ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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何だこのクソタイトル(いつものこと)


感情が抑えきれなくなった時は…叫べ!Ms.Kuso syojo

 私、クソ幼女からクソ少女に進化したアウラちゃん、10歳。

 早速ですが皆さまにご紹介しましょう、弟の「エレン・イェーガー」くんです。

 

「おねーちゃ?」

 

 つい昨日まで柔らかいほっぺが愛らしかった赤ん坊のエレンきゅんは、いつの間にかハイハイをし出し、立ち上がって言葉まで喋るようになった。ちなみに私が同じ歳の頃は、「私」という名の悪魔が目覚めるまで赤子と同レベルの知性だったらしい。

 

 お父さまの成分が髪の色にしか現れていないというほど、エレンきゅんはカルラママに似ている。

 この翡翠のお目々で見つめられて、剰え「おねーちゃ、すき」なんて言われた暁には、私死にます。いえ嘘です、死にません。でも死ぬ。

 

 

「おねーちゃ、だいすき!」

 

 

 はい、死にました。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 エレンきゅんが生まれ私が感じたのは、私が“血の繋がり”に弱いということです。

 

 始めはいつか壊す弟にこれといった感情を抱くと思っていませんでしたが、姉と髪の色しか似ていないにも関わらず、私はエレンきゅんを「好き」と思ったのです。

 

 

 私と血を半分同じに持つ存在。エレンきゅんはお父さまという繋がりを通して、私に新しい扉を開いてくれた。

 

 兄だけでなく、弟もできたアウラちゃん。最高ですね、私もう毎日が幸せですもの。医者として働くお父さまに、実娘でもないのにかかわらず、息子と同様に扱ってくれるカルラママ。そして、私の後を追いかけてくるエレンきゅん。よく転んで泣いていたのが、今では姉の前だからと泣くのを堪えるようになった。泣いているエレンきゅんのお顔も大好きですが、必死に泣くまいと我慢している弟の顔も可愛いですよ。

 

 絵に描いた幸せの家族だ。

 

 だからこそ私の「欲求」は、抑えきれなくなっている。

 

 

 ぶち壊したい。幸せの家族を壊してお父さまの、カルラママの、エレンくんの悲劇を見たい。

 

 もう三年も耐えている。しかしちょうどよい機会に恵まれず、私も幸せを感じながら、一方で死んだように生きています。誰かの不幸を味わえなければ、私は真の意味で生きられない。

 

 最高のタイミングが訪れないまま過ごしているので、そろそろクソ少女ちゃんは精神が狂れてきています。そこらの幸せ家族を見たらこっそり家に忍び込んで、人道を疑われるような残忍な方法で、じっくりソイツらの顔を見ながら殺して、絶頂したいと考えてしまうくらいにはおかしくなってきています。それを表に出さないのが、演技派魂ですが。

 

 

 

 

 

 そんなわけで、クソ少女ちゃんは考えました。

 

 人の悲劇を合法的に味わえる方法はないものか──と。そこで思いついたのが、キースおじさんの職です。

 

 元々壁の中に学び小屋はありますが、しっかりとした教育機関はありません。マーレの収容区の人間の方がよっぽど質の良い教育を受けていると思うほど、劣っている。私も文字書きは学びましたが、あくまでその程度。

 

 そして一定の教育を受けたら職に就く。親の跡を継ぐなり、出稼ぎに出たり。

 

 そもこの国家自体は王政で、三重の壁のさらに内側に王都が存在する。私の住まう場所はその中で最も外、ウォールマリアの壁の突出した部分の南に位置するシガンシナ区にある。

 

 

 

 私もお父さまの仕事を継ぐのかと問われると、実際その可能性は低いでしょう。

 

 お父さまは診療のため家を外すことが多い。心配性なお父さまなら、当時わざわざハンネスおじさんに預けず娘も連れて行った方が早かったはず。しかし同行はさせなかった。それは何故か。

 

 理由は一つ────、グリシャ・イェーガーが始祖の巨人を探しているからである。

 

 

 診療と称し、情報を集める。幸い、流行病の治療法を見つけて以来お父さまの名は知れ渡り、中には有名な貴族が「イェーガー先生」を頼ることもあった。

 お父さまは私を関わらせたくないのです。一人で罪を背負って生きている。そんな精神的にも肉体的にも疲労する彼を癒すのが、家族というわけだ。

 

 しかしアウラちゃんは心が限界。そこらで無差別殺人を起こす前に、人の悲劇が見れる場所にいかないとね。

 ちょうどいい就職先を見つけたので、家族に相談だ。

 

 

 

 

 

 というわけで12歳になった私は、カルラママに事情を話した。───私、駐屯兵団に入りたいんです!(嘘)

 

 そのまま調査兵団に入りたいと言ったら、絶対に断られる。ゆえにハードルの低い方を話の掛け合いに出すのだ。それに訓練兵団の卒業時上位に入れば、自分の入りたい兵団を志願できる。調査兵団は常に人材不足なので、成績上位でなくとも志願すれば入れるでしょう。しかし確実に入れる方法があるのならやはり、成績上位を目指す方がいい。

 

 騙すようで…しかし心は痛みませんが、全ては私が他人の不幸を見て「ニチャア…」するために必要なことなので仕方ない。

 

 さぞ巨人に命をかける者たちの覚悟を決めた表情や絶叫は、私に「生」を与えてくれるでしょう。

 

 そもそも「訓練兵団のトップに入れるのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、問題ありません。クソ少女ちゃんのスペックには、自分で言ってなんですが、光るものがあるからです。

 

 仮になくとも死ぬ気で掴み取るので、そこはご安心ください。

 

 

「ダメよ、あんたみたいなかわいい子が昼間から仕事をサボって、あんなハンネス(飲んだくれ)ばかりがいる職に就くなんて。何をされるかわかったもんじゃない」

 

「でもわたし、人の役に立つことがしたいの、お母さん」

 

「ダメったらダメ!将来良い人と結婚して子供を作った方が、きっとあなたの幸せになるから──ね?」

 

「………」

 

 カルラママは知らないのか、かわいい子には旅をさせろって言葉。

 

 

 仕方ないので昼間家の手伝いで薪拾いに行った後、私は今日も今日とて飲んでいたハンネスおじさんに話を持ちかけた。ここで大切なのはキースおじさんがいる調査兵団を持ち出し、それよりも駐屯兵団に憧れていることをアピールするのである。

 

「俺が言っちゃなんだが、どこに憧れる要素があったんだ?内地で暮らせる憲兵団ならばまだしも……」

 

「だって、おじさんってばいーっつもお酒くさいけど、でもやる時は…やる男じゃん。その姿が、カッコよかったからさ」

 

「……!今でも遅くねぇ、俺の娘になれよアウラちゃん…!!」

 

「それはごめんなさい」

 

 周囲で一緒に飲んでいた駐屯兵団のオッサンどもがドッ、と笑う。

 おじさんはそれに怒りつつ、私の意図を汲んでくれたみたいだった。

 

「ハァ…どうせカルラに反対されたんだろ。俺としてもお前が俺と同じ職に就くのは、もったいねぇとしか思えねぇよ」

 

「…うん」

 

「だがまぁ、自分で考えた道なら否定するのもお門違いだ。それとなくカルラに話しといてやるよ」

 

「……!ありがと、ハンネスさん!」

 

 私はおじさんに抱きつき、最高の美少女スマイルを見せた。素っ頓狂な声をハンネスおじさんは上げましたが、仕方ありませんね。私顔だけはかわいいので、顔だけは。

 

 

 これであとは、お父さまの説得をするのみ。そして訓練兵団入りが決まり家を開ける前には、かわいいエレンきゅんの「おねーちゃんいかないでぇ…!!」イベントが起こるでしょう。ハァ、想像するだけでヨダレが出ますね。エレンきゅんの絶望顔も、いつか私にたっぷり味わわせてくださいね(ゲス顔)

 

 交渉が難しそうなお父さまも娘息子には甘いので、私が押して押して押しまくれば、受け入れてくれるはずだ。今までもそうして、最終的にお父さまは私を拒みきれなかった。

 

 しかし、私はかつてジークお兄さまを甘く見てしまったように、お父さまも甘く見ていたのです。

 

 ──いえ、それは私が想像し得なかった、「覚悟」の違いなのでしょう。

 

 

 

 お前が本当に入りたいのは、駐屯兵団ではないのだろう?アウラ────。

 

 

 

 流石ですお父さま、やはりあなたはお兄さまの血を半分持たれる御方。

 ですが私も一歩も引けないのです。私が()きるためには、必要なことなのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 アウラ・イェーガーは、グリシャ・イェーガーの()()である。そして二番目の子が長男のエレンだ。

 

 しかし実際はアウラの上に兄がいる。その事実を知る者は、壁の世界ではアウラと、その父しかいない。

 

 三人の子供たちはそれぞれ血が繋がっているにも関わらず、容姿はバラバラだ。ジークだったら父似、アウラだったら前妻のダイナ似、エレンであれば現妻のカルラ似──というように。

 

 

 

 夜、エレンを寝かしつけるカルラに帰宅の挨拶をしてから、食事を取ったグリシャ。その前に現れたのは、アウラである。

 

「ただいま、アウラ。まだ寝ていなかったのかい?」

 

「お帰りお父さん。うん、ちょっと話したいことがあってね」

 

 娘から話とは、これまた珍しいことだ。普段はエレンを甘えさせてばかりで自分から何かを頼むことはない少女が、父に相談。

 

 嫌な予感──という名のお父さんスイッチが入ったグリシャは、スプーンを静かに置く。まさか娘はまだ12歳。妻が好きな人の話を聞いた際に耳を澄ませた時は、「いないってばお母さん!」と、顔を赤くしながら言っていた。

 

 その赤さは本当にいないゆえのものか、それともいるからこそ赤いのか。その夜の彼の寝付きは最悪だった。

 

「……待ってくれ、少し心の準備を…」

 

「待って、お父さんどうせまた明日朝早くから仕事に行っちゃうでしょ?その前に話をさせて」

 

「……わかった」

 

 少女は父の横に向かい、耳元でボソボソと話す。座る父にしゃがむようにして話しかける様に、グリシャはふと、娘の成長を感じた。今ではカルラの肩元に迫るまで身長が伸びた。

 

 アウラはそして、言った。自身が駐屯兵団に入りたいことを。

 

 

「駐屯──」

 

 

 娘の方を向き、灰色の瞳を間近で見たグリシャ。彼は言葉を続けることができず、その瞳の中に沈澱する仄暗い()()を至近距離で見つけてしまう。

 

 そして、彼は察した。これからすることになるのは、カルラやエレンが近くにいる場では、話せる内容ではない。

 

 ゆえに娘でさえ今まで通さなかった地下室へ連れていき、その心中を聞くことにした。

 

 父親失格であれど、12年も共に過ごしてきたのだ。少女が嘘を吐いていることは何となくわかる。娘は嘘を吐いたら耳が赤くなるエレンのように、あからさまに表情に出ることはない。だが感覚的に、感じた。───簡単に通しては、いけない話だということを。

 

 

 駐屯兵団はまずあり得まい。アウラはハンネスの様子を近くで見ていたこともあり、バラのマークを背中に掲げた人間を見ると、苦手な顔をしていたのだから。

 

 ならば後は憲兵団か調査兵団だが、憲兵団の方が一見すると可能性は高いように思える。巨人の脅威が少ない内地勤務は、訓練兵の中では一番人気だ。だが憲兵団に入るなら、わざわざ「駐屯兵団に入りたい」などと言う必要性がない。確かに汚職など民衆の反感も多いが、それでも王の近衛兵さえも担う組織だ。エリート職に入りたいならば、隠す必要はなかろう。

 

 そうなると残りの一つは、調査兵団。もしこの職に就きたいのなら、カルラはもちろんのこと、ハンネスやグリシャも反対するだろう。それほど調査兵団は危険なのだ。命がいくつあっても足りない。

 就きたい理由は本人に聞かなければわからないが、アウラがよく懐いていたキースの存在もある。

 

 結果、何か思うところがあり娘は調査兵団を目指そうとしているのだ───と、グリシャは考えた。

 

 そして、その考えは当たりだ。少女の目が大きく見開かれたのだから。

 

 

 

「なぜ嘘を吐いた、アウラ」

 

「……調査兵団がいいって言ったら、お母さんは絶対に認めてくれないでしょ。ハンネスおじさんも、絶対に認めてくれない」

 

「当たり前だ、人は巨人に敵わない。それにお前が、外のことを知る必要などないだろう」

 

「わたしたちが、()()()()()()()?」

 

「……あぁ、だから…」

 

「なぜ?じゃあお父さんは仮にエレンくんが調査兵団に入りたいと言っても、受け入れないのね?」

 

「それ、は」

 

 エレンならば、受け入れるだろう。かつてジークに自分たちの望む生き方を強要させてしまったグリシャだからこそ、今の息子には自由を選ばせてやりたいと思っている。

 

 だが、この考えは矛盾している。エレンならば、いいのか。娘の自由は認めず。

 

「……お前の血は、そう簡単に失っていいものではない。わかってくれ」

 

「王家の血──だったっけ?幼い頃の記憶だから曖昧だけど、覚えているわお父さん」

 

「…そうだ、フリッツの血だ」

 

「ではわたしはお母さんが言ったとおり、子を成し、その血を繋いでいけばいいの?」

 

「違う!そういうわけでは──」

 

「何が、違うの?()()()()()は、そうあるべきなんでしょ?そうあるように、わたしは教えられた。何者でもない、お父さんとお母さんに」

 

 

 そう言った少女の瞳の中は、ドロドロと溶けている。娘の闇をそこで初めてグリシャは垣間見た気がした。

 

 “家族”という狭い壁の中で育て続けた娘。かつて兄のために死ぬことさえ望んだ、愛しい娘。

 その歪んだ──否、グリシャたちが歪めてしまった部分が、今彼の前に肥大化して現れている。

 

 思わずゴクリと、男の喉仏が上下する。

 

 

「どうして、ダメなの。どうしてお父さん、どうしてわたしは外に出てはいけないの?どうして、どうして、どうして?」

 

「アウ、ラ……」

 

「わたしは少しでも、兄さんに近づきたいの。少しでもおじいちゃんに、おばあちゃんにも近づきたい。わかっているわ、えぇ、わたしは絶対に「()()()()()()」へ帰れない。わたしの大好きな世界。お父さんがいて、お母さんがいて、おじいちゃんとおばあちゃんがいて、そして、兄さんがいた世界」

 

「……お前にはカルラやエレンが、いるじゃないか」

 

「そうね。カルラお母さんに、エレンくん。でも、でもねお父さん、わたしには眩しすぎるの。お父さんとカルラお母さんが笑って、その中にエレンくんがいる。その中にわたしという存在がいることが、おかしいように感じるの。きっと兄さんも、同じ気持ちだったの。愛を与えられなかった兄さんも、きっと今のわたしと同じ──」

 

「アウラ!!」

 

 ポツポツと、父親に視線を向けず下を向いて話し続ける少女。その肩を強く掴み、グリシャは娘の顔を見つめた。悲痛に歪んだ顔が、父を睨むように見る。

 

 

「私はエレンもカルラも───そしてアウラ、お前も同じように愛している」

 

「…じゃあ、兄さんは」

 

「ジークのことも、愛している」

 

「嘘つき」

 

「アウラ…」

 

「────嘘つき!!兄さんに会わせてよ、兄さんに…おにい、ちゃんに……」

 

「……すまない」

 

「…お父さんは、何がしたいの?お母さんが()()()()()()でも、何を求め続けているの?」

 

「────ッ!!」

 

 記憶が、そう言おうとした彼に、アウラは随分前に思い出していたことを話す。

 

 巨人になった母。そして気が狂れ、死を選んだ自分。その後何が起こったのか、ずっと彼女は聞きたかったことを告げた。

 ランプの灯が父に詰め寄る少女の、白いバンダナを淡く照らす。

 

「わたしはどうして生きていたの?わたしは、わたしという存在が怖いの…!!だって、だってわたしは、死んだはずだった…」

 

「………」

 

「少なくとも、「楽園送り」にされたお父さんが、“戦士”だとは信じられない。嘘を吐いているのは、お父さんも同じでしょ」

 

「……っ」

 

「兄さんが目指していた戦士は、いずれ壁の世界──ここへ来るのは覚えているの。だからわたしはその時、一番に兄さんに近づける存在でいたい。何より調査兵団は、()()()()を、持っているから。キースおじさんのように」

 

 グリシャは頭を抱え、地下室にある椅子に座り込む。

 娘は聡い子供だった。しかしそれも、彼が思っていた以上に。

 

 彼が一人で背負い込んでいた罪を側から見つめ、ずっとアウラもアウラなりに考え、悩み続けていたのだ。その姿は今でさえ“家族”の檻に囚われている。新しい家族ではない、もう戻ることのできないかつてのジークやダイナたちがいた世界に。

 

 

「……───わかった、話す」

 

 

 これ以上娘に隠し続けていることは無理だ、とグリシャは口を開く。

 

 アウラがどうやって助かったのかについて語った時、少女は何か考え込むように聞き続ける。そして娘の口から語られた「謎の少女」の存在に、父もまた驚くことになる。

 

 娘の頭を撫でていた、金髪の少女。名前はわからない。しかしそれが「ユミル」であることは、自ずとわかった。やはりクルーガーの言っていたとおり、アウラ・イェーガーは「フリッツ」の名の下において、始祖から寵愛を受けているのだ。

 

「そしてあとは…私の目的のことだな」

 

 

 始祖を奪還する。とは言っても実際は少し異なるだろう。

 

 マーレがこの壁の世界に侵略しようとしていることを話し、王に戦うよう求めるのだ。でなければこの壁の世界は滅び、さらに始祖を手に入れたマーレは世界への侵略を進めていくだろう。そうなれば多くの死者が出る。

 

 その話を、アウラは静かに聞き続けた。

 

 そして父の巨人の力の名や、巨人の力の代償についても、グリシャは語る。もうここまでくれば後戻りはできない。娘にも背負う覚悟があるのを見てしまったからには、やはり話すしかなかった。

 

 ()()()()、方法はないのだから。未だ断片的で、不明瞭な未来を掬い上げて。

 

 

「私はあと…そうだな。5年も生きられないだろう」

 

「…え?」

 

「巨人の力を継承すれば、その人間は13年しか生きられなくなる」

 

 グリシャもまさか、13年という期限はあるとは知らなかった。ただ戦士になれば息子がいずれどのような顛末を送るかは、想像に難くなかった。その上でかつての彼はエルディアを取り戻すために、息子を捧げた。

 

 しかし娘に真実を話すことは、なかったのだ。アウラはジークが、大好きだったから。

 

「あ」

 

 瞳を溢れんばかりに開き、少女が一言呟いた途端。

 

「ああ」

 

 髪をかきむしり、血が滴るまで顔を爪で深くえぐり出し、涙を流して────、

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 アウラは、発狂した。

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