身長近いミカサと比べたらものすごい体重の差があr
私、クソ幼女ちゃん。今酒臭いおっさんたちが多い場所に来ているの。
5歳になったかわいいアウラちゃんが何故この場所──酒場にいるのかというと、全ての元凶は隣の席で眠りこけているおっさんのせいである。
「ヒック」と酔いつぶれているのはハンネスおじさん。お父さまが仕事の都合で遠方に出ている際、私はハンネスおじさんに預けられる。一緒に行こうとしてもお父さまは、道中何があるかわからないから、と私を残していく。
キースおじさんは「調査兵団」という組織で壁外調査に出ることが多いので預けられず、必然と預け先はハンネスおじさんに限られてくる。
幸いこの飲んだくれには不似合いなほどできた奥さんがいるので、もっぱらその奥さんに私はお世話になっているというわけだ。
それをこの男、休みを理由に嫁に黙りこっそり私を連れてきた。ハンネスおじさんよりキースおじさんの方に私は懐いているので、その名誉を挽回したかったと思われる。私もずっと家にいるのは暇なので、「どこかいきたいなぁ…」と、言ったのもあるのでしょうけど。
それで連れてきたのが
ちなみにこの店が一軒目ではない。後でしこたま嫁とお父さまとキースおじさんに怒られろ。
「お客さんご注文は──って、子供!?」
「うぃ〜、酒でぇ」
「ちょっとハンネスさん、娘を酒場に連れてきてんじゃないよ!!」
ウェイトレスが持っていた木の盆で、思いきり殴られたおじさん。それいいですね、私にも貸してください。頭がもぐらのように飛び出るまで勢いよく殴るので。
「全く…っていうか娘いたんだね、教えてくれないなんて水くさいじゃないか」
「この
私は少し泣きそうな顔をしながら、腕を広げて近寄ってくる変態から逃げ、ウェイトレスの女性の後ろに隠れた。もちろん顔は演技である。
して、ゴッッ、と。ハンネスおじさんは先よりも強い衝撃で叩かれ、椅子を巻き込むようにぶっ倒れた。
「嫌がってんだからやめな。それでもやめないってんなら、その汚いケツに酒瓶突っ込むよ」
「何おう!俺は駐屯兵団で毎日仕事を頑張ってんのに──」
「そうかい?お客さんから「またハンネスが昼間から仕事サボって飲んでたぜ」って話、私この間聞いたんだけどね」
「………か、カミさんには言わないでくれ…」
まさか酔っぱらったら手のつけられないあのハンネスおじさんを、こうも簡単に倒してしまうとは…。
このウェイトレス、できる。
周囲も「もっとやっちまえ、カルラ!」と白熱を見せた。この女性がカルラと言うのか。
束ねた黒髪が前に流れており、特に目立つのはその眼力か。大きな瞳が感情をありありと映し出す。
「ごめんねアウラちゃん、脅かせちゃって」
「…うん、だいじょうぶ」
優しく私の頭を撫でる彼女の手つきは、先ほどの荒事など嘘のようだ。
「アウラちゃんって確か、イェーガー先生のお子さんでしょ?」
「パパのことしってるの?」
「えぇ、たまにキースさんと一緒に飲みに来るから、その時お話を聞くのよ」
お父さまはどこの誰かと違い泥酔するまで飲むことはない、所詮付き合い程度の範疇だ。
しかし全く酔わないというわけでもない。うっかり自制を外し口を滑らせないようにしながらも、ほろ酔いで娘について聞かれると、途端に「先生」から「親バカお父さん」になるらしい。おいその話……俺によく聞かせろ。
「アウラは目に入れても痛くない───とか」
「うん」
「最近は身長も伸びてきて愛らしいけど寂しい、なんだろうかこの複雑な感情は───とか」
「うんうん」
「いつか嫁に行ったら……私は死ぬしかない───とか」
「ヘムヘム」
「それで、「俺が娘ちゃんと結婚してやるよ!」ってヤジ飛ばした人に、普段は温厚な方なのにも関わらず激昂して殴りかかろうとしたところを、キースさんに止められたり───とか」
とにかく娘がどれだけ大切か、話を聞けば伝わってくるとのこと。
これはいい土産になった。ハンネスおじさんを犠牲にするついでに、店に来てこの話を教えてもらったことをお父さまに話そう。
さてどんな顔をしてくださるか、もう私お父さまの帰りが楽しみすぎて夜しか眠れないわ。
というか、このカルラという女性────、
「パパのことよくみてるんだね、カルラさん!」
瞬間彼女の顔がぼっ、と赤くなった。
血がついていそうな盆で鼻元まで顔を隠し、「き、気のせいじゃないかしら?」とそそくさと行ってしまった。
私は内心面白いものを見つけた喜びでニヤケそう(某
そして、帰って早々。おじさんは怒っている嫁に事情を話したあと、平手打ちをかまされ気絶。
預かっている子供を酒場に連れていくのは、流石の私でも正気を疑いますわ。飲兵衛なら絶対に連れていくだろうとは確信していましたが。
また、後日帰ってきたお父さまにお酒の席での失態を話したところ、顔を真っ赤にさせました。
大のオトナが、幼女ちゃん──それも娘に自身の失態を知られてどんな気持ち?ねぇねぇ、今どんな気持ちですか、お父さま?
私本人は「パパ、わたしのこといっぱいすきなのね、うれしい!わたしもいっーぱいだいすき!!」と抱きついて、そのことを言ったのですけれど。
羞恥と、嬉しさと、感情をごちゃ混ぜにしながらお父さまは医者のカバンを置く。そして座ると私のことを抱きしめて、後方でニヤニヤしているハンネスおじさんも視界に入らず、娘の肩元に顔を埋める。耳まで真っ赤ですねクォレハ…。どんだけクソ幼女ちゃんが好きなんですか?まぁ私も同レベルで好きですよ。
ちはみに現在地はハンネスさん宅。玄関で、時間は夜である。
「………」
「パパ?」
何も言わないお父さまに、アウラちゃんはだんだん心配になってきます。
もしかしてパパは本当は、自分のことが好きでもなんでもないんじゃないだろうか。仕事の都合で連れてってもらえないのもわかっているけど、いつかそのまま自分のことを置いていってしまうのではないか───と。
なので言います。幼女ちゃんはお母さんのトラウマがあるんやで?しっかり愛情向けてくれへんと、精神ガバガバになってまうで?理性なんて忘れて、クソデカ感情をさらけ出すんだよオラァァン!
「パパわたしのこと、すきじゃない……?」
泣きそうに言う、クソ幼女ちゃん。
それにお父さまは顔を少しだけ上げて、私の頭を撫でながらボソボソ言う。そして、一言。
「……愛してるよ、アウラ」
その言葉で、そして表情で、私は極限の────感情の絶頂に至る。
私を愛するお父さま。お父さまを愛する私。なんて理想な親子像。唯一の家族となった私へ向くお父さまの愛情は以前よりも大きく重く、依存さえも抱いている。これで私が死んだら本当に死にそうですねお父さま……♡
まぁ、ジークお兄さまが壁内へ来る可能性を完全に捨て去らなければ、私という害虫はまだ死にませんが。
お父さま、もっと私に依存して。そうすればお父さまが私に見せる感情の一つ一つが、より美しくなる。そして同時に私はお兄さまの半分をあなたからより強く、より深く感じることができる。
好きですよお父さま、でも私が愛しているのはお兄さま。
でも足りない。もっともっと、
それを極限まで積んで壊した時、お父さまはどうなるだろう。壊れるでしょうか。壊したいですね。だってきっとその時のお顔は素敵でしょうから。お兄さまに、似て。
今はゆえに、「幸福」を積み上げる時。ですからお父さま、もっともっと幸せになってくださいね。
あなたの、罪の裏で。
◻︎◻︎◻︎
それから、私は時折ハンネスおじさんに頼んで、カルラさんがいる酒場へ連れて来てもらうようになった。アウラちゃんはあのお盆ぶっ叩き事件以降、彼女に懐いてしまったという体である。
そも私が偶然彼女と出会ったわけではないことは、勘のいい皆さまなら既にお気づきでしょう。
最初にカルラさんを知ったのは、数ヶ月前のこと。私は普段ハンネス託児所にいますが、キース託児所に行くことも偶にあります。
かわいい幼女ちゃんにデレデレなハンネスおじさんはともかく、キースおじさんは強面、それでいて不器用。しかし実際は優しい人間であり、付き合いもいい。お父さまがハンネスおじさんよりキースおじさんと親交が深いのも、馬が合うからでしょう。
そんな彼に、真顔で肩車をしてもらいながら川辺を散歩していた時、私は軽い雑談の中である話を聞きました。
それは独身な彼に、純粋な疑問として私が聞いた内容。
────キースおじさんは、すきなひといないの?
おじさんはやはり真顔で、小さく「…いる」と言った。
調査兵団は壁外調査で巨人と遭遇するので、致死率が他の兵団よりも比較にならないほど高い。
そのため命をいつ失うかわからない中、家族を作らない者もいる。キースおじさんもその類かと思ったが、どうやら違った。
「おじちゃんのすきなひとって、どんなひと?」
「……笑顔が、素敵な
「「すき」っていわないの?そのひとに?」
「まさか、私がカルラに……いや、何でもない、忘れてくれ」
いつ死ぬかわからないからこそ、キースおじさんは告白を渋っているようだった。
だが他人のプライベートなど空気を読めない幼女には関係のない話なので、気にせずどんどん聞いた。それでも渋りながら答えるおじさんはやはり、控えめに言って好感しかない。いつもアルコール臭を振りまきながら、人の顔にヒゲを押し付けてくるおじ野郎とは大違いである。
そしてその「カルラ」という女性が酒場にいることなどを知った私は、好機を探った。
「あらアウラちゃんと……ハンネスさん」
「おいおい、俺の方がオマケかよ、カルラ」
「何飲む?ハンネスさんの奢りだから、何でも頼んでいいわよ」
「はーい!」
ハンネスマネーなので、とりあえず食べたい物を頼んだ。最初はカルラさんも酒場に私──幼女が来ることに難色を示していた。しかしアウラちゃんが来る理由が彼女に会いたいからなので、渋々許され、以降は歓迎されるように。
私が彼女を使って行いたいのは、お父さまに近づけることである。
元々、お父さまに女性をくっ付けたいとは思っていたことです。
お父さまは未だお母さまのことを想っていらっしゃるようですが、憂いたままではいけません。私としては、ずっと同じ味のご飯を食べているようなものですから。新鮮な味わいを得るには、お父さまが変わらなければならない。もちろん私を愛したまま、そしてお母さまを愛したままで、別の女性を愛せばいい。
人は器用に一つだけ愛することは難しい生き物です。
私もお兄さまを一番に愛しながら、次に人の悲劇を愛している。
カルラさんを選んだのは単純に、この上なく人選として最高だったから。
お父さまのご友人たるキースの想い人。その女性とお父さまが結ばれたとなったら、二人の関係はどうなるでしょう。想像せずにはいられませんよね。
──ということで、私がカルラさんをだんだん母親代わりのようにして、キューピットになろうと目論んでいた。
しかしなる前に、カルラさんは既にお父さまに想いを寄せていた。しょうがないよな、お父さまはジークお兄さまの血を半分も持っている。つまり世界で二番目にカッコいいわけです。美人な彼女が好きになってしまったって仕方ない。
「おいしい!」
私は持ってきてもらったジュースを飲みながら、カルラさんを見る。任せろ、お父さまとそなたの恋の架け橋を、娘たる私が作り上げてやるからな。
「カルラさんやさしくてすき!」
「俺よりもか、アウラちゃん?」
「うん!ハンネスおじさんは…キースおじさんのつぎくらいにはすき!」
「クソッ……何で俺はいつもアイツより下なんだ…!!俺の方が面倒見てるんだぞ…!」
貴様が酒臭いしベタベタするからだ、ハンネス。
カルラさんは私の言葉に微笑みながら、「私もアウラちゃん好きよ」と言ってくる。はぁ、これが未来の母の聖母スマイルというわけですか。式場の準備はまだですか?
「こんど、パパといっしょにぜったいにくるね!」
「あの先生は絶対連れて来ないって、娘をこんな場所に」
「ハンネスおじさんはつれてきてくれたよ?」
「…アウラちゃんいいか、例のとおり俺がここに連れて来てんのは、みんなには内緒だからな」
「うん!ハンネスさんだいすき!」
「……ッ、やめろ、かわいい笑顔を向けるな、うちの子にしたくなる…!!」
チョロいな(確信)
その後、一先ず私の計画は順調に進んだ。始めにお父さまに「カルラさんにあいたい…」からのメソメソ幼女で連れて来てもらった。そして私がカルラさんに懐いている様子をお父さまに見せて、三人で笑い合うという微笑ましい光景を作り上げた。
ここでカルラ嬢との恋の障害物になったのは、お父さまと私の厄介な過去(嘘)。
しかしそこは、私がカルラ嬢を母親代わりにし出しているのを見せつけ、お父さまの感情を揺さぶった。ただお母さまへの愛が大きいお父さまは、少し揺らぎつつも、そう簡単には他の女性へ心を傾けません。なのでこの計画は長期に渡るものとなる。
また、カルラ嬢がお父さまに想いを寄せ始めた理由について。前提としてこれは、私が彼女と接し話を聞く上で推測したものである。
彼女は恐らくお父さまの過去(嘘)と雰囲気、そして、人柄に自然と引かれた。
元嫁を亡くし、記憶にまで支障を来した過去。それから生じる
私は同時にキースおじさんへ、自分がカルラ嬢に懐いているのをアピールしながら、恋の応援をした。やがて発生するお父さまとキースおじさんの溝を深めるためである。
キースおじさんは奥手にも程があるので、人類が明日滅ぶレベルのことが起きなければ告白しないだろう。そう考えつつ、ギリギリのラインを私は攻めた。
はてさて、今後の展望を考えると、実にやりがいしかない。
そして────いつか幸せな家庭を、最高のタイミング、そして手段で崩壊させる方法を、考えていきましょう。
さぁ「生」を実感するのです。
人の、不幸の中で。