現段階の書いてた分が1万5千字近くなった…分割せざるをない。
ジーク・イェーガーに陵辱されたい美女は私、アウラちゃん22歳。
ベルトルトくんに羽交い締めされており、お兄さまを追うこともできない。ヒョロい男だと思っていたが流石戦士、ビクともしない。足を踏みつけ急所を右足で蹴り抜こうとしたところで、ユミルくんが目の前に来た。
「目ェ血走ってるぜ、アウラ副分隊長さんよぉ」
口角を上げながら、話す彼女。人を揶揄っているように見えるが、瞳は真剣そのもの。
「なぁあんた、何者なんだ?」
「…?私はアウラ・イェーガーよ」
「……答えてくれねぇってわけか。まぁ、いいけどさ」
ユミルくんが「何者か」と私に問うた時、背後のベルトルトが微かに息を呑んだ。裏切り者の私が情報を吐けば、途端に彼らが敵であることがバレてしまう。
言うわきゃねぇだろ、との意味を込め、少年の足を踏み躙った。
「何つーか、マジでヤバい状況だな」
巨人の群れは第一波の二倍。五人で連携し最小限で戦えていた。しかし二人死に、三人──しかも残量の少ないガスとブレードで戦わなくてはならない現状。
仲間が食われる様子を眺めたくはありますが、すぐに塔へ魔の手が迫る。お兄さまの姿が壁の下へ消えた以上、猶予はない。
いやだ。殺されるんだ。お兄さまにようやく会えたんだ。「私」が終わるんだ。
でなければまた、
そんなのは、もう。
私は、もう。
「クリスタ、あのさ」
「何、ユミル?」
世界が段々と色を失い、無機質に感じられていく中、少女二人の会話が耳に入った。
「…もし助かったら、私と結婚してくれないか?」
「なっ……!?」と、驚愕の表情を浮かべたゴリ……ライナー。コニーやベルトルトもこの状況で、何言ってんだコイツ?と、正気を疑う視線を向けていた。
クリスタは動揺を一切見せず受け流す。それよりも、今の状況をどうにかすることを考えなければ、と怒った。かわいい。
「ユミルはいつも冗談ばっかり言うんだから」
「冗談じゃねぇんだけど……それとな」
────
何か含みを持った言葉だ。周囲は彼女の真意を読み取れず首をかしげる。
ただ一人クリスタだけは彼女をまっすぐ見つめ、強く微笑んだ。
「当たり前だよ。ユミルは私の大切な人だから」
その一言を聞いた少女の瞳が大きく開かれた。涙が溢れてはこぼれて行く。
思わず私はユミルくんの表情に魅入ってしまう。絶望や苦しみを混ぜ合わせた中に存在した、先ほどの彼女の姿。しかし今はしがらみから解放されたように、安らかな表情を浮かべている。
まるで棺に収まった死体のようだ。これ以上壊されることのない精神。同時に、“無”に還る肉体。
キレイな彼女の姿は、我が心に清涼の風をもたらさんとする。
「ハハッ…クリスタ、お前やっぱスゲェよ」
「……ユミル?」
「本当…なんかそれ聞いただけで、グダグダ悩んでた自分が馬鹿に思えてきた。聞くの、怖かったんだけどな……」
「ね、ねぇユミル?そっちは危な──」
「なぁ」
いつの間にかナイフを取り出し、片手に握っていたユミルくん。彼女の視線の先は、巨人の群れ。塔の下ではすでに戦闘が開始し、大きな音が響いている。
一呼吸した彼女は、塔のへりに足を乗せる。クリスタの制止を無視し、ユミルくんは後ろを振り返った。
「私も胸張って生きるからさ。お前も胸張って生きろ……クリスタ」
瞬間、飛び降りた彼女。
全員(私は羽交い締めのままベルトルトに引きずられた)走り、落ちた彼女を覗き込んだ中、突如起こった眩い光。
「ユミル!!」
光の中で彼女の身体を覆い形成されていく肉体。
身体のバランスは赤ん坊の身体を筋肉質にし、顔を大きくしたよう。上と下が噛み合うように伸びた鋭い歯。肉食動物の犬歯の如き長さを誇りながら、サメのように一定の間隔と大きさで生えている。
特徴的なのは毛で覆われた手足か。三本の指と、円を描くように伸びた黒く長い上に、太さのある爪。
巨人化したユミルくんに、みな息を呑んだ。
◻︎◻︎◻︎
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……!な心境の私。
下の状況はかなり悪化していたようで、ガスが切れたゲルガーが巨人に捕まっている。食われかけた彼を寸前で、うなじを斬り救ったのはミケ。しかし無情にもゲルガーの肢体は下へ落ちていく。
「俺まだ死にたくねぇよぉ!!」と心地よい悲鳴が聞こえた直後、ゲルガーの身体が掴まれた。無知性の巨人たちに、ではない。ビッグユミルくんに。
戦っていたため巨人化した彼女に気づくのが遅れた兵士たち。ナナバがユミルくんに斬りかかろうとしたが、ミケが止めた。邪魔だ、と言わんばかりにユミルくんに上に投げられた男。
その肢体はちょうど塔の上へと向かい、大声を上げていたゲルガーはコニーとぶつかり転がった。
「何すんだよブスッ!!」
怒り心頭のコニー。ゲルガーも呻いているので死んではいないようだ。
再度下に視線を向ければ、長い爪と歯を使い、次々に巨人のうなじを狙っていくユミルくんが見える。彼女の顔はキレイ系だというのに、何故か巨人化した顔はかなり下方修正がかかっている。
一瞬状況を理解できなかったミケも、出現した巨人が今は味方に回っていると判断したのか、ナナバに声をかけ、兵士&知性巨人のタッグが組まれることになった。戦力が最初の五人より一気に上がり、死体の山が築かれていく。だがすぐにナナバとミケのガスも切れるだろう。そうなれば状況は一転する。
「嘘…だ」
ポツリと、後ろから聞こえた声。振り向けばベルトルトが驚愕の表情を浮かべていた。ライナーも然り。どうしてお前らが曇っているんだよ(歓喜)
今盛大に叫んで死にたいのは私の方だ。
返せよ私のお兄さまを。私の幸福を。最大の絶頂を。
「あっ…」
怪訝に眉を寄せる私の顔に気づいたベルトルト。未だに彼の足は、私の左足に踏み躙られ続けている。ガンを飛ばすと冷や汗を流しながら逸らされた。
戦士は四人だったのか?…いや、戦士二人の表情からして、あり得ないだろう。仲間の出現に何故曇る必要があるのだ。
だが彼らの仲間でないのなら、ユミルくんはなぜ巨人の力を持っていた?
少なくとも「始祖」と「進撃」以外はマーレの所有物。この事実は揺らがない。ユミルくんが「始祖」の可能性はまずない。
お父さま、グリシャ・イェーガーによって、レイス家から始祖が奪われたのは五年前。その後始祖は行方知れずとなった。私の見立てでは現在ユミルちゃんの元に「始祖」が戻っているはずですし、ユミルくんが5歳なわけがない。
ならばどのようにして力を手に入れ、どの能力を持っているのか。
正直どの能力かはわからない。が、おおよその入手経路は考えられそうだ。
ユミルくんが戦士である可能性がほぼない以上、何かの手違いでマーレから一つの力が失われてしまったのならどうだろうか。
手違いが起こり、十年以上前に一人の巨人化能力者が死に、その人間の死後に生まれたエルディア人に、力が渡ってしまった可能性。マーレは軍事国家だ。一つでも戦力が失われたことが露見すれば、諸外国勢力が侵攻の手を強める。ゆえに情報を秘匿した可能性がある。
だがこの場合、さすがに十年以上経てば諸外国にバレる。ずっと戦場に一つの力が現れなければ、「なくなった」のだと判断できる。そうなれば秘匿し切れなくなり、国内でも大騒ぎになったはず。
ただ赤子のユミルくんに力が渡ったとして、彼女が“外の知識”を有していることに疑問が湧く。彼女の一族が外の知識を受け継いでいるとして、あまりにも偶然が良すぎる。
ユミルちゃんが彼女に力が渡るよう操作した可能性もありますが。
そもずっと壁内に潜んでいたとして、自分が巨人化できることをどのように知った?
過去に巨人化したのか。はたまた異常治癒は昔からあり、巨人化したエレンとの共通点を知り、自分が「巨人化能力者だ」という考えに至ったのか。
(──ダメだ、わからない)
いっそユミルくんが元々無知性巨人で、巨人化能力者を食って人間に戻った──なら、話はつくというのに。
壁外の人間の正体は、楽園送りにされたエルディア人。
ユミルくんが元楽園送りにされた人間なら、マーレの知識を持っていることにも理由ができる。
…いやでも、割とこの考えはいい線をいっているのかもしれない。
ただ彼女が巨人化能力者を食べたのなら、その人間はいったい誰だったのか、という疑問がさらに浮上する。
思考の渦にハマっていた時、超絶愛らしい悲鳴が聞こえ顔を上げる。「GO GO YUMIRU!!」と誰よりも荒ぶっていた天使が、塔から落ちかけたらしい。かわいいな?
ゴリラ……イナーが足を掴み事なきを得た様子。───おい待てよ、今宙吊りになった天使のスカートがめくれて、下着が見えてなかったか?まさかこの戦士少年、アウラちゃんの時と同じように、ラッキースケベして「ヌッ」となってしまったのか?
ちょうどゲルガーに続きナナバもガスが切れ、塔の上へ投げられる。またぶち当たったコニーくんがキレていますが無視しましょう。それよりもかなりピンチになってきた下。ミケも疲労の色が強い。彼が戦えるのもあとわずか。
アウラちゃんは空気を読める子ですので、ユミルくんに声援を送ります。天使に代わって応援よ。
「ユミルくん!!クリスタの下着を、ライナーくんが見ていたわ!!!」
ベルトルトの視線が刺さり、ライナーくんの「……………えっ?」という顔がこちらに向く。随分と間が長いですね。
対しクリスタちゃんは顔を真っ赤にした。結婚します。アウラちゃんの婿ポジは埋まっているので、嫁に来てください。
『コロスッッ!!』と雄叫びが聞こえ、ガスの切れたミケが塔の上へ投げられる。コニーは身構えたが当たることはなく、ライナーくんにぶち当たった。ちなみにミケ・ザカリアスは2メートル近い身長があり、体重は0.1トンである。
流石のナイスガイでも生じた衝撃に耐え切れず、そのまま二人仲良く床に転がった。
「なんて、恐ろしいことをするんだ…」
背後の少年が震えの混じった声で呟いた。確かに巨人化した挙句、上司三名を投げつけたユミルくん。恐ろしいですね。
「何か、共感した表情を浮かべているが…僕が言っているのはあなただからな?どうしてユミルの地雷を踏み抜いたんだ……。あとずっと、足を踏み躙られているんだが」
「え、わたしだったの?」
「あなた以外いないだろう。こんな、狂ったこと」
しかしベルトルト・フーバー、見てみるといい。三人の戦力がなくなった中、怒りで力を激らせたユミルくんが、どんどん巨人を倒している。倒れる巨人の衝撃で、時折塔が大きく揺れるのはヒヤヒヤしますけど。
次第に世界も明け始めており、どうにか増援が来るまでは持ち堪えそうじゃないですか。
「…あなたは何を今、考えているんだ?」
眉間から汗を流した少年が言う。
今私は、何を考えているのだろう。お兄さまが去ってしまい、私の悲願は達成できそうにない。
ミケ・ザカリアスの助けがなければ、人生の最高の中で死ねた。けれど現実は、まだ、生きねばならない状況が出来上がっている。
またお兄さまと会えるその時まで生きる。生きなければ、ならない。
「皆これで、助かりますね、ベルトルトくん」
他人の“不幸”ではなく、“幸福”を今、私は生み出そうとしている。
即ちそれは「生」を謳歌するのとは対極の状況。
もう生きるのは、無理です。
ならせめて、愛しい弟の前で、死んでやりたい。
かわいい表情を私に見せて、エレンくん。もうお姉ちゃんは、限界です。いえ、限界でした。
とっくの昔から私は、死を望む生き物です。
・巨人化ユミル
顔はほぼ同じ(ブスじゃない愛嬌があると言えコニ僧)、歯はさらに鋭くなっている。手足の先はナマケモノと同じ構造。森の中だと爪をカギのように引っかけて回転しながら移動できる。厄介。