ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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ドドすこすこすこすこ「♡」注入

 私アウラちゃん、今チェスをやっているの。

 

 

 大規模壁外遠征から一夜明け、一部の104期生は私服での待機を命じられた。

 

 現在エルヴィン・スミスやリヴァイ兵士長らはお上の命令が下り、エレンの身柄引き渡しのため不在である。

 

 私も同席したく団長に訴えましたが、ケガ人ということで待機させられることになった。それも、104期生のメンバーと一緒に。

 

 

 これは完全に私が黒いと気づかれていますね、流石スミス。

 

 女型が罠を避けたことを前提として、右翼索敵で生き残った数少ないメンバーの一人であり、女型が侵入したと推測される位置にいた我が班。その場所から女型が誘導した巨人の群れが北上し、その他の右翼索敵が襲われた。

 

 逆にこれで怪しまれなかったら、おかしいラインナップの数々。

 

 

 しかし新兵とは異なり、私は武装を許されている。完全武装しているのは上司のみであり、この場の最高責任者はミケ分隊長だ。

 

 彼曰く、右翼側に女型の内通者がいる可能性が高く、彼らの監視を担当する云々───とのこと。

 

 私の武装がOKなのは、アウラ・イェーガーが疑われていることを本人に悟らせぬためだ。エルヴィン団長の意図を知らされていた私が新兵と同じ扱いを受ければ、違和感を感じるに決まっている。

 

 まぁ私としては、動くつもりはない。

 

 エルヴィン団長が、エレンをみすみす王政に渡すはずがない。一杯女型に食わされたのだ。あの男は必ず次の一手を切る。それもお得意の博打方法で。

 

 

 また、アニちゃんもエレンくんにグチャグチャ(物理)にされたままで、黙っているとは思えない。

 先日は追い込まれ撤退したが、次の好機を見計らい、彼女はエレンを狙う。

 

 団長の脳みそならば、女型の正体やその仲間にすでに気付いている可能性が高い。

 

 彼がそれを利用し事を起こすならば、その時アニ・レオンハートと調査兵団がぶつかることになる。しかし、王政にエレンの身柄が渡ったらそれでおしまいだ。となると、行動に移すならその前。

 

 案外今日中に、女型を捕まえる新しい作戦が行われるかもしれないな。

 

 どうあがいても、真っ黒アウラちゃんは同席できないんですが。

 

 

 

 それにしても、昨日のエレンくんvsアニちゃんのシーンは白熱だった。

 

 お互い血や肉、内臓をさらけ出しながらぶつかり合う。エレンくんの四肢がボロボロになっている時アウラちゃんの中で、えも言われぬ何かが芽生えそうでしたもの。

 

 グチャドロのアニたそもかわいかったですね。

 

 痛みはないでしょうが、何度も再生すれば、精神的疲労は蓄積される。あの時彼女が「叫び」を使ったのは英断であった。間違えればエレンくんに食われていたでしょうから。

 

 

 かわいい弟やアニちゃんの姿、そして死に行く仲間たちの光景。さらに帰還後、住人からも心ない言葉を浴びせられた新兵たちの姿が、これまた絶頂ものだった。

 

 また帰還中、まだ若い兵士が仲間の死体を取りに行くハプニングがあった。

 

 位置的に仲間の死体がある場所は、巨人が多かった。そのため遺体の回収がされなかったのだ。

 

 結果として、若い兵士らは仲間の死体を馬に乗せられたものの、巨人が追いかけて来てしまったのである。

 

 平地のため戦うこともできず、最終的に荷馬車の速度を上げるため、積まれていた死体が投棄されることに。

 仲間の遺体を集めた若い二人の兵士のうち、一人はその時殺されてしまった。

 

 

 美談ですね。死んだ友人のために、仲間の反対を押し切って遺体を回収した。

 

 結末は散々なものでしたが。愚かな行為であることに変わりはない。

 しかし、亡き友のため自分や他の仲間を危険に晒してまで、行動した彼らの姿は美しかったです…(ジュルリ)

 

 

 

 そうやって恍惚と絶頂できるのも、今になってからでしたが。

 

 昨日はベルなんとかさんのせいで、()()くアウラちゃんになっていたのでね。美味しい状況を堪能できる精神がなかった。

 

 普通に思考できる脳があるが、現在も頭の片隅ではどう死のうか考えている。ちょうど刃物があるため、うっかりしたら腰のブレードに手を伸ばし、首を斬ってしまいそう。ぜひとも同室の104期生の悲鳴を聞きたいです。

 

 

 ちなみに私以外の武装兵士は外にいらっしゃいます。

 

 私は名目上、ミケ分隊長から「中の監視を担当して欲しい」と言われている。向こうの嘘は重々承知です。

 

 帰ってきた後エレンくんの抱擁がなければ、まだ精神が正常に戻らなかった。

「ごめん姉さん…」なんてボロ泣きしながら弟に言われたら、そりゃあ私の心も帰って来ますよ。

 本当我が弟は、食べてしまいたいくらいに愛らしい。

 

 

 

 

 

「…強いな」

 

 

 私の左隣に座り、感嘆の声を上げているのはライナーくん。私の正面には、ずっと顔色が優れないベルトルト・フーバーもいた。

 

 どうして今日私と会ってから目を逸らそうとするんですかね?やっぱりアニちゃんより私の方が好きなんですか?(ニッコリ)

 

「……ま、負けたよ。こ、今度はライナーとやったらどうだい?イェーガー副分隊長」

 

「おいおい、俺じゃ絶対勝てないって。アウラさんも、俺より強いお前が相手の方が楽しいだろうよ」

 

「でも……ら、ライナー…」

 

 ベルトルトくんが助け舟を求めます。戦士でありながら、己の愛情を優先した君の在り方は美しいですよ。それこそよだれもので。

 

 しかしお兄さまの地雷を踏み抜いた以上、彼に向く私の好感度はグッと下がっている。もちろん、自分の考え不足が最たる要因だとは分かっています。

 

 アウラちゃんを攻略するには、ここから腕や足の数本差し出さないと、好感度は戻りません。──というわけで、二人で人気のない場所に行きましょう。安心してください、ブレードは持っていますから。

 

 

「じゃあもう一回しましょう、ベルトルトくん。次負けたら罰ゲームですよ」

 

「は、はい………えっ?」

 

「ハハッ、罰ゲームか。応援してるぜベルトルト」

 

 

 

 それからチェスを続ける私たち。

 その間ライナーくん──恐らく会話の内容や表情から、戦士の精神だと思われる──が、現状の不可解さに触れる。

 

 待機させられているメンバーは、右翼側にいた新兵の面々。

 

 クリスタ(天使)やユミルくんもおり、話したことのない坊主頭のコニー・スプリンガーという少年もいる。彼は私と背中合わせで、後方の席に座っていた。

 

 呑気に「家に帰りてぇ…」と話す彼は、キース教官曰く“二大バカ”だそうです。

 

 もう一人は通過儀礼の際、イモを食べていた少女だそう。その上、そのイモの半分(小さい方)を教官に渡したらしいのですから、精神を疑う。いったいそのおバカさんはどこの誰なんでしょうかね(すっとぼけ)

 

 

 ちょうどコニーくんの正面に座るイモ少女から、視線が来ますが無視だ。

「大丈夫でずがアウラ゛ざん゛んん」と出会い頭抱きつかれ、骨折した足を心配されましたが、やっぱり知らない人ですね。

 

「ねぇコニー、きっとお腹いっぱい食べたら、ケガも早く治りますよね?」

 

「えっ?……きゅ、急に何だよイモ女」

 

「………私のご飯を上げれば……で、でもそんなことできるわけがない…ッ!!」

 

「お前とうとう、収拾がつかなくなるほどバカになっちまったのか?」

 

「……あ、そうですよ!コニー名案があります!」

 

「何だ?」

 

「あなたのご飯をください!!」

 

「ゼッテーにやだよ!!!」

 

 

 アニちゃんや、エレンの処遇で精神がマッハな戦士たちの後ろで繰り広げられる、平穏な会話。

 アレでしょうか、彼らはこの残酷な世界における癒し要員か何かなのでしょうか。

 

 コニーくんに断られたイモ女ちゃんは、項垂れた声を上げた。

 

 耐えきれなくなり後ろを振り向きましたが、テーブルに頬をつけて虚無顔を晒している。ユミルくんが見れば爆笑しそうな顔です。

 しかし彼女は彼女で、この状況が変だと勘付いているメンバの一人。クリスタ・レンズの隣で静かに考え込み、その様子を見て天使ちゃんが心配している。

 

 

「あれ?」

 

 

 テーブルに耳を付けていた、サシャ・ブラウスの表情が突然変わる。彼女はどうやら、地鳴りのような足音を聞いたらしい。私もその言葉を聞いた直後、テーブルに耳を付ける。

 

 確かに、本当に微かにテーブルが震えるような感覚がある。

 流石獣少女。よく気づいたな。

 

 巨大な足音と言えば一つ、巨人のものしか考えられない。だが我々の現在地はウォール・ローゼ内。まさか壁が破られなければあり得ない。

 

 

 周囲がザワザワと混乱し出す中、私は思わずベルトルトくんを見る。超大型がウォール・ローゼの壁を破ったことから考えて、50mの壁を破壊する力を持つのはベルトルトくんのみ。その彼は今、目の前にいる。

 

 ならば壁を破ったのは、アニ・レオンハートか?…いや、エレンと戦っていた女型の様子から見て、壁を破るまでのパワーはない。内門を壊した鎧の巨人も違うだろう。

 

 

 だったらいったい、誰が壁を壊したというのだ?それこそ、それこそ────。

 

 

 

「大変だ!!」

 

 

 一つの可能性にたどり着いたその時、後方から聞こえた大声。

 

 後ろのテーブルの横の窓から、ナナバ兵士が顔を覗かせている。ハンジ・ゾエと同じ中性的で、性別が間違われる二大巨頭の女性である。

 

 

 彼女曰く、南方から巨人が多数接近しているらしい。位置はここから500m離れた場所。当然の如く装備を付ける時間などなく、危険な状況で新兵たちは緊急の任務を任されることになる。

 

 それは付近の住人を避難させること。場所的に私がお世話になったサシャちゃんの集落も近い。

 しかしその村があるのは南方、巨人が来た方角である。果たしてブラウス夫妻は無事であろうか。

 

 

 

 ───あぁ、でも、私の予想は間違いないのだろう。戦士二人の表情も困惑の裏で、微かな期待の色が窺えましたから。

 

 壁が本当に壊されたかはわからない。実際にそれは馬を走らせてから調べることになる。

 

 ニヤけそうになる口を全力で抑える。

 

 時は来た。マーレから新しいお客様が壁内に侵攻している。

 

 

 急いで集められた新兵と武装した兵士らは、馬を走らせる。ウォール・ローゼが突破された今、人類は敗北した。

 

 しかし負けたのは壁内の人間たちであって、戦士には援軍。私にとっては大金星。

 

 巨人の力は、壁内の場合ユミルちゃんを含めて五名。残り四名が、マーレにいる計算になる。

 

 五年経ってお上が寄越すのだ。その人物はトップと考えていいだろう。むしろトップじゃなきゃ、史上最高の“躁”から、史上最悪の“鬱”で私は間違いなく死ぬ。

 

 

 巨人の頭数を見るべく、コートを着てフードをかぶってから馬の準備(愛馬は昨日の今日のため、厩舎で休んでいる)をし、建物の上へ立体機動で移ろうとする。

 

 だがその前に屋根の上にいたミケ分隊長が降り、私の前に立った。じっと、私の顔を見つめる。

 言葉にはしないが、無言の中に「お前は何か知っているのか」という意図が読み取れた。

 

「…巨人の数は9体。用意ができ次第、四班に分かれ出発する」

 

「……はい」

 

 

 肩に、手を置かれた。思えばこの中で、彼と最も長く仲間として過ごしてきたのが私だ。

 

 班が違かったことや、最初の強烈なインパクト(匂いを嗅ぐ)を受けてから、苦手な人間として捉えていたミケ分隊長。しかし私がこのメンツの中で一番に信頼できるのは誰か、と問われたら、彼の名を挙げる。

 

 それはアウラ・イェーガーが七年間調査兵団に所属し、築かれたものに他ならない。

 

 私にはそういった正常な人間性もあることを、述べておきたい。

 

 その上で、私は彼や他の兵士───サシャ・ブラウスや、クリスタ・レンズを肉塊に変えてでも進む。私の目的のために。

 

 

 むしろお兄さまと私が会うために犠牲になれるなんてそれはとても幸せなことだと思うのです。

 

 だって、お兄さまと出会えば私は殺しにかかりますから。

 本気で殺しにかかって、そして、殺される。

 堪らないでしょう?お兄さまの手で殺されるの。

 

 考えるだけで、頭も、心も、身体も、全てが溶けて液体になり、地面に染みを作ってしまいそう。

 

 私を信じるか否かで、悩んでいる男が憐れだ。目の前のあなたのお仲間は今、あなたを人間の一人としかカウントできていません。

 

 

 

 

 

 漏れ出そうになる激情と戦っていれば、屋根に上がる間もなく全員揃う。

 

 そこから出発し、途中四班に分かれ進み始めた。ライナーやベルトルトは、コニーが主体で案内する班に。イモ女は南班へ、その他ユミルくんやクリスタも分かれていく。

 

 

 しかしその最中、こちらに気づいた巨人が走り出す。遠目からでは分かりにくく、その上周辺の木が視界の邪魔をして、個体の判別ができない。

 

 走っている馬の上でもあるため、よそ見をし過ぎていると馬があらぬ方向に向かい、事故が起こる可能性が上がるので殊更。

 

 このままでは武装していない新兵が危険に晒される。人数的に私が抜けても問題はない。そも足を骨折している身。有事の際、私の存在が班の足を引っ張る可能性がある。

 

 ゆえに囮になってきます。当然だね。みんなたっしゃでな!(遺言)

 

 

「待て、アウラ!!」

 

 

 ですが皆の元を離れて、ミケ分隊長が追ってきました。何で来るんですかね?今私は待ち合わせ場所に向かっている最中なんですよ?

 それとも彼氏ヅラして、お兄さまの精神ゲージを減らす手伝いをしてくれるんですか?それは妙案ですね。

 

「その身体でか?…笑わせるな」

 

「囮には十分なるでしょう、ミケ分隊長は早くお戻りください」

 

「……ッ」

 

 ミケは手綱を振るい、私の横に並び立つ。険しい表情で、こちらを睨め付ける。

 

 

 

「お前は、死ぬ気か!!?」

 

 

 

 何故泣いているのか、とも問われる。

 

 わかりません、と私は答えた。

 

 

「お前は本当に、エルヴィンの言うとおり……」

 

「ミケ・ザカリアス、わたしに言えることがあるとしたら、一つだけです」

 

「……何だ」

 

()()()()は、私のものではない。私の心臓は最初から、私のものではない。あなたの言わんとすることも、分かっております」

 

「………」

 

「確かに死ぬ気ですよ。…いえ、違いますね。死ぬべきなのです、私は」

 

「……ハァ」

 

 深く息を吐き、頭を抑えたミケ分隊長。

 私の言葉は、自分が「敵だ」と告げたも同然。もう命を捨て去った後のことなど、どうでもよい。

 

 

「俺も向かう。話は生き残った後、洗いざらい吐け」

 

「………」

 

「いいか、この場での上司はお前ではなく俺だ。文句は聞かん」

 

 

 どうやら去ってくれないようだ。結局囮として私が巨人を錯乱させ、ミケ分隊長がその隙に巨人を狩っていく流れとなった。

 

 素早く走るため、姿勢を変える。膝立ちの体勢を取り、太ももで馬の身体を挟む乗り方。この方法であれば馬体に干渉する人間の体重を軽減できる。

 

 対し乗っている人間は、腰の立体機動装置の重さが騎乗の負担と相まって、究極に苦しくなる。

 つまり、通常は採用されていないライディング方法です。

 

 

「ふひ」

 

 

 分隊長が去った途端、一瞬だけ笑みが溢れてしまった。いけません、最後まで耐えるのよアウラちゃん。

 

 加速度的に早くなった馬は、巨人の合間をすり抜け駆ける。私は先までいた建物の方へ、対し分隊長は森の中へ向かう。

 

 建物の南方はいくらか森が続いており、その奥は森が途切れ、ちらほらと木々が覗く地形。

 森の手前で確認されたのは9体なので、それ以上多いことはないだろう。

 

 私としてはこの隙に巨人を確認しつつ、この場にいる巨人が知性持ちでなければ森に乗じて姿を晦ませ、単独でお兄さまを探したい。

 

 

 

 ────あぁ、どうしよ、どうしよ、どうしよどうしよどうしよ。

 

 

 頭がおかしくなりそうだわ。一周回って冷静を取り戻しましたが、また思考回路がグチャグチャにトロけてしまう。脳と髄液が溶けて混ざり合っているような感覚が、バグった快感に。

 

 お兄さまがすぐに私だとは気づかないよう、見繕ったマント。完璧だ。あとは本当に会うだけ。心臓が爆発しそうなんですけどどうしたらいいの死にます。

 

 

 逃げ回っていれば目前に森が近づいてきた。後ろでは2〜3体の巨人が私を追いかけている。モテモテですね。

 

 このまま森に入り、ミケ分隊長が狩り終わるまで様子を見ましょう。

 知性ありなら、何らかの大きなアクションが起こるでしょうし。アニたそのように、馬を蹴り飛ばしてくれたら分かりやすいんですが。

 

 ────アレ?

 

 一瞬で気づかなかったが、巨人がいる後方。ちょうどさっきまで見えなかった部分ですが、建物の裏側が壊れていなかったか?…巨人がぶつかった?

 

 いや、そんなわけはない。建物の瓦礫はまとめて横に退けられている。

 まるで邪魔だったから……退けた、ような。

 

 

「え」

 

 

 拭いきれない違和感に前を向いた時には、森の中に入っていた。

 

 と、同時にゆっくりと流れる世界の中で、左に何か、木々の間に座っていた。その体躯は屈んで木々にちょうど収まるほどの高さ。向こうからは私の顔は見えまい。

 

 大きな手には私が身につけているものと同じマントがあり、下にはブレードや立体機動装置が転がっている。

 

 恐らく建物の中で、新兵たちから預かり保管していたものだ。そうか、これを取るために裏側が壊されていたのか。

 

 

 

「…ッ!!」

 

 

 身体の制御ができなくなり、私は落馬した。

 

 さっき見た巨人は全身が体毛で覆われていた。まるで、獣のように。特徴的な容姿ゆえ、高い確率で知性巨人。いえ、そもそも立体機動装置を観察していたのだから、当然か。

 

 

 落馬の衝撃に呻いていれば、身体が逆さまになる。足を誰かに掴まれたのだ。

 

 視界がよく見えない。頭が熱い。辛うじて見えたのは大きな目玉。後方にいた3−4m級の巨人が私に追いつき、右足を持ったみたいだ。

 瞬間、激痛が走る。

 

「……ッ、あ゛……!!」

 

 すんで身体が地面に落ちる。咀嚼音が、聞こえた。

 あれれー、アウラちゃんの右足の感覚が膝の少し上辺りからないぞー?食われちゃったんやね。

 

「ハ、ハ……ハァ…ゲホッ………」

 

 他の足音も聞こえます。まさか、この知性巨人さんに殺される前に、アウラちゃんは食われて殺されちゃうんですか?まぁいいかもしれませんね。目の前で食われる光景をマジマジと見せつけられるなら、もう隠す必要もない。

 

 

 フードを取って顔を見つめて、微笑んで死にましょう。

 あぁ、とても、とても気持ちいい。過去一に。

 私の頭はぶっ壊れていた。今更か。

 

 

 欲張りギョロ目くんは口を動かしながら、今度は左足を掴みます。よく噛んで食べてくださいね、あと体勢を後ろに回しましょうか。でないとギョロ目くんが邪魔で、アウラちゃんがおどり食いされるシーンが見えづらくなる。ついでに私の顔も正面に向けてね。

 

 

 

 

 

待て

 

 

 

 

 

 声が、した。あ、おにいさ、まの。あぁ、やっぱり、だって、似てたもの。お耳。お父さまやエレンくんと同じ尖っているの。それがなくても、私が見間違うわけがない。

 

 

 

 あ ああ あぁあ、

 

 

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