私、アウラ・イェーガー。人畜有害のかわいい美少女ちゃんです。
ユミルちゃんとイチャイチャしながら私も眠った後、気づけば壊れた建物の周辺にいました。辺りを見渡せば、見慣れたシガンシナ区の街並み。さらに地面にこびりついた大量の血。どうやら私が巨人におどり食いされた場所のようですね。側には内臓が溢れながら座っている10m級の巨人が一体。
お父さまに聞いた、私がビッグお母さまの体内から出てきた時の状況と酷似している。死んだ地点が腹だったから復活地点もそこなのか。複雑な心境だ。
「……まぁ、何も着てませんよね」
唯一あったのは、髪に付けられたユミルたそとおそろっちの白いバンダナのみ。別にいいんですけどね、死体から漁るので。
それから歩きながら、周囲の様子を見る。巨人と遭遇もしましたが、立ち止まりじっとこちらを見るのみで、襲ってくることはない模様。流石に立体機動装置がないから助かりました。ありがとうユミルちゃん。
瓦礫に潰された死体や食いかけの人間の腐敗状態を見るに、壁を破られてから数日は経過しているようだ。当たり前のごとく生き残りの人間はおらず、すっかり巨人シティになっている。
一先ず民家に入って動きやすい女性ものの服を見繕い、次に駐屯兵団の人間の死体から装備一式を集めた。
というか、シガンシナ区とウォールマリアを繋ぐ内門が破壊されていた。ということはつまり、マリア内も巨人シティになってしまったということ。
ウォールローゼに行くにはまず馬がないと無理です。アウラちゃんのクソ体力的にも無理。なので優先すべきは馬。また傷が綺麗に治っているので、ローゼの手前で大ケガを負っておきたいところ。
数日ウォールマリアの壁の上でくたばっていて、なんとか意識を取り戻し壁内に戻ったことにしよう。壁を伝えば近くに民家もある。そこから馬を拝借したことにする。
多少無理があっても、今はまだマリア内の人間がローゼに流れ込み、混乱している状況。どさくさに紛れ、負傷兵の一人を装えるだろう。
それに数日ならば、巨人もそこまで多くは侵入していない。運良く遭遇しなかったと偽りやすい。
服は血で汚れたから替えた。装備はシガンシナ区で巨人と戦闘した時消耗したため、兵の死体から取ったで済む。
私が逃げず戦った理由は一つ、
まぁ一番の問題はジークお兄さまなんですけれどね。
恐らく戦士二人の子供は、内門を破った巨人とは違う。少年少女の疲弊具合を思い出しても、すぐに巨人化できるような体力は残っていなかった。黒髪の少年はできる可能性があったが、内門の被害は超大型巨人によるものと比べれば微々たるものであった。ゆえに、少なくとも戦士は三人。
内門を壊した巨人、あるいはその他のメンバーの中にお兄さまはいらっしゃるはずだ。いて欲しい。いないとまた発狂してしまうかもしれない。
しかし、今後どう立ち回るか難しい。
戦士の二人に顔が割れた上、「ジークお兄さま」という人間にブラコンなヤバい女(事実である)だとバレてしまった。今後絶対に会う機会がないとは言えない。
例えば壁外調査から帰還した際街を通るときや、普段生活をする中。いつ、どんな場面で出会ってしまうかわからない。
そも私の素性は自分で語ってしまったので、調べればわかる。その時名前も一緒に。
ジーク・イェーガーと同じ「イェーガー」姓───となると、向こうは必ず接触してくる。それも殺される可能性が高い。何せ壁内に
彼らの計画をジャマする存在に十分なり得る。
立ち回りは、死んだ後に考えた“お父さまの被害者アピール”がいいでしょうか。
しかし完全に我が身が安全になるとは言えない。ならヤバいブラコンを踏まえて、そして私の本来の目的をギリギリまで出す。
全ては兄と再び出会うために生きるアウラ・イェーガー。お父さまに過去に何があったか教えられた私は、いずれきたる戦士を待ち望んでいた。
この時大切なのは、幼女アウラちゃんが何故両親と共に「楽園送り」されることを願ったのか。その理由だ。
──えぇ、私が生きている以上お兄さまが苦しんでしまうからですね。
その究極系として、私は壁外に赴き巨人と戦う兵士となった。全てはお兄さまの手で殺してもらうため。親の愛情を奪った私をお兄さまはきっと恨んでいるだろうから、と。
これがやがてお兄さまにも伝わったら、どんな表情をなさりますかね(恍惚)
始祖の情報については本当にノータッチなので、聞かれても答えられない。それでもお兄さまのためなら何でもできる。たとえそれは、
つまり戦士たちに利用される立ち位置を、甘んじて受け入れるということ。
情報はさながら、性処理役でも、何でもする。お兄さまのためなら本気で何でもできます。ただその代わり、一度でもいいからジーク・イェーガーに会わせて欲しい。その後殺すでも何でもしていい。
壁内の人類に地獄をもたらした戦士たちの決意や目的は、普通の兵士とは一線を画すでしょう。
それでも、ジークお兄さまへ全て捧げる私より勝っているとは思わない。
私の狂気は、それほどドロドロとしていて、人間の暗い部分を丸ごと混ぜ合わせたような悍ましい色をしている。
「でもそれが私という人間なのですから、仕方がありませんね」
まぁ向こうの出方を踏まえながら、最適解を見出していくのが一番良さそうでしょうね。出たとこ勝負となってしまいますが、臨機応変に彼らの精神面にうまく溶け込む美少女ちゃんを演じましょう。
そして、ウォールマリアの壁に沿ってしばらく歩けば、民家を発見した。ちょうど残された馬もあり、これでウォールローゼへと向かえる。
途中木の影から、こちらと仲間になりたそうに隠れている6mほどの巨人と遭遇し、アンカーをかけその肩の上に乗った。そしてジャンプし、左側が下に来るように地面へぶつかる。痛いですね。口から血がドバドバ出てきますよクォレハ…。
それから地面を這うようにし、あらかじめブレードで伐採しておいた太い木を杖代わりにして、馬にしがみつき乗った。
その後は馬の揺れに生じる身体への負荷と痛みに耐え、ローゼに到着した。時刻はもう夕暮れ近い。
立体機動装置で壁の上へ移動し、短い間の相棒と別れ、森の中を移動しようとして────、
意識を、失った。
⚪︎⚪︎⚪︎
アウラ・イェーガーは、動揺していた。
気を失い目覚めたと思えば、ベッドの上にいたのである。街ではあまり見かけぬ木造の家を見渡し、窓から見えた景色から辺りが森に包まれていることがわかった。恐らく気絶した場所からさほど離れていない場所にあるのだろう。
立ち上がろうと思えばケガが痛み、呻きながらベッドに逆戻りすることになる。そこで彼女は、服の下の身体が手当てされていることに気づく。
ちょうどその時ノックする音が聞こえた。
「しょわねえか?(大丈夫ですか?)」
アウラの声を聞き部屋に入ってきたのは、一人の女性。
聞けば、女性の旦那とその娘が朝狩りに山へ入っていた最中、アウラを発見したらしい。
それも見つけたのは、ウォールマリアが陥落してから
それから数日彼女はずっと
その服については、残念ながらアウラ自身の血とボロボロであったため、処分せざるを得なかった。立体機動装置については保管してある───とのこと。
奥方が話す着せ替えた服とは、アウラ自身が巨人シティの家から拝借したものである。
そもウォールマリアが陥落してから彼女が復活するまで、二日以上は確実に経っていた。計算として陥落したその日は戦い、次の日は移動。そして、二日後の翌朝発見された──ということになる。
話の辻褄が合わないからこそ、アウラは混乱している。その混乱する様子に、やはり記憶がしっかりしていないのだと、奥方が余計に心配する始末。
あまりにも
「……!」
その時奥方の後方にスゥーッと現れたのは、金髪の少女。ユミル大先生である。
いつもの無表情を張り付け、大先生はアウラに向けサムズアップした。
どうやら奥方の記憶が改ざんされているのは、ユミルの仕業らしい。全てを察した害悪女は、心の中で感謝した。同時に本当に何故こんなクソ野郎を贔屓してくれるのかも、疑問に思いながら。
一先ずお膳立てしてもらった以上、話を合わせるに越したことはないだろう。
アウラは頭を負傷した影響で自分の名前すら思い出せない、記憶喪失の美少女を演じる。しかし一部の巨人などの記憶は、覚えていることにして。
「あの、わたしはいったい……それにここはどこでしょうか…?」
奥方は彼女に、本当であればここから離れた街まで連れて行きたかったことを話す。
だが現在ウォールマリアから逃れてきた難民で、ウォールローゼ内は大混乱となっている。
必ず訪れる食糧危機に、負傷した兵や住民たちの治療。逃れてきた人間は一つの避難施設にギッチリと詰められ、床を共にする状況が続いている。
仮に行ったとしても、十分な治療ができるかわからない。縦えそれが治療を優先される兵士であったとしても。
それ以前にアウラのケガから、荷車での移動でさえ体に負担がかかり、命の危険に晒してしまうと考えられた。
だからこそつきっきりとなり、奥方やその娘などが看病していた。
アウラは見ず知らずの人間に何故そこまでするのか、奥方に尋ねる。
「ボロボロになってん戦い続けたお人を、助けたかったんですよ」
なぜ話してもいないのに断言できるのか、アウラには甚だ疑問である。
「わたしは兵士…?だったのかもしれません。でも巨人と戦わず、逃げた人間かもしれないじゃないですか」
奥方はそれでも、戦ったんだ、と断言する。
その理由は、奥方が狩人の夫の瞳を見ているからだ───と、呟いた。
獰猛な目。普通の人間とは違う、
そんな瞳を、アウラは持っている。
「起きたんやし、何か食べられそうなものを作ってきますね」
女性はそう言い残し、部屋を後にした。
そしてしばしその一家にある程度回復するまで、お世話になることになったアウラ・イェーガー。これには記憶を取り戻せるよう過ごす意図もある。
記憶の改ざんについては、一家含む集落全体に及んでいた。
これについてはアウラの知らない裏で、他の人間にもユミル大先生が記憶をいじっている可能性がある。その考えに思い至った時、彼女は始祖のチートな力に思わず息を飲んだ。
また本来なら、死亡した兵や行方不明となった兵の確認作業がある。だが名前を覚えていないので、確認することもできない。
そも現段階では壁外調査も当分はできまい。焦ったところでどうしようもないのだ。まずはケガが安定してから、街へ向かおうという話になった。
ことは概ねクソ少女の狙い通りである。アウラの行方が知れずとなるほど、弟に心労的負荷がかかる。同時にその他彼女と関わりがある人間についても。
その期間募る曇りゲージを考えればヨダレもの。そして、実は生きてましたムーブをかました時、どのような顔をするだろうか。特にエレンは。
────グフフ。
そんな声が聞こえてくるようだ。
こだまでしょうか?いいえ、クソ少女の笑い声です。
だが一つ問題がある。一家にお世話になる上で、彼女に這い寄るモンスターの存在。
それはいつも食事時に現れる。扉の隙間から、ベッドの上で食事を取る彼女を見つめるのだ。唸り声のような、不気味な声を上げながら。
「食べたいぃ……食べたいぃ……」──と。
「……あんまり食べられないから、サシャちゃんも食べる?」
「いいん!?」
彼女が差し出したパンを手も使わず口で奪った少女────サシャ・ブラウス。
未知との遭遇に、アウラは内心戸惑っていた。
こんな猛獣のような人間が、本当にいたのか、と。