ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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割と似てるらしいぜ、アイツら

 私だよ私、アウラちゃんだぜぇ?

 

 ブラウス家で一ヶ月ほどお世話になった私は、記憶を取り戻すイベント(嘘)を経て、一家と別れることになった。後で些細ではあるが、お返しをするつもりである。

 

 夫妻は断っていましたが、サシャ(猛獣)はこれ見よがしに食べ物を所望していたので、送ろうと思います。

 

 まだケガは完治していませんが、馬に乗る分には十分。

 涙のお別れをして彼らと別れた。ウソ泣きでも美少女ちゃんが涙ぐむと絵になるでしょうね。

 

 

 ちなみに記憶を取り戻すイベントに関しては、父親と私にカッコいいところを見せたかったサシャちゃんと共に、狩りへ行った時に起こった。

 

 サシャちゃんは保存食をこっそり食べたことを父にかなり怒られたこともあって、名誉挽回と行きたかったそうだ。

 

 私は少女に誘われた上での見学である。彼女の弓さばきについては文句なしの腕前だった。

 

 

 して、鹿などを狩っていた矢先、クマさんに出会った。本来ならもっと山奥にいるはずの猛獣。それが運悪く麓の方まで降りてきていたのだ。

 

 その際サシャちゃんが射た弓は刺さったものの、致命傷にはならず。

 

「大変!お肉好きな女の子がお肉になっちゃう!」という状況で、私は横から飛びかかり、持たされていたナイフでクマさんの目を潰した。

 

 向こうが怯んでいる隙に、バックステップで下がり後方の木の上へ移動。私にターゲットを変えたクマさんが木に激しく突進している後ろで、サシャちゃんが弓で心臓を射抜き、トドメを刺したのだった。

 

 頭でも致命傷になりそうだが、クマの頭蓋骨は銃をも貫通させないことがあるらしく、確実に殺すなら心臓を狙うのが一番だそうだ。

 

 

 これが記憶覚醒イベント。サシャちゃんの姿で弟エレンを思い出し、クマと戦ったことで自分が何者であるかを思い出した────という内容である。

 

 そのあとサシャちゃんは両親に激しく怒られ、私も私で怒られたのでした。

 

 

「うめえ食べ物楽しみにしちょんね、アウラさん!」

 

 

 馬に乗った私に笑顔でそう叫ぶサシャ・ブラウスちゃん(猛獣)

 

 私の隣にいる街までの送迎役のサシャ父は、呆れたようにため息を吐いていた。

 ああいったタイプの子は曇らせにくいので苦手ですね。かわいいとは思いますが。

 

 

 一家に手を振り、先導する馬の後に続き、私も馬を走らせる。

 

 さぁ、戻ったらまずは本部への生存報告と、これまでの事情説明。また耳に入った情報だけではない、現在のもっと詳細な壁内の状態の把握。

 

 そしてその後、エレンくんに「実はお姉ちゃん生きてたで♡」と、カルラママ死亡から始まり、溜まりにたまった絶望からの幸福を与えてあげようじゃないですか。

 

 私は曇り顔も大好きですが、それ以外の人間がさらけ出す、偽りのない()()()()()の感情も大好きなのです。

 

 さぁいきましょう。()きて()くのです、崩れかかったこの狭い世界で。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 街でサシャ父と別れ、駐屯兵に馬を一頭拝借してからしばらくして、私は調査兵団本部に帰還した。

 

 田舎まで届いていなかった情報の一つに、団長の件があった。私が尊敬してやまないキース団長が、()団長になってしまったのです。

 

 今後は未来の人材育成のため、訓練兵団の教官をやるとか。一先ずお目にかかれなかったので、後で生存報告がてら会いに行こうと思います。

 

 

 して、新しく任命された第13代団長が、エルヴィン・スミス。団長室で椅子に座る(ゲンドウポーズ)彼は迫力があった。ついでにその右隣には、腕を組み壁に寄りかかるようにして立っているリヴァイ隊員がいた。

 

 リヴァイ隊員とは、エルヴィン元分隊長と同じく班が異なった人物。

 

 巨人の単独討伐を可能とする人間兵器で、目つきが悪い。マーレの裏で流通しているクスリをキメている人間並みにヤヴァイ。

 

 一応私より後輩ではあるが、「兵士長」なるエルヴィン団長が就任時新たに作ったポジションに収まっている。「兵士長」≠「分隊長」らしいので、つまり上司ということになる。

 

 

 

「シガンシナ区での巨人との戦闘の際、頭を負傷。その後意識が朦朧としながらも、マリア内を単騎で移動。そしてローゼ南区ダウパー村の壁近辺で記憶を失っていたところを、住民に発見された──か」

 

 団長は隊員が事情を聴取し、それを記した紙に目を通している。後ろの窓から照らす光で、金髪が眩しい。青い瞳も吸い込まれそう。…あれ?お兄さまがいらっしゃる?お兄さまこんなところにおりましたの────、

 

 

「オイ、何フラフラとエルヴィンに近寄ってやがる」

 

 

 ヤヴァイ兵士長が睨んできました。怖いですね、こんな美少女ちゃんに何とも思わないのでしょうか。

 

「君が家族を助けようと巨人と戦っていたという話は、すでに駐屯兵団の方から聞いている。君のご家族には安否不明と話してある」

 

「……!弟とミカサちゃんは生きて…」

 

「現在は開拓地で労働している。また君の父親に関してだが、資料によると現在行方不明となっているそうだ。母親については……いや、君自身が現場にいた以上、私が言及することではないな。すまない」

 

「いえ………でも、そんな…父まで」

 

 お父さまはもういない。お兄さまの代わりとなる依存先がなくなり、精神的に本格的に危なくなってきている今。

 

 早くお兄さまに会えませんと、先のように団長がお兄さまに見え始める。金髪青目なら誰でもいいんでしょうか?とんだアバズレですねコレは。団長よりお兄さまの方が、比較にならないほどカッコいいのに。

 

 というか駐屯兵団情報とはおそらく、ハンネスおじさんですね。

 

「ダウパー村の位置と君のケガ、そして記憶を失っていた点を含め、生存報告ができなかったのは仕方ないだろう。遅くなったがよく戻ってきてくれた」

 

「はい、エルヴィン分隊………団長」

 

「まだ呼び方に慣れないようだね、私も現在の立場に慣れていないが。隣の彼は、すでに板についているようだが」

 

「お前が勝手に作った役職を、俺に押し付けてきたんだろうが」

 

 話によれば兵士長だけでなく、その他の班も分隊長などが代わり、班内での人材の異動も大きく行われたそうである。

 

 初対面でいきなり人の匂いを嗅いできて以来苦手なミケ・ザカリアスや、巨人関連となるとたちまち変態になるハンジ・ゾエらなどが、分隊長へと抜擢された。

 

 おかしいですね、ほとんど私が苦手な人じゃないですか。

 

 しかも私が所属している──いや、安否不明となっていた以上班から外されているのでしょうが、第四班の分隊長があのハンジ(変態)だとは…絶対に別の班でないと精神的疲労が増えてしまいます。

 

 HAHAHAと笑い合う二人と、死んだ目を常時している一人。

 

 

「ところで一つ、君に聞きたいことがあるのだが」

 

「はい、何でしょうか団長」

 

「巨人を単独討伐したというのは本当かね?それも一体だったらまだしも、複数体」

 

「ホォー…」

 

 おっ、兵士長は事前に話を聞いていなかったのでしょうか。興味深げに私を見てきます。

 

 少なくとも団長のみで済むところを兵士長が同席している以上、エルヴィン団長には何かねらいがあるのか。

 

 考えられるとしたら、最強の名を欲しいままにするリヴァイ兵士長から見て、私の実力が本物かどうかを見極めたいといったところでしょうか。

 

 まぁ今は少しでも戦力が欲しいでしょうからね。(アウラちゃん的にはしかし、頑張りたくは)ないです。

 

 

「君は討伐数・討伐補佐数を見れば、他の隊員と比べれば目を見張るものがある。それこそ“精鋭”と言っていい。しかし単独討伐は今まで行ったことがなかった。どうも私にはこの点が引っかかってね」

 

 無論私の体力面に劣る部分を踏まえ、単独討伐を行うのは相当な負荷がかかる。

 

 それも場所は壁外、万が一疲弊した中巨人に捕まったら一巻の終わりである。ゆえに力をセーブしていたと考えれば、納得がいく。

 

 それでもウォールマリア陥落以前に一体も単独討伐がなかったというのが、奇妙に感じるのだ──と、団長は続けた。

 

 

 目立ちたくなかった、では理由にならないでしょう。だったら訓練兵時代、わざわざ成績上位者に入らないでしょうから。

 

 であれば、連携することで仲間の力を底上げしたかった。調査兵団はヤヴァイ兵長が例外なのであって、「個」よりも「全」を重視する。そうして少しでも犠牲を減らし、自由を掲げて進む。

 

 この理念を上げ団長に話せば、一応は納得してくれたようだった。

 

「そう言えば聞いてくれ、リヴァイ」

 

「何だ」

 

「これもまた駐屯兵団からの情報だが、どうやら調査兵団の人間がブレードを使って脅し、駐屯兵団の隊員から立体機動を奪う事件があったそうだよ。訴えはその襲われた人物からだ。しかしその隊員は他の目撃者曰く、敵前逃亡していたこともあり、「貴公らのお咎めはなしだ」──と、ピクシス司令が大笑いしていたことがあってね」

 

「そんなゴロツキみてぇな輩が、この調査兵団にいるんだな」

 

 ヘェー、そんな人物が調査兵団に所属しているんですね。もしかしたらこの美少女であるアウラちゃんが、狙われてしまうかもしれません。え?どうして二人とも私の方を見ているんですか?もしかして私の背後にその粗暴な人間がいるっていうんですか?

 

 

「立体機動装置がなかったことを考えれば仕方ないだろう。だが褒められた行動ではないと思うよ、アウラ・イェーガー」

 

「……申し訳、ありません。言い訳になってしまうことは重々承知ですが、あの時は自分でもひどく…恐慌状態に陥っていたのです」

 

「精神面にかなり難があるのは、伺っている。しかし有事の際、巨人ではなく仲間にその刃が向けられては話にならないのだ」

 

「………はい」

 

 もう、ハンネスおじさんも口が軽いんだから。報告の詐称行為は厳重に罰せられるので、仕方なかったのでしょうが。

 

 そう考えるとお父さまと私を壁内に通し、独断で「大丈夫だろう」と判断して、その報告を上にしなかったダブルおじさんたちは結構危ない橋を渡っていたんだな。

 

 

「まぁそれが兵士を辞めろ、という理由にはならない。何度も言うが、今は戦力が欲しい。現状壁外調査へ赴くことは難しいが、準備ができれば我々調査兵団は、トロスト区からシガンシナ区へ向けたルートを開拓して行く。今この時にも、超大型巨人に開けられた穴から巨人が侵入してきているだろう」

 

 

 こちらを真っ直ぐに見つめる団長。自分ではまだ慣れていない、などとおっしゃっていましたが、十分すぎるほどすでに団長の風格が備わっている。

 

 この男とキース・シャーディースとの差異があるとすれば、やはり才能の差、あるいは人間を魅了する人格の違い。

 

 エルヴィン・スミスはその知性も去ることながら、兵士たちを()()()()力がある。命をかける調査兵団の中で、最も重要なことであり、難しいこと。

 

 それをその言葉一つで、兵士たちに覚悟を決めさせる。

 

「君にも己の信念とするところがあるだろう。だがそれを捨て去ってでも全力を尽くし、人類のために戦ってもらいたい。君の力が、私────いや、我々調査兵団には必要だ」

 

「団長…!」

 

「随分熱烈なプロボースだな、エルヴィン」

 

 人が感銘を受けたフリをしているというのに、雰囲気をぶち壊さないでくださいますか、ヤヴァイ兵長。お前絶対モテねぇだろ。いるんですよね、こういう男。女の子の心をわかりきった風に言ってくるヤツ。彼女が前髪切って、それをしばらく経ってからようやく気づくタイプだよ。

 

 勝手に人の気持ちをわかった気になるなよこのチ────、

 

 

「ヒッ!」

 

「おいっ、リヴァイ何をしているんだ!!」

 

「わからねぇ…わからねぇが、今こいつの首を斬っておけと、俺の第六感が言っている」

 

 私の襟首を掴み、鋭い刃物の先を向けてくる兵長。ブレードはあいにく持っていないので斬れませんが、首の骨を折るくらい簡単にできそうですね、このスモール・メンなら。

 

「リヴァイ!女性に乱暴をするな!!」

 

「離せエルヴィン、じゃねぇとテメェまで殴っちまうぞ」

 

 危うく兵長に馬乗りにされ、顔面を殴られかけた美少女ちゃんは誰でしょう?えぇ、私です。

 

 エルヴィン団長は兵長を背後から押さえ込み、私を救出した。兵長への好感度がグッと下がりました。

 

 元々兵長はゴロツキ出身。まだ荒い人間性が残っていると聞きましたが、まさかコレほどまでとは……。

 人類最強と言っても過言ではないので、まず巨人に殺されることもない。なるべくなら関わりたくないです、一生。

 

「すまないアウラくん、リヴァイが……ほら謝れ」

 

「エルヴィン惑わされるな、女の腹は男が思ってる以上に黒い。こいつの腹をかっ捌けば、よぉく見えるだろうぜ……その真っ黒な色がな」

 

「謝れと言ったんだ、リヴァイ」

 

「嫌だな」

 

 聞かん坊かな?でもこの人間、お兄さまより歳上らしいので怖いですよね。

 

 

 結局謝罪がないまま、私への話はあらかた終わった。班については力の分散を考慮して、ミケやハンジ分隊長たちとは別の場所へ配置するとのこと。

 

 まぁ一箇所だけ強すぎたら、他の班の人間は死に放題ですものね。また本来なら班長や副分隊長を任されてもおかしくはないのですが、すでに班の編成が決まっている以上、すぐに変えることはなるべく避けたいため、通常の隊員になるだろうとのこと。

 

「これからもよろしく頼む、アウラ・イェーガー」

 

「はっ!」

 

 団長に向け、敬礼をする。

 心臓を捧げよう。その相手は、壁内の人類のためではありませんが。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

「彼女を見てどう思った、リヴァイ」

 

 アウラが退出した中、エルヴィンはリヴァイへ視線を向けることなく尋ねる。彼の後方で窓を眺めていた兵長は、瞼を閉じた。

 

「どうもこうもねぇよ、普通の人間に見えたぜ。ただ中身が腹黒そうに見えたけどな」

 

「お前はもっと行動に気をつけろよ。彼女のトラウマになったらどうする」

 

「トラウマ?母親が死んだトラウマで発狂した女が、父親が行方不明になったと聞いた時には、そこまで取り乱していないように見えたのにか?」

 

「確かにな。精神が成長した、というのもあるとは思うが…。それにウォールマリアが陥落後、巨人がさほど侵入していなかったとしても、単騎でマリア内を生きおおせたことが信じられない」

 

「不可能ではないはずだ」

 

「あぁ、だがそう簡単に納得できるものでないことは、お前もわかっているだろう」

 

「……まぁな」

 

 奇跡的に命を繋ぎとめた。果たしてそれで首肯していいものか。

 

 何かある。それは突然に現れた超大型巨人と鎧の巨人も相まって、エルヴィン・スミスという男に引っかかりを作る。

 

「我々の知らぬ何かが、動き出しているのかもしれないな」

 

「ソイツは“運命”ってヤツか?」

 

「ハハ、そうかもな。運命……運命、か」

 

 エルヴィンもまた、リヴァイが眺めていた外の景色に目を向ける。青い空の下、地上では食糧難の危機に対して、人間たちがお互いに憎悪の目を向ける実情。

 早くウォールマリアを奪還せねばならないが、そう簡単にできるものではない。

 

()は思うんだ、リヴァイ」

 

「…何だ急に」

 

 リヴァイが視線を向けた矢先、三白眼の瞳が微かに丸くなる。

 

 普段は冷静沈着な男の青い瞳。それが子供のように、輝いているように見えた。間近で見た兵士長の感想としては一言、「気持ち悪い」

 

 

「どうも彼女が気になるんだ。俺とどこか、似ているからかもしれないが」

 

「……お前…年齢差を考えろよ」

 

「何か勘違いをされているようで大変遺憾なんだが」

 

 エルヴィンはアウラ・イェーガーに自身と似たもの───、一先ず外を目指す意志、としようか。

 

 仲間の死体を踏みながらも、人類へ命を捧げる以上に彼女が優先するもの。その正体はわからない。だが己とかなり近いものであると、団長たる男は感じている。

 

「部下の多くは熱い視線を送っているようだが、俺はどうもあの女が好かねぇな」

 

 リヴァイはそう言い、ため息を吐いた。




【手の平クルーッ!主人公】

・兵長がお兄さまを痛めつけてるってよ。

→「え、あ、えっ、な、ななな、何これしゅごっっっ、えっ………R18(G)……???兵長さん一生付いていきます」

尚これを鼻血を垂らしながら言う。


・兵長がお兄さまを殺したってよ。

→「お前を殺す(すれ違いざま)」

「生」きることを完全にやめた主人公に、ユミル様が『……………』となって、スーパー地ならしタイムも始まる模様。
愛とは誠に尊きものなのじゃ…。
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