ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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女型編執筆むずすぎて死にそう。。


もぅマヂ無理。。 タヒのぉ。。

 どうにか団長殿の女兵士へわいせつ行為を行おうとしたという誤解も解け、アウラ・イェーガーが号泣した理由は、過去のトラウマを思い出したゆえ──との形で収まった。

 

 

 エルヴィン・スミスは、壁内の誰よりも()()()()()()を追い求め、進み続けている男だ。

 

 長年の夢の中で現れた巨人に変化できる人間、即ちエレン・イェーガーの存在は彼に衝撃を与えた。そしてその少年が持っていた鍵。人類の秘密が隠されているとされる、イェーガー家の地下室。

 

 積年の夢が、今まさに叶おうとしている。そんな中地下室の謎を知っている可能性が浮上した、アウラ・イェーガー。

 

 冷静沈着な男が彼女に詰め寄ってしまったことは、仕方のないことだったのだろう。

 それほどまでにエルヴィンの悲願は重く、そして、罪深いものである。

 

 

 事情をあらかた聞いたハンジ・ゾエは、大きなため息を吐き頭を抑えた。

 

「地下室の一件を聞きたかったとしても、いつものあなたらしくない」

 

「……本当に申し訳なかった」

 

「全く気をつけてくれよ…ほらアウラ、私と一緒に行こう。立てるかい?」

 

 ハンジは手に持っていた縄を、床に置いた山積みの資料の上に置く。アウラの手を引っ張りおぶると、「よしよし」と赤子のようにあやした。しかし依然副分隊長殿はガチ泣き状態。困った、としか言いようがない。

 

 ちなみにハンジが持っていた縄は、巨人捕縛に使えるか吟味していたものだ。

 最悪団長はそれで天井から吊るされ、逆エビスミスになっていた。

 

「あ、リヴァイは資料を運んでくれ」

 

「ッチ、なんで俺が…」

 

「頼んだよ。じゃあ私はこれで失礼するね、エルヴィン」

 

 一人残されたエルヴィンは、椅子の背もたれに深く腰かけ、己の失態に天井を仰いだのだった。

 

 好奇心とは、猫をも殺す。

 

 それでもエルヴィン・スミスは、己が探究心に従い追い求め続けるのだろう。それによって人類が、一歩一歩と進んでいく。彼なしでは切り開けぬ世界が、そこにはある。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 そして、いよいよ兵法会議当日。

 

 この場では通常の法は適用されない。中心人物たるエレン・イェーガーは後ろ手で腕を固定され、背と腕の間に柱を通す形で拘束された。

 

 彼の目の前、中央の法壇に座するメガネをかけた老人が、ザックレー総統。右には憲兵団、左には調査兵団。その他エレンと関わる参考人が、聴衆の隅に複数名集められていた。

 

 ミカサやアルミンも招集されており、石像ミンの左隣にはアウラ・イェーガーの姿もあった。彼女の視線は真っ直ぐに弟へと向いており、緊張や焦りといった様子は窺えない。

 

(か、会話するチャンスだぞ、僕……!!)

 

 石像ミンは意を決して、初恋の人に話しかけようとした。しかしそれを遮るようにミカサが口を開く。

 

「お姉さんは、緊張していないんですか?エレンの生死が決定する場なのに…」

 

「エルヴィン団長は策があると言っていたし、大丈夫。こういった場でこそ、冷静に、堂々としなくちゃダメよ」

 

「……でも」

 

「エレンくんのこと心配してくれてありがとね、ミカサちゃん」

 

「………」

 

 ミカサは下を向いて黙り込み、アウラは再び視線を前へ向ける。女二人の間に挟まれている男がいるはずなのだが、空気ミンと化しているらしい。

 

 

 

 して、兵法会議が始まり、概ね内容はエルヴィンがアウラに話していた通りに進んでいく。

 

 

 憲兵団は、エレンを()()()()解剖したのち処分すべきだ、等と提案。

 

 対し調査兵団は、少年の巨人の力を活用し、ウォールマリアを奪還すると提案した。前者の内容と比べ、後者───エルヴィン・スミスの内容は至って簡潔である。

 

 ザックレーは調査兵団の提案に一つ質問をする。

 

 ウォールマリアを奪還すると言えども、今まで調査兵団がトロスト区からシガンシナ区へ向けて模索した経路は、トロスト区の門が大岩に塞がれたため通行不可となった。ゆえに出発することができない。

 

 エルヴィンはこれに、東のカラネス区より一から経路を模索していくことを提案した。

 

 それに対し、毒舌兵長曰く「豚ども」たちによる言い争いが勃発する。

 

 トロスト区が超大型巨人に襲われた以上、いつまた他の場所が襲われるかわからない。ウォールローゼの内門も壊される可能性があり、土地と権力を“内側”に持つ者たちは己が地位が落ちることを危ぶみ、「門を塞ぐべきだ」などと口論が生じてしまったのだ。

 

 

 その後どうにか話が軌道修正され、議論が続く。

 

 これまたエルヴィン・スミスの予想通り、憲兵がエレンが巨人化時に起こした、トロスト区防衛戦でのミカサ・アッカーマンへの攻撃。

 そして、少年が過去にミカサと共に起こした、強盗誘拐犯三名を刺殺した件が持ち出されることになる。

 

 

「ま、待ってくださいエレン……エレン・イェーガーは、トロスト区防衛戦の際、駐屯兵が放った榴弾から私やアルミンを守ってくれました!」

 

 ミカサが憲兵に異を唱えるが、憲兵団団長ナイル・ドークは彼女の発言を、個人的感情によるものだとする。

 

 その流れでミカサとエレンが義理の家族であったという関係性と、二人が起こした過去の事件へ移行した。

 

「三人も殺したんだってよ…信じられねぇ」

 

「しかも子供の頃だろ?やっぱり人間じゃない、バケモンだよエレン・イェーガーは…」

 

 壁内人類にとって巨人の脅威とは、圧倒的なものである。過去百年間負け続けてきた彼らは所詮、鳥籠の中のエサでしかない。トロスト区の一件で人類初の勝利を収めたが、その犠牲は多大なものであった。

 

「恐怖」とは人の心を容易く縛ってしまう。

 

 犯人たちによる少年と少女の身にあった非道な行いは恐怖の前で掠れ、忌まわしいものでも見るかのように、冷ややかな視線がエレンに注がれた。

 

 しかもそれは少年だけでなく、ミカサにもだ。「人殺し」と誰かが小さく呟き、無数の目が彼女に向かった。

 

 ミカサは唇を噛みしめ、一歩前に出て、エレンに向かう心ない言葉を呟く人間どもへ噛みつこうとする。

 そんな彼女の前を挟むようにして、立ちはだかった女。

 

「退いて、ください…お姉さん」

 

「冷静にしてって、言ったでしょ」

 

「無理です…!」

 

「えいっ」

 

 アウラは前を向いたまま後ろの少女の横腹を突っつき、不意打ちを食らわせる。咄嗟にミカサは声を抑えたが、この場にそぐわない声が出そうになったことに、前の女を睨め付ける。

 

 それを意に介さずアウラは挙手し、ザックレーから発言許可が出された。

 

 

「先ほどの憲兵団ナイル団長の発言をお借りします。現状、エレン・イェーガーとミカサ・アッカーマンに対し呟かれる言葉は、過分な“()()()()()”が含まれているように見受けられます」

 

「フム、確かにな」

 

「その上で、何故ミカサ・アッカーマンの“個人的感情”は指摘されたのにも関わらず、同じ聴衆側の“個人的感情”は指摘されていないのでしょうか。これについては発言した人物が、憲兵団側であるナイル・ドーク団長であることも踏まえさせていただきます」

 

「だそうだ、ナイル・ドーク」

 

 ザックレー総統の視線が、憲兵団団長に向く。

 

 

 ナイルは眉間に皺を寄せ、何食わぬ顔で毅然と佇立するアウラを見やり、「ぐぬ…」という顔をした。エルヴィン・スミスを意識し過ぎていたがゆえの、完全なる予想外の方向からのボディーブローである。

 

 先の発言がエレンの姉、アウラ・イェーガーということもあり、向こうの発言こそ私情が入っているように見受けられる。

 

 しかし状況的にそれをナイルが言えば、総統殿の心象が悪く映る可能性が高い。

 

 彼が思考している間に、ザックレーの「一同、一旦静粛に」という言葉が入り、場は静寂に包まれた。

 

「先のナイル・ドークの発言では、エレン・イェーガーの根本的な人間性を疑問とする内容があった。その他多くも巨人になることかできるエレン・イェーガーが、真に「人間か否か」判断に決めかねる意見がある」

 

 これについては腹違いの姉であり、()()()であるアウラ・イェーガーの証言が求められた。

 

 

 ここで一つ踏まえて起きたいのは、巨人化できるエレンの姉が初めの両兵団の提案の際のこと。

 

 憲兵団がエレン解体&処分の内容の中で、アウラの名が出てこなかった点についてだ。

 

 

 あくまでこの兵法会議は、『()()()()()()()()()()身柄をどちらに渡すか』を決めるものである。よって、エレンではない姉の処遇を出さなかったのだ。

 

 無論途中で「アウラ・イェーガーも巨人になれるのではないか?」と質問が上がれば、憲兵団側は用意しておいた“巨人化できる可能性がある人間”としてアウラを拘束する内容を述べるつもりだった。

 

 最初から極端な意訳として、「エレンも巨人なんだから、姉も巨人だろ?だから問答無用で姉弟そろって拘束だ!」などと話してしまえば、それこそ話の趣旨が異なる、とエルヴィンに指摘される可能性があった。

 

 ゆえにアウラ・イェーガーの件については、エレンの人間性の是非について彼女に話が回ってきた時、周囲が起こす反応を汲みながら出すつもりだったのである。

 

 今のところは女に向く畏怖の視線は少ない。

 それは単に長年心臓を捧げながら、()()()()()調査兵団に彼女が身を置いていたがゆえか。

 

 

 

「調査兵団第五班所属、副分隊長アウラ・イェーガーです。エレン・イェーガーとは異母兄弟の姉に当たります」

 

「まず聞くが、君はエレン・イェーガーが巨人化できることを知っていたのかね?」

 

「いえ、存じ上げませんでした。これについては、()()()()にして、()()()()()()()のかについても同様に」

 

「どのようにして得たのか──ということは、あくまで君は弟が元から巨人ではなく、人間であったと主張すると」

 

「わたくしは何らかの意図的要因が影響し、エレン・イェーガーが巨人になったのでは?と推測しています」

 

 これについては、同兵団の第四班分隊長、ハンジ・ゾエと共に考察したものであると彼女は語る。ハンジもそれに同意を示した。

 

 この裏で長時間にわたる地獄の巨人討論(バトル)があったのはお察しである。しかしこれで「アウラは頑張った!完!」とはならない。

 

 むしろここからが本番。近くで見れば、彼女の隈がひどいことがわかるだろう。野々村ばりの号泣からここずっと寝ていない。

 

 彼女も彼女なりに、エルヴィンに聞かされた以外で兵法会議で行われることを予想し、対策を練っていたのだ。

 

 

「…して、弟の「人間か否か」を材料とするための話として、わたくしは具体的に何を話せばよろしいのでしょうか」

 

「まぁ一つ、過去の話でよい。この場には些か合わないだろうがね」

 

「わかりました。ではエレン・イェーガー……弟が4歳の時、母が取り込んだ洗濯物の上で寝ておね───」

 

 

 瞬間「やめろぉぉぉ!!」と、部屋に響き渡った大声。

 

 驚き皆が声の元へ目を向ければ、そこには羞恥に顔を真っ赤にしたエレンがいるではないか。

 生温かい視線が少年に向き始めたのは気のせいではない。

 

 

「……失礼。話が途中で途切れてしまったので、別の話をしてもよろしいでしょうか」

 

「まぁいいだろう」

 

「では弟が3歳の時、馬糞を刺した棒で巨人を倒す遊びをしていた折、馬糞が取れ弟の顔に───」

 

「やめろって言ってんだろ姉さん!!!」

 

「失礼、また話が途中で途切れてしまいました」

 

「構わん、次は何だ」

 

「弟が先と同じ歳の時、外からこっそり持ち込み隠していた虫の卵が孵化し、家の中が───」

 

「もうやめてくれよぉ……!!」

 

 

 エレンは姉を睨み、今にも泣きそう…いや、泣いていた。

 

 当然だ。お偉い方が集まっている前で、己の恥ずかしい過去のエピソード。それを姉は真剣に話している。何人も笑いを堪えている者がおり、憲兵団でさえ一部微かに震えている。

 

 世界は残酷なんだ、エレンは何度目か思い出した。

 

 ピリついた雰囲気が一転、何ともぬるい温度で包まれる。その空気を作った張本人はどこ吹く風。

 

 

 エレンが「人間か否か」────そして彼の人間性を問う上で、これほどインパクトの強いものはなかろう。

 その強さにイェーガー姉弟の「過去話が何だというのだ」と考えていた者たちも、一気に毒気がぬかれた。むしろ力なく項垂れる少年が哀れでさえある。

 

 この時崩れた、エルヴィンがあらかじめ考えていた流れ。

 

 風向きが予想以上に、調査兵団側に変わった。

 

 

 

 この後に憲兵は、エレン・イェーガーの力が人類にとって脅威的であることに違いはない、とした。

 

 しかしエレンの人間性を強く感じた聴衆側は、“解剖・処分”という大凡人道を疑われる憲兵団の提案に否定的な考えが芽生え始め、調査兵団へ任せた方が──との流れに。

 

 だがエレンの脅威は確かにある。

 

 それについてはエルヴィンが、人類最強であるリヴァイ兵士長にエレンの“管理”を任せる旨を提案をした。

 

 兵長のバケモノぶりはトロスト区での活躍も然ることながら、民衆には広く知れ渡っている。エルヴィン以上にその名は、良くも悪くも有名だろう。

 

 

「ではエレン・イェーガーの管理をリヴァイに任せるとし、彼の身柄は調査兵団に()()委任する。ただし民衆の巨人の力を恐れる声は多い。成果次第でいつでも憲兵団にその身柄を渡す可能性があることを、重々理解しておくように」

 

「承知しました、ザックレー総統」

 

 エルヴィンは心臓に手を当て、答えた。

 

 

 

 リヴァイの暴力イベントは起こらず、これにて兵法会議は平和的に終了する。

 

 その後アウラはエルヴィンに、本来ならリヴァイが活躍する予定だったことを聞き、ひどく瞠目することになる。

 

「黙っていてすまなかった。だが都合上、この事は一部の者にしか話せなかったんだ」

 

「いえ、弟の身柄のためなら……でも、リヴァイ兵長のリンチ…」

 

「……す、すまない」

 

 アウラのトラウマをえぐった(とエルヴィンは思っている)件もあり、団長殿は距離感を測りあぐねているようだ。

 アウラはエルヴィンの謝罪も聞こえぬのか、ぼんやりと虚空を見つめる。

 

 

 弟にリヴァイの理不尽な暴力が襲う。人類最強が殴ったり、蹴ったり。それに弟は呻いて、血反吐を吐いて────。

 

 

(あれ、私もしかしてものすごく、余計なことしちゃった…?)

 

 

 

 

 

 害悪女はその夜、自分のベッドに入り、本当ならば見られたはずの弟がボコボコにされる姿に思いを馳せ、泣いた。

 

 エレン蹂躙イベントは、恥ずかしい過去をさらけ出し姉を内心ネチョネチョさせた時よりも、よっぽど()()()()姿が見られただろう。

 

「……死の」

 

 同室の変態が捕獲した巨人のためいない中、アウラは一人呟き、寝た。




【新入部員、到来…!?】

兵法会議後、エルヴィンは馬車に向かうダリス・ザックレーの後に続いた。その間本日の話を幾許か行う。

「今日は随分と、面白いものを見れたよ」

「…イェーガー姉弟の過去の件でしょうか」

「あぁ、過去の話をしろとは言ったが、まさかあの場で斯様なぶっ飛んだ話をするとは。もっと同情にでも訴えるような、愛と感動に満ちた話ならまだしも。だからこそ、話に乗ったんだがな」

「恐れ入ります」

「畏まる事はない。私が乗らずともアウラ・イェーガーが一手を出した時点で、流れは完全に調査兵団に向いていた」

ザックレーとしても、エルヴィンとしても想定外だった。誰も予想し得なかった斜め上の事を、アウラ・イェーガーはしてみせたのだ。

「一度個人的に話してみたいものだな、彼女と」

「総統がいち副分隊長にでしょうか?」

()のつまみが合いそうだと感じてね。もしかしたら…の、話だが」

馬車に乗り際、種類のわからぬ笑みを浮かべ、ザックレーはその場を後にした。
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