている。

 

「おや、リヴァイ。君もクサヴァー先生の授業を受けにきたのか?」

 

「………?」

 

「ハハ、これが結構楽しいぞ」

 

 訳もわからぬまま、授業を受けることになったリヴァイ。後から気づいたが、見知った顔も複数いる。その誰もが死にそうな顔をしていた。

 

 1時間受けただけで頭の痛くなった彼はしかし、子どものように笑う男を見て拍子抜けしたような、でも悪くない気分を感じたのだった。

 しかし眠気には勝てず、だんだんと瞼が落ちてくる。

 

 

 

「まだお前は死ぬなよ、リヴァイ」

 

 

 

 最後にそんな言葉を、聴いた気がした。

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