使いたかったホラーのコミック体なかったので妥協して水面字使った。結構いい気はするがちょい見づらい感じすんねぇ…。
いやほんと、ヒロイン(難聴)出せたのでもう悔いはない…( ˘ω˘ )
威力偵察───それが戦士長ジーク・イェーガーと、ピーク・フィンガーに任された今回の任務であった。
四名の戦士たちがパラディ島に送られ、早五年。まだ“子供”の少年少女たちに託された使命。それが始祖の巨人、即ち「座標」の奪還。
作戦に選ばれたのは、マルセル、ライナー、ベルトルト、アニの四名であった。
「長期にわたる任務になることは間違いなかったんだろうけど、流石に上官たちも苛立って来ちゃってるよねぇ」
ベランダの手すりに身を預け、外の景色を見つめながら、特徴的なメガネを付けた男は紫煙を吹かす。独り言のように聞こえるトーンをしかし、一人の人間に向けられている。
男の後方、窓が開いているその中には、テーブルや本が詰まった書棚など、生活感の覗く室内が広がっている。
中央の灰皿の置かれたテーブルの横にはソファーが一つ。その上で、男と同じ軍服の上着を身につけている少女が、香箱座りの体勢で乗っている。
この部屋は男の自室だ。一部切り取ってこの状況を見ると、あやしい絵面である。
「少なくとも戦士に選ばれたんだ。アイツらが任務をし損なっているとは思わないけど」
「………」
「考えられるとすれば、向こうの王様が上手く潜んでいるのか…」
「………」
「ピークちゃんはどう考える?現状の壁内の状態について」
「………」
「ピークちゃん?」
男は振り返り、ソファーにいる少女の様子を窺う。
「ピーク」と呼ばれた少女は、コクリコクリと、舟を漕いでいる。先日まで別件で任務に当たっていた彼女は、かなりお疲れのご様子。
「ピークちゃん、ちょっとよだれ垂らさないで。起きて、今大事な話し中」
「……zzz」
「見えちゃいけない擬音が見えてるからね」
「……すやすや」
「さては起きてるだろう」
目を開いた少女は、瞳を擦りながら身体を起こす。相変わらず四つん這いだ。
男が室内に入ったタイミングで起きたらしい。先の話については、寝ぼけ完全に右から左へ流れていた。ちなみに彼女曰く、男の自室のソファーが一番寝心地がいいらしい。
「おはようございました、おやすみなさい」
「ちょ、ピ、ピークちゃ……」
夢の世界へ旅立たんとするピークに、ため息を吐く男。
少女の疲労はわからなくはない。巨人の力を軍事力としているマーレには、通常タイバー家の有する「戦鎚」を除き、巨人の力を持つ六人の戦士がいる。
しかし、うち四名が始祖奪還計画に当たっており、マーレに滞在しているのは二名のみ。戦士長である男とピークだ。
戦争ばかりのこのご時世。戦いの際、支援的な立ち位置を担うのが「車力」のピークであり、攻めが「獣」を持つ男である。
これに男の
これにさらに追い討ちをかけるのが、近代産業化における資源不足。ゆえにマーレはパラディ島に眠る豊富な地下資源を狙うべく、戦士を送った意図もある。
(どこを見ても戦争。本当に嫌になるなぁ…)
今この時の会話も、仕掛けられている盗聴器により、お上の誰かが聞いているのだろう。
プライバシーもクソもないが、所詮エルディア人は、
いや、名誉マーレ人である戦士なのだから、「管理」は少し違うか。
「監視」という表現の方が正しいのだろう。大きな力を持っているからこそ、いつ何時裏切り、その牙が自国に向くかわからない。そのために徹底的な監視が常日頃行われている。
タバコを灰皿に押し付けコーヒーを淹れた男は、再度ベランダに戻る。
果たして壁内の状態がどうなっているのか、戦士たちの任務がどこまで進んでいるのか。長くはマーレを空けられないため、今回の任務期間は短期のものとなる。
戦争状況を加味した上で行われる上、表面上は戦士二名が不在にすることを悟らせないよう、作戦は進められる。
最悪の場合は、戦鎚の巨人がいる。その力は超大型に及ばずとも強力であり、マーレのピンチの時は守護神として敵兵の死体を積み上げるだろう。
男は下で訓練している候補生の少年を見つめ、視線を移し空を眺める。
ゆったりと流れる白い雲。形を絶え間なく変え、流れていく。青い色はしかし時間が経てば、地上の死体からこぼれた血を吸い上げて、紅く染まる。そうして訪れる闇は、やがて朝日に追い出され、その姿を失う。
男が子供の頃から、延々と繰り返されるそのサイクル。
子供の頃は純粋に百面相する空を見、きれいだ──と、感嘆していた。
だが今はかつての頃のように、澄んだ心でその空を眺めることができない。
ふとそんなことを考えた男は、ため息を吐く。
「俺も疲れてんのか…………あっつ!!!!」
男───ジーク・イェーガーは思わず、コーヒーの入ったカップを落としかけた。
⚪︎⚪︎⚪︎
壁内に侵入を果たしたジークとピーク、それから一部のマーレ兵。
拠点は人気のない古城。組まれた作戦に基づき、威力偵察のためコニー・スプリンガーの故郷である村人全員が、巨人化の被害に遭った。派遣されたマーレ兵は、壁内のエルディア人を巨人化させる時必要だった。
使われたのはガス兵器。ある意味で毒ガスよりもタチが悪いと、ジーク本人は感じている。
撒かれるのはジークから抽出された脊髄液。どこぞの変態美女なら、「お兄さまの体液!!!」と大喜びで飲み干す代物である。
その効果は恐ろしいものであり、体内に摂取したエルディア人──ユミルの民を、巨人化させる力を持つ。
これが、ジーク・イェーガーにしか存在しない
彼が“叫ぶ”ことにより、巨人化のトリガーが引かれる。
ジークの脊髄液で巨人化した人間は、彼の意志のままに動く。夜に動くことも可能など、その性質も通常の巨人といくらか異なる。
何故ジークのみに斯様な特殊な力があるのか、お上もわかっていない。だがジークは自身の特異性の所以を理解している。
────王家の血。
「フリッツ」の血を持った彼は、結果として間接的に同族を人間兵器さながら戦争で使い捨てるなど、誰よりも多くの骸を築いてきた。
罪悪感は最初こそ、消えるものではなかった。ただ血や肉、戦争の醜さを見続けるうちにいつしか、罪悪感はなくなっていた。人の死に苦痛を見出さなくなった。
華やかな祭りの中、ポツリとジークがこの言葉を呟いた時。
ピークや彼女に半ば無理やり連れてこられたポルコは、なんとも言えぬ表情で彼を見ていた。
ポルコは流したが、ピークはその真意を読み解いた。
罪悪感は、消えてしまったのではない。
表層に積み上がる死体の山。その奥に存在する罪の意識。
根っからの兄気質か、マルセルがいない分のポルコの心を埋め、独特な間合いのピークも甘やかす。そんな優しい一面に対し存在する、戦士としての冷静な一面と、非人間的な部分。
狂っているのだろう。そして、壊れているのだろう。
しかしてそれは彼だけでなく、戦士全員に当てはまるのだと、車力の彼女は感じていた。
だがそれでも、ジーク・イェーガーは己の計画のために進み続けている。
きっとそんな男の姿を壁内の人間が見れば、「悪魔」と呼ぶに違いない。
そして計画は進められ、巨人化したラガコ村の人々は、それぞれ周辺の民家や集落を襲い始めた。
一部は「獣」の巨人となったジークに操作され、近くにいた壁内の戦力と思しき兵士に当てられることになったのである。
壁内の文化は外の世界と比べ圧倒的に遅れている反面、対巨人用に作られた立体機動装置など、歪な進化構造を持っている。
威力偵察が任務内容のため、兵士の身につけていた見慣れぬ武器を調べる必要がある。しかしジークの本来の目的である『安楽死計画』上、立体機動装置の存在は、計画に利用できる材料になり得ると判断した。
武器を取ってきました──と報告しなければ、お上にバレることはない。ゆえに彼は、懐にこっそり入れることを決めた。また“戦士長”という立場上、監視を避けやすい立場であることもある。
ただ兵士をとっ捕まえ情報を聞き出したかったものの、巨人が接近したと同時に彼らは離脱。
仕方なしと、巨人が兵士に向かっている間、ジークは先ほどまで兵士たちがいた建物を漁った。そして軍服らしきマントや、武器を回収。物陰に隠れ、武器の形状などを観察していた。
だがそんな中、馬に乗った兵士が唐突に目前を横切り、観察タイムは強制終了。
ジークがちょうど見ていた刺繍と同じマントを羽織った兵士は、通常種とは大きく異なる獣の巨人の姿や、武器を観察していた様子に驚いたのか、そのまま馬から落下。
転がり木にぶつかった身体は直後、ギョロ目の巨人に右足を捕まれ、逆さまになる。固定具で止められたその足は骨折している。また、兵士の後を複数体の巨人が追っていたことを考え、囮役になっているのだと推測。
他の兵士を逃すため、買って出たのだろう。となると、他にも狩る側の兵士が近辺にいる可能性が高い。
(さっさと情報を吐かせてから殺すか)
と、ジークが考えていた折、兵士の右足が噛みちぎられた。聞こえたくぐもった声から、その時兵士の性別が女であるとわかった。
地べたに落ちた女は、うつ伏せで小さく震えている。今度はギョロ目に左足が掴まれる。女に迫っていた他の巨人は操作主がいるため、木の陰に潜み、さながら女と仲間になりたそうに待機している。
個体差によって、ジークの命令を聞くか否か差が出る。ギョロ目は聞かん坊タイプだ。
待て、という制止の声を聞き、止まったギョロ目の大きく開かれた口。
中は歯や舌の上に、骨の残骸や赤い肉がありありと残っている。
『腰につけてる武器、なんて言うんですか?』
ジークが声を発した瞬間、女の肩が大きく跳ねた。その心情は“恐怖”一色に違いない。巨人が喋れるなど
『巨人と戦うための武器でしょう、ソレ』
「………」
女は両手で少し体勢を上げたまま、一切動かない。言語が違うはずはない。マーレと異なるのは文字だけであって、意思疎通はできるはず。だが一向に女は答える様子がなく、ジークは耳を掻いた。会話は望めぬようである。
『まぁ、しょうがないか』
長い手を伸ばし、女の肢体を掴もうとする。その時固まっていた女の身体が動いた。
手がゆっくりと腰の剣に伸び、柄を握りしめる。
この状況で、それも圧倒的な力を前にして、戦わんとするその精神。
兵士として素晴らしき在り方はしかし、戦争の中巨人の力を前にし、命を無為に捨ててきた人間たちを目の当たりにしてきたジークにとって、逆鱗に触れる行為であった。
所詮勝てるわけがない。だがそれでも刃を向けようとする。
勝手に「死」に意味を持たせ、勝手に死んでいく。殺す側は勝手に持たされたその“意味”の分まで、咎を背負わなければならない。
何故抗おうとするのか。
抗えばそれだけ、苦しむというのに。
無作為に生まれる苦しみを無くすことが、彼の根底の一つにある。
『嫌になるよなぁ、人間って………!!』
女が剣を地面に突きたて立ち上がり、獣の手が彼女に触れかけた瞬間。その手が切り落とされた。
死角から現れジークの手を切り落とした男は、すぐに方向転換し、一瞬足を地面につけ女を抱える。そのまま女を俵持ちにすると、ワイヤーが二人分の重さで激しい音を立てつつ巻き取られ、走っていた馬に乗った。
鮮やかな所業に、頭に上がっていた血が引いたジーク。
らしくない、と首を振る。
(ワイヤーを使い飛び回るのって相当難しそうだし、相当な使い手か)
しかして女の方は、巨人が喋ることや武器を観察しているのを見られた以上、生かすわけにはいかない。
ジークは近くにいた小さい個体の巨人を掴み、投球の構えを取った。
名誉や尊厳であるとか、“意味のある死”を求めていた女兵士。ならばお望み通り、殺してやろうと腕を大きく振りかぶろうと、して。
「こんなところで死ぬなッ──────
依然抱えられた状態で、男の背中に頭を向けている女兵士。顔はフードに隠れており、窺い知ることはできない。
ぐったりと動かぬ身体。先まで握られていた剣は、力を無くした手からスルリと落ちる。
逃げる兵士二人に、巨人の投擲がぶつかることはなかった。獣の巨人が外したわけではない。
ジークは呆然と口を開く。止まった思考は馬の姿が小さくなってからようやく動き出し、いつの間にか掴んでいた巨人は、握りつぶされていた。
永遠とも取れる時間だった。しかし実際は、そこまで経っていない。
『……あーあ、逃げちゃったよ…』
巨人の血を浴びた獣の手が、蒸気を発し回復する。
彼は頭を押さえ、首を振った。生きているわけがない。壁内にも同名の人間くらいいる。
別人だと分かりきっているはずであったが、ジークは殺すことができなかった。今巨人に追わせたところで間に合わないだろう。
獣の存在がバレるのは少し面倒だが、始祖奪還計画のメインは四名の戦士たちである。さほど作戦に支障は来さないと改め、彼はその場を後にした。
────おにーたん!
そう彼を呼ぶ少女の姿は、ずっと
幼き命が平然と奪われる残酷で、美しいこの世界。
あの日から止まった少年の心は美しさを捉えることができず、残酷さばかりを映し続けている。
【ブチッ】
「何だよぉおもおおお、またかよぉおぉぉおおおお!!!」
そうして現れる無数の知性巨人。
影でブラック労働させられている少女のこめかみに、青筋が走った。「何だよもおおお」は、少女の台詞である。
次回、160cmの男が開催する◯遅バリの肉削ぎがジークを襲う!
「テメェ、何鼻血出してんだ……」
兵長の視線の先に映ったものとは……!?ゼッテー見てくれよな!