ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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「オレの狂った仲間を紹介するぜ!!崩壊した世界でたった一人、生存者がいることを願い踊り続ける仲間───「TENDON-MAN」だ!!

 ハハッ、じゃあヤツを紹介するオレは誰なのかって?そうだな、オレは────、


 ────×××だよ」


テンテン ドンガラガッシャン テン ドンガラガッシャン

 私、アウラ・イェーガー。

 

 アウラのここ、空いてますよ。誰も入れるとは言っていませんがね。私が収めたいのはお兄さま。ついでにお兄さま(意味深)を収めたいです。

 

 

 穏やかな一日。

 午前中本を読んだり、カルラママのお手伝いをして時間を潰していました。しかし、薪拾いに出かけた弟たちが中々帰ってこない。恋の逃避行にでも旅立ってしまったのでしょうか。

 

 

 私の本日の予定としては、早朝壁外調査に出た調査兵団(仲間たち)が帰ってくるので、帰還した合図の鐘が鳴ったら団長の元へ向かう予定である。

 

 巨人の被害に遭い憔悴し、その上帰還後にヤジを飛ばされる仲間の表情を見なければなりません。

 

 巨人に殺されていく過程で堪能できる仲間たちの絶叫や絶望もよいですが、帰ってきて魂が抜け落ちた顔を味わうのもまた一興。しかも今回はヤジ馬側から見られる。ケガをして本当に正解だったと思います。

 

 むしろこんな美味しい思いをできたのに、骨折だけで済むなんて優しすぎる。足の一本二本もがれてもいい価値があります。

 

 まぁそんな私情とは裏腹に、きちんと仕事として今回の壁外調査での損害や収穫の確認。

 また、次回の調査に向けての情報を聞く必要があるので、帰ってきた仲間と合流してそのまま数日家を空けることになるでしょう。

 

 

 ────と、思っていたら鐘が鳴った。団長たちが帰って来ましたね。

 

 

 急いで団服に着替えて、料理を作っていたカルラママに断りを入れ、歩き出す。

 療養中に仕事なんて、と不満の声を上げられましたが仕方ない。

 

「ふふ、お母さんったら。私はケガ人でも「兵士」なんだよ?」

 

「……そう、よね。ごめんなさい…」

 

 アウラちゃんが初めての大怪我をしてから間もないので、カルラママ的には娘を失う恐怖があるんでしょうね。今まで大きなケガもせず帰還できていたこと自体、奇跡と言ってよかった。

 

「あの子もきっと、調査兵団に…」

 

「あれ、エレンくんの夢って変わってないの?」

 

「そうなの。危険だから、って言ってるんだけど……」

 

 私の訓練兵団入りを最後まで反対していたのが、カルラママだったしな。というか家を出る前日まで説得された。彼女は──カルラは、多分私が出会って来た誰よりも、命を尊んでいる。

 

 血のつながらない私をも大切に扱ってくれる。私とは正反対の人。

 

 

「お母さん、エレンくんは命を大切にするあなたの息子。向こう見ずな性格だけれど、命の尊さを教えられているエレンくんなら、調査兵団に入ってもそう簡単に死なない」

 

「…アウラ」

 

「まぁでも、お母さんの言葉にもう少し耳を傾けてって、次に会ったら言っておくね。じゃあ私行ってくる。数日は帰らないと思うから」

 

「…うん、気をつけて行ってらっしゃい」

 

 松葉杖を突く音が響く。

 

 足は予定より早く治っているから、次回の壁外調査は念のためを取って休んでも、次々回には参加できるだろう。

 かけておいたコートを身にまとい、フードをかぶって、私は外へ歩き出した。

 

 …と思ったら、自室から出てきたお父さまに声をかけられる。外出用のカバンを持っているから、食事を食べてから診療にでも向かうのだろうか。

 

「行ってらっしゃい」と言われたので、私も微笑んで返す。

 

 

「行ってきます、パパ」

 

 

 お父さまは柔らかく、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 あぁ、馬が欲しいんじゃ。それか、立体機動装置でも可。

 

 

 門から続く大通りまで、我が家からはかなりかかる。というか段差が松葉杖だとキツい。

 

 普段移動手段はお馬様に頼りきりですから、自分で歩くと遅く感じる。寮の隣の馬小屋にいる主人を見たらいななき勢いよく蹴り飛ばしてくる、我が愛馬ちゃんに会いたいですね。白馬なのに鬣が若干金色だから「ゴルピ」。雌馬ちゃんが大好きな馬です♂

 

 

 ヒョコヒョコ歩きようやく大通りに出ましたが、仲間たちはすでに前方へ行ってしまったらしい。人だかりはまだ多く残っており、今回のメンバーの被害について語っていた。

 

 百名以上で調査に出て、二十人も生きて帰ってこなかった。そして手柄はなし。完全なる無駄死にだ──と、騒いでいる。聞き慣れた言葉だ、特に思うこともない。ただ民衆が仲間が通りヤジを飛ばしたタイミングで、到着できなかったのが悔やまれる。

 

「そういや以前の壁外調査でいた、美人な兵士がいなかったが…」

 

「あ?あぁ…確か前に足を負傷してたはずだ。荷車で運ばれていたの、俺見たぜ」

 

 私がいる前方でかような会話をする、二人の男。わかります、120パーセント私のことですね。

 

 私が普段出歩く際フードをかぶっているのも、自分があまりにもかわいいから。冗談抜きに調査兵団に入る前、何度か攫われかけたことがあるので本当です。両親には言っていませんが。そのような場面に出会した際、相手の急所を潰すなど返り討ちにしてきたため、自分の身体能力をある程度理解していたのです。

 

 

 そして先に行った仲間たちを追うべく、人だかりの後ろを縫いながら早めに歩き続ける。

 

 途中大通りの真ん中で座り込む女性を発見し、眺めた。彼女の腕に抱かれているのは布。それに包まれている物体は──手、ですね。

 

 なるほど、仲間の死体ですか。女性に遺体を渡したのは恐らくキース団長。

 

 

 全身の遺体ならまだしも片腕だけを渡すあたり、センスを感じます。これだから団長への憧憬をやめられません。自分も傷つきながら、優しさで現実を隠さず、()()()()()を見せる。

 

 美しい。虚構で作られたハリボテの美徳とは、比べ物にならないほど。

 

 そうやってこれからも傷つけ、傷ついてください団長。その側で私は死なぬよう巨人を倒しながら、これからも調査兵団のみなを見守っていきます。功績もなくただの税金泥棒の状況が続いている現状、最近は調査兵団の存続自体危ぶまれていますが。

 

 

 

 

 

「そこのかわい子ちゃん、うちの子にならねぇか?」

 

 

 ゲス野郎になっていれば、不意に後ろから声をかけられる。

 

 振り返るといたのはハンネスおじさん。頰が赤いので飲んでますねクォレハ…。

 まぁ、いつものことだ。アウラちゃんはクールに去ります。

 

「お前さん、オヤジさんのとこで療養中じゃなかったのか?」

 

「仲間が帰ってきたから、状況を聞こうと思ってきたの。もう行っちゃったみたいだけど」

 

「ハァ、真面目だねぇ…ケガしてる時くらい休んでろっての」

 

「お仕事中にお酒を飲んでいるおじさんが言う言葉としては、この上ない皮肉だね。自分に向けての」

 

「…けっこう毒舌になったな、アウラちゃん」

 

 先に行こうとしたら、ハンネスおじさんと一緒に飲んでいたであろう駐屯兵団の数名が合流する。おじさんとよくいる見知った顔だ。酔っぱらいながら、茶々を入れてくるおっさんどものセクハラを流す。

 

 お触りしたいなら娼婦のとこに行け。美少女アウラちゃんを堪能していいのは、ジークお兄さまだけです。

 

「ツレねぇな。数年見なかったと思ったら、こんなべっぴんになっちまったんだぜ?時の流れってのは怖ェよ」

 

「はい、俺!独身です!!」

 

「おじさんたち、相変わらずね」

 

 彼らと会うのも数年ぶりか。ハンネスおじさんは何度か会う機会があったけれど。

 

 私は酒瓶片手に大声で笑う男たちにニッコリ微笑む。今日のお勤めは門兵だろうに、門から離れてほっつき歩いて、いったい全体何をしているのでしょうか。

 

「わたしの仲間が命をかけて壁外調査に臨んでいた反面、あなたたちは酒盛りですか?」

 

「違うって、ハンネスがイェーガー(医者)のせがれに言っていた曰く、飲み物の中に()()()()、酒が混じってだけなんだ」

 

「ガハハ!ハンネスも言ってやれ、俺たちもお仕事頑張ってるってな」

 

 相当酔っているおっさんどもの口は軽い。というかエレンくんとミカサちゃん、ハンネスおじさんと会っていたのか。この酔っぱらいどもに絡まれたら、そりゃあ帰りが遅くなりそうだ。ついでに調査兵団が帰還していた様子を、人混みに混じって見ていた可能性も高いな。

 

「おい、お前ら、もう少し言葉ってもんを──」

 

 おじさんが仲間たちに咎めるように話す。だが違和感を感じ彼が視線を移せば、左に収納された柄が消えているではないか。

 

 その柄を持っているのは彼の横にいた私。ブレードの刃先が、鈍く輝いた。

 

 

「最近わたし巨人を切れていなくて、腕がなまってる気がして怖いんです。だから練習台に…なってくださいますか?」

 

 

 そう言い頬笑めば、喉から息を漏らして酔っぱらいどもは酒瓶を落とす。

 

 用のなくなった柄はおじさんに返す。貸してもらった相手は顔を引き攣らせていた。ついで「カミさんみてぇに怖ェ」と漏らす。

 

 

 おっさんどもを残し再び歩き出すと、後からハンネスおじさんが追いかけてきた。

 

 仲間の先ほどのことを謝ってくる。酔ってるとはいえ仲間が犠牲になっていたのに、不謹慎な発言だった──と。

 アウラちゃん的には全く気にしていない。少し暗い顔をして、「大丈夫です」と返した。

 

「そう言えばアウラちゃん、お前さんに話しときたいことがあってな」

 

 と、その前にその足じゃ追いつけないと、駐屯兵団の馬を一頭貸してくれるとの話になった。ついでに、飯を食ってから行けとも。もう食事時もいい頃だ。もちろん奢りはおじさんである。

 

 馬の誘惑に即オチしてしまった私は、とんだチョロインです。

 

 

「で、話ってなんですか?」

 

 おじさんが話したのは、エレンについて。

 また調査兵団に入りたい云々と言っていたのを聞いたらしい。

 

「ソレお母さんにも言われました、今日」

 

「アイツももう10歳だろ?あと二年後には訓練兵団に志願できる歳になる。エレンまで調査兵団に入ったら、カルラが滅入っちまいそうでな」

 

「みんなエレンくんが好きだなぁ…」

 

「あの天使だった頃のお前さんと比べたら、生意気ボウズで可愛げなんてねぇさ」

 

 いつの間にか腹黒くなっちまったと、おじさん。

 コレは調査兵団に入るために駐屯兵団に入りたいと嘘を言ったことを、まだ根に持ってますね。

 

「でも結局、エレンくんの将来だからね」

 

 自由に、伸び伸びと暮らしている弟。

 

 対し家に閉じ込められていた私より悲惨で、その姿が愛しくて、私が追い求めてやまないお兄さま────。

 かわいそうで、かわいくて、大好きな方。

 

 

「何だ急にボーッとして………ホォ、もしかして男でもできたのか?」

 

「違います、愛している人はいますけど」

 

「………えっ!!?」

 

 素っ頓狂な声を上げたおじさんを置き、食事を終えて立ち上がる。

 驚愕に染まったままのおじさんはしばらくして、現実世界に帰ってきた。「娘に男が……」と言いますが、私はあなたの子供じゃない。

 

 その後店を出て、駐屯兵団の馬がある場所まで連れてきてもらい拝借した。片足が固定されていて不自由ではありますが、騎乗時体勢を保つ分には問題ないです。乗るときは流石に、おじさんに持ち上げてもらいました。

 

「もっと食えよ、アウラちゃん」

 

 最後におじさんにものすごく心配され、私は調査兵団の後を追い始めようと────。

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 大きな、音がした。一瞬雷が落ちたような光が起こった瞬間、地面が大きく揺れたのである。私だけでなくおじさんや、周囲の駐屯兵、一般の人間たちもざわめいている。

 

 乗っていた馬が突然の衝撃に驚き暴れ、どうどう、と落ち着かせた。

 

 

 背後を見れば、かなり後方の壁から大きな煙が出ている。ついで「ドォォン」と、何かを破壊するような音。

 

 地上に舞い上がるは壁の残骸らしき物体。小さく見えるだけで、恐らく大きいもので民家以上のサイズがある。

 

 というか、何だアレ。巨人?が、壁から顔を出して……50mだぞ?それよりも大きい巨人なんて()()()()()()()────。

 

「きょ、巨人だ!!」

 

「何が起こったの!!?」

 

「壁だ、壁が壊されたんだ!!!」

 

 段々と起こった状況に気がつき、ウォールマリアと、その周りにある突出した部分のシガンシナ区を繋ぐ門へと向かって走り出す人々。

 

 ()()()違う。でも、あぁ、そうなのね。

 

 

「アウラちゃん、お前さん家壁からさほど遠くない場所にあるだろ!?急いで行かねぇ……と」

 

「………」

 

「…お前さんどうして、泣いてんだ?」

 

 

 

 来た、来た、きた、きたきたきたきた、きたきた、きた。

 

 

 

 ダメ、抑えきれない。

 

「私」が生きる理由。

「私」がこの世界に生きていい理由。

「私」が存在するために、なくてはならない理由。

 

 一人の悲鳴が伝播し、どんどん絶叫のハーモニーが奏でられていく。だがその音さえ全く頭の中に入ってこない。全ての色が白と黒の二色でできた世界。そこで視界の隅を我先に、と逃げ惑う人間たちが映る。

 

 馬が押し寄せる人の波に怯み、ぶつからぬ隅へと移動する。しかし、行かなくては。手綱を引いて前へ進ませようと、して。

 

 

「アウラ!!!」

 

 

 ハンネスに馬から引きずり下ろされ、壁の方へ行こうとする私を止める。

 顔を彼へ向ければ息を呑む音。私の邪魔をするな。

 

「お前さんはケガ人だ、避難しろ。ここは駐屯兵団の俺たちが住民を避難させて、速やかに巨人の迎撃を──」

 

「なら、どうぞやってください。私は行きます」

 

「ッ、カルラたちの元へは俺が行く、だからッ!」

 

「それは違うでしょう、ハンネスさん」

 

 住民の避難が先なら、今背を押すようにして混乱する周囲の人間から先に誘導しなくては。それをわざわざここから離れたイェーガー家へ向かうのは、矛盾している。

 

 彼にはグリシャ・イェーガーが、彼の妻を流行病から救った恩義がある。だからこそ私情で動こうとしている。キース団長とは性格の反対な彼。

 

「果敢で頼もしいですよ。しかしあなたのお仲間は、一部恐怖に負けて逃げているじゃないですか」

 

 尻尾を巻いて住民たちに混じり、駆け出していく兵士。仕事はどうした。敵前逃亡か?笑わせる。

 

 

 包帯を引きちぎって、足のギプスを捨て去る。まだ少し痛むが動ける。ハンネスの制止を無視し、逃げて行く駐屯兵団の一人を追いかけ、足をはらい転ばせた。

 鼻水と涙で汚れたツラをさらし悲鳴をあげる様は、同じ兵士とはとても思えない。

 

「何をする!貴さッ」

 

「黙れ」

 

 相手が身につけていたブレードを抜き取り、その男の首に突きつけた。私は今、とても幸せ。この人間の悲鳴など、名も知らない人間たちなどどうでもいい。

 

 どうでもよくなってしまうくらい、私はどうにかなってしまっている。

 

 

「任務をまっとうせず逃げるならば死罪。だが私はあなたと所属が違うので、どうでもいい。ただ逃げるならお荷物になる立体機動装置(コレ)を、よこして」

 

「……!貴様、調査兵団の者──」

 

「黙れと、言いましたが」

 

 少し手に力を込めれば、微かに切れた男の首から鮮血が溢れる。側から見れば異様な光景は、周囲の混乱に紛れ目立つことはない。口を開きこちらを凝視している、知り合いの男以外には。

 

「……わか、わかった、わかったから……!!」

 

 男から装置を剥ぎ取って、手早く身につける。自分のものと感覚が違うが使えないことはない。アンカーを壁にかけそのまま家の屋根に飛び乗った。

 

「アウラッ!!」

 

 ハンネスが、こちらに来ようとする。

 それに真っ直ぐに、射抜くように見つめた。

 

「私は調査兵団第四班所属、アウラ・イェーガー。駐屯兵団のあなたよりも、巨人の脅威を理解している。そして私は今療養中の身分。だから思いきり、自分の私情を挟める」

 

「だがお前さんだけでなくカルラやエレンたちに死なれたら、俺はイェーガー先生に会わせる顔がねぇんだ!!」

 

「なら、言葉を変えましょう」

 

 

 ────私を、信じなさい。

 

 

 おじさんは言葉を飲み込むようにし、静かに頷いた。

 私は視線を前に向け、勢いよく駆け出した。

 

 

 

 

 

 大型の巨人の姿は既に消えている。アレが知性巨人なのは確定だ。グリシャ・イェーガーと同じ巨人の体内にいる人間が、その巨人を操作する。

 

 消えたということはつまり、その人間はまだ近辺にいる。また調査兵団で連携して行動することが多い身としても、あの大型巨人を操った人間が一人で、壁に来たということはまずあり得ない。その中にきっと、いる。お兄さま、お兄さまが。

 

 

 走れ、もっと速く。飛ばせ、ガスを。

 

 

 カルラにミカサ、エレンくんもまだきっと家にいる。お父さまは私が出かける頃カバンを持っていた。診療ですでに別の場所へ向かっているだろう。場所はわからないが、有事でも彼には巨人の力があるのでまず心配は無用。

 

 どちらから向かう?お兄さまから?しかし混乱の中、目的の人間を発見するのは無理に等しい。

 

 なら、エレンくんの方から行くべきか。その中で途中他の巨人体と違うものを見かけた際は、そちらを優先して追う。

 

 一先ず三人の救出。そして安全を確保してからお兄さまを探す。避難経路を作りながら近づく巨人を倒せるか?

 

 

 いや、やるしかない。戦え、戦うんだ。そう、アウラ・イェーガーは「兵士」だ。戦士たるお兄さまの、ジーク・イェーガーの敵。

 

 その上でお兄さまと出会ったその時は、巨人ならば殺してもらおう。人間だった時は、抱きつこう。いっぱいいっぱい、ギュッとしよう。

 

 どれでもいい。もう、幸せだから。今日が私の最期でいい。「私」を終わりにする日。

 

 

 

「いい、天気」

 

 

 

 青い空。それが私を、嘲笑っている。いつもそうだ。

 

 届くことのないその空を一瞬見上げて、私は前へ向かって走り続けた。

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