コイツはちょっと無理じゃね?な部分が出てきますがまぁ…兄関連になると主人公がゴリラになると思ってください。
私アウラちゃん、今モブおじ体型の男と意味深なこと(話し合い)をしているの。
突如この美女の前に現れたのはロッド・レイス卿。この半径数百キロの世界の真の王である。
やはりと言うべきか、私の名前についてユミルたそに記憶改ざんされてしまったらしい男は、お父さま目的で私と話し合いにきた。
レイス卿はエセ忠犬男に視線を向けると、外へ出るよう促す。それに「へいへい、わかりましたよ」と、いかにも昔はヤンチャでした、な雰囲気を漂わせて男は出て行った。閉まった扉を、私はじっと見つめる。
それから卿は私に向き直り、話を進めた。
「五年前───ウォール・マリアの陥落があったあの日、君の父親は私の家族を殺した」
「……え?」
何々?グリシャ・イェーガーがユミルちゃんの指示で、父親以外殺した事件があったんですって?(しらばっくれ)
その事件は後にどうなったのか調べたこともあったが、表面上は地方貴族の強盗事件として処理されていた。教会に家族が集まっていた際に強盗犯が彼らを襲い、父親以外は殺されてしまった挙句、教会が燃やされた。
王政にとっては「始祖」がなくなったわけですから、相当な騒ぎになったでしょう。…いや、少し違うか?
なにせロッド・レイスは未だ“貴族”の地位でいる。始祖を失った一件があれば、その追及を受けているはず。それこそ貴族の地位を剥奪されかねない。
ならばこの男が私に接触してきたのは、失った始祖を取り戻すためか?
だが始祖を取り戻すなら、エレン・イェーガーを捕まえた方が早い。私を弟を誘き寄せるエサにする可能性もありますけれど。
そうなると、私への接触はお父さまの行いをどれだけ知っているのか。また、グリシャ・イェーガーが何者なのかなど、“
少なくともお父さまはこの男にとって、家族の仇。良い印象は持たれていないだろう。
「君が
「…わかりました」
「無論ここで私が話した情報は、他言しないと約束してくれ。でなければ君の命は確実になくなる」
しかし表ヅラはツバを飲み込み、小さく頷くアウラちゃんです。
「……不躾ながら、わたしがこれからする話も他言無用にしていただけないでしょうか。
「わかった、善処しよう」
できる限り私はこの男から情報を聞き出さねばならない。壁内の状況や彼の目的、それに自分の多くは知らぬ「始祖」関連のことなども。
お母さまでさえ知り得なかった情報を、持っている可能性は高い。代々能力を受け継いできた一族ですから。
私の情報は話さないだろう。正しくは、
それでも多少漏れてしまうのは仕方ない。
私が話すことは直結して、壁外の情報につながる。それを無闇に漏洩させることはできない。
あくまで私が同じフリッツの血を引いている事実は奥の手。話しても物的証拠がない以上、信じてもらえないだろうが。
「では話を戻そうか」
それからレイス卿は、五年前のことについて語り出す。
私は一部始終を見ているので、説明を受けても大体は知っている内容だ。殺された五名の子供の名前と年齢も教えてくださいましたが、その部分はどうでもよい。私に同情は効きません。
「君の父親は巨人化したフリーダの“ある力”を狙っていた。それは今、君の弟エレン・イェーガーが有している」
フリーダ・レイスの巨人体の首をもぎ取り投げ捨てた男は、次に四人の子供と卿の妻を殺した。
その間命からがらでロッドは逃げ、グリシャが破壊した教会から炎が燃え移る様を見た。
この続きを彼は知らないが、お父さまはその後うなじから這い出てきたフリーダを踏み潰している。血が繋がっている以上、彼女には多少私との類似点があった。娘に似た女性を殺したお父さまの気持ちを想像すると……いけませんよだれが出そう。
輝きそう(意味深)になっていたところ、どうにか思考を戻す。
どうやらレイス卿はお父さまがフリーダを物理的に平らにした様子を見ていないため、
確かにエレンくんが始祖の能力の一端を見せたら、斯様な思考回路に至りますね。全ては我らが先祖のお導きなんですけど。
「君はどこまで、父親の計画を知っていたのかね?またあの男が、
「……父は人里離れた場所にも訪問して診療を行うやさしい方だった。でもそれ以上に、お偉い方の診察に行くことが多かったのを覚えています」
当時を振り返れば、それは“情報収集”のためだったのだろう、と私は白々しく語る。
「卿、貴方にはこの世界───壁の内側が、どのように映っていらっしゃいますか?」
「神が根を下ろす、理想郷だ」
「理想郷ですか。わたしにはカゴの中に囚われた、ちっぽけな世界にしか見えない。あるいは周りに自身を狩らんとする捕食者がいるにもかかわらず、“無知”を以って生きている哀れな被食者だと」
「……興味深い、とは言えない答えだな」
「ふふ…もう少し的を射た話をするならば、確かにここは「楽園」です。しかし悠久のものではない」
────わたしはしがない、「楽園」に送られた人間ですよ。
レイス卿は私やお父さまが何者なのか、これでわかってくれたようだ。
王政に関わる者の多くは、記憶の改ざんを受けない人間たちが関わっている。“外”の秘密を漏らさぬ代わりに、ある程度の地位が約束されているのだ。
ただし中にはミカサちゃんの父親や母親のような、少数一族でも迫害を受けている者たちがいる。彼女の父方のアッカーマン家は詳しく知りませんが、母方の東洋の一族は恐らく位置や人種の見た目的に、ヒィズル国に近しい出身でしょう。
「まぁあくまで父から聞いた話です。当時わたしは四つにも満たない年齢でしたので、ほとんど記憶にはありません」
「君は…いや、グリシャ・イェーガーは何をして、楽園へ送られた?」
「父はユミルの民として、誇りを取り戻そうとしたのです。復権派として無き帝国の復活を願った」
「………!」
「しかし企みは明るみに出て、流罪になった。ヒトとしての形を失う方法で」
幼女時代の私は詳しい事情も知らず、両親について行って地獄の目に遭ったことにします。ほぼ事実を交え話しているので、少しの嘘はわからない。
しかし母が巨人になりアウラちゃんが殺される間際、父に力を託した敵のスパイが父と私を助けた。
その男は寿命の関係で、父に力と、帝国の復権を願った──と。
この時母親も助けたらよかったじゃろ?とのガバが生まれますので、レイス卿が子供を殺されたことを踏まえ、「わたしは温情をかけられ助かったのでしょう…」と語る。もちろん母親の胃袋に収まったことは語りません。
「あの男は娘を救ってもらいながら、私の子供たちを殺したというのか……!!」
卿が顔を歪め、憎悪を露わにしました。いったい誰ですか、大のオトナを曇らせてやろうと、意図して彼の子供の話を想起させたやつは。
ただあまり憎しみを狩り立たせすぎると、犯人の娘である私が絞め殺されかねないので程々にしましょう。
「父の計画には協力してはいません。わたしが父の秘密を知ったのも、訓練兵団に入る前でしたから。幼い頃から母が巨人に変わる悪夢を見ることがあったのです。それが真実だと知った時──つまり人間が巨人になると知った時、「夢だったらどんなによかっただろう」と思った。皮肉なものですね」
これに加えて私が調査兵団に入ったことに話を移す。大切なのは憲兵ではなく、調査兵団に入った点です。
父に協力するなら、王政に近づける憲兵を選ぶ。しかし私は最もリスキーな兵団に
私が調査兵団に入った理由は、望郷におはす兄にもう一度だけでも会いたいがため。
少しでも近づきたいと、壁外調査に出ている。
「兄のことはよく覚えています。とても、とてもやさしい兄だった。「私」の大好きな兄」
「君の兄は共に送られなかったのだね」
「父を…いえ、両親を密告したのが兄ですから」
青い瞳を丸くしたレイス卿。
親を売った云々…と口を挟んでくる前に、私や祖父母を守るために密告せざるを得なかった旨を話す。お兄さまを侮辱したら、拘束を外してこの男が死ぬまで殴るのをやめない。
「当時のわたしは兄の心など知りませんでした。復権を望んだ両親の気持ちも。ただ“無知”で、“無力”で、愚かで……。だからこそわたしは力が欲しかった。自由が欲しかった。調査兵団はわたしにとって相応しい場だったのですよ」
「元人間である巨人を殺すことに、抵抗はなかったのかい?」
「百パーセント無いとは言えません。しかし所詮赤の他人。例えば知り合いの知り合いが死んでも心に響くことはないように、わたしの心も都合よくできている。わたしだけじゃなくて、これは人間大多数に当てはまるでしょう」
「……そうか。グリシャ・イェーガーは娘や息子を巻き込んだことに、後悔はしていたのか?」
「していたからこそ、わたしを関わらせなかったのだと思っています」
どうあがいてもロッド・レイスにとってお父さまは、自分の家族を殺した“悪魔”にしかなり得ないようだ。話を追うごとに纏う闇が増している。
「…父が、貴方の家族を殺したのは事実なのでしょう。しかし話し合いもなしに暴力に出る人ではありません。父は貴方たちに対話を求めはしなかったのですか?父が探していた無き帝国を復活させることができるほどの「力」とは、いったい何なのですか?」
「詳しくは教える気はない。少なくともこの楽園の象徴たる壁を、一瞬で作り上げることができる圧倒的な御業であることには間違いない。君こそ巨人の力についてはどこまで知っていた?」
「人のカラダでの異常再生能力や、寿命のことは知っていました。再生については父が昔ケガをした様子を見て。後者は父本人から教えられて」
“十三年” ───それが能力を継承した人間の寿命。
ゆえにレイス家は多くの人間が、代わる代わる継いでいったのだろう。
この問題はいまだ残っている。ユミルちゃんに幾度と頼みましたが、解決策が出ていない。
ジークお兄さまが死ぬ代わりに全人類が滅んでいいから、お兄さまだけは死なせるわけにはいかない。お兄さまがいない世界などむしろ滅んで当然だ、お兄さまが存在しないのだから。
「……確かに君の父は、巨人の力を使うようフリーダに求めた。だが私たちは戦いを望まない」
「初代レイス王が、楽園を築いて逃げたようにか」
「レイス王のことを知っているのか。ならば“記憶操作”についても、知っているのだろうな」
少し言葉が荒くなってしまった私に、レイス卿は視線を細くした。
「正確に言えば、
「思想の呪縛?」
「人類が巨人に支配される世界を望み、初代王はそれこそが真の平和だと信じた。“不戦の契り”と呼ばれるものだ。それについては知らなかったようだね」
「………」
「ユミル・フリッツから始まり、レイス王から受け継がれてきた
「え」
「君の父親はムダなことしたんだ。フリーダから力を奪い息子へ託そうと、使うことはできない。なぜエレン・イェーガーが一瞬でも使えたのかは不明だが」
レイス卿はエレンから始祖の力を取り戻そうとしている。弟にあるのは「進撃」だけなのでやめてもらっていいですか?しかし、私が言えるはずもなく。
「力は貴方が継承するのですね」
「いや、私は継承しない。…おや、知らなかったのか?」
「?」
「私には妻との子供の他にもう一人、妾の間にできた子供がいる。その子に能力は継がせる」
────その子供の名は、「ヒストリア・レイス」
妾の子ということもあり一悶着あったのち、その子供は名を「クリスタ・レンズ」に変えたという。不思議と私によく似ていると卿は語って……え?
「え?」
「何だ、人の顔を凝視して」
え?あの天使がこの男から──いえ、お父上様から作られたっていうのか?
確かに瞳の色や大きさは似ている。しかし他に似ている要素が…そう言えば身長の低さも似ている。私より一回り近く低いですものこのお父上様。私前にあなたの娘さんを嫁にしようと思ったんですけどダメですかね?
というか、血のつながりがあったのか。私とクリスタ・レンズは。
アウラちゃんは性質上血のつながりがあると即堕ちしがちなので、これで初対面の時、天使に恋してしまった理由がわかった。いや恋というより、“血への執着”といった方が正しいのかもしれないですが。
お兄さまと近しい血。ドキドキしてしまいます。きっと私はお兄さまの血を飲んだら、廃人化するでしょう。
「レイス卿は何故ご自身で力を継承されないのでしょうか」
「私は神がこの世に降臨する様を、見届けなければならない。そのために祈りを捧げる役目があるのだ」
「そのための教会ですか」
それから少し話をしたが、向こうはこれ以上得られるものはないと判断したのか立ち上がる。
向こうしか知り得ぬはずの外の世界──マーレのことや人間が巨人化するなどの情報を交えて話したので、全てとはいかぬものの、ある程度は信頼のおける情報だと判断されているでしょう。
「一応お止めしますが、弟を殺さないでいただけませんか?」
「それは無理な話だ。私は奪われたものを取り返そうとしているだけに過ぎない。君と会うことも、もうないだろう」
「…そうですか」
「これで私は失礼するよ」
そう言い扉を開けたレイス卿。しかしかすかに肩を跳ねさせ、視線を横に向けたまま固まる。卿の恰幅の良さで扉の向こうがうかがえないが、少しテンガロンハットの先が見えています。
「……私は外に出るよう命令したはずだが、ケニー」
「あぁ?しっかり待ってただろ、
「ケニー…!!」
「そう怒んなって、そこの嬢ちゃんは油断ならねェと部下から聞いていた。拘束されてはいても万が一の時があった」
「いくら兵士と言っても、片足のない、それも女性に遅れは──」
何ということでしょう。レイス卿が驚きの表情を浮かべているではありませんか。
私の身体はベッドの上に仰向けの体勢で、まっすぐに伸ばした状態。その上で身体を一周するように、足から首の下あたりまで複数の縄で分けて拘束された。ベッドには直接括りつけられてはいない。しかしかなりキツく縛られているので、簡単に抜け出すことはできない。
ただあらかじめ手を拳骨にしておき、開いた時に少しだけ手首周りに余裕ができるようにした。布団をかけられていたため、卿の視線が外れている時にコソコソ取っていた。
「そのピースしてる可愛いおててをへし折られたくなきゃ止めろ」
狂犬が腰のホルスターから銃を取り出します。私は怖がって布団の中に手を戻しました。
「危害を加えるつもりはありませんでしたよ。ただ子供の頃身体を拘束されている時期があり、あまり良い思い出がなかったもので、つい」
「どうするよレイス卿、ドタマぶち抜く準備はできてるぜ。ついでに空いた穴にシャレた花でも飾ってな」
「…いや、いい。お前はこのまま次の任務に当たってくれ」
それから小声で何か話し合い、天使のお父上は帰っていった。彼もまた私と血のつながりがあるのにも関わらず、滾らないのは彼が家族よりも、自分を優先しているからだろう。
自身ではなく娘に継がせる男は、お父さまの強襲の時にも
それも殺される子供の様子を、見ながら。
自分本位な悲劇役者を、私が好くことはない。本当の悲劇役者は自分も他人も不幸にして生きる。そんな人間こそ残酷な舞台の上で、光り輝くのだ。