ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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全て「オレおま」になりたいよ〜だ(ゴロリ感)

 指笛を鳴らしても愛馬が帰って来ず、結構焦った美女はだぁれ?

 そう、それは私、アウラ・イェーガーである。

 

 

 女型に捨て置かれた私は、立体機動装置を付け直してから、愛馬を呼んだ。しかし中々来ず、走る巨人たちの群れに遭遇。先ほど私たちを襲った群れの個体である。まるでお安い食べ物を奪い合う主婦のような恐ろしさだった。

 

 その時は咄嗟に木の上に移動し、事なきを得た。いくら何でも数が多すぎる。あの人外兵長ならまだしも、アウラちゃんはか弱き乙女なんでね。

 

 幸い巨人はこちらに見向きもせず走って行った。

 多数を狙う性質で、一人の人間に見向きもしないのは奇行種の特徴。対し我が班を襲ったのは通常種。

 

 つまり何らかの原因があり、私を無視して移動していったのだとわかる。となると、女型が呼び寄せたのだろう。

 

 巨人たちが向かった位置は、ちょうど右翼前方。恐らく前方の索敵と襲わせるためと思われる。その間彼女が私の提案通り動くかわかりませんが、最終的に巨大樹の森でエレンを狙うことになるでしょう。

 

 

 しかしまさかアニちゃんが、マルコ・ボットの立体機動装置を身に付けているとは思いませんでした。ソニーとビーンを暗殺したのも彼女。これは私がハンジ・ゾエに散々苦しめられた帳尻を合わせるために、彼女の曇らせ顔を拝まないといけませんよ。

 

 …いえ、殺した仲間の装備を身に付けているんだ。それだけで彼女の心中には罪悪感がある。

 

 その点を責めれば、きっとアニちゃんは表情を歪ませた。その代わり余計なことを言った私は殺されていたと思いますが。

 

 

 一先ずベルトルトくんの依頼はこれでいいでしょうか。罠の場所を教えたわけですし、アニちゃんの生存率は飛躍的に上がるはずです。

 

 単騎で臨む合戦で、敵側には巨人化できるエレンに、人類最強やセコム・アッカーマン。さらにハンジ・ゾエやエルヴィン団長までいますし、いくら何でも無理ゲーだ。

 

 女型は身体機能に富んでおり、巨人を引き寄せる“叫び”もある。ですが鎧と比べれば防御力が劣りますし、超大型のような破壊力もない。

 

 しかし動ける者は、二人を除きアニちゃんしかいない。

 これといった武器があれば、話は大きく変わるのでしょうがね。ベルトルトくんの不安もわかります。

 

 

 

 

 

 それから暫くし、ようやっと我が愛馬が帰還した。

 

 壁外での単騎行動は、控えめに言って自殺行為。じゃけん、早く前方に進んでいる仲間を追いましょうね。最悪巨大樹の森を目指せば大丈夫です。

 

 問題はしかし、別にある。

 

 私がいる索敵班が壊滅した中、一人生き残っていたとなると、スミスが疑惑の目を向けてくる可能性があることです。アウラちゃんは一度ウォール・マリア陥落後、単騎でマリア内を移動し、ウォール・ローゼへとたどり着いた。しかも手負いでである。

 

 この件はユミルたそに記憶改ざん(クチュクチュ)されたサシャ・ブラウス含む複数の人間から裏が取れるので、あまり心配する必要はない。反面、完全に真っ白とも言えない。

 

 仲間が壊滅した中で一人だけ生き残った点。

 また、女型が現れた右翼側に私がいたことなど。

 

 

 まず一人だけ生き残った点について。

 

 我が班は女型と巨人の群れと遭遇。しかし対処し切れず、戦っていた私は事を伝えるよう頼まれ、伝達に向かった。その際は煙弾を送る余裕さえなかったのは事実ですので、その部分は正直に話すしかない。ブレードやガスについてはある程度消耗させてあります。

 

 そして馬を走らせつつ態勢を立て直し、煙弾を送ろうとした直後。

 前方に移動し始めた女型、及びそれが連れる巨人に巻き込まれる形で落馬。この時煙弾を送る信号拳銃も無くしたことにする。

 そして足を無くした私は木の上で待機し、必死に馬を呼んでいた───。

 

 

 この場合、「何で女型お前を殺さなかったん?」となりそうなので、放っておいても死にそうだったアピールをする必要がある。

 

 そのため木の上から恒例のジャンプをかまし、右足を折りました。痛いですね。

 

 これで馬がいなくなったプラス、放っておいても移動できないため、巨人に食われるだろうと女型が判断した嘘の材料を作れる。

 

 しかし私の索敵の位置は最も右側の位置に当たり、その後方には索敵がいない。

 

 女型の現れた位置も、巨人の群れが移動するカラクリや煙弾の位置を紐解けば、どの場所であったか当たりがつく。

 

 アニちゃんは最初右翼側を確実に潰して回る予定だったみたいですが、私との遭遇で彼女の行動はエレンを捕獲する前に、隊を混乱させる意図が付け足された。エレンの居場所を教えたベルトルトくんたちの疑いが、なるべく分散できるようにするための行動。

 

 

 この女型の急な行動変化に気づかれた場合、女型の行動が変化する直後にいた人物、例えば一人だけ生き残っていた私が疑われるわけです。敵に情報を漏洩させた人物である──と。剰え女型は罠を避けてしまうわけですから。

 

 真っ先に気づきそうなのはエルヴィン・スミス。

 

 女型の出現位置。そして一人だけ生き残った部分を踏まえ、アウラ・イェーガーを怪しい人物と仮定して、私と女型の関連性を見出しそうなのもこの男だ。

 

 最悪脅された体でいくしかないかな。もちろんアニちゃんたちの名前は出しませんけど。

 

 

「……頭が痛くなる…」

 

 

 ここまで戦士サイドに足を突っ込む気はなかったのですが、困ったものだ。まぁ、私が裏切り者と知った皆の反応が見たい気持ちが、先行している部分もあります。

 

 お兄さまに出会えるまででいいので、どうかこの命が持ちますように。

 その後は煮るなり焼くなり、好きにしてください。

 

 私はきっと、美味しいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◻︎◻︎◻︎

 

 

 仲間をたずねて三千里。

 

 ──いえ、流石に三千里は嘘です。約一万二千キロ弱など、巨人化して走れたとしても当分かかる。

 

 

 女型が周辺の巨人を連れて走ってくれたおかげか、道中巨人と出会さず巨大樹の森へたどり着くことができた。

 

 この事実と、女型が巨人を率いていた様子を目撃したことを話せば、手負いで生き残ったとしても、怪しまれる可能性は減るでしょう。

 

 愛馬が来なかった分かなりのタイムロスをした。しかし巨人を避ける道のりを通った前方と、直線的に馬を走らせた私。ついでに(やる気♂を出せば)俊足を誇る我が馬をコキ使って急がせたので、想像よりは巨大樹に着いたタイムラグは少なかった。

 

 ちなみに伊達に7年調査兵団に所属してないので、概ねの巨大樹の位置は把握済み。もちろん地図があった方が、正確性は増す。

 

 

 

 

 

 して、ちょうどぶつかったのは、巨大樹の正面から大きく外れた右側。

 

 予定通りであれば森の中に巨人を入らせないため、外側で巨人を誘き寄せる役目の兵士たちがいるはず。耳を澄まし大きな音がしている方向へ向かえばいました。

 

 メンツは……おっ、ライナーくんにアルミンくん、それに馬ヅラっぽい少年と、パッとしないモブ顔の少年が二人。

 もう一人は──────お、おっふ。……か、かわいい天使が一人。名をクリスタ・レンズちゃん。誘拐します(頑なな意思)

 

「あっ」

 

 見惚れていたら巨人が襲って来てしまいました。来る前に立体機動で上に移ろうと思っていたのがですが、失敗した。

 

 誰ですか、あんな愛らしい美少女を作り出した人物は。私の動悸がムネムネして死にそうですよ。いえまぁ、物理的にも死にそうなんですけど。

 

 

 慌ててワイヤーを木にかけようとしたが、走って来た巨人の振動で、姿勢が右に崩れる。

 自業自得な足の怪我のせいで、上手く体勢を保つのが難しい状況。私の身体は馬から落ち、地面に転がる。

 

 一番私に近い巨人が手を伸ばし、アウラちゃんの喉から野太い「アッ────!!」という声が出そうになった瞬間、動いた私の肢体。

 

 視界がグルグルと回り、所々身体が地面にぶつかる。視界が正常に戻り状況を理解しようと視線を探らせれば、見えたのは金髪。直後体勢が大きく変わる。

 

 自分の肩や膝元に触れている手の感触から、どうやら私はお姫様抱っこされているらしい。立体機動装置含めたら、私の体重は60キロ近くなるんですが。筋肉お化けかな?

 

 

「………ッ!!」

 

 

 私を助けた少年にお礼を言う間もなく、彼は駆け出しワイヤーを木に取り付け、巨人の手に捕まるスレスレで逃れた。

 

 先に言っておくと、立体機動はあくまで一人用。人を抱えて動くとなれば、ワイヤーに大きな負荷がかかる上、ガスも多く減る。木の上に乗れたはいいものの、勢いを殺せず、つんのめる形で両者身体が前へ傾いた。

 

 そこを救ってくれたのは、慌てて私たちの元へ来た馬面の少年。再度「アッー!!」しかけた私を抱えている少年の腕を引っ張ってくれたおかげで、事なきを得た。

 

「バッカじゃねぇのか、ライナー!危ねぇだろ!!」

 

 馬面くんが怒髪天です。

 

 

 

 ────そう、私を助けてくれたのはライナーくんでした。やっぱりゴリラですねクォレハ…。

 

 普通の女子なら、間違いなくコロッと()ってしまう状況です。残念ながら私には「こうかが ないようだ」。お兄さまにされたら確実に絶頂不可避だった。

 

「あ、ありがとう……助けてくれて…」

 

「……いや、いい。気にするな」

 

 微笑みつつ、もう大丈夫アピールをして下りようとしますが、ガッチリ掴まれていて動けません。目元辺りに陰ができていますがどうしたんですかね?まさかこのアウラちゃんに惚れてしまったのでしょうか。

 

 

 …いや、それとも現在のアニ・レオンハートの状況を考えているのか?

 

 彼は以前のベルトルト・フーバーの「()()()()()()」という言葉と、マルコ・ボットが死ぬ状況の言動を加味し、精神状態に明らかな異常が見受けられた。

 

 以上を踏まえ、“戦士のライナー”と、“戦士ではないライナー”が生まれていると考えられる。

 

 今は果たしてどちらなのか。戦力外通告をベルくんから押されているも同然なライナーくんなので、もう少し頑張って欲しいところ。

 

 仲間の死で傷つく精神は美しく愛おしいですが、壊れやすいとアウラちゃん的には物足りない。ゆえにもっと精神強度を上げて苦しみ抜いてください。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 アッ、天使が舞い降りた。私の右足の怪我に気づき、心配してくれています。

 ダメです触って具合を確かめようとしないでください死んでしまいます。

 

「お、応急処置しないとっ…!ライナー、一旦彼女のこと降ろしてあげて!」

 

「………」

 

「ライナー!!」

 

「…え、あ、あぁ…わかった」

 

 ようやく降ろされた私は、クリスタちゃんの簡易的な処置を受けつつ、この場にいた隊の班長に私がここまで来た経緯を伝え、現在の状況を聞いた。

 

 その間ライナーくんは薄っすら微笑んでいたアルミンくんに「ちょっといいかい?」と声をかけられ、場所を移す。馬面──ジャンくんはそんな二人の様子を視界に入れ、微妙な顔をしていた。

 

 

 

 一先ず我が隊の右翼索敵が森を移動中の時、「女型」の巨人が右から奇襲する形で現れ、ソレが連れる無数の巨人と遭遇したことを話す。

 

 その際煙弾を送る間もなく隊は壊滅に追い込まれ、唯一動けた私が伝達を頼まれた。

 

 しかし煙弾を撃とうとした直後、移動する女型と巨人の群れにぶつかり、信号拳銃と馬をなくした挙句、足をケガした────云々。

 

 

「女型と巨人の群れはアウラ副分隊長、あんたを襲わなかったのか?」

 

「……信じられないと思いますが、女型が叫んだ後、その後を追うように巨人の群れが続いたのです。私のことは見向きもしませんでした」

 

「その巨人の群れが全て奇行種だった、というわけではないよな?」

 

「いえ、少なくとも通常種であったはずです」

 

「足を折ってよく生きていられたものだ…」

 

「…本当に、私だけ……生き残ってしまいました」

 

 

 仲間の惨い死に出会し、一人だけ生き残ってしまったアウラ・イェーガー。

 私は今仲間の命を救えず、“伝達”と言いながら、逃げるしかできなかった。

 

 俯き絶望顔を見せる私の姿に、班長の男が肩に手を置く。「よく生きていてくれた」──と。

 

「女型が放っておいても「死ぬ」と判断したあんたはしかし、生きていた。それが全てだろう。屍は踏み抜いてでしか、俺たちは進むことができないのだから」

 

「……そう、でしたね」

 

「本当に、嫌なものだ」

 

 

 

 その後話は続き、私が馬を走らせていた時巨人と遭遇しなかった点が、女型の「巨人を呼び寄せた」という説に信憑性をもたらす。

 

 この場に来れたことについては、あらかじめエルヴィン団長から聞いていた、と話した。対しこの班長の方は、本作戦の内容については知らないようである。

 

「その本当の作戦内容って何なんだ?」

 

 ジャンくんが聞いてきましたが、教えられない、と首を振る。すると舌打ちを一つ零した彼。現場に相当イライラしているのだろう。

 

 

「それで、現在の状態について聞きたいのですが…」

 

 

 聞くと、少し前に巨大樹内部から外側にまで響く大きな音がしたらしい。恐らく罠の音と思われる。

 

 次いで起こったのは、()()()と、地面を轟かすような()()()

 

 なるほど。女型捕獲が失敗して、エレンくんが巨人化しましたか。ちょうど天使ちゃんが、木の棒などを使い右足を簡易的に固定してくれたことですし、飛ばしていきましょう。

 

 

 何かにハッとしたアウラちゃんは班長やジャンくん、天使ちゃんの制止を無視しこの場を去ります。何気この場で一番偉いのは私ですので、彼らには命令が出されるまでこのまま待機しているよう告げました。

 

 少し遠くまで移動し話し合っているらしい金髪コンビは、未だ戻ってきていないので無視。

 

 内側に入っていくと、何やらドッタンバッタン地震のような音が聞こえて来る。

 大乱闘タイタニック(巨人)ブラザーズですねわかります。

 

 恐らく異常事態を察知したミカサちゃんも、内側に入ってきているでしょう。

 

 弟VSアニちゃんの勇姿を見に行こうじゃありませんか。できるならアニちゃん優勢で頑張ってもらいたいですね。さすればエレンくんは傷つき、アニちゃんも疲労してくれるので。

 

 そして最後はピンチの弟のため、リヴァイ兵士長が女型の間合いに入り、膝裏や目などを潰し、最終的にうなじを削ぐ未来が見えます。

 

 まぁ、その前に女型が“叫び”を使って巨人を呼び、共食いが引き起こされ、混乱に乗じてアニちゃんが逃げてくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 ですがまぁ、想定外のことってあるものですね。

 

 

 暴れ合う巨人二体から距離を置き、兵士たちが木の上からその様子を見つめている間にさりげなく入った私。

 

 正直言って人間が入れる間がない。一歩でも彼らの内側に入れば、羽虫が如くいとも容易く殺されるでしょう。

 

 というか女型が結晶のようなものを纏わせているんですが、何ですかアレ?

 ベルトルトくん、何ですか、アレ?(二回目)

 

 ビッグエレンくんがフラフラじゃないですか……かわいい。

 

 どうやらアレはうなじにも応用できるようで、女型は粉骨砕身覚悟で拳を浴び、うなじを狙おうとするエレンくんの攻撃を、結晶をまとわせて防いでいる。恐らくブレードで狙うことは叶わないだろう。

 

 今までアニちゃんの方が劣勢だと考えていた脳内が、一気に傾く。これなら罠の存在を教えぬ方が良かった。

 

 罠ありきでも女型は優勢になった。それがないのであれば、考えるまでもない。

 

 

 あの小僧め、私を謀ったな。四肢の四本や八本切り落としてその絶叫を聞かねば、この精算は合いませんよ。

 

 

 私がアニちゃんは劣勢になると思い込ませるのも彼の策。

 

 私が助けることを見越して、アニ・レオンハートに罠の存在を伝えたかったのだ。彼やライナーが動けば怪しまれるがゆえ、()()()()()()()を利用して。

 

 向こうが知性巨人の力について、全て話していないとは思っていた。この点は、女型のメインの力が巨人を引き寄せる力だ──と、思い込んでしまった私の失敗もある。

 

 だがこちとら、かなり危険な場を踏んでいるんだぞ。スミスの思考力は怪物なので、本気で恐ろしいのに、困ったものですわ。

 

 

 何より向こうが私とお兄さまを会わせる可能性が薄まったのが、最もキレる理由。

 

 都合のいいコマでしかない私との約束を、本当に守るのかどうか。

 その答えは限りなく「否」。

 

 けれどもお兄さまと会える可能性が少しでもあれば、私は縋ってしまう。私がジーク・イェーガーへ抱く重い想いは、本物であるから。

 

 

 

「いやになるなぁ…もう」

 

 

 この場を覆す鍵のリヴァイを探せば、木の上でミカサ・アッカーマンの身体を拘束している。彼女が異変を聞きつけ、飛び出して行こうとしたところを止めたのだろう。少し彼の姿勢に違和感を感じた。

 

 身体の重心が右に傾いており、左足を少し浮かせるようにしている。…最悪だな、捻るなどして負傷している可能性が高い。恐らくミカサちゃんを止めた時に、無理な体勢を取ったのだろう。

 

 

 私の身体は自分の制御下から離れ、力なく木の上に座り込む。

 

 結局ベルトルトを責めても、最終的に悪いのはアニ・レオンハートが劣勢になる──と決めつけ、その考えを脳内に固定し、別の可能性が起こりうることを想定しなかった私。

 

 そう言えばジークお兄さまは今頃何をされているでしょう。

 

 クサヴァーさんとされていたキャッチボールを、他の戦士と行っているのかもしれないし、もしかしたら既に妻子がいて、我が子と遊んでいるかもしれない。お兄さまも25歳になっていますし、十分あり得そうです。

 

 昔スープが熱いからと、必死に息を吹きかけていた猫舌お兄さまは可愛らしかった。

 独特な耳をかく癖は、どうやらエレンくんにも遺伝しているようで、時折その姿を見るとお兄さまを思い出す。

 お父さまも時折その癖を見せていた。

 

 私だけないんですけど。猫舌も。

 

 同じになりたいのに、すべて。

 

 

 

 

 

 ブレードが一枚あります。いつの間にか私の手の中に。いえいえ、自決なんてしませんよ?アウラちゃんはバカじゃないので。ガスの残りはわずか。

 

 エレンが身体を木に打ち付け、アニに追い込まれている。

 

 弟の巨人体は右腕が肘から吹っ飛んでおり、左手は手首から先がない。無事なのは右足のみで、左足も脛付近から欠けており、左の顔も大きくえぐられている。

 

 大きく開いた女型の口元に、次の展開を悟った。

 

 うなじごと、エレンが食われる。そうなったら女型が逃げ、最悪戦士たちも壁内から離脱する可能性がある。

 

 なので助けに行かないといけませんね。助けに、行って。

 

 

 空が、青い。

 

 高い木々の上に辛うじて覗く色。

 

 ほらこんなにも青いのだから、一歩進まなくては。

 

 

 

 視線をエレンに戻したその瞬間、目が合った。翡翠の瞳が大きく開き、咆哮して。

 

 

 急速に回復した弟の左手。それが女型の顔を殴り貫いた。

 

 

──────────────────────────────────────────

【圧迫面接】

 

 アルミンに連れて来られたライナー。「戦士」である現在の彼は、相手が104期随一の頭脳を持つアルミン・アルレルトということもあり、最悪の事態を想定していた。

 

 その最悪とは、ライナーが巨人の力を持つ人間である、と勘付かれた場合である。

 

「ライナー、君は訓練兵時代の頃、男子のうちで誰が好きかの話になった時、「クリスタが好きだ」って言ってたよね」

 

「?………あ、あぁ…だが今は悩──」

 

「僕はあの時言えなかったけれど、本当は好きな人がいるんだ」

 

「え?そ、そうなのか、応援するよ」

 

「……応援してくれるんだね?今、()()()()、って言ったね?」

 

 ライナーに一歩近づき、顔を少し上げ、「ゲスゥ」と笑ったアルミン。

 

「言質は取ったぞ」

 

「あ、あぁ…?」

 

「ちなみに僕が好きな人は、エレンのお姉さんだ」

 

「…そう、だったのか?」

 

「子供の頃から好きなんだ。初恋だよ」

 

「………お、おう」

 

「応援してくれるよね、ライナー?」

 

 一歩一歩と詰め寄る初恋拗らせミン。少年から漏れ出るドス黒いオーラに、ライナーはたじろぐ。

 

 あの時は思わず戦士長の想いや自身の感情が動き助けたが、まさか斯様な目に遭うとは思わなかった。

 

「みんなの頼れる兄貴分の君なんだ、応援、してくれるよね?」

 

「え、えっと……そろそろ戻った方が良くないか?」

 

「ダメだ、話は終わってない」

 

 こうしてエレンの二度目の叫び声が聞こえるまで、ライナーはアルミンによる圧迫面接が行われることになったのである。

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