ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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煮込むよぉー煮込むよぉー………うぇへへ〜い。

原作超えて予想以上にアニメのグリシャが発狂してて、私の心の言峰先生が「ニッコニコ( ◠‿◠ )」していました。まるでgay術回だった。


戦士鍋

 調査兵団のウォール・マリア奪還作戦が進む中、敵の予測できる戦力は「鎧」のライナー・ブラウンや「超大型」のベルトルト・フーバーに、「獣」の巨人の少なくとも三体。またそれ+αで、戦士が留まっている可能性があった。

 

 巨人が壁内へ侵入するのを防ぐため、先に外門を塞いでその次に内門を塞ぎ、独立したシガンシナ区内の巨人の掃討が行われる。

 

 戦士たちがどこに潜んでいるかわからない以上、慎重に行動する必要がある。最初から巨人化して戦うよりも、潜んでおいて巨人化した方が兵士の隙を狙えるだろう。

 

 エレンが連続して巨人化できる回数は三回であり、内門と外門を塞ぐ計二回を除いて、敵との戦闘で巨人化できる回数は一回となる。

 

 

「超大型」は圧倒的な力を誇る代わりに持続力に欠ける。硬質化は使えないものの、高熱の蒸気を意図的に噴出させる力を持つ。

 立体機動との相性は悪く、容易にうなじを狙うことができないため攻略が難しい。

 

「鎧」に対しては、その装甲を打ち破るカギになる『雷槍(らいそう)』と呼ばれる武器が開発された。

 

 元々中央憲兵が隠し持っていた技術をハンジ・ゾエが技術班に依頼して作らせたものであり、見かけはただの鉄の棒♂

 

 その威力は凄まじい反面、手動で鉄の棒を敵に突っ込ま(意味深)なければならないため、使用には熟練度が必須。

 

 さらに注意点が一つ。雷槍を使う際は前方に建物がなければ使えない。敵に打ち込んですぐに退避しなければ、爆風に使用者本人が巻き込まれてしまうためだ。

 

 

 そして「獣」の巨人。この巨人は「女型」より精密に無知性巨人を操ることができる。非常に厄介だ。それだけでなくミケ・ザカリアスがアウラ・イェーガーを回収した時に、「獣」が巨人を掴み投げようとしていた光景を目の当たりにしている。

 

 その際敵が攻撃しなかったという不可解な点はある。だが獣の巨人に“投擲”という武器があるのは明らかとなっている。これはウドガルド城戦でも確認された。一度目は馬、二度目は屋上にいた兵士。

 

 岩の投球によって行われた攻撃の精密さは十分な脅威に足りる。

 

 

 

 これらを踏まえエルヴィンは、シガンシナ区に入った調査兵団が敵に挟み撃ちにされる可能性に至った。獣の巨人の“投擲”を踏まえた時に考えられるのは退路を塞ぐこと。前例としてエレンがベルトルトによって壊されたトロスト区の内門を大岩で塞いだ件がある。

 

 そのため似たような状況を作られる可能性があると考えた。

 

 シガンシナ区の内門を塞いでしまえば、少なくとも馬は移動できない。となるとカゴの鳥だ、逃げ場がなくなる。まさか外門へ行くのは自殺行為だ。巨人がわんさかいる。

 

 立体機動で壁を伝い内門の外に広がる街に移動しても、そこから戻るにはやはり馬が必要だ。敵の配置は予想としてシガンシナ区内とウォール・マリア側。どの道分散して戦う必要が出てくる。幸い街はどちらにもあるゆえ、立体機動が使えない、という状況は出てこない。

 

 ただし獣の巨人は無知性巨人を操れる。巨人を使い兵士を追い込んで、岩の投擲を使いその兵士がいる場所を狙われる可能性は十分ある。

 

 この投擲の防御策として「エレンの硬質化を使ったらどうか?」という考えもあったが、エレンの巨人化回数を踏まえ、実践的ではない、と却下された。

 

 また同様に「シガンシナ区内に馬を入れてしまい、前提として獣の巨人が馬を狙えないようにしてしまってはどうか?」という考えもあった。内門を塞がれてもエレンに馬を運ばせれば移動はできる。しかして馬の数は数百騎以上に及び、それをエレンに往復で運ばせるには無理がある。そもいくら巨人に対してパニックにならないよう品種改良された馬でも、巨人に掴まれれば興奮して暴れてしまい収拾がつかなくなる。

 

 そのためこの考えも却下された。

 

 

 

 ───というように、上記のような内容が作戦会議において行われた。

 

 

 その間腕を組んで団長や分隊長らの話を聞いていた一人の男は、獣の“投擲”というワードを耳にした時、「フム…」といった様子で何か考え込んでいた。

 

 そして、一通り話が終わり一旦下火モードとなった皆をよそに、唐突に兵士長は席を立った。

 

 大半が「クソか?」と思う中、彼と付き合いの長い団長などは嫌な予感を感じていた。

 

 

 そして数分後、兵長は石を握って戻ってきた。中央に座っていたエルヴィンは「オイ、退いてろ」の一声で静かに移動し、周囲も被害を被るであろう位置から逃れ、隅に固まった。団長がいた後方の壁に向かってブン投げられた石。人類最強の男によって投げられたそれは本気の投球でないものの、聞こえてはならない音が聞こえ、壁にめり込んだ。

 

 実演販売には絶対に向かない男、リヴァイ。

 

「コイツが当たったら死んじまうかもなぁ……」と振り返りざま団長を見た男に、ミケは鼻を鳴らし、ハンジは兵長の奇行にツボってしまったのか声を殺して笑った。

 

 肝心のエルヴィンはというと少し微笑んで、「修理代はお前の給料から精算するからな、リヴァイ」と語り、この一言でついにゾエは耐えきれず爆笑し始めたのだった。ここに第四班の副分隊長がいたら、「空気を読んでください、ハンジ分隊長!」と彼女を叱っていただろう。

 

 

 

 

 

 ……そのようなこともあり、三人(+α?)の敵勢力の中で最も厄介なのは、獣の巨人であると判断された。

 

 

 本作戦のカナメを改めてまとめると、外門と内門をエレンの硬質化で塞くこと、敵(知性巨人)の殲滅、地下室の秘密を暴くことの概ね三つに分けられる。

 

 予想できる現状において、この作戦は今まで以上の死者を出す。穴を塞いでお終いにすることはできない。ここで戦わなければ、戦争の先延ばしになる。戦いが続けば必然と兵士は死に、壁内の戦力は削れていく。今はまだ戦士だけだが、長引けば通常の敵兵士までもが攻め入ってくる可能性もある。つまり総力戦だ。そうなっては本当に壁内人類に未来はない。

 

 消費される命。それでも進まなければならない。

 

 

 

 人類の明日のためにと、兵士等は毒を飲み込むように暗闇の中、光る鉱石で作られたランプを見つめる。

 

 夜明けは、もうすぐだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 ────おにーた!

 

 

 男の夢の中に出てくる一人の少女。セミロングの父に似た色の髪を揺らしながら手を前に出して、小さい生き物とは思えぬほど強い力で飛び込んでくる。その衝撃を全身で受けると、彼はそのまま耐え切れず後ろに転がってしまう。

 

 少女を受け止める男は無精髭を生やした、いかにも通報されかねない姿ではなく、在りし日の少年の姿。

 

 訓練で疲れた身体に感じる少女の高い体温と心臓の音は、彼に晩ごはんを食べて風呂に入り、ベッドに向かうまでの気力を取り戻させる。お返しに抱きしめてやれば、キャッキャと、心底嬉しそうに笑うのだ。

 

 

 少女は彼の妹だった。年の三つ離れた少女は彼以上に、両親に愛されていた。

 その事実に幼少期の少年はほの暗い感情を抱いたこともあったが、全て遠い昔の話である。

 

 少年の姿が青年に変わっても、夢の住人たる妹の姿は変わらない。青年がメガネをかけるようになっても、無精髭になっても、妹は変わらなかった。

 

 なぜ変わらないのか男が尋ねても、妹はニコニコと笑うばかり。

 

 少女は背を向けると、そのまま歩いて行く。いつの間にか少女の両隣には両親が現れ、それぞれ妹の手を繋いで歩いて行く。彼は追いかけようとした。しかし足は赤黒い地面に呑まれ、追いかけることができない。

 

「待ってくれ」と叫んでも、三人は振り返らない。呑まれていく身体は腰にまで届き、どんどん男は沈んでいく。

 

 なぜ置いて行くのか。なぜ────と、よぎった思考。

 

 

 

『お前が選んだんじゃないか』

 

 

 

 男が声の先を辿れば、後ろにいたのは少年の姿をした自分(ジーク)

 

 土で汚れた制服を着た少年はしゃがみ込み、男の後頭部へ顔を近づける。そして耳元でボソボソと、囁いた。

 

 

『密告したのはお前だ』

 

『家族を捨てたのはお前だ』

 

『お前を愛さなかった両親が悪いんだ』

 

『お前は悪くない』

 

『お前は世界を救うんだ』

 

『エルディア人をこの世から無くして、世界を平和にする』

 

『罪深きユミルの民』

 

『そんなお前も、罪深い人間だ』

 

 

 ドロついた、血のような液体に呑まれた男はついに目元まで沈む。瞳を閉じ、そのまま闇へと意識を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

「────ゔっ」

 

 

 まだ外も真っ暗な夜。突如腹を襲った衝撃に、ジークは目を覚ました。

 

 魘されていた寝つきはただでさえ悪いというのに、自身の腹に乗っかっているのは足。その足の主は片足を彼の腹に乗せ、身体を海老反りにして両腕を羽ばたく鳥のように左右へ広げている。対しベルトルトの片手が頭に乗っているライナーは、胎児の形で静かに寝ていた。

 

 180センチを超える図体の、しかも重量(筋肉)のある野郎が三人。彼らがウォール・マリアの壁上で敵が来るのを待ち構えて、三週間は経つ。夜の見張りは夜目が利く「車力の巨人」のピークが行い、それ以外は男三人交代で行っている。

 

 そんな野郎どもは、一つのテント内で寝ている。

 

 

 男三人、密室、戦士たち。何も起きないはずがなく………一つの問題が浮上した。

 

 

 それはベルトルト・フーバーが、規格外の寝相であったことだ。

 

 ライナーは兵士時代にベルトルトの被害に幾度かあってきたようで、もう慣れた様子だった。蹴りの一つや二つでは微動だにしない。

 一方でジークは慣れない。慣れるわけがない。そして強制的に起こされる。

 

 流石に寒い外にベルトルトを蹴り出すわけにもいかず耐えている。…が、そう遠くないうちにベルトルトは戦士長によって蹴り出されるだろう。

 

 某SNSの青い鳥のロゴのごとき寝相の少年を尻目に、毛布を引きずりながらジークは外へ出た。片手に持った恩人の遺品であるメガネをかけ、深い息を吐く。もう何度見たかわからない悪夢に流れた汗は、外気に触れて身体の温度を下げる。温かいコーヒーでも飲みたい気分だった。余計眠れなくなりそうだが。

 

 

 

「エレン・イェーガーね…」

 

 

始祖(座標)」の力を持っている少年。ライナーたちから聞いた情報で明かされた「イェーガー」の名は、ジークと同じ姓であった。その父親は現在行方不明であり、医者をやっていたという。

 

 その男とは間違いなく、グリシャ・イェーガーである。

 

 壁外を移動したグリシャの力は、消去法的に行方知れずだった「進撃」の巨人と考えるのが妥当。グリシャは王家から始祖の力を奪い、エレンに託した。

 

 

 だがここに、一つの疑問が浮上する。

 

「始祖」の力を扱うには例外を除き王家の人間でなければならないのにも関わらず、なぜエレンは始祖の力を使えたのか。

 

 エルディア人の“安楽死計画”を進めているジークは、クサヴァーから「不戦の契り」の内容や、その()()についての方法を聞かされ知っていた。王家の人間が「始祖」を継承すると初代レイス王の思想にとらわれ、力を使うことはできない。ゆえにジークが力を奪っても意味はない。

 

 ただし「始祖」を持つ人間と、王家の血を継ぎ、尚且つ巨人化能力者が接触すれば「始祖」の巨人の真価を発揮することができる。この場合王家の血を継いでいても、巨人化の力を持つ人間でなければ意味がない。クサヴァーが巨人について研究していたからこそ、分かりえた内容である。

 

 ヒストリアでは不可能だ。全てに合致するのはジークのみ。

 

 まさか「始祖」を受け継いだのが兄弟であったとは、奇妙な運命としか言いようがない。

 

 

 そして疑問の部分だが、エレンはライナーたちに攫われかけた際、始祖の力を使い巨人を操ったという。正確に言えばエレンの知人らしき男(ハンネス)が巨人に殺され、その巨人に殴りかかった後、少年の意思に同調するかのように周囲の巨人が動いた。

 

 ライナーやベルトルトは危うく死にかけたものの、ユミルが加勢したことにより九死に一生を得た。

 

 可能性の一つとして、ジークはエレンが巨人化した母親(ダイナ)(もしくは妹)と接触した結果、一瞬座標の力が開かれた可能性を考えた。

 

 にわかには信じがたい話である。しかしこれまでの偶然の数々を踏まえると、あり得ない話ではなかった。

 

 

 同時にもう一つの可能性が、彼の中によぎる。

 

 

 きっとその名前を聞かなければ、思い至らなかった可能性。威力偵察でウォール・ローゼ内に侵入したジークが遭遇した、妹と同じ名前を持つ女兵士。

 

 あり得ない、あり得ないと、再送の丸い矢印を押してページを更新させるように、何度も否定の言葉がリフレインする。

 

 作戦の参加に支障が出るかもしれないため、今この段階でジークとエレンが異母兄弟であることを、ライナーやベルトルトに勘付かれるのは避けたい。(だが「アウラ・イェーガー」と出会っている二人は、すでにジークとエレンが腹違いの兄弟であることを知っている)

 

 対しジークは妹と同じ名前を持った兵士に遭遇したことを踏まえ、「アウラ」という人間がいたかを尋ねる分には怪しまれないだろう、と考えた。

 

 女兵士は自由の羽が刺繍されたマントを着ており、ライナーたちと同じ調査兵団の人間だった。

 彼がウドガルド城を襲った時二人もいたため、前後で女兵士と行動を共にしていた可能性は十分ある。

 

 

『────なぁ、ちょっといいか』

 

 と、あらかた報告を終えたライナーたちに彼は切り出して、「アウラ」という女兵士と遭遇したことを語った。無論、ウドガルド城の一件で命からがらな思いをした二人に謝罪の言葉を交えて。まぁ気付けという方が難しい話だ。

 

 

『「アウラ」という兵士は確かにいましたよ』

 

 

 そう声を発したのはベルトルト。ライナーが中心に報告を述べる中、彼はやけに落ち着いた様子でいた。てっきり意中のアニを壁内に残してきてしまったことに少なくないショックを受けているかと思ったが、ジークの杞憂に終わった。

 

 ベルトルトは語る。

 

 ライナーがかつてジークから聞いた妹の名前と同じ「アウラ」という兵士はいたが、その姓は違かったこと。

 そしてその女性とは同じ班であり、ベルトルトはよく面倒を見られていたために、印象によく残っていた───と。

 

『……そう、だよな。悪いな、忘れてくれ』

 

 あぁ、やはり、生きているわけがない。何を(自分)は考えているのか。

 

 戦士長という立場でありながら、何よりクサヴァーとの悲願を果たすため、世界を救うためにその身を捧げる彼が私情に呑まれようとしていた。これでは死んだ後にクサヴァーに合わせる顔がない。

 

 自分の感情から逃げるようにベルトルトから視線を逸らし頬をかいたジークは、二人に労いの言葉をかけながら立ち上がった。

 

 その時、ライナーが唇を強く結んでいたことも気付かず。他人の表情に気が回るほど、彼に余裕はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前もお姉ちゃんだぞ、アウラ」

 

 

 持ってきていたタバコを切らし口寂しさを覚えながら、ジークは白い息を吐く。

 夜空には雲がかかり、その隙間から月が覗く。世界に散らばっている星を、彼はぼんやり見つめ続けた。

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