ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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最近長い話が多かった反動で短めでスン…('ω')


君はどうしてフリーダム。

 ピスピース!

「寵愛の子」の二つ名が元仲間に広まってしまった私は、みんなの目の保養担当、アウラちゃんだぞ!

 

 

 お父さまったらドジっ子なんですから。いくら何でも、始祖ユミルと関連があることをバラしてしまったらダメでしょうに。

 

 これで晴れて私はおたずね者です。

 ただ今のエレンはおそらく単独行動だ。でなければ、私はすでに元仲間に捕まっていたでしょう。

 

 それに病院に見覚えのある顔もなかった。エレンが始祖を持っていると思われていることは変わっていないから、敵地で動く場合普通なら精鋭且つ、弟が信頼のおける104期生が同行するはず。

 姉の知らない弟の協力者が紛れ込んでいる可能性もある。しかし私がまだ自由な身の以上、やはり弟は一人だろう。

 

 まさかキャワゆいお顔にヒゲが生えるとは思いませんでしたが。

 

 身長は別によいのです。

 ドブの上に発生した藻のような濁りきった翡翠の瞳も、想像以上にお姉ちゃんのせいで精神負荷がかかっていたことが窺えて、たいへん良い。

 

 さらに私と同じ部位を欠損しているところなんか、うっかり絶頂して(アヘって)しまいそうでしたもの。

 

 ただしヒゲ、テメーはダメだ。エレンくんの可愛らしいお顔に生えてはいけない。巨人より駆逐対象にすべき存在です。

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 負傷兵エレンくんと別れた後、仕事の都合で会えなかったジークお兄さまには『病院の方が忙しいため……』と、当分は家に帰らない旨の手紙を残した。病院にも朝イチに休むと伝えている。

 

 エレンの周囲にいれば、いずれ調査兵団が現れる可能性もある。まだ確保されるわけにはいかないのです。

 

 ()()()()()具合として、今のエレンはすごくイイ。

 裏切った姉に憎しみを抱いて、お兄さまへの嫉妬も窺えて。だのに私と接してた時、結局“弟”の部分が出てしまっていた。

 

 心がグチャグチャにかき乱されている。あとはそこに劇薬を投与すれば、エレンくんは爆発してきっと私を殺してくれるだろう…♡

 

 お兄さまに殺されるのが一番いいですが、絶対に私を殺してはくれないでしょう。だって、一番に愛する妹ですから(ドヤァ)

 

 

 姉を殺す弟と、妹を弟に殺される兄。

 兄弟そろって感情という渦の中でドロドロになれるなんて、最高じゃないですか。

 

 その後に姉を殺したエレンくんは何を思うのだろうか。

 妹を殺されたお兄さまはどうなって、そして弟にどんな感情を抱くのだろうか。

 

 けれど結局お兄さまは、エレンを見限ることはないでしょう。腹違いの弟なのですから。

 血のつながった存在で、「家族」というものに飢えたジーク・イェーガーは妹の血で汚れた弟の手を取る。

 

 きっとその光景は美しいに違いない。死んだ後だと見ることはできませんが、そこはユミルたそに頼みましょう。

 また私がご臨終した後の世界がどんな結末を辿るのかも、彼女の世界で観戦する。

 

 巨人化能力者の寿命はどうあがいても覆せないものだから、お兄さまをアニやユミルくんのように封印する。

 ただし《鎧の巨人》と同じ配列を持つ結晶は、戦争でヨロイの装甲が砕かれてしまった事実がある。

 

 そのため壊すことのみに重きをおけば、人体を包む結晶が砕かれて、お兄さまがバラバラになってしまう可能性があるのだ。

 

 

 そのためにはどうしても、消す必要がある────人類を。

 

 だって、あと一年しかない。あと一年。お兄さまのいない世界があと一年で訪れてしまうというんだもの。お兄さまのいない世界の存在の(てぇて)さを見出そうとして、結局ずっと失敗し続けているんだもの、私。

 

 

「私」という存在はもうすぐに消えますが、お兄さまはあと一年?

 

 

 狂おしい、狂おしい。罪深い。世界が罪深い。

 

 存在する価値がないのですね?ないのです。

 世界の価値が存在しないのです。

 存在しない世界は無へと帰すのです。

 無は無です。

 無はそこにいます。

 無は私たちの──────、

 

 

 

 

 

『     !』

 

 

 

「ゆみる ぱんち!」と、誰かが殴ってきて、その手が私の体をすり抜けた。

 バッグを枕にして路地裏で寝転がっている私の目の前にいたのは、ユミルちゃんだ。

 

 ちょうど、人類さんをお掃除するしかないじゃないか……!と、考えていた折に現れた少女。私が心配で出てきたらしい。

 

 本当なら彼女に頼んで、収容区の独り身な人間に当たりをつけて、記憶改ざんしてもらいそこに留まる予定だった。

 私の力では部分的なところまでしか記憶をいじれないので、始祖様の力が必要になってしまうのです。

 

 しかし、ユミルはつい先日までこねこね♡作業があったことを思い出し、疲れているだろうからとやめた。

 

 

「私が急に居なくなったせいで、お兄さまにテオ・マガトの目が向くかもしれない。でもそれ以上に私が始祖様のトクベツ(、、、、)である事が知れているから、どうしても身を潜めるしかないんだよ」

 

 

 と、話すと、ユミルちゃんは怒った。

 

 まぁここ一週間、変なおじさんたちに襲われ♂そうになったり、明らかに危ないクスリを勧められそうになった。

 その度に、杖で急所を潰してあげたのです(ちなみに現在地は収容区の中でもホームレスな人間が集まる、壁内でいう所の「地下街」のような一角である)。

 

 身なりは襲ってきた連中の身ぐるみを剥いで、場に相応しい小汚いアウラちゃんである。髪もボサボサにしています。

 

 

 

 ここからの展開ですが、新聞で近くにレベリオ区で盛大な祭事が行われる──と記載されていた。

 各国から主要人物が集まる。

 内容の中にはあのタイバー家当主が取りしきる催し物もある、とのこと。

 

 通常ならエルディア人が住まうレベリオ区で、各国のお偉い方が集まるなどあり得ない。

 

 この点とタイバー家が絡むことを考えて、必然と導き出されるのは宣戦布告の流れ。

 

 イェレナがエレンに本当の計画の意図を話し、マーレへ向かわせる。

 その時の“()()”を作り上げるのがお兄さまで、その舞台で踊る“主人公”がエレン。そしてこの舞台の語り手が、タイバー家。

 

 練られた計画は一つでもズレれば大きく捻じ曲がってしまうだろう。トム・クサヴァーとの約束のためにアズマビト家さえ動かしてしまうお兄さまは策士だ。結婚して。

 

 

 ただひとつだけ言わせていただくと、前提としてこの計画には問題がある。

 

 エレン・イェーガーと暮らしていた姉からすると、エルディア人の安楽死に弟が賛同するわけがないということ。

 

 

 世界のためにエルディア人(自分たち)が死ぬか、他人が死ぬか。

 

 もし斯様な選択肢があるなら、ジーク・イェーガーは自分たちを犠牲にして、他を救う。

 

 対しエレン・イェーガーは自分たちを生かして他を殺す。

 厳密に言えば弟の根底の中でエレン自身の存在は薄く、もっぱらその対象はミカサやアルミンなど、仲間に向けられている。あの子は妙なところで自己認識が低い。

 

 

 でも、そうやってエレンは進み続けてきた。

 大切なものを守るために。そして自由を求めて生き、輝き続けてきた。

 

 弟の性格をわかっているからこそ、ユミルが見届けたいエレンの未来というものの、おおよその見当はつくのだ。

 

 エレンとお兄さまが接触した時、この世の決定権を持つのは兄ではなく弟。

 

 パラディ島の敵が、巨人ではなく外の世界だと知ってしまった少年は、止まれないところにまできている。

 このままでは世界がパラディ島の悪魔を滅ぼさんとする以上、方法は限られている。

 

 その限られた手段の中で、一番大切なものを守るために有用な方法が何であるかも、すでにわかっているだろう。

 

 即ちそれは「地ならし」。

 

 

 もちろん確定とは言わない。未だエレンくんは和平の道を探しているかもしれないし、もっと別の方法を探しているかもしれない。

 それでもお兄さまの計画に賛同しないことだけは、ハッキリと言える。

 

 もし計画を実行すればミカサちゃんも巻き込まれる。彼女は特異なアッカーマン家であるが、ユミルの民全体に影響を及ぼす大規模な変質を、絶対に受けないとは言いきれない。

 

 エレンが選ぶのは減退するばかりの暗い未来じゃない、未来に()()が存在する世界だ。

 そのためにその他の自由を奪ってでも進む。

 

 本当に、どうして弟はユミルとここまで似ているのか。

 

 その生き方が愛おしくて、少しばかり恨めしい。

 

 

 

 一先ず、兄と会う前に私に出会ってくれて幸いだった。

 私が動くのは祭事がある日でいい。その前後で事が動く可能性もあるから、気を引き締めないと。

 

 

『   』

 

「ん、何?」

 

 こちらを手招きするユミルちゃん。あざとい仕草に釣られて近づくと、壁にもたれ掛かって胡座をかくように頼まれた。ついでに顔は少し下げるような形で。

 そのままの体勢でしばらくいて欲しいとのことだが、何をする気なのだろうか、彼女。

 

「えっ、待って、ユミルちゃんどこ行くの?」

 

 焦った私を置き去りに、ユミルは背景に溶けこむように消えて行った。

 許可が出るまで私はこのままということ?お尻に伝わる地面の冷えた感じも、肌寒さも慣れないんですけど。

 

 何より放置プレイって………興奮しちゃうじゃないですか(末期)

 

 

 

 沈む夕日を見つめながら、一つ大きなくしゃみを溢して、少女の命令を聞く成人女性の図を思い浮かべてしまう私。

 

 そんな濃厚なプレイが続き、夜も更け始めた頃。

 眠気が襲ってきた中、耳に入ったのは女性の声。

 

 顔を上げると隣──というか背後にはユミルが立っていて、前方には月明かりを受けて黒く映る人の姿があった。その人物はローブを羽織っており、フードをかぶっている。低めの身長から、聞こえた声の主がその女性で間違いないのだろうと思った。

 

「誰…」

 

 その女性はフードを取ってかがみ込む。調査兵団の人間ではない。ローブの下に、何か武器を装備している様子はないためだ。

 

 静寂な世界に精神を研ぎ澄ませると、ちらほら周囲に人間がいることがわかる。いつでも動けるように待機しているというわけですか。

 

 

 

「お初にお目にかかります。貴女が────フリッツ王の()()()()、でしょうか」

 

 

 

 そう続けた女性は名を、「ラーラ・タイバー」と名乗った。

 

 思わずユミルを見ると無表情ながら「ドヤ!」という顔をしている。何をしてくれはっているん?

 女性にもユミルのことが見えているようで、少女を認識している私に何か納得したような表情を浮かべた。

 

 

 家なきアウ子はこうして、始祖様の粋な計らいにより、タイバーさんのお家に拾われることになった。

 

 だからあれほど報・連・相を大事にしろと……(白目)




【ユミル劇場】〜青春編〜


場所は学校の屋上。
昼休みに学食のパァンを頬張りながら寝転がっているのは、ユミルとマルセル。
対しユミルにマルセルの分までパァンをパシらされたベルトルトは、「僕が何でこんなことを…」と思いながら、側のベンチに座りモソモソと昼食を口に運ぶ。

「あーぁ、どうにかしてヒストリアと結婚できねぇかなぁ」

「ポルコは元気にしてるかな…」

「アニ………」

頭上に広がる青空を眺めながら、三人はおのおの感慨に耽った。



・校長(ウーリ)
・用務員のおじさん(ロッド)
・ユミルたちより年上の女子高生(フリーダ)
・マルコ(不登校ぎみの鬱少年)
・エルド&グンタ(テニス部・ダブルス)
・ハンネス(駐在所の酔っぱらい警察官)
・理事長(始祖様)


ちなみにゴルピ♂の方は、ブラウン家に引き取られて種馬として生きていたりする。優秀な子種…。
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